AI在庫最適化の開発のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

AI在庫最適化は、需要の特性や発注ルール、既存システムとの連携によって開発方式を選びます。フルスクラッチとオーダーメイドは、自社の条件に合わせて作り込む方式です。

一方で、SaaSやパッケージも増えており、手軽に始められる選択肢が広がっています。

▼全体ガイドの記事
・AI在庫最適化の完全ガイド

AI在庫最適化のフルスクラッチ開発の定義

SaaS、パッケージ、オーダーメイド、フルスクラッチの特徴を4枚のカードで示す図。
既製サービスから自社専用構築へ、作り込みの範囲が広がります。

フルスクラッチ開発は、既製品やテンプレートを使わず、要件に合わせてシステムをゼロから設計する方式です。

作る範囲は、需要予測モデルや機能、UIに加え、既存システムとの連携まで、すべて自社向けです。

これに対してオーダーメイド開発は、既存技術を土台にして、自社要件に合わせて作り込む方式です。

パッケージやSaaSは、在庫管理と需要予測の共通機能を製品として導入する方式です。

方式の違いは、自社の業務をシステムに合わせるか、システムを業務に合わせるかにあります。

AI在庫最適化では、業種や業態によって需要予測や発注条件が異なります。たとえば、安全在庫や発注点の計算、賞味期限、ロット単位などが条件になります。複数倉庫間の配分も、条件に加わります。

どちらに業務を合わせるかは、他の業務システム以上に重要です。在庫は資金繰りや売上機会に直結するため、最適化ロジックを実態に寄せる必要があります。

方式の選択は、開発手法だけでなく、在庫最適化にどこまで踏み込むかという経営判断でもあります。

フルスクラッチ・オーダーメイド・パッケージ・SaaSの違い

4つの方式は、費用の始めやすさと要件への自由度がそれぞれ異なります。

  • SaaS:クラウド上の既製サービスを、月額で利用する形。
  • パッケージ:標準機能を備えた製品を買い、設定やアドオンで調整する形。
  • オーダーメイド:既存技術を土台に、自社要件に合わせて作り込む方式。
  • フルスクラッチ:土台から自社専用に構築する方式。

SaaSは初期費用を抑えて素早く始められます。ただし、予測ロジックや画面の変更には限界があります。

パッケージはSaaSより自由度が高いものの、調整は製品の設計思想の範囲内にとどまります。

オーダーメイドはセミスクラッチとも呼ばれ、フレームワークやライブラリなどを土台にして作ります。

近年は、実績のあるオープンソースのLightGBMやProphetを需要予測に使う方法が主流です。その上に自社固有の業務ロジックや連携を作り込む、セミスクラッチからフルスクラッチまでの進め方が現実的です。アルゴリズムを完全に自作する例は稀で、実証済みの部品を需要特性に合わせて使います。

AI在庫最適化でフルスクラッチが選ばれる理由

需要特性と発注ルールは企業ごとに異なるため、既製品ではすべてを吸収しきれないことがあります。

  • 生鮮食品:賞味期限と日々の廃棄を踏まえた発注。
  • 製造業:部品別のリードタイムや最小発注ロット、生産計画との連動。
  • アパレル:サイズ・カラー別の需要と、シーズン終盤の値下げを見込んだ発注。

業種固有の制約や、運用で培った発注ノウハウを汎用製品に反映するのは困難です。

製品に業務を合わせて妥協すると、期待した最適化の効果が得られないことがあります。また、精度を継続的に磨く場合や、データを競争力の源泉として囲い込む場合にも適しています。

既存の基幹・生産管理システムと密に連携したい場合も、作り込みの自由度が役立ちます。

特に、在庫最適化が競争優位に直結すると考える企業ほど、この方式を選ぶ傾向があります。

ポイント

自社の業務に合わせて作り込むか、既製品に業務を合わせるかで迷ったら、需要特性と発注ルールの複雑さ、既存システムとの連携の深さを見比べてください。

フルスクラッチのメリットと適したケース

フルスクラッチを中心に、需要特性に合わせた予測ロジック、既存システムとの密な連携、将来の拡張性を示す図。
独自の予測と既存システムの接続が、運用後の改善を支えます。

フルスクラッチの利点は、自由に作れる点にあります。その自由度が、予測精度や業務への適合、将来の拡張性に結び付きます。

既製品では機能の範囲内で妥協する場面がありますが、フルスクラッチなら自社が目指す姿を追求できます。

この差は導入初期より、運用しながら改善を重ねる中長期で大きくなります。

その価値は、独自ロジックと既存連携の2つに表れます。

独自の需要予測ロジックと制約条件の作り込み

フルスクラッチの最大のメリットは、需要特性に合わせた予測ロジックと制約条件を自由に作り込める点です。

  • 需要パターン:曜日・イベント・天候・バンドル需要を、特徴量とモデル設計に反映。
  • 発注条件:最小ロット、倉庫間配分、賞味期限を踏まえた先入れ先出しの組み込み。
  • 経営判断:欠品コストと在庫保有コストのバランスの設定。

汎用ツールは一般的な需要を想定するため、自社特有の需要に対応しきれない場合があります。さらに、仕入先ごとの発注サイクルや予算上限も、実務のルールどおりに実装できます。

AIの提案が現場の感覚や経営方針と食い違いにくくなり、納得して使えるシステムを目指せます。

既製品では、発注数の理由がブラックボックスになりがちです。一方、フルスクラッチなら根拠を把握して調整でき、長期の運用でも価値があります。

既存基幹・WMS・生産計画との密結合と拡張性

既存システムとの密な連携と将来の拡張性も、大きなメリットです。予測結果を発注や補充につなげるには、連携が欠かせません。

  • 基幹システム:ERPの仕様やデータ構造に合わせた連携。
  • 倉庫管理:倉庫管理システム(WMS)との連動。
  • 生産計画:製造業では生産計画システムとの接続。

連携の方式やタイミングは既存システムに合わせて設計し、予測から発注までをつなぎます。

SaaSでは連携口がなく、データの受け渡しに手作業が残る場合があります。

まずは単一カテゴリの予測から始め、効果を見て対象を広げられます。その先は、複数倉庫の配分や調達・生産・物流を横断する全体最適化へ、自社の計画に沿って発展させられます。

成長や戦略の変化に合わせて育てられる点は、在庫最適化を長期的な経営の強みにする動機になります。

既製品の仕様変更を待たずに、自社の判断で機能を追加・改良できます。

ポイント

独自の需要特性や既存システムとの連携が外せないかを、まず見極めてください。外せない場合は、導入後も改善を重ねられるかを合わせて考えると判断しやすくなります。

フルスクラッチのデメリットと注意点

自由度の高さと引き換えに、フルスクラッチにはコストとリスクが伴います。開発中や運用後に想定外の負担が生じることもあるため、運用まで見通して検討する必要があります。

AI在庫最適化は、導入後もモデルを維持することで効果が続きます。

次に、費用・人材と作り過ぎの注意を見ていきます。

費用・期間・データサイエンス人材の確保

フルスクラッチでは費用と期間がかかります。さらに、開発後の保守・運用には、高度な専門人材も必要です。

  • SaaS:月額数万円からの利用。
  • 中規模開発:初期費用は800万〜2,000万円です。
  • 大規模開発:全社やサプライチェーン全体では3,000万円以上になることがあります。
  • 開発期間:中規模で6〜9ヶ月、大規模では1年以上です。

中規模・大規模の金額は規模による目安で、初期投資として必要になる場合があります。

SaaSの導入は数週間で済む一方、フルスクラッチは上記の期間を要します。

需要予測モデルは放置すると精度が劣化するため、再学習や精度監視が必要です。

データサイエンティストやMLエンジニアは、社内で確保するか、継続保守の契約で補うかを選びます。人材は採用市場でも希少なため、内製にこだわると採用や育成に時間と費用がかかります。

判断は、初期費用だけでなく、保守体制を含めた総保有コスト(TCO)で行います。特に、維持する人材がいないまま精度が落ちる事態は避ける必要があります。

過剰なフルスクラッチを避けるBuy or Buildの判断

すべてをゼロから作るのが正解とは限らず、費用や期間を膨らませる恐れもあります。

Buy or Build(買うか、作るか)の判断では、差別化領域と汎用機能を分けて考えます。

  • 作り込む部分:独自の需要予測、発注ルール、既存システムとの連携。
  • 既製品を使う部分:認証、可視化画面、汎用的なデータ基盤。
  • 予測エンジン:LightGBMやProphetなどを土台にした構成。

競争優位に直結する領域は作り込み、共通機能にはクラウドサービスやライブラリを活用します。既存技術を使えば、汎用機能の開発期間とコストを大幅に抑えられます。

作る部分と買う部分を分けて差別化領域に集中すると、投資対効果を高められます。逆に何でも自作すると、予測精度に時間を割けない恐れがあります。

差別化領域だけを作り、他は既製品に頼る進め方を取ると、限られた予算と期間でも成果を得やすくなります。

ポイント

初期費用だけでなく、保守体制を含めた総保有コストで比べてください。モデルを維持する人材がいるかは、契約前に確かめておくとよいでしょう。

フルスクラッチ開発を成功させる発注のポイント

発注前に確認する要件・データ・精度目標、対象範囲、技術・業務理解、支援体制の4項目を示す図。
検証範囲と支援の継続性まで、発注時にそろえて見渡せます。

発注の設計は、メリットを生かし、デメリットを抑える鍵になります。費用超過や頓挫は技術力だけでなく、要件・契約・進行管理によっても左右されます。そこで、契約の設計、段階的な範囲設定、ベンダー選定の順に見ていきます。

要件・データ・精度目標を握る契約設計

契約では、要件、データ、精度目標を明確にしておく必要があります。

  • 要件:作り込む差別化領域と汎用部分を分け、開発会社に伝える。
  • データ:実在性・品質・期間を事前に調べる。
  • 精度目標:PoCで実データを使い、精度とROIを検証する。

AI在庫最適化は、データの質が結果を左右します。そのため、契約前にデータアセスメントを行い、その結果から要件と費用を定めると手戻りを防げます。

需要予測は試すまで分からない面があるため、全機能を固定価格の請負で発注するとリスクがあります。PoCの結果を受けて本開発の要件と費用を確定する、二段階の進め方が現実的です。

モデル開発は準委任契約でアジャイルに進め、仕様が固まった実装は請負契約にするなど、フェーズごとに使い分けます。

モデルやデータ処理の知的財産の帰属も、契約時に確かめておきます。生成データや学習済みモデルを自由に扱えるかも定めておかないと、後のトラブルにつながります。

段階的スコープとベンダー選定

もう一つの成功要因は、対象を段階的に広げ、適切なベンダーを選ぶことです。大きな投資を抑えるため、技術と業務の両面から見ていきます。

  • 対象範囲:効果が見込める商品カテゴリや拠点に絞る。
  • MVP:実用に足る最小限の機能を備えた製品から始める。
  • 技術・業務理解:システム開発力に加え、需要予測と在庫・サプライチェーンの知識を確かめる。
  • 支援体制:PoCから保守・運用までの対応力を比べる。

成果と運用ノウハウを蓄積してから範囲を広げると、リスクを抑えられます。さらに、各段階の学びを次の設計に反映でき、投資判断もその都度行えます。

技術と業務知識のどちらか一方だけでは、十分な精度や実用性は得られません。そのため、類似案件の実績、PoCでの伴走、開発後の保守体制を、複数社で比べます。

長期のパートナーを選ぶ際は、自社業務に寄り添って一緒に考える姿勢も大切です。

ポイント

全機能を一括で固定価格にせず、PoCの結果を見て本開発の範囲を決めてください。ベンダーは、技術と業務理解の両面から比べます。

まとめ

フルスクラッチとオーダーメイドを中心に、パッケージやSaaSとの違い、選ばれる理由を整理しました。メリットや費用、注意点、発注のポイントも、あわせて見てきました。

方式は、業務への適合性と、投資や運用の負担を比べて選びます。

フルスクラッチは、独自の需要や発注ルール、既存連携を作り込め、将来も柔軟に拡張できます。その一方で、中規模で800万〜2,000万円、大規模で3,000万円以上の初期投資が必要になる場合があります。

モデルの維持に必要なデータサイエンス人材の確保も欠かせません。

差別化領域は作り込み、汎用機能は既製品を使う、Buy or Buildの判断が重要です。

発注では、要件・データ・精度目標を定めたうえで、PoCから本開発へ進めます。MVPから対象を広げ、技術力と業務理解を備えたベンダーを選ぶことも、成功の鍵です。

まず、作り込む価値のある在庫課題を整理し、PoCで小さく検証します。

フルスクラッチは万能ではありませんが、対象を絞って投資すれば、競争優位の土台になります。信頼できる開発パートナーを選び、自社に合う進め方を見極めることが大切です。

▼全体ガイドの記事
・AI在庫最適化の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。