AIネイティブ経理SaaS「Rillet」を解説|レガシー基幹会計に迫るAI再構築の波

Rilletは2026年8月19日、ICONIQ主導のシリーズCで1億ドルを調達したと発表しました。

評価額は10億ドルに達しました。1ドル=150円で換算すると、調達額は約150億円、評価額は約1,500億円です。

AIネイティブの会計・ERPが、既存の基幹会計を置き換える選択肢として注目されています。経理責任者には、機能比較だけでなく、承認と監査証跡まで含めた業務設計が求められます。

※本記事は2026年8月25日時点の情報です。

レガシー会計とAIネイティブ会計のデータ処理と統制の違いを示す比較図
AIネイティブ会計は記録と業務実行を一体化する

RilletのシリーズC|1億ドル調達で評価額10億ドル

RilletのシリーズAからCまでの調達額とシリーズCの評価額を示す棒グラフ
シリーズCで1億ドルを調達し評価額10億ドルに到達

今回のシリーズCは、Rilletにとって短期間で進んだ大型ラウンドです。リード投資家はICONIQでした。

参加投資家には、Sequoia、Andreessen Horowitz、Bain Capital Venturesなどが名を連ねています。

  • シリーズA:2,500万ドル、約37.5億円、2025年5月
  • シリーズB:7,000万ドル、約105億円、2026年
  • シリーズC:1億ドル、約150億円、2026年8月19日

累計調達額は2億ドル超です。Rillet公式ブログは、1年で3回目の調達と説明しています。

シリーズAはSequoia主導、シリーズBはICONIQとAndreessen Horowitzの共同主導でした。

シリーズCでは、既存投資家の継続参加に加えて、新たな投資家も参加しています。

調達のニュースは、会計ソフトの機能追加ではなく、事業の中核に投資が集まる動きとして読めます。

ポイント

RilletはシリーズCで1億ドルを調達し、評価額10億ドルに到達しました。短期間の複数ラウンドと、会計・ERP領域への投資家の期待が特徴です。

AIネイティブ会計の特徴|総勘定元帳を業務の実行基盤に

Rilletの会計基盤を外部連携から人間承認まで4層で示すレイヤー図
データ連携から監査可能な業務実行までを積み上げる

Rilletは、リアルタイムの総勘定元帳を中核に据えています。会計情報を記録するだけでなく、業務を動かす基盤として位置づけています。

AIエージェントは、フルコンテキストと完全な監査証跡を伴って会計業務を実行します。必要に応じて、人間の承認を組み込めます。

  • 外部システムから会計データを自動的・継続的に取り込む
  • 会計処理をAIエージェントが直接実行する
  • 処理の背景と監査証跡を残す
  • 重要な処理には人間の承認を加える

連携先としてSalesforceやBrexが挙げられています。販売、支出、会計のデータを継続的につなぐ設計です。

この考え方は、AIが画面上の作業を補助するだけの仕組みとは異なります。総勘定元帳を財務オペレーティングシステムへ転換する狙いがあります。

月次決算に当てはめた業務の流れ

Rilletの構想を月次決算に当てはめると、データを集めて終わる仕組みではありません。

  • 取り込み:外部システムのデータを継続的に受け取る
  • 判断:会計処理に必要な文脈をそろえる
  • 実行:AIエージェントが処理を進める
  • 確認:監査証跡を残し、必要な処理を人が承認する

この流れを設計できると、経理担当者は定型処理と例外処理を分けて考えられます。

一方で、承認条件が曖昧なままでは、AIの処理範囲も定まりません。運用ルールの設計が製品活用の前提になります。

フルコンテキストという考え方は、単一の伝票だけで処理を判断しないことを意味します。

販売や支出などの周辺データと、会計処理の履歴をつないで、処理の理由を追える状態にします。

経理責任者にとっては、処理の自動化だけでなく、後から説明できることが重要です。

ポイント

AIネイティブ会計の核は、AIエージェント単体ではありません。総勘定元帳、データ連携、監査証跡、人間承認を一つの業務基盤として設計する点にあります。

成長指標と乗り換え元|600社超が利用しARRも拡大

Rilletの顧客数は600社を超えています。上場企業や、成長中のAI企業を含む顧客構成です。

顧客ベースの約40%は非テック業界です。AIネイティブ会計の対象が、テック企業だけに限られていないことを示します。

  • 顧客数:600社超
  • 新規ARR:過去3か月で倍増
  • 非テック業界の顧客比率:約40%

乗り換え元として、Oracle Fusion、SAP、Workdayが名指しされています。

MicrosoftのGreat Plains(Dynamics GP)やNetSuiteも挙げられています。既存ERPの利用企業を、明確な代替候補として意識した構成です。

なお、Rilletが示すARRは新規ARRの成長指標です。全社ARRの金額と同じ意味で扱わず、成長の速度を見る数字として読む必要があります。

顧客の約4割が非テック業界という点も、導入対象を考える材料になります。会計業務の標準化とデータ連携が課題なら、業種を問わず検討余地があります。

ただし、顧客数や新規ARRの成長だけで、自社の導入効果が決まるわけではありません。

乗り換えを検討する企業は、現在のERPで使っている勘定科目、承認経路、連携データを先に棚卸しします。

棚卸しでは、標準処理と例外処理を分けることが有効です。すべてを同じ自動化水準にそろえる必要はありません。

また、ERPの名称が同じでも、企業ごとに設定や周辺システムは異なります。

乗り換え元の製品名は候補を示すものであり、導入可否は自社の業務データと統制条件で判断します。

ポイント

600社超の顧客と、過去3か月で倍増した新規ARRが成長指標です。乗り換え元にはOracle Fusion、SAP、Workday、Dynamics GP、NetSuiteが挙げられています。

基幹システム刷新への含意|製品選定より業務境界を先に決める

Rilletのニュースは、会計SaaSの比較表だけでは捉えにくい変化を示しています。刷新の単位が、画面から業務基盤へ移りつつあります。

経理・IT部門が検討する際は、まずどの処理をAIに任せるかを決めます。そのうえで、承認者と監査証跡の条件を定義します。

たとえば、定型的な記帳や消込は自動化候補になり得ます。分析では、担当者が確認する条件を残します。

Rilletの構想は、AIを経理部門の外側に置くのではなく、会計処理の中心に置く発想です。

  • 業務範囲:記帳、消込、分析など、対象業務の境界を明確にする
  • データ連携:販売・支出・会計データの取り込み頻度と責任範囲を決める
  • 承認:AIが自動処理できる条件と、人が承認する条件を分ける
  • 監査:処理の根拠、変更履歴、承認履歴を追える状態にする

既存ERPを一度に置き換える必要はありません。対象業務を切り出し、現在の基幹システムと並べて検証する進め方も選べます。

ERPの刷新では、機能の多さよりも、月次決算のどこでデータが止まるかが重要です。人の判断を残す箇所も、最初に決めておきます。

特に既存ERPからの移行では、データを移す作業と、業務を変える作業を分けます。

データ連携だけを先に整え、AI処理は限定した業務から始めると、承認と監査の設計を確認しやすくなります。

Rilletの成長は、経理を記録中心のシステムから実行中心の基盤へ移す選択肢が現れていることを示します。

基幹刷新の意思決定では、経理、情報システム、内部監査の役割を早い段階でそろえます。

導入候補を比較するときは、処理の正確さだけでなく、例外時の説明責任も確認します。

AIが作業を進めても、最終的な会計上の責任と承認の所在は企業側で明確にしておきます。

AIが処理する範囲と、人が最終判断する範囲を共有すると、導入後の責任分界も明確になります。

既存の会計基盤を評価するときは、処理速度だけでなく、データのつながり方も確認します。

Rilletの事例からは、AIネイティブERPが経理業務と周辺システムを同時に見直す契機になることが分かります。

企業向けAI基盤の選び方は、AIエージェント基盤のM&A動向や、計画業務を支援するエージェントの議論とも接続します。

ポイント

刷新では、AIの導入範囲、データ連携、承認条件、監査証跡を先に定義します。既存ERPを一括交換するかではなく、業務単位で境界を設計することが重要です。

経理基盤を選ぶチェックリスト|導入前に確認したい4項目

AIネイティブ経理基盤の導入前に確認する4項目のチェックリスト図
業務範囲と統制条件を先に定義する

AIネイティブ会計を検討するときは、機能の新しさだけで判断しません。次の4項目を自社の業務に当てはめます。

  • 対象業務:自動化する経理処理と、対象外にする処理が明確か
  • データの流れ:外部システムからの取り込みと更新頻度を説明できるか
  • 人の関与:承認者、例外処理、差し戻しのルールを定義できるか
  • 証跡の利用:監査や月次決算で、処理の根拠を追跡できるか

検討の起点は、現行システムの不満ではなく、月次決算の時間と手戻りです。業務の指標を決めると、製品の評価軸も揃います。

AI投資の全体像を見るときは、AIへのVC投資の変化も参考になります。

ポイント

導入前は、対象業務、データの流れ、人の承認、監査証跡を確認します。月次決算の時間と手戻りを指標にすると、製品比較を業務改善へつなげやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q. RilletのシリーズCの調達額はいくらですか?

1億ドルです。1ドル=150円で換算すると約150億円で、ICONIQがリード投資家を務めました。評価額は10億ドル、約1,500億円です。

Q. Rilletはどのような会計プラットフォームですか?

リアルタイムの総勘定元帳を中核に、AIエージェントが会計業務を実行するプラットフォームです。フルコンテキスト、監査証跡、人間承認を組み合わせます。

Q. Rilletの顧客数と成長指標は分かりますか?

顧客数は600社超です。新規ARRは過去3か月で倍増し、顧客ベースの約40%は非テック業界です。

Q. Rilletが乗り換え元として挙げる製品は何ですか?

Oracle Fusion、SAP、Workday、MicrosoftのGreat Plains(Dynamics GP)、NetSuiteです。既存ERPからの刷新候補として位置づけられています。

まとめ

Rilletは、2026年8月19日のシリーズCで1億ドルを調達し、評価額10億ドルに達しました。

リアルタイム総勘定元帳、AIエージェント、監査証跡、人間承認を組み合わせる点が特徴です。

経理・基幹システムの刷新では、製品の置き換えより先に、業務範囲と統制条件を定義することが重要です。

ポイント

Rilletの調達は、会計・ERPをAIネイティブに再構築する動きの一例です。自社では、データ連携、AI処理、人間承認、監査証跡を一体で評価してください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。