人事・労務・採用AIエージェント開発・構築の完全ガイド

人事・労務・採用AIエージェントは、採用・労務・社内問い合わせの定型業務を自律的に処理し、担当者の負荷を減らす手段です。

従来のRPAやシナリオ型チャットボットが苦手だった例外処理や非構造化データの解析も、大規模言語モデル(LLM)を基盤とするAIエージェントなら担えます。

人事・労務・採用AIエージェントの定義

人事・労務・採用AIエージェントは、大規模言語モデル(LLM)を認知エンジンとして搭載し、人事・労務・採用に関わる業務を自律的に計画して実行するシステムです。

従来の人事システムやRPAは、あらかじめ定義されたルールに従って動きます。これに対してAIエージェントは、抽象的な目標を与えられるだけで、自ら業務の流れを組み立て、例外や変更にも文脈を理解しながら柔軟に対応します。

従来のシステムとAIエージェントの本質的な違い

従来の人事システム(SaaSなど)は、構造化データの記録や給与計算などの固定処理を得意とし、例外が起きるたびに人間の介入が必要でした。RPAやシナリオ型チャットボットも、あらかじめ設定されたシナリオから外れると処理が止まるという限界があります。

AIエージェントは、履歴書や自由記述欄、社内規定文書などの非構造化データを高度に解析し、データベース・SaaS・CRMなどを横断しながら自律的に処理を完結させることができます。

特に注目されているのは、ワークフロー型AIエージェントです。人間が設計した基本フロー(ノード・ループ・条件分岐)を骨格とし、各ステップの分類・要約・判断にAIの自律的な知性を組み合わせる方式です。これにより、生成AI単体で起きやすい出力のばらつきやハルシネーションを抑えながら、大量の履歴書スクリーニングや複雑な手続き案内を安全かつ迅速に処理できます。

人事領域でAIエージェントが求められる背景

少子高齢化で労働市場の逼迫が続くなか、各企業の人事部門は採用競争の激化と人員不足という二つの課題を同時に抱えています。さらに、2024年以降の働き方改革関連法の本格施行により、36協定の厳格な管理や有給休暇取得義務の徹底など、労務コンプライアンスへの対応負荷も高まっています。

人事部門では、定型・反復業務をAIエージェントに任せ、人事担当者が採用戦略の立案や組織開発といった付加価値の高い業務に集中できる体制づくりが急務になっています。

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・人事・労務・採用AIエージェントの種類・用途|タイプ別の使い方と選び方をご覧ください。

人事・労務・採用AIエージェントの開発・構築の進め方

人事・労務・採用AIエージェントの開発は、「構想・要件定義」「PoC(概念実証)」「本開発・実装」「運用・改善」の4つのフェーズで進めるのが標準的です。

各フェーズで決めることも、作るものも異なります。そのため、段階的に検証しながら進めることが、リスクを抑える鍵になります。

各フェーズの概要と期間・費用の目安

構想・要件定義フェーズでは、現状の業務フローを一覧にしてボトルネックを特定し、個人データの取り扱いルールを決めたうえで、システム要件を洗い出します。期間は概ね1〜2か月、費用は40万円〜200万円程度が目安です。

次のPoCフェーズでは、モックアップで動作と精度を評価し、通常3か月程度・100万円〜500万円程度の投資が必要です。本開発フェーズでは、UI構築・外部API連携・サーバーインフラ実装を行います。本開発の予算は、エンジニアやプロジェクトマネージャーの人月単価(月額80万円〜250万円程度×必要人数)を基に積み上がります。

運用フェーズでは、保守対応・モデル精度の監視・プロンプト調整に、月額60万円〜200万円前後の継続的な投資が必要です。また、スモールスタートとして、DifyやBubble等のノーコードプラットフォームを使った最小構成で開発すれば、初期費用を50万円〜120万円程度に抑えることも可能とされています。

導入プロセスで成功するための重要ポイント

導入を成功させるには、最初から全業務を自動化しようとせず、採用の一次スクリーニングや特定カテゴリの社内問い合わせ対応など、効果を測りやすい業務に絞ってPoCを始めることが大切です。

PoCの段階では、工数削減効果や応答精度を定量・定性の両面で評価します。その結果を踏まえて適用範囲を段階的に広げる「スモールスタート」の考え方が、王道とされています。

また、人事・労務・採用データは個人情報保護法上の「個人データ」に該当するものが多く、外部AIサービスへの入力ルールやデータマスキングの設計を、開発の初期段階から並行して進めることが不可欠です。法務・コンプライアンス部門との連携を早期に確立しておくことで、後工程での手戻りを防げます。

▼詳しくはこちら
・人事・労務・採用AIエージェントの開発・構築の進め方|導入プロセスと成功のポイントをご覧ください。

ポイント

次の段階へ進むかは、PoCの工数削減効果と応答精度が想定の範囲に入っているかで決めるのが目安です。範囲を外れた場合は、対象業務を絞り直してから再検証すると、手戻りを抑えられます。

人事・労務・採用AIエージェントで自動化できる業務領域

AIエージェントが自動化できる業務は、人事・労務・採用の領域にまたがって多岐にわたります。大きく分けると、「採用活動」「労務・勤怠管理」「社内問い合わせ対応」「人事評価・人員配置」の4領域です。

各領域では、従来の手作業や既存システムでは対応が難しかった課題が、AIエージェントによって解消されつつあります。

採用活動のエンドツーエンド自動化

採用業務の負担の大部分を占める「求人票作成」「応募書類スクリーニング」「面接日程調整」は、AIエージェントが自律的に動くことで、質を保ったまま工数削減が進んでいます。求人票作成では、職種要件や企業文化を入力するだけで、過去の採用実績や求職者のトレンドを踏まえた文案が自動生成されます。

応募者がエントリーシートや職務経歴書を提出した時点で、AIエージェントが採用条件との照合やスキルのスコアリングを自動で行います。そのため、採用担当者は要件を満たした候補者だけに集中できます。

さらに、カレンダーツールと連携した面接日程の自動調整や、ビデオ面接のリアルタイム文字起こしと評価サポートまで、採用オペレーション全体で自律化が進みつつあります。LinkedIn社の事例では、採用エージェントの自律化によって、リクルーター1人あたり週1日分に相当する実務時間が削減されたとされています。

労務・勤怠管理のリアルタイム監査と法令遵守

労務管理では、クラウド勤怠管理システムに蓄積されるリアルタイムのデータと人事データを統合して解析し、先回りのリスク対策を実行する仕組みが大きな強みです。従来は、打刻漏れの事後チェックや月末集計後の残業超過の発覚が常態化していました。

これに対し、AIエージェントはリアルタイムの打刻をもとに、36協定の上限(原則月45時間・年360時間)への抵触の兆候を事前に予測します。基準値に近づいた従業員や、有給休暇の年5日取得義務に遅れが生じている従業員には、SlackやMicrosoft Teamsを通じて自動的にアラートとリマインドが送信されます。

こうした予防的な労務管理により、重大なコンプライアンス違反を未然に防ぐことができます。複雑な夜勤・深夜勤務・シフトのある製造業などでも、DifyとBubbleを活用した勤怠自動化の実践事例が生まれています。

社内問い合わせ対応とナレッジ管理の効率化

社内規定や就業規則、各種申請手続きに関する従業員からの問い合わせは日常的に多く、繁忙期や制度改定の直後には人事部門に集中して対応の遅れを引き起こしていました。社内規定や労働協約を読み込ませた高精度のFAQエージェントは、「有給残日数は?」「育児休業の申請方法は?」といった個人に紐づく問いにも、24時間365日即座に回答します。

IBMが導入した「AskHR」の事例では、年間1,010万件に及ぶ従業員のバックオフィス系のやり取りを、AIエージェントが自律的に処理したとされています。その結果、年間5万時間・500万ドル相当のコストを削減しつつ、従業員満足度の向上も実現したとされています。

島村楽器では、店舗から本社への問い合わせを95%削減したという事例も報告されています。

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・人事・労務・採用AIエージェントによる業務自動化・効率化|成果を出す進め方をご覧ください。

人事・労務・採用AIエージェントの活用事例

国内外の企業では、AIエージェントを人事・労務・採用業務に実装した事例が蓄積されつつあります。業種や規模、対象業務はさまざまですが、共通しているのは、特定業務への集中導入と段階的な適用範囲の拡大という進め方です。

採用オペレーションの自動化事例

McDonald’s・Zillow・Boston Red Soxなどの大企業では、ビデオ面接にAIエージェントを試験導入し、選考の公平性確保と採用期間の短縮を両立させています。

面接内容のリアルタイム文字起こしや評価フィードバックの自動生成によって、面接官の負担を大幅に軽減しています。さらに、候補者ごとのデータに基づいて、一貫性のある評価が可能になっています。

LinkedIn社でも、採用エージェントの自律化によって、リクルーターが候補者への定性的な対応や採用戦略の立案に集中できるようになったとされています。

人事評価・人員配置の高度化事例

防衛省では、幹部自衛官約4万人を対象に、AIを活用した評価・配置支援システムを導入しています。客観的なデータに基づいて人間が最適な意思決定を行うための基盤として機能し、評価の透明性と公平性の向上に貢献しています。

ある大手小売企業では、店舗間の配転シミュレーションにAIを活用し、人的資本開示に関わる作業工数を80%削減することに成功したとされています。

評価コメントのばらつきや矛盾の傾向をAIが分析し、人事評価の標準化を支援します。蓄積されたスキルマップや実績データをもとに、最適な人員配置のシミュレーションを自動で生成する機能は、組織変更時や新規事業の立ち上げ時に特に高い効果を発揮します。

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・人事・労務・採用のAIエージェント活用事例|HR業務を自動化する実例をご覧ください。

人事・労務・採用AIエージェント開発の費用相場

人事・労務・採用AIエージェントの開発費用は、要件の複雑さや連携するシステムの数、開発方式(スクラッチ開発・ノーコードツール活用・パッケージ導入)によって大きく異なります。初期投資だけでなく運用フェーズのランニングコストも含めた総費用で比較することが大切です。

フェーズ別の費用内訳

構想・要件定義フェーズは、40万円〜200万円(1〜2か月)が一般的な目安です。PoCフェーズは、モックアップ単体で200万円〜を含む100万円〜500万円(約3か月)が相場とされています。

本開発フェーズは、エンジニアやPMの人月単価(月額80万円〜250万円程度)に開発期間を掛けて積み上げる方式です。3か月以上の大型案件では、1,000万円を超えることも珍しくありません。

運用・保守フェーズでは、月額60万円〜200万円前後の継続投資が必要です。これに加えて、クラウドインフラ費(月額5万〜100万円)、API従量課金、ライセンス費が別途発生します。チャットボット型のSaaSパッケージを導入する場合は、初期5万〜10万円・月額10万〜100万円程度と、よりコンパクトに始められます。

費用を抑えるためのアプローチと補助金活用

費用を抑える有効な方法の一つが、DifyとBubbleを組み合わせたMVP開発(最小構成の製品開発)です。フルスクラッチ開発(1,000万円〜2,000万円・期間半年〜1年超)と比べると、初期費用を50万円〜120万円程度に、期間を最短4週間に圧縮できる可能性があります。

また、既存のAIプラットフォーム(ChatGPT・Claude・Gemini等)のライセンスから始める場合は、1人あたり月額3,000円程度からトライアルも可能です。IT導入補助金の活用も有効です。生産性向上に寄与するソフトウェアやシステムに対して一部2/3または1/2の補助率が適用され、5万円〜450万円程度の補助が受けられる仕組みがあります。

大規模な開発では、850万円〜1億円の大規模枠(最大2/3補助)が活用できるケースもあり、申請のタイミングを事前に計画的に把握しておくことが求められます。

▼詳しくはこちら
・人事・労務・採用AIエージェント開発の費用相場|見積もり内訳とコストを抑えるコツをご覧ください。

ポイント

予算の上限は、運用費まで含めた総額で先に決めておくのが目安です。上限があれば、スクラッチ、ノーコード、パッケージのどれが収まるかを、同じ条件で比べやすくなります。

人事・労務・採用AIエージェントの発注・外注ガイド

AIエージェント開発の委託先を選ぶ4つの確認観点を示す図解
技術面の実績に加えて、運用と契約の対応力も並べて確認できます。

人事・労務・採用AIエージェントの開発を外部ベンダーに委託するなら、パートナーの選定と契約形態の設計が、プロジェクトの成否を大きく左右します。AI開発には特有の不確実性があるため、発注担当者は、それを踏まえた契約の実務を理解しておく必要があります。

ベンダー選定で確認すべき4つの観点

1点目は、業種固有の業務フローに対する設計力です。生成AIの技術に詳しいだけでなく、人事・労務の実務を熟知しているかどうかが、とくに重要な点になります。

2点目は、既存システム・外部ツールとの高度な連携実績です。SmartHRやfreee、各種採用管理システムとのAPI連携を、セキュアに設計・実装できる技術力が必要になります。3点目は、継続的な精度監視と運用改善を支える支援体制です。

AIモデルの振る舞いは時間とともに変わり得るため、導入後のプロンプト調整やデータ更新、精度監視を長期的に担える体制を持つベンダーが理想です。4点目は、契約形態を柔軟に組み替えられる能力です。フェーズが移るときに、契約上の責任範囲や取引規模を適切に調整できることが求められます。

AI開発の契約形態:請負契約と準委任契約の使い分け

AI開発の契約形態は、民法上の「請負契約」と「準委任契約」に大別されます。請負契約は、完成品を納めることを目的とし、ベンダーに納品義務と契約不適合責任が課されますが、仕様変更への対応が硬直的で紛争が生じやすいというデメリットがあります。

一方、準委任契約は特定の事務処理の遂行が目的で、ベンダーは善管注意義務を負うにとどまりますが、アジャイルに仕様を固めながら進めやすい特徴があります。経済産業省のAIシステム開発契約ガイドラインや、日本ディープラーニング協会(JDLA)の指針では、開発・検証期の契約は原則「準委任契約」とすべきと指摘されています。

その理由は、AIシステム開発では、特定の精度を事前に100%保証することが困難だからです。実務的には、構想・PoCフェーズは準委任契約、AIモデルの仕様が固まった本開発の一部のみ請負契約、稼働後は月額固定の保守契約に切り替えるハイブリッド型の管理が、最も安全な選択とされています。

▼詳しくはこちら
・人事・労務・採用AIエージェントの発注・外注ガイド|依頼方法と委託先の選び方をご覧ください。

ポイント

委託先を比べるときは、業務の理解と連携の実績に加え、稼働後の精度監視まで担えるかを見ると、違いが見えやすくなります。契約もフェーズごとに分けて考えると、責任範囲が曖昧になりにくくなります。

人事・労務・採用AIエージェント開発に強い開発会社の選び方

人事・労務・採用AIエージェントの開発パートナーを選ぶときは、AI技術力だけでなく、人事・HR領域の業務知識と実績があるかを確認します。

市場には、大手SIer、専業AIベンダー、ノーコード特化型の支援会社など多様な業態があります。自社の開発規模やフェーズ、連携するシステムの数に合わせて、業態を選ぶことが大切です。

開発会社の業態別の特徴と向き不向き

大手SIerは、基幹システムとの統合実績が豊富で、大規模・長期プロジェクトを管理する体制に強みがあります。ただし、変化への対応速度や費用の柔軟性では、専業ベンダーに劣る場合があります。

専業AIベンダーは、最新のアルゴリズム実装やLLMの活用に長けており、精度が重視される高度なAI開発に適しています。

ノーコード特化型の支援会社は、初期費用を抑えたMVP開発やスモールスタートを得意としています。内製化の支援まで視野に入れる場合にも、有効な選択肢です。

発注前に確認しておきたいチェックポイント

開発会社に問い合わせる前にチェックポイントを整理しておくと、選定がスムーズになります。まず、自社で自動化したい具体的な業務と、現在使っている人事・労務システムを一覧にします。次に、概算予算と希望する稼働時期を決め、内製化の意向(将来的に自社で保守できるようにしたいか)も考えておきます。

問い合わせ先には、同じ業種・同規模の人事・HR業務でAIエージェントを導入した実績があるかを確認します。実績がある場合は担当者との直接のヒアリングを依頼し、どのような課題をどう解決したかを具体的に聞きます。こうすることで、開発会社の実力をより正確に見極められます。

▼詳しくはこちら
・人事・労務・採用AIエージェント開発に強い開発会社・ベンダー6選|選び方も解説をご覧ください。

ポイント

業態の特徴だけでなく、同じ業種・同規模の導入実績があるかで候補を絞るのが目安です。実績の中身は担当者から直接聞くと、開発会社の実力を見極めやすくなります。

人事・採用AIエージェント導入時の法令・コンプライアンス対応

従業員や応募者の個人情報を中心に、採用AIの対策を配置した図解
技術的な対策と社内ルール、応募者への説明を組み合わせています。

人事・採用領域のAIエージェントは、従業員や応募者の個人情報を扱います。そのため、個人情報保護法、職業安定法、労働基準法など複数の法規制にまたがって、適切なコンプライアンス設計を行うことが欠かせません。

技術の実装と並行して法的な基盤を整えることが、安全な導入の前提になります。

個人情報保護法・越境移転規制への対応

採用業務で、応募者の履歴書から氏名や住所をマスキングして外部AIのAPIに送信するケースがあります。このとき、社内の採用管理システム(ATS)の元データと照合して個人を特定できる状態であれば、個人情報保護法上の「個人データ」として扱われる点に注意が必要です。

マスキングを法的な安全策にするには、個人情報保護法第41条9項に規定される「仮名加工情報」の厳格な加工要件を満たすことが求められます。その要件は、照合禁止措置、安全管理措置、社内規程の整備です。

また、海外AIサービス(OpenAI・Anthropic・Google等)を利用する場合、従業員や応募者の個人データを米国サーバーに送信することは、個人情報保護法第28条が定める「越境移転」に該当する可能性が高いです。原則として、本人の事前同意と移転先情報の通知が必要です。そのうえで、プライバシーポリシーの記載を見直し、応募導線での同意取得の流れを設計することが求められます。

採用AI整備の3点セット:実務的な対策アプローチ

これらの法的要件を確実に満たすため、「マスクツール」「AI利用規程」「応募者同意・プライバシーポリシー改定」の3点セットを同時に整備することが推奨されています。マスクツールは、外部APIへの送信前に個人情報や要配慮個人情報をローカル環境で自動検出し、変換するセキュリティツールです。

AI利用規程は、採用・人事業務におけるAI利用の許可範囲、禁止プロンプト、越境移転の判定ルールを明文化した社内規定です。応募者同意・プライバシーポリシー改定では、AIシステムの利用に伴う業務委託や海外へのデータ移転に関する法的記載を追記します。

さらに、応募者から明示的な同意を取得する手続きの仕組みを構築します。厚生労働省が定める「公正な採用選考14項目」(本籍地・宗教・尊敬する人物・家族構成等の不適切項目を考慮した選考の排除)との整合も、AIのスクリーニング設計で必ず考慮する必要があります。

▼詳しくはこちら
・人事・労務・採用AIエージェントの開発・構築の進め方|導入プロセスと成功のポイントをご覧ください。

ポイント

外部AIへの送信は、マスキング後も個人データに当たるかを法務部門と確かめてから進めるのが目安です。海外サービスなら、越境移転の扱いも先に決めておく必要があります。

人事・労務・採用AIエージェントの種類と用途別の使い方

対話型、ワークフロー型、マルチエージェント型の用途を並べた図解
単独の問い合わせ対応から複数業務の自動化まで、用途の幅が広がります。

人事・労務・採用AIエージェントは、機能の構成や用途によって、いくつかのタイプに分けられます。自社の課題や導入フェーズに合うタイプを選ぶことが、投資対効果を高めるうえで大切な判断になります。

主要タイプ:対話型・ワークフロー型・マルチエージェント型

対話型AIエージェントは、従業員や応募者との自然言語でのやり取りを中心に、社内FAQ対応、手続き案内、勤怠申請のサポートなど「問い合わせ対応」に強みがあります。SlackやTeamsと連携して24時間対応を実現するケースが多く、導入コストも比較的低いため、最初の一歩として選ばれることの多い形態です。

ワークフロー型AIエージェントは、採用スクリーニングや勤怠集計、法令チェックなど、「バッチ処理・多段階処理」が得意です。事前に設計したフロー(ノード・条件分岐)の各ステップでAIが判断し、最終結果は人間がレビューする「ヒューマン・イン・ザ・ループ」の設計によって、安全性を担保できます。

マルチエージェント型は、複数のAIエージェントが協調して動く高度な構成です。採用から入社手続き、労務管理まで一気通貫で自動化する大規模な実装に適しています。

自社に合うタイプの選び方

タイプを選ぶ出発点は、「最も解決したい業務課題は何か」を明確にすることです。社内問い合わせの削減が最優先なら、対話型から始めるのが最も費用対効果が高くなります。一方、採用の工数削減が急務なら、スクリーニング特化のワークフロー型が適しています。

複数の業務を横断して自動化したい場合は、エージェントを段階的に追加して連携させ、マルチエージェント構成への拡張を見据えて設計する必要があります。導入の初期段階では、まず一つの業務・一つのタイプで小さく始めて効果を検証することが、成功の近道です。

PoCで成果を確認したうえで他業務への展開を判断すれば、投資リスクを抑えながら、段階的に自動化の範囲を広げられます。

▼詳しくはこちら
・人事・労務・採用AIエージェントの種類・用途|タイプ別の使い方と選び方をご覧ください。

まとめ:人事・労務・採用AIエージェント活用の全体像

人事・労務・採用AIエージェントの全体像を、導入の進め方から種類まで整理しました。

大規模言語モデルを基盤とするAIエージェントは、従来のRPAやシナリオ型ツールが越えられなかった「例外業務の壁」を、実質的に取り払えるようになりました。採用スクリーニングから労務コンプライアンス管理、社内問い合わせ対応、人事評価支援まで、広い範囲の業務を自律的に処理できます。

開発では、構想・要件定義(40万円〜200万円)、PoC(100万円〜500万円)、本開発(人月の積み上げ)、運用(月額60万円〜200万円前後)の4フェーズを、段階的に進めるのが標準的です。スモールスタートを重視し、DifyやBubble等のノーコードツールを使ったMVP開発から始めれば、初期費用を大幅に抑えながら効果を検証できます。

外注するときは、準委任契約を基本にしつつ、経済産業省のAIシステム開発契約ガイドラインに準拠したハイブリッド型の契約設計が推奨されます。

法令対応では、個人情報保護法の越境移転規制や仮名加工情報の要件、採用選考の公正性(厚生労働省の公正な採用選考14項目)、労働基準法の36協定、職業安定法といった法的枠組みを横断して把握します。そのうえで、「マスクツール・AI利用規程・応募者同意/プライバシーポリシー改定」の3点セットを開発の初期から並行して整備することが、手戻りを防ぐ最善策です。

各テーマの詳しい内容は、次の記事で解説しています。

▼テーマ別の詳しい解説
・人事・労務・採用AIエージェントの開発・構築の進め方|導入プロセスと成功のポイント
・人事・労務・採用AIエージェント開発に強い開発会社・ベンダー6選|選び方も解説
・人事・労務・採用AIエージェント開発の費用相場|見積もり内訳とコストを抑えるコツ
・人事・労務・採用AIエージェントの発注・外注ガイド|依頼方法と委託先の選び方
・人事・労務・採用のAIエージェント活用事例|HR業務を自動化する実例
・人事・労務・採用AIエージェントによる業務自動化・効率化|成果を出す進め方
・人事・労務・採用AIエージェントの種類・用途|タイプ別の使い方と選び方をご覧ください。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。