OPTiMは、電子カルテと連携して医師・看護師の記録業務を支援する生成AIサービス「OPTiM AI ホスピタル」を提供しています。2026年7月に提供開始されたver.3.1では、録音データからのカルテ記載文生成、診療期間を指定したサマリー生成、定時サマリーの自動生成など、申し送りに必要な「記録」「情報整理」「準備」を支援する機能が強化されました。一言でいえば、診断をAIに任せるサービスではなく、医療者が確認する文書の下書きと情報整理を効率化する病院向けAIです。
医療機関で重要なのは、機能の多さだけではありません。患者情報をどこで処理・保管するか、AIの出力を誰が確認するか、誤りや通信障害が起きたときにどう止めるかまで設計して初めて、安全な導入になります。OPTiM公式の製品情報と、厚生労働省・個人情報保護委員会の公的資料をもとに、機能、導入効果、安全管理、責任分担を整理します。
OPTiM AI ホスピタルは医療文書と申し送りを支援する生成AI
OPTiM AI ホスピタルは、電子カルテシステムと連携し、診療情報提供書、看護サマリー、主治医意見書、カルテなどの文書作成や情報抽出を支援します。OPTiMは、医療機関の状況に合わせて、院内で処理を完結させるオンプレミス型と、データを院内に保持したままクラウドAIを使う方式を選べると説明しています。したがって、病院側は「AIを使うか」だけでなく、どの情報をどの構成で処理するかを決める必要があります。
| 確認項目 | OPTiM公式で確認できる内容 | 導入時の確認ポイント |
|---|---|---|
| 主な対象 | 医師・看護師の記録、要約、情報抽出 | 診断・治療の最終判断をAIに委ねる用途ではないことを業務定義に明記する |
| 連携 | 電子カルテシステムと連携 | 対象カルテ、取得項目、書き戻しの範囲、権限を確認する |
| 処理方式 | オンプレミスAI/クラウドAIを選択可能 | 院内ポリシー、ネットワーク、データ移送、保守体制を比較する |
| 出力の扱い | AI出力は担当医師・看護師が確認・承認して利用する前提 | 確認者、承認記録、修正方法、未確認出力の利用禁止を決める |
| 提供条件 | 機能・対応カルテ・費用は相談・確認が必要 | 対象病棟でのPoC、見積もり、SLA、障害時の連絡手順を確認する |
まず「自動化する判断」と「支援する記録」を分ける
OPTiM公式が中心に説明しているのは、カルテやサマリーなどの文書作成、音声の文字起こし、既存記録の要約です。これは、医師・看護師が入力や確認に使う時間を減らす領域です。診断名の確定、治療方針の決定、患者への最終説明といった医療上の判断を自動化できると読み替えてはいけません。導入計画では、AIの出力を「下書き」「候補」「検索結果」のどれとして扱うのかを業務ごとに定義しましょう。
看護サマリーからIC要約まで、現場別に機能を使い分ける
サービスの機能は、看護師向け、医師向け、医師・看護師共通の機能に分けて見ると導入対象を決めやすくなります。OPTiMの製品ページでは、看護サマリーや診療情報提供書の下書き、ボイスレコーダーのAI要約、主治医意見書、カルテ作成支援、カルテAIアシスタント、カルテAIサマリーなどが紹介されています。機能名が同じでも、オンプレミスAIとクラウドAIのどちらを使うか、β版かどうかで条件が異なるため、個別に確認が必要です。
看護業務:サマリーと申し送りの準備を短くする
看護サマリー機能は、電子カルテのデータを取得し、入院前から入院後までの経過や看護計画ごとの要約を下書きします。ver.3.1では、記録した情報をもとに申し送りに必要な文書を作る流れや、定時にサマリーを生成する設定も案内されています。AIが生成した内容は、患者状態の変化、投薬、処置、注意事項などを担当者が原記録と照合してから使う運用が前提です。
医師業務:紹介状・意見書・カルテの下書きを作る
診療情報提供書や主治医意見書では、診療・リハビリ記録から主要な経緯、既往歴、診療経過、ADLなどの文書候補を生成します。カルテ作成支援では診療音声の文字起こしとSOAP形式の下書きが案内されています。これらは記載漏れの確認や文体の統一に役立つ可能性がありますが、転記ミスや誤った要約がないかを医師が確認し、必要な修正を行ってから正式記録に反映する必要があります。
音声業務:会議・ICの要約は同意と確認をセットにする
ボイスレコーダーのAI要約は、カンファレンスや院内ミーティングなどの音声を文字起こしして要約する機能です。IC AI要約(β版)では、インフォームド・コンセントを録音・テキスト化し、手術内容、代替手段、合併症リスクなどの重要事項に沿って要約すると説明されています。患者や参加者への録音の説明、保存期間、閲覧者、削除方法を先に決め、要約を説明そのものや同意の証拠として無条件に扱わないことが重要です。
業務の切り分けを考えるときは、AI議事録ツールの選び方で扱う録音・要約の評価項目や、生成AIの業務活用事例で整理されている対象業務・効果・例外処理の考え方も参考になります。医療では、一般的な時間短縮だけでなく、患者安全と記録の真正性を評価軸に加える必要があります。
導入事例は「削減率」だけでなく、対象業務と習熟度を見る
OPTiMは、医療法人大誠会 内田病院への導入事例で、慢性期医療における看護サマリー、診療情報提供書、主治医意見書、音声要約などの活用を紹介しています。同院では長期療養や在宅復帰支援によりカルテ情報が膨大になり、記録作成の負担が課題でした。これは、長期入院で時系列情報が増えやすい病棟から小さく始めるという導入仮説を考える材料になります。
また、OPTiMは社会医療法人祐愛会織田病院との共同研究について、看護サマリー作成時間が初回使用時に33.2%削減され、習熟後には最大54.2%削減されたと公表しています。数字は特定の病院、対象業務、測定期間、習熟度に基づく導入実績であり、すべての医療機関で同じ効果が出ることを意味しません。PoCでは、作成時間だけでなく、修正回数、重要情報の抜け、誤記、承認までの時間、スタッフの受容性を同じ条件で測るべきです。
PoCで測るべき指標は「速さ・正確さ・引き継ぎやすさ」
- 文書の初稿ができるまでの時間と、正式承認までの時間
- 原記録との照合で見つかった誤り、抜け、不要な情報の件数
- AI出力を修正した箇所と、修正理由の分類
- 申し送りで追加確認が必要になった割合と、重大な見落としの有無
- 病棟スタッフが継続利用できるか、教育・問い合わせに要した時間
医療機関向けのAI導入は、全病棟に一斉展開するより、記録の種類と利用者を限定して評価する方が安全です。成果が出た場合も、診療科、病棟、患者状態、記録量の違いを確認してから対象を広げます。
安全管理と責任分担は、病院・利用者・提供者で分けて設計する
厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」第7.0版は、医療機関等の医療情報システムの取扱いに関する安全管理を示しています。個人情報保護委員会と厚生労働省の医療・介護関係事業者向けガイダンスも、責任体制の明確化や患者・利用者窓口などを扱っています。OPTiMのセキュリティ機能だけで要件を満たすと考えず、病院自身の安全管理規程、委託契約、アクセス権限、教育、監査に落とし込むことが必要です。
| 主体 | 主な責任・確認事項 |
|---|---|
| 医療機関の管理者・情報システム部門 | 利用目的、対象業務、権限、保存・削除、障害時の継続、委託先管理、教育・監査を定める |
| 医師・看護師などの利用者 | 原記録との照合、AI出力の修正・承認、診療判断への不適切な依存、誤り発見時の報告を管理する |
| OPTiMなどの提供者 | 仕様・利用条件、保守、セキュリティ対策、ログ、障害・変更の通知、問い合わせ窓口を契約・資料で明確にする |
| 患者・録音参加者 | 録音・情報利用の説明、問い合わせ窓口、利用目的や取り扱いに関する院内手続きの対象とする |
AIは下書きを作り、医療者が確認・承認する
OPTiMのver.3.1発表では、AIが生成した出力内容を担当医師・看護師が確認・承認した上で活用する運用を前提としています。厚生労働省も、AIを用いた診断・治療等の支援では診療の主体は医師であり、医師が最終判断の責任を負うことが原則と説明しています。OPTiM AI ホスピタルの文書支援機能を診断支援と同一視することはできませんが、少なくとも「誰が最終確認するのか」を曖昧にしないという考え方は共通します。
オンプレミス構成や国内リージョン、入力データの非保持・学習利用の扱い、アクセス制御、利用ログなどは、OPTiMが公式に説明しているセキュリティ上の特徴です。一方で、実際の契約、設定、対象機能、運用環境によって確認事項は変わります。導入前には、AI利用の統制で扱う台帳・権限・承認の考え方も使い、データフロー図と責任分界表を作成しておくとよいでしょう。
導入前に確認したい7項目
- 何の文書・申し送りを対象にし、AIが作るのは下書きか要約かを定義する
- 電子カルテから取得する情報、書き戻す情報、利用者ごとの権限を確認する
- オンプレミス・クラウド・ハイブリッドの構成と、データの移送・保存・削除を確認する
- 録音する場合の説明、同意、保存期間、アクセスできる職種を決める
- AI出力の確認者、承認方法、原記録との照合、修正履歴を定める
- 誤記、幻覚、欠落、通信障害、停止、サイバー攻撃時の手動運用を訓練する
- PoCで時間・品質・安全・受容性を測り、継続・停止・拡大の基準を決める
医療AIの導入では、便利な機能を増やすことより、使わない条件と人へ戻す条件を先に決める方が重要です。特に診療記録やICの音声は、患者情報だけでなく医療者の判断や説明内容も含みます。院内の医療安全委員会、個人情報保護担当、情報システム部門、現場の医師・看護師が同じ導入計画を確認できる体制を作りましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. OPTiM AI ホスピタルは診断や治療を自動で行うAIですか?
OPTiM公式が中心に説明しているのは、電子カルテ情報の抽出、サマリー・紹介状・意見書・カルテなどの下書き、音声の文字起こしと要約です。診断や治療方針の最終判断をAIに任せるサービスとして説明されているわけではありません。実際の利用範囲は、病院の業務定義と契約内容で確認してください。
Q. オンプレミス型とクラウドAIは何が違いますか?
OPTiMの説明では、オンプレミス型は院内で処理を完結させる構成、クラウドAIはデータを院内に保持したままクラウドAIを利用する構成です。必要な機能、ネットワーク、院内ポリシー、保守・更新の方法が異なるため、セキュリティ部門と現場部門でデータフローを確認して選びます。
Q. AIが作った看護サマリーやカルテをそのまま正式記録にできますか?
OPTiMは、生成AIによるサマリーを現場の作業効率を高めるための下書きと説明しています。また、ver.3.1では担当医師・看護師がAI出力を確認・承認した上で使う前提です。原記録との照合、修正、承認を経て正式記録に反映する院内手順を定めてください。
Q. 導入効果として54.2%の削減を期待できますか?
OPTiMは、織田病院での導入実績について、退院時看護サマリー作成時間が初回使用時に33.2%、習熟後に最大54.2%削減されたと公表しています。ただし、対象病院・業務・測定条件に基づく実績であり、すべての病院で同じ効果を保証するものではありません。自院の対象病棟で、作成時間だけでなく品質や安全も含めて測定してください。
まとめ
OPTiM AI ホスピタルは、電子カルテと連携し、看護サマリー、診療情報提供書、主治医意見書、カルテ、申し送り、音声要約などの文書・情報整理を支援する病院向け生成AIです。2026年7月のver.3.1では、録音データからの記載文生成や期間指定・定時サマリーなど、申し送りの準備を支援する機能が強化されました。
導入時は、オンプレミス・クラウドのデータフロー、電子カルテ連携、録音と個人情報、AI出力の確認・承認、障害時の手動運用を一体で設計しましょう。AIは医療者の記録業務を支援する下書き作成者として使い、診療上の最終判断と患者への説明責任を曖昧にしないことが、安全な医療AI活用の出発点です。
参考情報:
OPTiM「OPTiM AI ホスピタル」製品ページ
OPTiM「病院向け生成AIサービス『OPTiM AI ホスピタル』ver.3.1、申し送り業務を支援するAI機能を強化」
OPTiM「慢性期病院初、『OPTiM AI ホスピタル』を医療法人大誠会 内田病院で導入」
OPTiM「オンプレミス型生成AIによる看護サマリー自動作成の有効性を実証」
厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」
個人情報保護委員会・厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」
厚生労働省「次世代医療機器評価指標の公表について」
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
