CTIの導入事例は、定型コールの自動化、成果指標の設定、現場の声を踏まえた段階導入の3点から見ると、自社で狙う効果と進め方を判断できます。
取り上げるのは、AI自動応答、督促・架電、社内問い合わせ、失敗からの立て直しの4つの場面です。発注企業の視点から、導入の狙いと進め方を読み解きます。
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AI自動応答で応答率と削減効果を実現した事例

CTIにボイスボットやIVR(自動音声応答)を組み合わせると、入電の一次対応を自動化できます。
コールセンターでは、電話がつながらない「あふれ呼」と人手不足によるコスト増が、二律背反の課題になりがちです。そこでCTIを活用し、オペレーターの稼働を抑えながら両方に対応した事例があります。
総務省の2024年の整理では、AI活用によりオペレーターを40〜60%削減できる余地があるとされています。発注側は、この削減幅を投資判断の出発点にできます。
月1万通話で年3,200万円超を削減した試算と事例
月1万通話を処理するセンターなら、AIを併用して人件費を減らした場合の試算が、投資判断の材料になります。試算では、入電件数とオペレーター単価を自社の数字に置き換えて見ていきます。
- 人員削減:20名体制を8〜12名へ減らす想定
- 年間削減額:約3,200万〜4,800万円
- 市場予測:2029年に191億円規模、年平均成長率38%
上の削減額は、オペレーター1名あたりの年間コストをもとに概算した規模です。人数の削減を金額で示すと、投資回収を社内に説明しやすくなります。
自社の年間削減額は、受電の自動化率、1通話あたりの処理時間、オペレーター単価を掛け合わせて概算できます。また、市場の拡大は、多くの企業が削減効果を実感し始めている表れといえます。
発注側は、削減を漠然とした効率化で終わらせず、事例の成果を自社の数字に置き換えておくと、稟議の材料になります。
宅配水の電話注文を80%自動化した事例
中京医薬品は、宅配水の電話注文にボイスボットを組み合わせたCTIを導入し、電話注文の約80%を自動化しました。電話注文は、定型と有人の2つに分けて処理されています。
- 定型注文:「いつもの商品を、いつもの数量で」は音声自動応答で完結
- 有人対応:複雑な相談やクレームはオペレーターが担当
効果を生むのは、すべての電話をAIに置き換えることではなく、定型業務をAIに、非定型業務を人に分ける設計です。注文・予約・残高照会のような定型コールは、費用対効果が高く、最初に自動化する候補になります。
まず、自社の入電を定型と非定型に分けて洗い出すと、自動化する範囲を決められます。そのうえで、感情的なクレームや込み入った相談は、AIが行き詰まったときに有人対応へ切り替える設計が欠かせません。
督促・架電業務でCTIが成果を出した事例

CTIは、受電(インバウンド)だけでなく架電(アウトバウンド)でも効果を発揮します。督促では架電件数が多く、不通や留守番電話、支払い約束に至らない通話が積み重なって非効率を生みます。そこで、プレディクティブ・コール(自動発信)やAIによる一次架電を組み合わせ、生産性を改善した事例があります。
督促架電のAI化で回収率16.9%改善した事例
消費者金融の督促にAI自動架電を導入した結果、回収率が16.9%改善したというリサーチ結果があります。AIは支払い期日の前後に一次架電を行い、支払い予定の確認やリマインドを淡々と担います。定型の連絡をAIが受け持つことで、人が対応する前の絞り込みを効率化できます。
- 接続:架電件数あたりの接続率
- 約束:接続後の支払い約束取り付け率
- 回収:最終的な回収率
成功事例に共通するのは、段階ごとの数字を追い、CTIのレポーティング機能で改善を繰り返している点です。CTIの効果は応答率や処理時間で語られがちですが、督促や営業架電は売上や回収額に直結するため、ROIを明確に示せます。
督促は精神的な負担が大きく、相手から強い口調で迫られることもあります。AIが定型リマインドを担うと、人は支払い相談など寄り添いが必要な対応に集中でき、離職防止にもつながります。回収率への直接効果に加えて、現場の負担軽減などの間接効果も含めて評価すると、投資の全体像を把握できます。
ボイスボット併用で応答短縮を実現した事例
架電だけでなく、受電のあふれ呼対策でもボイスボットを併用した事例が成果を上げています。繁忙時間帯に集中する入電のうち、注文確認や営業時間の問い合わせをボイスボットが受けると、オペレーターにつながるまでの待ち時間を短縮できます。
- 応答基準:神戸市の調達仕様は応答3秒以内
- 例外条件:繋ぎ言葉があれば5秒以内
- 導入例:StepAIの「Reco」は初期30万円〜、月15万円〜、通話料10円/分
この応答水準を満たすには、定型コールの自動化が前提になります。電話がすぐにつながる、または自動音声で用件が片付く体験は、待たされる不満を減らし、顧客満足に直結します。
Recoのようなサービスで一部の入電を自動化し、応答品質を測ってから範囲を広げる進め方もあります。少しずつ始めて段階的に広げると、現場への定着が進みます。
社内ヘルプデスク・問い合わせ削減の事例
CTIの導入効果は、顧客向けコールセンターだけでなく社内にも及びます。社内ヘルプデスクや問い合わせ窓口も、電話に頼ることで生じる非効率を抱えています。情報システム部門や総務、人事に寄せられる定型的な問い合わせは、担当者の集中を何度も途切れさせ、見えにくいコストになっていました。
社内問い合わせを50%削減しROI180%超の事例
社内問い合わせへのAI活用について、3社の投資額と削減効果を示したリサーチ結果があります。
- 島村楽器:約200万円、問い合わせ50%削減、ROI180%超
- SmartHR:約500万円、問い合わせ70%削減、ROI200%超
- 東急ハンズ:約300万円、電話40%削減、ROI150%超
島村楽器では、よくある質問にAIが一次対応し、解決できない問い合わせだけを人につなぎました。その結果、担当者の対応工数を半分に減らしています。
3社の投資額はいずれも数百万円規模で、削減効果が投資を上回っています。
大規模な投資でなくても、定型問い合わせの多い領域から始めれば、明確なROIを描けます。
CRM連携で対応履歴をまとめた事例
CTIとCRM・FAQシステムを連携させると、問い合わせ削減を支えられます。着信時に顧客情報を表示し、過去の履歴を参照できれば、状況を聞き直す手間が省けます。
- 情報表示:着信時に顧客情報と過去の問い合わせ履歴を確認
- AI支援:回答候補を提示し、対応履歴をCRMへ自動記録
こうした仕組みは、対応のばらつきを減らして引き継ぎを滑らかにします。連携が進むほど、1件あたりの対応時間が短くなり、削減効果も積み上がっていきます。
一方で、CRMや予約システムとのAPI連携には、1件あたり30万〜100万円かかることもあります。見積もりに含まれていない場合は、後から追加費用になる可能性があります。
成功事例では、連携費を要件に織り込み、どのシステムとどこまで連携するかを要件定義で固めています。
範囲が曖昧なままだと、稼働後に履歴が一つにまとまっていないという不満が出やすくなるため、注意が必要です。
失敗から軌道修正したCTI導入事例

事例から学べるのは、成功談だけではありません。発注側は、失敗の理由や立て直し方から、現場の実態に近い教訓を得られます。
CTI・AIコールセンターでは、多額を投じても現場で稼働しなかった事例があります。
IDC Japanの2024年調査では、AI導入の32%が期待した効果に届かなかったとされ、CTIも例外とはいえません。
数千万円かけて稼働しなかった失敗の教訓
数千万円を投じたAIコールセンターが、思うように稼働しなかった事例があります。複雑なシナリオでは、顧客が答えにたどり着く前に離脱してしまい、自動化率は想定の半分にも届きませんでした。
- 設計の問題:シナリオの分岐が複雑化
- 応答の問題:AIの精度が期待ほど高くない
- 要件の問題:AIに任せる範囲が曖昧
AIは想定どおりに答えられず、オペレーターへの転送も頻発しました。根本原因は、要件定義の段階で自動化の範囲を決めきれなかった点にあります。
失敗の本質は、技術力や予算よりも、顧客の電話の使い方や困りごとを起点に設計しなかった点にあります。応対ノウハウや顧客の状況を置き去りにして、シナリオだけを精緻に作ると、現場はシステムを避けるようになり、高価なCTIが飾りになってしまいます。
要件定義の不備による再開発には、100万〜500万円の追加費用がかかるという一次データもあります。入口の設計を誤ると、この追加負担が後から生じます。
現場ヒアリングと段階導入で立て直した事例
立て直しでは、開発の前にオペレーターと顧客の実態を聞き取り、自動化する範囲を絞り直します。
- 通話ログを分析し、件数の多い定型コールを選ぶ。
- 複雑な相談は人の対応に残す。
- 導入後に回答率を段階的に引き上げる。
たとえば神戸市の調達仕様のように、回答率の目標を導入月に50%、2ヶ月後に60%、最終的に70%以上と段階的に設定する方法があります。
立て直しに成功した企業は、全体を作り直さず、効果の大きい入電からデジタル化しました。そのうえで、現場が便利さを実感できる小さな成功を積み重ね、納得を得ながら範囲を広げています。
riplaは、フルスクラッチ受託と運用伴走の立場から、通話実態を起点に自動化の範囲を描き、段階的に定着させる進め方を重視しています。事例は数字だけでなく、現場で使われた理由にも目を向けると、失敗を避ける手掛かりになります。
まとめ
CTI(コールセンターシステム)の成功事例も失敗からの立て直しも、定型コールから自動化し、削減効果や回収率を基準に段階的に範囲を広げる考え方に集約されます。
月1万通話のセンターなら、年3,200万〜4,800万円の削減を狙えます。宅配水の注文は80%自動化されました。
督促架電では回収率が16.9%改善し、社内問い合わせでは約200万円の投資で50%削減、ROI180%超を達成した事例があります。
シナリオを作り込みすぎて稼働しなかった事例や、AI導入の32%が期待効果に届かなかったというデータは、自動化範囲の見極めが成否を分けることを示しています。
事例を見るときは、投資額だけでなく、現場で使われた理由も確認しておくと役立ちます。そのうえで、自社の入電と架電を定型と非定型に分け、効果の大きい定型コールの自動化から着手するとよいでしょう。
riplaは、フルスクラッチ受託と運用伴走を組み合わせ、通話実態を踏まえた要件整理から、現場に定着するCTIづくりまで支援しています。全体像は、完全ガイドで確認できます。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
