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プロダクト開発とシステム開発の委託・請負・準委任の違いと注意点

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プロダクト開発やシステム開発は、現代のビジネス環境において、企業の競争力を左右する重要な要素です。また、プロダクト開発やシステム開発は、外部の開発会社に開発を依頼するケースが非常に多くなっております。その場合、契約形態の選択が非常に重要です。

 

本記事では、委託、請負、準委任の各契約形態の違いを明確にし、それぞれの特徴や注意点について詳しく解説します。この記事をお読みいただくことで、適切な契約形態を選択し、開発プロジェクトを成功に導くための参考となりましたら幸いです。

プロダクト開発とシステム開発の違い

まずはじめに、プロダクト開発とシステム開発のそれぞれの特徴と違いを説明します。

プロダクト開発とは

プロダクト開発は、多くの場合、いままでになかった画期的なアプリケーション(ソフトウェア)を開発することを目的としています。具体的な例としてLINEやYouTubeなどがありますが、これら2つのアプリケーションは、既存のサービスよりも画期的なサービスや機能を持つことで、多くのユーザーを獲得しました。

このように、プロダクト開発は、ユーザーがより新しい体験をするサービスや機能・デザインを実現するという目的がきまっていますが、明確な仕様書をすぐに作成できる状態ではなく、アイデアはあるが明確な形ではないところから始まることが多くなっています。そのため、完成までの工程の予測が難しく、期間がはっきりしていないといえます。

システム開発とは

システム開発は、すでに世の中に存在するシステムを自社用に作成したり、すでに使用している業務アプリケーション(ソフトウェア)を刷新するために行う開発です。

 

具体的な例として、ユニクロなどのECシステムが挙げられますが、このシステムは、すでにあるECシステムより優れた機能を持っていますが、画期的な機能やデザインを必要とされているわけではないため、すぐに仕様書の作成に取り掛かることが比較的容易といえます。そのため、完成するまでの工程の予測が出来て、期間がはっきりしているといえます。

それぞれの目的と特性の比較

ここまで話してきたプロダクト開発やシステム開発のそれぞれの目的と特徴をまとめると、以下のとおりといえます。

■プロダクト開発

・目的:市場向け製品の創出

・重要事項:ユーザー体験やデザイン

・例:スマートフォンのアプリケーションなど

・運用:市場投入後の改良が重要 

■システム開発

・目的:業務効率の向上

・重要事項:技術的要件や業務プロセスの最適化

・例:顧客管理システム、会計ソフトウェアなど

・運用:業務ニーズに応じた改善が必要​

委託・請負・準委任の基本概念

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​各契約の簡単な比較

プロダクト開発とシステム開発の違いについてここまで説明してきました。そしてこれら2つの違いにより、外部に開発を頼む場合に最適な契約形態を選定する必要があります。そこで、ここでは各契約の形態である依託・請負・準委任についての説明とそれぞれのメリットとデメリットについて説明いたします。以下は基本的な比較になります。

■委託契約

・目的:特定のシステム機能やサービスの開発

・責任の範囲:業務の進捗や成果物に対する責任が柔軟

・契約の柔軟性:当事者間の合意に基づき柔軟に設定可能

・具体例:システム機能の開発を依頼し、逐次確認する

■請負契約

・目的:特定のシステムやソフトウェアの完成

・責任の範囲:成果物の品質や納期に対する責任が明確

・契約の柔軟性:契約内容は比較的固定されがち

・具体例:特定の機能を持つソフトウェアの開発

■準委任契約

・目的:開発に関する業務の遂行を委託する

・責任の範囲:業務の注意義務が求められるが、成果物は必須ではない

・契約の柔軟性:契約内容は柔軟だが、業務に応じた責任がある

・具体例:システムアーキテクチャの設計や助言を提供など

委託契約とは

委託契約は民法上に条文がなく、広範囲の意味では請負契約と準委任契約のことを総括して委託契約と呼ぶという説明もありますが、請負契約や準委任契約とは違うもっと柔軟な契約のことを委託契約と呼ぶ場合があります。

委託契約では、業務の実施や成果物の開発に関して、当事者間の合意に基づいて柔軟な内容を設定できます。例えば、特定の要件に基づいてシステムを開発するが、最終的な成果物の品質や仕様については、依頼主が逐次確認しながら進める場合などの場合の契約に使われます。

 

報酬は、業務の進捗に応じて支払いされることがありますが、契約書の記載により成果物による支払いによる場合もあります。

請負契約とは

請負契約は、民法の条文によると、「請負契約は当時者の一方がある仕事を完成することを約し、相手側がその仕事の結果に対してその報酬を支払うこと約することによって、その効力を生じる。」とありますので、成果物の完成が請負先には求められ、同時に品質に対しても問われます。 また、報酬は成果物に対して支払いをされます。請負契約は、民法第632条から第642条までに定められています。

準委任契約とは

準委任契約には、履行割合型と成果完成型という2つの類型があります。※それぞれ、民法の648条に規定されています。

 

  • 履行割合型は、開発で成果物が完成していなくても、開発が適切に実施されていれば、報酬を支払うというものです。

  • 成果完成型は、開発の成果によって報酬を支払いますが、成果物が必ず完成している必要はありません。

 

ちなみに、準委任契約には、何故に準という言葉がついているかと言えば、委任契約という「法律」に関することについての契約形態があり、それに準ずるものであるという意味です。

委任契約は「法律」に関するものであり、準委任契約は主として事務処理や開発などに関する契約形態となります。また、専門的な知識の提供や、コンサルタントだけを実施してもらうなどということも可能となります。

各契約のメリットとデメリット

ここでは、ソフトウェア開発における委託開発、請負契約、準委任契約のそれぞれのメリットとデメリットを説明します。

委託開発

■メリット

・柔軟性:「 業務内容」や「進捗」を柔軟に調整できるため、要件変更に対応しやすい。

・専門知識の活用: 「外部の専門家」や「企業の知見」を活用できる。

・リスク分散: 「開発リスク」外部に委託することで、自社の負担を軽減できる。

■デメリット

・成果物の不確実性:「 明確な成果物」がない場合、最終的な成果が期待通りでないことがある。

・コミュニケーションコスト:「 外部との連携」が必要なため、「コミュニケーション」が 複雑になることがある。

・進捗管理の難しさ:「 業務の進捗」を把握しづらい場合がある。

 請負契約

■メリット

・成果物の明確性: 「完成した成果物」に対する責任が明確で、「品質」や「納期」が保証される。

・コスト管理: 「固定価格」で契約することが多く、予算の見通しが立てやすい。

・リスクの明確化: 「請負先」が「成果物」に対する「責任」を持つため、リスクが明確に分担される。

■デメリット

・柔軟性の欠如: 「要件変更」が難しい場合があり、変更が必要な場合は「追加費用」が発生することがある。

・コミュニケーション不足: 「契約内容」が「固定化」されるため、「進捗」に関する「コ ミュニケーション」が不足することがある。

​・納期の厳守: 「納期」が厳しいため、「請負先」に過度なプレッシャーがかかることがある。

準委任契約

■メリット

・業務の柔軟性: 「業務の進捗」や内容に応じて「調整が可能」で、「要件変更」にも対応しやすい。

・専門的な助言: 「技術的な助言」や「サポート」を受けやすく、開発の質を向上させることができる。

・リスク分担: 「業務の実施」に対する「責任」が明確で、リスクを分散できる。

■デメリット

・成果物の不確実性:「明確な成果物」が求められないため、最終的な結果が期待通りでないことがある。

・報酬の不透明性:「業務の成果」に基づいて報酬が支払われるため、「コストの見通し」が立てにくいことがある。

​・進捗管理の難しさ:「業務の進捗」が不透明になることがあり、管理が難しくなる場合がある。

契約形態の選び方

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これまでにシステム開発とプロダクト開発の特徴や相違点、委託・請負・準委任という3つの契約形態についての説明をしてきましたが、ここではシステム開発・プロダクト開発で委託・請負・準委任の契約形態のどれが適切かを説明します。

プロダクト開発における適切な契約形態

プロダクト開発は、繰り返しになりますが、いままでにないようなアプリケーションや、存在するとしても、そのアプリケーションよりも画期的な機能をもったアプリケーションを作成する開発です。そのため必ずしも成果物がない、あるいはあるとしてもさらに良いものにするための改良が必要なもの(プロトタイプ)になります。

 

そのため、仕様書や工程がはっきりしていないために、成果物が必ずしも必要のない委託契約か準委任契約が適切であるといえます。委託契約と準委任契約は、はっきりとわけることが難しいですが、準委任契約は高度な技術の知見やサポートだけをうけることもできるので、プロダクトのコンサルタントだけしてもらうということも可能です。

システム開発における適切な契約形態

システム開発は、これも繰り返しになりますが、すでにあるアプリケーションへの機能追加や、新しい開発としても、似たようなアプリケーションの開発になります。そのため仕様書の確定が比較的容易で、工程も最初からはっきりしています。そのため成果物やその品質も定めることができるので、請負契約が適切であるといえます。

プロジェクトの規模と複雑性に応じた選択肢

■小規模・単純なプロジェクト
契約形態としては、請負契約が適切と言えます。理由としては、明確な成果物が求められるため、具体的な納品が期待でき、コストや納期の管理が容易なためです。


■中規模・中程度の複雑性
契約形態としては委託契約または準委任契約が適切といえます。理由としては、業務内容が変更される可能性が高く、柔軟に対応できるため、進捗管理がしやすいためです。

■大規模・複雑なプロジェクト
契約形態としては、複合的な契約形態が適切です。理由としては、 請負契約と準委任契約を組み合わせることで、特定の部分は明確にしつつ、柔軟な対応も可能になるからです。

 契約の注意点

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契約における注意点について、以下の各項目を説明します。

契約書の重要事項

契約書には、契約の目的や範囲、成果物の具体的な定義を明記することが重要です。あいまいな表現は後のトラブルの原因になるため、具体的に記述します。

 

また、納期や支払い条件についても明確に記載します。遅延や変更が生じた場合の対応策も含めておくと良いでしょう。さらに、 双方の権利と義務を明確にし、責任の所在を明確化します。特に知的財産権や機密情報の取り扱いについては詳細に規定することが重要です。

 

特に委託契約の場合は、民法に規定がないので契約書だけで契約内容のすべてが記載されていることが求められます。

コミュニケーションの確保

定期的なミーティングを設け、契約の進行状況を確認して、情報共有を行います。これにより、問題を早期に発見しやすくなります。

 

また、どのような連絡手段を使用するかを事前に決めておくことで、迅速なコミュニケーションが可能になります。さらに、双方からのフィードバックを重視し、必要に応じて契約内容の見直しを行うことが重要です。

進捗管理と報告の方法

定期的な進捗報告のスケジュールを設定し、進行状況を可視化します。これにより、計画と実績のギャップを把握しやすくなります。

 

また、 具体的な進捗指標(KPI)を設定し、達成状況を測定します。これにより、プロジェクトの健康状態を把握できます。さらに、進捗報告の際に問題点を明確にし、早期に対策を講じることで、プロジェクトの円滑な進行を維持できます。

リスク管理とトラブルシューティング

プロジェクトにおける潜在的なリスクを事前に特定し、その影響度を評価します。リスクマトリクスを活用することが有効です。また、 特定したリスクに対して、具体的な対策を事前に策定しておきます。リスクが発生した際のアクションプランも含めておくと良いでしょう。

 

さらに、問題が発生した場合の対応手順をあらかじめ決めておくことで、迅速な対応が可能になります。具体的には、問題の報告方法、責任者の指定、解決までのタイムラインを明確にします。

まとめ

ここまで各契約のメリット/デメリットについて触れてきましたが、最適な契約形態を選定することで、開発を依頼する側と依頼される側の両方がよい結果となることが望ましいといえます。結局、契約がうまくないと、契約どおりに依頼された方は動いたとしても、依頼する方の満足がいかない場合もあり、その場合は、報酬も得られず、最悪は不履行による賠償という話にもなってしまいます。

 

また、プロジェクトの性質や、特性によってお互いがうまくいくような契約を選ぶことが求められます。法律的な話も絡んできますので、法律の専門家に入ってもらい契約書をつくることも必要になる場合もあります。

そして、契約書の作成に入る時も重要です。問題が起こった場合は、請負契約か準委任契約どちらかという観点で民法によって判断されますが、それに適合されない部分は契約書の内容により判断が行なわれます。また、最初の段階からお互いのコミニケーションを密にして話し合いをおこないお互いで賛同をしてないと開発の途中で話が違うという事態が発生することもあり得ます。​また、報告の仕方によっては、進捗がうまくわからない。トラブルが発生してるのに報告・相談があがってこないなどの問題が発生し、開発の進捗に支障がでる場合があります。

 

契約の段階である程度のリスクを考慮しておくことや、問題発生時の対応を考えておくことも大事です。その点も契約書に明確にしておくことでプロジェクトがスムーズに進むことが考えられます。​注意点をよく考慮して、契約を結び、依託する方も依託される方もよい結果が得られるようにいきますようこの記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

​株式会社riplaでは、事業立ち上げ~拡大までの各フェーズに応じて、IT事業会社出身のBizDev (事業企画) 、PdM、PM、デザイナーによる高品質な戦略支援と、国内&オフショア開発チームによる低コストな開発支援を提供いたします。

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