結論から言うと、AIチャットボットの開発は、回答範囲と正答例を決め、資料整備、検索、回答生成、権限・有人移管の試験へ進めます。チャット画面が動いた段階では、公開の判断はできません。
社内文書を参照するRAG型を例に、工程ごとの成果物と確認事項を説明します。登録FAQやシナリオを組み合わせる場合も、評価問題を先に用意する進め方が有効です。
工程1:回答する質問と評価問題を決める
対象部署と回答の責任者を決める
初期版では「情報システムの利用案内」などに対象を絞ります。規程の解釈や個別の承認判断まで含めるかは、業務責任者が判断します。
回答方針を三つに分けて定義します。
- 回答する:正式なマニュアルで裏付けられる手順。
- 聞き返す:端末や利用者区分など、必要条件が足りない質問。
- 移管する:例外申請、個別障害、資料に根拠がない相談。
例えば「接続できない」だけでは、ネットワークか業務アプリか判別できません。最初に環境を聞く会話を用意し、何でも一度で回答させないようにします。
実際の問い合わせから試験を作る
過去の問い合わせを匿名化し、正答、必要な根拠、許容しない回答を用意します。表記ゆれや省略、複数の条件を含む質問も入れます。
資料にない質問と権限外の質問を必ず含めます。評価用の一部は調整に使わず残し、修正後にも未知の質問で性能を確認できるようにします。
工程2:文書を検索可能な形に整える
正本と旧版を整理する
同じ手順の旧版が混ざると、検索自体は成功しても間違った案内につながります。正式な資料と管理者を決め、適用開始日や利用対象を記録します。
文書ごとの付帯情報を整理します。
- 出典:文書名、参照URL、版、更新日。
- 適用条件:対象部署、サービス、地域、利用者区分。
- 権限:誰が本文と回答を閲覧できるか。
PDFの表や画像は、読取り結果を目視で確認します。表の列見出しと条件が離れると、金額や申請条件を別の行へ結び付ける原因になります。
分割した文書の意味を保つ
RAGでは検索しやすい単位へ文書を分けます。文字数だけで切らず、見出し、条件、例外、手順が一緒に解釈できるかを確認します。
MicrosoftのRAG解説では、検索方式と索引の設計を扱っています。型番などの完全一致と意味の近さを、質問に応じて使い分けます。
工程3:検索と回答生成を分けて作る
まず正しい資料が見つかるか試す
回答文を調整する前に、評価問題に対して必要な資料が検索されるかを確認します。該当資料が出なければ、モデルへの指示だけを変えても解決しません。
検索不良の原因を切り分けます。
- 資料不足:正式な回答根拠が登録されていない。
- 検索不一致:略称や言い換えを拾えていない。
- 分割不良:検索箇所に条件や例外が含まれていない。
検索の結果と順位を記録し、改善前後を同じ問題で比較します。必要以上に多くの資料を渡すと、無関係な条件が回答へ混ざることもあります。

根拠を示し、不足時には回答を止める
生成処理には、確認できた情報で回答し、条件不足なら聞き返す方針を与えます。回答には参照文書を示し、利用者が原文を確認できるようにします。
リンクが付いているだけでは正答の証明になりません。回答の各条件が参照箇所と一致するか、人が確認できる評価記録を残します。
MicrosoftのRAG評価も、検索品質と回答の根拠整合性を分けています。原因ごとに直すことで、改善が再現しやすくなります。
工程4:権限と有人対応を含めて公開判定する
利用者ごとに検索対象を制御する
ログインの有無だけでなく、文書を読む権限を検索時に適用します。生成後に注意文を出す方式では、モデルに渡した機密情報を適切に守れません。
Azure AI Searchのアクセス制御は、ユーザーやグループに応じた検索結果の制御を説明しています。採用基盤に合う方式を実装します。
権限試験では、正常な利用以外の状態を確認します。
- 別部署:参照できない文書の本文や要約が出ないか。
- 異動・退職:権限変更が検索と会話履歴に反映されるか。
- 共有端末:前の利用者の会話やキャッシュが残らないか。
有人移管と更新後の再試験を確かめる
回答不能や利用者の希望時に、人へつなぐ導線を用意します。会話、聞き取った条件、未解決の内容を渡し、受付完了を表示します。
公開前には、担当者が不在の場合や受付システムの障害も試します。転送したつもりで相談が消える状態を防ぐため、受付番号や代替窓口を確認できるようにします。
限定公開の結果を基に対象を広げます。文書・モデル・検索設定を変更した際は、同じ評価問題で再試験し、悪化したら前の設定へ戻せるようにします。
まとめ
チャットボット開発は、評価問題、資料、検索、回答、窓口運用を順につなげます。各工程の結果を記録し、何が原因で答えられないかを分けて改善しましょう。
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