ソフトバンク「AGENTIC STAR」を解説|社内AIエージェント基盤の法人活用

ソフトバンクは2025年6月、全社員が1人100個のAIエージェントを作成する社内プロジェクトを始めました。開始から約2カ月半となる8月末、250万を超えるAIエージェントが誕生しています。

ここでいう250万は社員数ではなく、全社員が業務や日常の用途に合わせて作成したAIエージェント/カスタムGPTの数です。AIを全社員が試す仕事道具へ変える狙いがありました。

この社内活用の経験をもとに、ソフトバンクは法人向けAIエージェントプラットフォーム「AGENTIC STAR」を提供しています。

企業のIT・事業責任者が見るべきなのは、作成数の大きさだけではありません。量産したエージェントを実務で使えるものに絞り、作成・評価・再利用・統制を回す仕組みが重要です。

※本記事は2026年8月時点の情報です。

全社員でのAIエージェント作成から、250万エージェント誕生、AGENTIC STARによる法人向け運用までの3段階の流れを示す図解
全社員でのAIエージェント作成から、250万エージェント誕生、AGENTIC STARによる法人向け運用へと進む流れ
  • ソフトバンクの「250万超」が何を数えた数字なのか
  • 全社員参加型のAIエージェント作成施策で重視されたこと
  • 法人向けサービス「AGENTIC STAR」の機能と提供モデル
  • 量産から実務利用・ガバナンスへ移行するための確認項目

ソフトバンクの250万エージェントとは|人員数ではなく作成数

ソフトバンクニュースは、2025年6月に全社員が1人100個のAIエージェントを作成する社内プロジェクトを始め、開始から約2カ月半となる8月末に250万を超えるAIエージェントが誕生したと説明しています。目的は、完成度の高い業務システムを一度に作ることではなく、社員がAIに触れ、作成する体験を通じて使い方を身につけることでした。

250万は「人」ではなく、作成されたAIの単位を数えた数字

この点は記事や社内説明で最初に明記すべきです。ソフトバンクグループとOpenAIの公式発表では、社内利用のために約250万の「custom GPTs」を作成したと表現されています。一方、ソフトバンクの公式記事では250万を超える「AIエージェント」と説明されています。表現には違いがありますが、いずれも従業員数や利用者数ではなく、タスクや用途ごとに作成されたAIの設定・エージェントの数を指します。

また、作成数はそのままアクティブ利用数、重複しない業務数、削減時間、売上効果を意味しません。試作、個人用、似た機能の重複、短期間だけ使われたものが含まれる可能性もあります。したがって、250万という数字は「社内でAIを試す裾野を広げた規模」を示す指標として読み、業務成果を評価する際には別の指標を置く必要があります。

ポイント

250万はAIエージェントの作成数であり、社員数・アクティブ利用数・業務成果を示す数字ではありません。

全社員参加型の狙い|AIを使うことを日常の行動に変える

ソフトバンクの施策では、AIに詳しい一部の担当者だけに導入を任せず、全社員に生成AIを使える環境と作成目標を用意しました。eラーニング、作り方を学ぶセミナー、部門ごとの支援、コミュニケーションツールでの共有など、作成を始めるためのきっかけを複数用意した点が特徴です。

この方法の価値は、プロンプトの上手な人を増やすだけではありません。社員が自分の業務を分解し、「どこをAIに任せられるか」「どの情報が必要か」「どの結果なら使えるか」を考える機会になります。AI活用を情報システム部門だけのテーマにせず、現場の業務改善として扱うための社内共通言語を作るアプローチです。

見るべき指標250万という作成数だけでは分からないこと追加で測る指標の例
浸透どれだけの社員が作成・利用を経験したか月次アクティブ利用者、部門別利用率、継続率
実用性作成されたエージェントが実務で使われているか利用回数、完了タスク数、再利用率、差し戻し率
効果作成数が時間や品質の改善につながったか処理時間、エラー率、成果物のレビュー時間
安全性どのデータや権限にアクセスしたかログ記録、権限逸脱、情報漏えい事象、停止テスト

自社で同様の施策を行う場合は、作成数を競う期間と、実務で残すエージェントを選ぶ期間を分けると運用しやすくなります。AIエージェントの導入事例を見るときも、作った数だけでなく、業務プロセスのどこに組み込み、誰が結果を確認し、どのように改善したかを確認することが大切です。

ポイント

作成数だけでなく、AI活用の浸透・実用性・効果・安全性という複数の指標で評価する必要があります。

AGENTIC STARとは|業務ゴールから実行までを支援する法人向け基盤

AGENTIC STARは、ソフトバンクが2025年12月11日に提供開始を発表した法人向けAIエージェントプラットフォームです。公式発表では、業務ゴールを理解し、担当者と連携しながらタスクを自律的に進めるAIエージェントをSaaSで提供し、その構築・運用も可能にするサービスと説明されています。

社内250万の作成施策と、法人向けサービスは同じものではない

ここで、社内の250万エージェントとAGENTIC STARを混同しないことが重要です。前者は社員がAIを使う習慣を身につけるための社内プロジェクトで、後者は企業の業務を対象に、エージェントの構築・運用・管理を行うための法人向けプラットフォームです。ソフトバンクの公式発表は社内活用の経験を顧客向けの変革に生かす方針を示していますが、250万個の社内エージェントがそのままAGENTIC STARに移行したとは説明していません。

公式発表では、AIエージェントが用途に応じて使い分ける構成で、次の用途に使える80種類以上のツールが用意されています。

  • ウェブ検索
  • 文書
  • 表計算
  • プレゼン資料
  • 画像・動画
  • アプリケーション開発

パスワード入力や最終確認など、人が対応すべき場面で担当者に確認を求めることも特徴です。

サービスサイトでは、次の活用例が紹介されています。

  • 社内コンテンツを参照した情報検索・要約・文書作成
  • Canvaと連携した資料作成
  • SonarQubeと連携したコード品質・セキュリティー検証

AIエージェントの仕組みを自社業務へ組み込む場合は、こうした外部サービス連携だけでなく、権限、ログ、データの更新範囲を先に定義しましょう。

ポイント

社内の250万エージェント作成施策とAGENTIC STARは別物です。業務へ組み込む前に、権限・ログ・データの更新範囲を定義する必要があります。

提供モデルと管理機能|自社環境に合わせて選ぶ

AGENTIC STARのSaaSモデル、カスタマイズモデル、外部接続モデル、開発基盤提供モデルの4つの提供モデルを比較した図解
AGENTIC STARは、SaaS・カスタマイズ・外部接続・開発基盤提供の4モデルから選べる

ソフトバンクのプレスリリースでは、AGENTIC STARについて、ブラウザーから使うSaaSモデルだけでなく、社内インフラ上に構築するカスタマイズモデル、API/MCPで既存システムへ組み込む外部接続モデル、クラウド上で実行環境やSDKを提供する開発基盤提供モデルが示されています。提供時期や対象範囲はモデルごとに確認が必要です。

モデル想定する使い方導入時の確認ポイント
SaaSモデルブラウザーやCLIから、用意されたAIエージェントと管理機能を利用データ保存場所、利用者権限、ログ、利用可能なツール
カスタマイズモデル自社インフラ上にAIエージェント機能や管理機能を構築既存認証、ネットワーク、運用担当、アップデート方式
外部接続モデル既存の業務システムやアプリへAPI/MCPで機能を組み込む書き込み権限、承認フロー、失敗時の再実行と停止
開発基盤提供モデルクラウド上でAIエージェントの実行環境やSDKを提供開発者向けの責任分界、監視、コスト、公開範囲

エージェントの本番運用では、実行環境が分離されているか、アクセス権限を管理できるか、処理ログを追跡できるかが重要です。AGENTIC STARの公式発表では、チャット単位で独立した仮想環境を設ける設計、多層防御、監視・制御、権限に応じたアクセス制御とログ管理が説明されています。自社で採用する際は、これらが契約プランや構成のどこまで含まれるかを確認してください。

また、AIエージェントを継続利用するほど、過去のやりとりや社内資料を長期記憶として蓄積する設計が便利になる一方、不要な情報を残し続けるリスクも増えます。保存期間、削除方法、機密情報の扱い、退職・異動時の権限変更まで、導入前にルール化しておくと安全です。運用監視の考え方は、AgentOpsのように評価・可観測性・停止手順を含めて設計すると整理しやすくなります。

ポイント

AGENTIC STARは4つの提供モデル(SaaS/カスタマイズ/外部接続/開発基盤提供)から自社構成に合うものを選び、契約・構成でセキュリティ範囲を確認する必要があります。

量から質へ移るための実務手順|250万の次に必要なこと

業務単位の定義からエージェントの棚卸し、読み取り・書き込みの分離、代表・失敗ケースでの評価、本番化後の担当者決定までの5つの確認ステップを示す図解
作成数を業務成果へつなげるには、5つの確認ステップを順に進める

ソフトバンクの2026年3月の公式ビジネスブログでは、量を追求する段階を経た後、実戦で使えるエージェントを部門単位で厳選し、暗黙知を形式知化する「質」の段階へ移ったと紹介しています。たとえば購買部門では、業務プロセスを言語化してエージェントマッピングを作り、優先度の高い領域から段階的に適用する進め方が示されています。

作成数を業務成果へつなげる5つの確認

  1. 業務の目的、入力データ、出力、承認者を一つの業務単位として定義する。
  2. 作成されたエージェントを重複、利用頻度、品質、リスクで棚卸しする。
  3. 読み取りだけでよい処理と、外部システムへ書き込む処理を分ける。
  4. 評価用の代表ケースと失敗ケースを用意し、結果・コスト・人の確認時間を測る。
  5. 本番化後のログ確認、権限変更、停止、再評価の担当者を決める。

特に大切なのは、エージェントの成果物を人が確認するだけでなく、確認結果を次の改善に戻すことです。正しい回答でも根拠が追えなければ業務で使いにくく、速く処理できても誤った権限で実行されればリスクになります。作成数をKPIにする段階から、継続利用率、業務時間、品質、インシデント、再利用率を組み合わせる段階へ移行しましょう。

社内でAIを使う人を増やす施策と、統制されたAIエージェント基盤を整える施策は、どちらか一方では成立しません。利用者が多くても業務設計がなければ試作で止まり、基盤が整っていても現場が使わなければ定着しません。ソフトバンクの事例から学べるのは、全員が試す入口と、実務で残す出口を連続させる設計です。

ポイント

作成数をKPIにする段階から、継続利用率・業務時間・品質・インシデント・再利用率を組み合わせた評価へ移行する必要があります。

よくある質問(FAQ)

Q. ソフトバンクの250万AIエージェントは社員数ですか?

いいえ。社員数ではなく、社員が作成したAIエージェントやカスタムGPTの数です。公式情報では、全社員が1人100個を作る施策を進め、250万を超えるエージェントが誕生したと説明されています。利用者数、アクティブ数、業務成果を示す数字ではありません。

Q. 250万個のAIエージェントは、そのままAGENTIC STARで使えますか?

公式発表からは、そのまま移行できるとは確認できません。250万は社内でAIを使う文化を広げるための作成数で、AGENTIC STARは法人向けにエージェントの構築・運用・管理を行うプラットフォームです。両者は社内活用の経験を顧客向けサービスへ生かす流れで関連しますが、同一のエージェント群と断定しないでください。

Q. AGENTIC STARでは何ができますか?

業務ゴールの理解、タスクの自律的な実行、ウェブ検索や文書・表計算・プレゼン資料などの作成、外部サービスや既存システムとの連携を支援します。ソフトバンクの公式発表では、80種類以上のツール、権限管理、ログ管理、MCP対応などが紹介されています。利用可能な機能や提供モデルは契約・構成によって確認が必要です。

Q. AIエージェントの作成数を増やせば業務効率は上がりますか?

作成数だけでは判断できません。重複した試作や使われないエージェントが増える可能性があるため、継続利用率、処理時間、品質、再利用率、エラーやインシデント、確認にかかる人の時間を合わせて評価します。業務の目的と承認者を定義し、実用性を確認したものだけを本番運用へ進めることが重要です。

参考情報:
ソフトバンクニュース「わずか2カ月半で250万超のAIエージェントを作成。全社員が身につけた “AIを使うチカラ”
SoftBank Group「The SoftBank Group and OpenAI Launch “SB OAI Japan” Joint Venture」
ソフトバンク「法人向けAIエージェントプラットフォームサービス『AGENTIC STAR』を提供開始」
ソフトバンク「AGENTIC STAR」サービスサイト
ソフトバンク ビジネスブログ「購買部門×AIエージェント」

まとめ|250万は入口、成果を生むのは運用設計

ソフトバンクの250万超という数字は、社内の全社員参加型プロジェクトで作成されたAIエージェント/カスタムGPTの規模を示すものです。人員数や利用者数と混同せず、AIを試す人を増やし、業務を見直すきっかけを全社に広げた施策として捉える必要があります。

その先にあるAGENTIC STARは、業務ゴール、タスク実行、外部システム連携、権限・ログ管理を含む法人向けの運用基盤です。自社で同様の取り組みを始めるなら、まず作成体験で裾野を広げ、次に実用性・安全性・効果で棚卸しし、残すエージェントを業務プロセスへ組み込みましょう。AIエージェントの価値は、数の大きさではなく、継続的に使われ、説明でき、改善される仕組みによって決まります。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。