McKinseyのAI社員を解説|人とAIが並走する組織運営のポイント

McKinseyは、105カ国1,993人を対象にした2025年の調査「The state of AI in 2025」で、回答者の62%が所属組織でAIエージェントを少なくとも実験していると回答したと明らかにしました。同社はこの動きを、人間がAIエージェントと協働して価値を生み出す「agentic organization(エージェント型組織)」という枠組みで説明しています。

重要なのは、AIエージェントの数を人間の人数と競わせることではありません。どのワークフローをエージェントに任せ、どの判断を人が担い、誰が結果に説明責任を持つのかを、組織の構造・人材・ルールまで含めて設計することです。

「AI社員2.5万体・人間4万人・150万時間」という具体的な数字の組み合わせは、指定したMcKinsey公式ページでは確認できません。ここでは、確認できる範囲でMcKinseyが示す人間とエージェントの役割設計を整理します。

※本記事は2026年8月時点の情報です。

agentic organizationにおける人間・AIエージェント・組織ルールの関係を示す図解
agentic organizationは、人間・AIエージェント・組織ルールの3要素で成り立つ

agentic organizationとは|AIを組織の仕事の流れに組み込む

収集・分類と下書きをAIエージェントが実行し、例外処理・承認・最終責任を人間が担う業務フロー図
収集・分類・下書きはAIエージェントが実行し、例外処理・承認・最終責任は人間が担う

McKinseyはagentic organizationを、人間がAIエージェントや物理エージェントと協働しながら価値を生み出す、AI時代の組織パラダイムとして説明しています。ここでいうエージェントは、質問に答えるだけのチャットボットではなく、基盤モデルを使って現実世界で複数の手順を計画・実行するシステムです。

McKinseyの企業向け支援ページでは、エージェント型の組織へ移行するための変化を、ワークフロー、リーダーシップ、人材、スキリングと文化、組織構造、HR・人材システムの6領域に整理しています。つまり、AIを導入するだけでは足りず、仕事の単位、役割、評価、育成、責任の置き方まで変える必要があります。

人数を数える前に、仕事の流れを分解する

この考え方では、「AI社員が何体いるか」というヘッドカウントよりも、業務のどの工程がエージェント化され、どの工程が人の判断を必要とするかが先に来ます。情報の収集・分類・下書き・定型処理はエージェントに任せやすい一方、目的の設定、例外処理、重要な承認、顧客や従業員への影響を伴う判断は、人が担う境界を明確にする必要があります。

ポイント

AI社員の数を数えるより、収集・分類・下書きなどエージェントに任せる工程と、目的設定・例外処理・承認など人が担う工程を先に線引きします。

AIエージェント導入率|62%が実験以上、ただし全社展開は初期段階

McKinseyの「The state of AI in 2025」は、105カ国の1,993人を対象にした調査です。回答者の62%は、所属組織がAIエージェントを少なくとも実験していると答えました。その内訳は、23%がどこかの業務機能でエージェントをスケール中、39%が実験中です。

回答の区分割合読み取れること
スケール中23%少なくとも1つの業務機能で展開・利用拡大を進めている
実験中39%AIエージェントの可能性を試しているが、全社展開前の段階
合計62%実験以上の組織は多いが、企業全体への定着とは別に見る必要がある

一方、AI全体では88%が少なくとも1つの業務機能で定期利用しているものの、企業全体でスケールしたと答えた回答者は約3分の1でした。エージェントについても、スケール中の企業の多くは1〜2機能にとどまり、個別の業務機能でスケールしていると答えた割合は10%を超えていません。

この数字は、「AIエージェントが普及した」というより、実験から組織的な展開へ移る途中にあることを示します。導入企業は利用率だけで成功を判断せず、ワークフローの再設計、現場のスキル、リスク管理、経営層の関与が揃っているかを確認する必要があります。

本番運用でエージェントの行動、失敗、評価、人への引き継ぎを追跡するには、AgentOpsの可観測性・評価・監視の考え方が参考になります。

ポイント

実験組織が62%に達しても、企業全体でのスケールは1〜2機能にとどまる例が多く、利用率だけで導入の成否を判断しない姿勢が必要です。

人間とエージェントの役割設計|実行と判断を分ける

情報処理・業務実行はAIエージェントが実行し、意思決定・組織運営は人間が判断・承認するマトリクス図
情報処理・業務実行はAIエージェントが実行し、意思決定・組織運営は人間が判断・承認する

人間とエージェントの協働を設計するときは、「AIに任せるか、人がやるか」という二択にしないことが大切です。McKinseyのagentic organizationの6つの変化を実務に落とすなら、業務の各工程を分解し、実行、監督、承認、例外対応、最終責任を別々に定義します。

役割エージェントに任せやすい領域人が担うべき設計・判断
情報処理検索、分類、要約、定型データの照合参照してよいデータの範囲と、誤りを検証する方法
業務実行定型入力、下書き、通知、複数手順の自動処理書き込み権限、外部送信、金銭・顧客影響のある操作の承認
意思決定選択肢、予測、論点、異常の提示目的、優先順位、例外処理、最終承認
組織運営進捗監視、レポート作成、定期的なアラート責任者、停止条件、説明責任、ルールの更新

特に重要なのが、エージェントの出力に対する人の検証です。McKinseyの調査では、AIの出力をいつ・どのように人が検証するかを定めたプロセスが、AIから価値を得ている企業を特徴づける管理慣行の一つとして挙げられています。人を最後に置くだけでなく、どのリスクで、どの証拠を見て、誰が承認するかを業務ルールにします。

AIエージェントを複数の部署で試す場合は、社内で個別に作られたエージェントを放置しないことも必要です。シャドーAIエージェント対策のように、利用目的、管理者、権限、ログ、停止方法を登録できる状態から始めます。

ポイント

実行・監督・承認・例外対応・最終責任を工程ごとに分けて定義し、出力をいつ・誰が・何を根拠に検証するかを業務ルールに落とし込みます。

人材と説明責任|AI導入はHR・組織構造まで変える

エージェントが定型作業を担うほど、人の仕事はなくなるというより、仕事の中身が変わります。McKinseyは、全社の役割と人材プロフィールを再設計し、AI活用の習熟を超えた継続的な再発明の文化をつくることを、agentic organizationの重要な変化として示しています。

現場では、AIを使える人を増やすだけでなく、次のような役割を置くと責任の所在を明確にできます。

  • 業務オーナー:AIを適用する目的、成果指標、許容する失敗を決める
  • エージェント管理者:プロンプト、ツール、権限、ログ、停止条件を管理する
  • 現場レビュアー:出力の正確さ、例外、顧客影響を確認する
  • リスク・法務担当:個人情報、機密情報、規制、監査の観点を確認する

説明責任は、運用後ではなく設計時に置く

AIの回答が間違ったときに「モデルのせい」と言うだけでは、組織として改善できません。どのデータを使ったか、どのツールを呼び出したか、どこで人が確認したか、誰が最終判断したかを追えるようにします。人間の承認を残すだけでなく、承認者が十分な情報を持って判断できる画面とログまで含めて設計することが重要です。

McKinseyの「State of Organizations 2026」も、AIを含むテクノロジーによって仕事の進め方、業務領域、従来の組織構造を見直す必要があると整理しています。AI導入の責任者をIT部門だけに閉じず、業務、経営、人事、リスク管理が共同で持つ理由はここにあります。

ポイント

業務オーナー・エージェント管理者・現場レビュアー・リスク法務担当を置き、承認者が判断材料を持てる画面とログまで設計時に組み込みます。

導入の進め方|AI社員の数ではなく、責任あるワークフローから始める

agentic organizationを目指す企業は、いきなり全社の業務を自律化する必要はありません。まずは、入力データ、出力先、品質基準、担当者が明確で、失敗しても限定的な業務を選びます。AIエージェント導入事例を検討するときも、処理時間だけでなく、品質、手戻り、人の介入、停止条件まで同じ指標で比べると判断しやすくなります。

  1. 業務を分解する:収集、判断、実行、承認、例外処理を工程ごとに分ける
  2. 権限を絞る:読み取り専用から始め、更新・送信・削除は操作単位で承認する
  3. 成果を測る:時間、品質、手戻り、レビュー負荷、顧客影響を導入前後で比べる
  4. 証拠を残す:入力、ツール呼び出し、出力、エラー、承認、未確認範囲を記録する
  5. 停止条件を決める:予算、実行時間、失敗回数、異常なデータ移動に上限を置く

McKinseyの調査が示すように、AIの実験が広がっても企業全体の価値創出は自動的には起きません。ワークフローを組み替え、リーダーが利用を学び、人材と構造を変え、検証と説明責任を組み込むことが、実験を組織能力へ変える条件です。

ポイント

限定的な業務から始め、権限を絞り、時間・品質・手戻りを導入前後で比較し、停止条件まで決めたうえで対象業務を広げます。

よくある質問(FAQ)

Q. McKinseyの「agentic organization」とは何ですか?

人間がAIエージェントや物理エージェントと協働し、組織全体で価値を生み出す考え方です。ワークフロー、リーダーシップ、人材、スキリングと文化、組織構造、HR・人材システムまで見直す点に特徴があります。

Q. AIエージェントの導入率はどのくらいですか?

McKinseyの2025年調査では、回答者の62%が、所属組織はAIエージェントを少なくとも実験していると答えました。内訳は23%がスケール中、39%が実験中です。ただし、スケール中の企業でも多くは1〜2機能での展開にとどまります。

Q. 「AI社員2.5万体・人間4万人・150万時間」は公式に確認できますか?

指定したMcKinsey公式のagentic organization、State of AI、State of Organizationsのページでは、その組み合わせを確認できません。別のMcKinsey公式資料には25,000超のAIソリューションや40,000人超の同僚への言及がありますが、それはAIエージェントの体数、人間との対比、150万時間の削減を示す数字ではありません。

Q. AIエージェントを導入すると、人間の役割はなくなりますか?

なくなるとは限りません。エージェントが情報処理や定型実行を担う一方で、人は目的設定、例外処理、重要な承認、リスク判断、結果への説明責任を担います。導入時は、工程ごとに権限と責任を分けて定義することが重要です。

参考情報:
McKinsey「Unlocking AI and agentic for your organization」
McKinsey「The state of AI in 2025: Agents, innovation, and transformation」
McKinsey「The State of Organizations 2026」
McKinsey「2025 Sustainable and inclusive growth impact report」

まとめ|AI社員の数より、人間とエージェントの責任分担を設計する

McKinseyのagentic organizationは、AIエージェントを人間の代替人数として数える構想ではありません。仕事の流れをAI前提に組み替え、エージェントが実行できる工程と、人が判断・承認・説明責任を担う工程を明確にする組織モデルです。

調査ではAIエージェントを実験以上の段階に進める企業が62%に達する一方、全社展開はまだ初期段階です。導入を急ぐ企業ほど、ワークフロー、権限、ログ、スキリング、評価、停止条件を一体で設計し、限定的な業務から検証することが、持続的な価値と説明可能な運用につながります。

ポイント

AI社員の数ではなく、ワークフロー・権限・ログ・スキリング・評価・停止条件を一体で設計し、限定的な業務からの検証を積み重ねることが持続的な価値につながります。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。