Anthropicが関わる著作権侵害集団訴訟「Bartz v. Anthropic」では、2026年7月20日に和解が最終承認されました。米カリフォルニア州北部地区連邦地裁での承認です。
対象は、海賊版サイトから取得した書籍約50万点の著作物です。権利者には、1作品あたり推定3,000ドルが分配される見込みです。
企業にとって重要なのは、生成AIの学習可否だけではありません。学習データの出所、契約上の補償、社内利用ルールまで管理対象になります。
※本記事は2026年8月24日時点の情報です。

Bartz v. Anthropicとは|15億ドル和解の全体像
Bartz v. Anthropicは、作家アンドレア・バーツ氏らがAnthropicを訴えた著作権侵害集団訴訟です。
裁判所は米カリフォルニア州北部地区連邦地裁です。和解総額は15億ドルに達しました。
円換算は、※1ドル=150円で換算しています。15億ドルは約2,250億円です。
対象作品は約50万点です。権利者への分配額は、1作品あたり推定3,000ドル、約45万円となります。
金額は本件の和解条件に基づくものです。他の著作権紛争へ自動的に適用される基準ではありません。
訴訟では、作家らがAnthropicによる書籍データの取得とAIモデルへの利用を問題にしました。
最終的な和解は、海賊版サイトから取得した書籍に関する損害賠償の争点を決着させるものです。
そのため、今回の承認だけでAI学習に関するすべての著作権論点が確定したわけではありません。
2026年7月20日の最終承認は、マルティネス=オルギン判事によって行われました。
和解枠組みの発表後、裁判所の最終承認に至りました。
ポイント
Bartz v. Anthropicは、米カリフォルニア州北部地区連邦地裁で、約50万点の作品を対象に15億ドルで和解した事件です。
経緯とフェアユース判断|取得方法で扱いが分かれた

判断の核心は、AI学習に使ったかどうかだけではありません。書籍をどの経路で取得したかが区別されました。
2025年6月23日、裁判所は部分的サマリージャッジメントを示しました。
- 適法に入手した書籍:購入・保有した書籍をデジタル化し、AI学習に使う行為はフェアユースと認定
- 海賊版サイトから取得したデータ:コピーを「中央図書館」として保存する行為はフェアユースに該当しないと判断
- その後の争点:海賊版取得・保存の争点は陪審裁判に進むことになった
つまり、適法に入手した書籍の学習利用と、違法に取得したコピーの保存は同じ扱いではありません。
この区別は、AIを導入する企業にも示唆があります。モデル名だけでなく、学習データの来歴を確認する必要があります。
適法に入手した書籍の学習利用については、フェアユースと認定された点が判断の一つです。
一方、海賊版サイトから得たコピーの保存については、フェアユースとは扱われませんでした。
この争点は、和解によって陪審裁判を避ける形で決着しました。学習利用全体の確定判断ではありません。
2025年6月23日の判断は、書籍の入手方法を著作権リスクの判断材料として示した点に意味があります。
企業がAIサービスを選ぶ際も、学習データの中身だけでなく、取得経路を確認する視点が必要です。
その後、2025年9月5日に和解の枠組みが発表されました。2026年7月20日には最終承認に至っています。
なお、本件は単一の地裁での和解です。OpenAI、Meta、Midjourneyなどの著作権訴訟に、自動で同じ結論が及ぶわけではありません。
生成AIと著作権の論点は、音楽生成AIをめぐるSunoの著作権判例とも比較できます。
ポイント
2025年6月の判断は、適法に入手した書籍の学習利用と、海賊版サイトから取得したデータの保存を分けて扱いました。
支払いはいつからか|控訴期限後に2段階で実施

最終承認だけで、直ちに全額が支払われるわけではありません。控訴期間と支払い手続きが残ります。
控訴期限は2026年8月19日です。控訴がなければ、支払いは2026年末以降に始まる見通しです。
- 第1段階:全体の約70%を支払う見込み
- 第2段階:残る約30%を支払う見込み
- 支払い期間:分割払いが2027年9月まで続く見通し
控訴が提起された場合は、支払いがさらに遅れる可能性があります。支払い開始時期は確定日ではありません。
控訴期限を過ぎた後も、分配対象の確認と段階的な支払いが進む仕組みです。
第1段階は全体の約70%、第2段階は約30%です。全額を一度に支払う方式ではありません。
分割払いは2027年9月まで続く見通しです。権利者側は支払い時期を段階で捉える必要があります。
1作品あたり推定3,000ドルという数字も、約50万点の対象作品に対応する分配単位として示されています。
ただし、同じ金額が別の訴訟や別の作品に適用されると決まったわけではありません。
和解の対象は約50万点の作品です。1作品あたり推定3,000ドルが分配される見込みです。
この水準は、本件の損害賠償交渉を考える際の参照点になり得ます。ただし、個別案件の支払額を決めるルールではありません。
また、Anthropicは、海賊版サイトから取得した書籍の原本ファイルと派生コピーを破棄する義務を負いました。
これは、学習用データセットなど派生データも含むデータ管理の論点です。企業はデータの取得後も管理責任を設計する必要があります。
ポイント
支払いは控訴期限後に2段階で進み、開始は早くても2026年末以降です。和解には派生コピーの破棄義務も含まれます。
日本企業への含意|生成AIのIPリスクを3層で管理する

日本企業が見るべき点は、Anthropicの和解額だけではありません。導入前後の管理を3層に分けると整理しやすくなります。
1. 学習データの出所を確認する
ベンダーが学習データをどの経路で取得したかを確認します。正規ライセンス、購入、クローリングなどの経路を把握します。
ベンダー選定時は、学習データの出所を説明できる資料があるかも確認項目になります。
特に、適法に入手したデータと、違法に取得したコピーは同じ前提で扱えません。
2. ベンダー契約の補償条項を確認する
生成AIベンダーとの契約には、著作権侵害に関する補償、つまりIP補償条項を置くことが重要です。
確認時は、補償の対象、責任分担、申し立てがあった場合の対応を契約書で整理します。
和解額が大きくなり得ることを踏まえ、導入部門だけでなく法務や購買も契約確認に参加します。
3. 社内生成AI利用ガイドラインを整える
社内で使う生成AIについて、入力してよい著作物やデータの扱いを定めます。
利用者が個別に判断しなくて済むよう、利用可能なサービスと用途を具体化することが重要です。
- 利用範囲:業務で使える生成AIサービスと用途を定める
- データ管理:入力データの権利関係と保存先を確認する
- 削除対応:利用停止や削除が必要になった場合の窓口を決める
AI事業者側のデータガバナンスは、権利保護データ基盤を扱うソフトバンクのGaranAIの論点とも接続します。
生成物の来歴や証跡は、SynthID・C2PAによるAI生成物の来歴管理とも関係します。
社内ルールの整備では、AI事業者ガイドライン第1.2版も関連する確認材料になります。
これらは本件の判決が日本企業へ直接課す義務ではありません。和解と判決の事実から導ける、実務上の管理項目です。
生成AIを導入する企業は、サービスの利用開始時だけでなく、モデル更新時にも確認を続けます。
契約と社内ルールを別々に作らず、データの取得経路から利用現場までを同じ台帳で追える状態にします。
権利関係の問い合わせを受けたときに、担当部署と判断基準がすぐ分かる体制も必要です。
社内の生成AI利用ガイドラインは、現場の入力判断と法務の確認をつなぐ共通ルールとして運用します。
ベンダーのモデル更新や利用範囲の変更があった場合も、契約とデータ管理を見直します。
確認結果は記録し、更新履歴と担当部署を残しておきます。
ポイント
日本企業は、学習データの出所管理、ベンダー契約のIP補償条項、社内生成AI利用ガイドラインを一体で確認します。
よくある質問
Q. Anthropicの著作権訴訟の事件名は何ですか?
事件名はBartz v. Anthropicです。米カリフォルニア州北部地区連邦地裁で扱われた著作権侵害集団訴訟です。
Q. 和解総額はいくらですか?
和解総額は15億ドルです。約2,250億円で、対象作品は約50万点です。
Q. 支払いはいつ始まりますか?
控訴がなければ、支払いは早くても2026年末以降に始まる見通しです。約70%と約30%の2段階で、2027年9月まで続く見通しです。
Q. 日本企業は何を確認すべきですか?
学習データの出所、ベンダー契約のIP補償条項、社内生成AI利用ガイドラインを確認します。削除対応の窓口も定めます。
まとめ
AnthropicのBartz v. Anthropicは、15億ドルの和解が最終承認された著作権侵害集団訴訟です。
2025年6月の判断では、適法に入手した書籍の学習と、海賊版取得データの保存が区別されました。
日本企業は、AIの性能だけで導入を決めないことが重要です。学習データの出所、契約、社内ルールを確認します。
ポイント
生成AIのIPリスク管理では、データの取得経路を確認し、契約の補償条項と社内利用ガイドラインまで整備することが重要です。
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