AIタレント・アバターを解説|広告活用と肖像権・炎上リスクのポイント

ソフトバンクは2025年10月24日、福山雅治さんと共に創り上げたAIキャラクター「AIましゃはる」を主役にしたテレビCM第3弾「AI宣言篇」の放映を全国で開始しました。AIタレントやAIアバターを広告の出演者・案内役として使う事例として、公式に確認できる代表例です。

ただし、1社の事例だけでAIタレントやアバターが広告で「当たり前になった」と言い切ることはできません。企業のIT・事業責任者が確認すべきなのは、AIで人物らしい見た目や声を作れることと、広告で適法・適切に利用できることは別だという点です。

法務省は生成AIの普及などによる肖像・声の無断利用について、パブリシティ権などの侵害に関する法的整理を検討しています。経済産業省も、広告を含むコンテンツ制作で生成AIを使う際の企画、サービス選択、リーガルチェック、社内ガイドラインを整理しています。

※本記事は2026年8月時点の情報です。

AIキャラクター・AIアバターの広告活用を、広告企画、権利確認、広告公開、公開後の監視の4ステップで示した図解
AIキャラクター・AIアバターの広告活用は、企画から権利確認、公開、公開後の監視まで一続きで管理する

広告事例|SoftBankの「AIましゃはる」は何を示したか

ソフトバンクの法人向け発表によると、同社は2025年10月24日から、福山雅治さんが出演するテレビCM第3弾「AI宣言篇」を全国で放映開始しました。

CMは、福山さんとソフトバンクが共に創り上げた新たな相棒「AIましゃはる」との出会いを描き、自然災害、教育格差、食品ロスなどの社会課題とAIの可能性を紹介する内容です。

特設ページでは、「AIましゃはる」をソフトバンクが生み出したAIキャラクターと説明し、社会課題や最新テックを学び、相棒である福山さんの疑問に答えることをミッションとして紹介しています。

ここから確認できるのは、AIキャラクターを単なる画像素材ではなく、実在の出演者との関係性を持つ広告コミュニケーションの設定へ組み込んだ事例だということです。

公式発表で確認できる要素広告企画への含意
福山雅治さんとAIキャラクターの出会いを描くCM実在の人物とAIキャラクターの関係性を、企画・演出・権利確認まで一体で設計する
AIましゃはるはソフトバンクが生み出したAIキャラクター誰がキャラクターを設定・管理し、どの媒体で使えるかを社内で明確にする
社会課題や最新テックを学び、福山さんの疑問に答える設定キャラクターの発言範囲、監修、誤情報や不適切発言への修正ルートを決める

この事例から、AIタレントが市場全体で一般化した、広告効果が実証された、といった結論までは導けません。

自社で参考にするなら、キャラクターの制作方法だけでなく、誰の肖像・声・名前・設定を使うのか、何を本人の発言として見せるのか、公開後に誤解や批判へどう対応するのかを分解して考えます。

ポイント

SoftBankの事例は、AIキャラクターと実在の出演者を組み合わせた広告コミュニケーションの一例です。肖像・声・名前・発言範囲の権利確認は、事例の有無にかかわらず個別に行います。

法務省の検討会|生成AI時代の肖像・声とパブリシティ権

法務省の「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」は、生成AIの普及などによる肖像、声等の無断利用の事案が深刻化しているとの指摘を踏まえ、現行法と判例法理を前提に、パブリシティ権などの権利侵害に関する不法行為法の解釈・適用を検討するものです。

法務省のページには、生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針を含む取りまとめ報告書も掲載されています。

このページから企業が読み取るべきなのは、「AIで作った人物だから権利確認が不要」という整理ではありません。

顔や声が特定の人物を想起させるか、本人の名声や顧客吸引力を利用しているか、本人の関与・許諾がどこまであるか、広告の媒体・期間・地域は何かを、企画段階で確認する必要があります。法的な該当性は、素材と利用態様に即して法務・専門家へ確認してください。

「似せていない」だけでなく、何を利用しているかを見る

顔を完全に複製していなくても、声、名前、口調、衣装、経歴、キャラクター設定を組み合わせることで、特定の人物を想起させる場合があります。

広告主は、生成前の指示、参照素材、修正履歴、承認者、公開範囲を残し、第三者から見たときに誰の人格的要素や顧客吸引力を使っているのかを説明できるようにします。

画像や動画の生成AIを広告制作へ組み込む場合は、画像生成AI・動画生成AIの商用利用と権利確認も合わせて確認しましょう。肖像・声の論点は、画像生成サービスの規約、入力素材の利用許諾、生成物の権利処理とは別に発生することがあります。

ポイント

顔を似せていなくても、声・名前・口調・経歴の組み合わせで特定人物を想起させれば、パブリシティ権などの確認対象になり得ます。生成の指示・素材・承認記録を残しておきます。

経産省のガイドブック|広告利用は企画・選定・リーガルチェックを一続きにする

経済産業省の「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」は、ゲーム、アニメ、広告の各産業における生成AIの利活用ケースを調査・整理し、コンテンツ制作での法的留意点と対応策をまとめたものです。

経産省は、生成AIを使った企画・検討、利用サービスの選択、リーガルチェック、社内ガイドライン作成に活用できると案内しています。

  • 企画:AIキャラクターを使う目的、実在人物との関係、広告で伝える事実を決める
  • サービス選択:入力素材の扱い、学習利用、生成物の権利、保存・削除、補償条項を確認する
  • リーガルチェック:肖像、声、パブリシティ、著作権、商標、個人情報、広告表示を素材ごとに確認する
  • 社内ルール:誰が生成し、誰が事実・権利・ブランドを確認し、問題時に公開を止めるかを決める

AIアバターの導入では、「生成物を納品できるか」だけでなく「広告として公開できるか」を判定します。

本人の許諾がある場合でも、契約の対象が顔だけなのか、声・動き・新しい台詞・合成・再利用・地域・期間まで含むのかは別途確認が必要です。逆に、オリジナルのAIキャラクターでも、既存作品やブランドを想起させる表現、誤認を招く表示、実在人物の発言と受け取られる演出には注意します。

AIを使った業務の範囲を整理するときは、生成AI活用事例のように、業務目的と確認工程を分けて見ると、広告制作だけにルールが偏るのを防げます。制作部門、広告担当、法務、ブランド担当、運用担当が同じ台帳を参照できる状態を作ることが大切です。

ポイント

企画・サービス選択・リーガルチェック・社内ルールを一続きで管理し、生成物の納品可否と広告としての公開可否を別々に判定します。

AI広告の整理|実在人物・オリジナルキャラクター・本人らしい生成

広告に使う人物表現を、実在人物が関与するAIキャラクター、企業が作るオリジナルAIキャラクター、特定人物を想起させる生成、AIアバターによる自動応答の4類型に分けた整理図
広告に使う人物表現は、実在人物の関与度と誰を想起させるかで4類型に整理できる
表現の類型主な確認点公開前に残す記録
実在人物が関与するAIキャラクター肖像・声・名前・演技・新規台詞・利用媒体と期間の許諾契約、許諾範囲、本人確認、監修・修正履歴
企業が作るオリジナルAIキャラクター既存人物・作品との類似、商標、発言内容、AIであることの伝え方制作資料、参照素材、権利確認、ブランド承認
特定人物を想起させる顔・声の生成肖像・声・パブリシティ、誤認、無断利用、広告表示生成指示、素材の出所、類似性評価、法務判断
AIアバターによる自動応答発言の正確性、禁止表現、個人情報、問い合わせの引き継ぎプロンプト・ログ、監視体制、停止手順、苦情対応

この表は法的な判定表ではなく、企画を法務へ渡すための実務上の整理です。

顔・声の権利だけでなく、広告が誰の発言・推薦・体験談として受け取られるか、AIが公開後にどのような返答をするかも確認対象になります。

ポイント

整理表は法的判定ではなく実務の下敷きです。表現類型ごとに確認点と公開前に残す記録を先に決め、法務への相談範囲を絞り込みます。

広告公開前のチェックリスト|炎上を「公開後の対応」だけにしない

AIアバターの炎上リスクは、公開後に謝罪文を作るだけでは管理できません。

人物・声・発言・商品表示・配信先を一つの広告素材として確認し、公開停止や差し替えができる運用を先に決めます。

広告公開前に確認する人物性、許諾、表示、発言、監視、復旧の6項目を示すチェックリスト図解
公開前チェックは、人物性・許諾・表示・発言・監視・復旧の6項目で確認する
  • 人物性:誰を想起させる表現か、顔・声・名前・口調・経歴を分けて確認したか
  • 許諾:利用目的、媒体、地域、期間、二次利用、生成・編集、声や台詞の範囲が契約に含まれるか
  • 表示:AIキャラクターや合成音声であることを、広告の受け手が誤解しない方法で伝えるか
  • 発言:商品・価格・効果・社会課題に関する発言を、事実確認とブランド基準でレビューしたか
  • 監視:公開後のコメント・問い合わせ・SNS上の反応を誰が確認し、どの条件で停止するか
  • 復旧:素材の差し替え、広告停止、関係者への連絡、ログ保存、再公開判断の手順があるか

「商用利用可」は肖像・声の許諾を代替しない

生成AIサービスが商用利用を認めていても、入力した人物写真や音声を広告に使えること、生成物が特定人物を想起させないこと、広告の表現が適切であることまで自動的に保証するわけではありません。

サービス規約の確認と、人物・ブランド・広告表示の確認を別々のチェックとして記録します。

キャラクターを画像生成AIで展開するときは、Nano Bananaのような画像生成AIの用途・権利確認も参考になります。キャラクターの一貫性を保てる機能があっても、権利確認、ブランド承認、公開後の監視までを自動化できるとは限りません。

ポイント

商用利用可の表示は肖像・声の許諾を代替しません。人物性・許諾・表示・発言・監視・復旧の6項目を公開前チェックとして運用に組み込みます。

まとめ|AIタレントは「作れる」から「使える」へ確認工程を設計する

SoftBankの「AIましゃはる」は、AIキャラクターを実在の出演者との関係性を含む広告コミュニケーションへ組み込んだ、公式に確認できる事例です。一方、この1事例からAIタレントやAIアバターが広告で当たり前になったと断定することはできません。

法務省は肖像・声等の無断利用とパブリシティ権などの民事責任を検討し、経産省は広告を含むコンテンツ制作での生成AI活用について、企画、サービス選択、リーガルチェック、社内ガイドラインを整理しています。

広告に使うなら、顔・声・名前・台詞・参照素材・配信条件を分解し、許諾と確認記録を残してください。公開後の誤解や炎上にも、停止・差し替え・説明の手順を持たせることが重要です。

ポイント

広告でAIタレント・アバターを使うかどうかより、誰の何を、どの範囲で、どう確認して使うかを先に設計することが、権利トラブルと炎上の両方を防ぎます。

よくある質問(FAQ)

Q. AIタレントやAIアバターは広告で当たり前になったのですか?

今回確認した一次情報では、ソフトバンクが「AIましゃはる」を使ったテレビCMを発表した事例は確認できますが、市場全体で当たり前になったという統計や共通認識までは確認できません。事例の増加と、広告利用の一般化は分けて評価する必要があります。

Q. AIキャラクターの広告利用で肖像権・パブリシティ権は関係しますか?

顔、声、名前、口調、経歴などが特定の人物を想起させる場合や、その人物の名声・顧客吸引力を利用する場合は、肖像やパブリシティなどの権利確認が必要になる可能性があります。具体的な該当性は、素材と利用方法に即して法務・専門家へ確認してください。

許諾がある場合でも、顔だけでなく声、動き、新しい台詞、生成・編集、媒体、地域、期間、二次利用まで契約の範囲を確認します。本人の許諾とは別に、広告表示、商品説明、著作権、商標、個人情報、サービス規約などの確認も必要です。

Q. 広告公開前に最低限何を確認すべきですか?

誰の顔・声・名前・設定を使うのか、許諾範囲は媒体・期間・地域・二次利用まで足りるのか、AIであることをどう伝えるのか、発言の事実確認を誰が行うのか、問題時に停止・差し替えできるかを確認します。生成指示や参照素材、承認記録も保存します。

参考情報:
ソフトバンク「『社会課題に、アンサーを。』プロジェクト テレビCM第3弾を放映開始」
ソフトバンク「AIましゃはるって?」
法務省「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会」
経済産業省「コンテンツ制作のための生成AI利活用ガイドブック」

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。