総務におけるAI活用のPoC・プロトタイプ・モックアップ開発について

総務のAI活用は、対象テーマを絞って実データでPoC(概念実証)を行い、精度と現場での使いやすさを確かめてから本開発へ進むのが基本の流れです。

社内規定の要約や契約書の自動仕分けは、精度が低いまま本番に出すと、誤った情報の伝達や仕分けミスといった実害につながりかねません。

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総務におけるAI活用におけるPoCの目的と位置づけ

総務におけるAI活用におけるPoCの目的と位置づけ

総務におけるAI活用は、全社員が日常的に接点を持つ業務を対象にすることが多く、活用テーマの候補も非常に多岐にわたるため、他の業務システムのPoCとは重視すべき点が異なります。

使われなければ、すぐに紙やメール中心の従来業務へ戻ってしまいます。一方で、対象業務を欲張りすぎると、どのテーマも中途半端な検証で終わってしまいます。

総務で主に検証の対象になるのは、次のような機能です。

  • 社内規定・マニュアルの要約・検索
  • 契約書・書類のOCR自動仕分け
  • 社内アンケートの自動集計・分析

総務のAI活用にPoCが不可欠な理由

生成AIによる要約・検索の精度は、対象文書の量やフォーマットの複雑さ、質問の言い回しによって大きく左右されます。たとえば、ある企業で高い精度を出したナレッジ検索の仕組みが、別の企業では社内用語や独自の規程構造の違いによって通用しないことも珍しくありません。

契約書のOCR仕分けルールや、アンケートの自由記述をどう分類・要約するかは企業ごとに異なります。そのため、汎用のテンプレートをそのまま当てはめると、実務に合わないケースが多く見られます。

加えて、総務は他部署の管轄外の業務がすべて集まる「何でも屋」的な性質上、活用候補の業務が見えにくく、どのテーマから着手すべきか優先度を決めにくいという課題もあります。だからこそ、全社展開や本番稼働の前に、限定的な範囲・期間でAI機能の精度と効果を実データで検証するPoCが欠かせません。

PoCで検証すべき指標

PoCで検証すべき指標は、大きく5つに分けられます。第一に「要約・検索回答の精度」で、社員が求める情報を根拠となる規定箇所とともに的確に返せているかを見ます。第二に「OCR読み取り・自動仕分けの精度」で、書類の種類判定や仕分け先の振り分けが実データでどの程度正確かを確かめます。

第三に「アンケート自動集計・分析の妥当性」で、自由記述の要約や分類が、人が読んだ場合の解釈とどれだけ一致するかをレビューします。第四に「業務時間の削減効果」で、問い合わせ対応や書類仕分けにかかっていた時間が、どの程度短くなったかを定量的に測ります。

そして第五に「社員の受容性」で、実際に使った社員が回答の正確性や使いやすさに満足しているかを、アンケートやヒアリングで確かめます。これらの指標は、検証を始める前に定義しておくことが、後述するGo/No-Go判断を客観的に行うための前提になります。

ポイント

要約・検索やOCR仕分けなど、機能ごとに対象を絞り、精度と効果を測る指標を検証の前に決めておくことが、判断の目安になります。

PoCの進め方と期間・費用の目安

PoCの進め方と期間・費用の目安

PoCの進め方は、検証したい活用テーマや自社のリソースによって変わります。一方で、共通して重要なのは検証期間を明確に区切ることです。検証を長引かせると、意思決定が先延ばしになり、投資対効果を見極める機会を逃してしまいます。

スモールスタート型PoCの進め方

スモールスタート型のPoCは、ChatGPT Enterpriseなどの既存のツールや、Difyなどのノーコードツールを使い、限定的な範囲でAI機能を試作するアプローチです。期間は数日〜3週間程度、費用は数万円〜数十万円程度(ツール利用料自体は無料〜月額数万円)が目安です。

対象テーマは、影響範囲が限定的で結果を検証しやすいもの、たとえば「よくある問い合わせのFAQ回答文の下書き作成」や「特定部署の規定文書の要約」から始めるのが定石です。特定の部署や業務に絞って数週間試せば、大きな投資をする前に、自社データとの相性やAIの得意・不得意な領域をつかめます。

本開発を見据えた中規模PoCの費用感

本開発を見据えて、社内システムの実データとの連携やナレッジベースの構造設計を含む中規模PoCを行う場合は、期間3週間〜1.5か月、費用50万〜150万円程度を見込む必要があります。

この規模のPoCでは、ツールの機能を試すだけでなく、自社の社内規程や過去の問い合わせ履歴、契約書データを使った実データ検証まで行います。加えて、複数の活用テーマに対応した検証環境を構築し、後述する検証項目を定量的に評価するための計測の仕組みも整えます。

中規模PoCの費用は本開発の初期投資の一部を先行して使う形になりますが、ここでの検証結果は、本開発のスコープや優先順位を決める重要な材料になります。そのため、費用対効果の高い投資と位置づけられます。

ポイント

検証の規模は、既存ツールで限定的に試すか、実データや検証環境まで含めるかで決まります。期間は最初に区切り、規模に応じて数万円〜数十万円か50万〜150万円程度を見込みます。

ノーコードツール・汎用生成AIツールを使った素早い検証

ノーコードツール・汎用生成AIツールを使った素早い検証

専門のエンジニアを確保できていない企業でも、導入済みのツールを使えば、追加の開発をせずに数日〜数週間でPoCを始められます。

汎用生成AIツールのプロンプト検証による着手

すでにChatGPT EnterpriseやMicrosoft 365 Copilotを導入している企業は、専用の開発をせずに、プロンプトの工夫だけでPoCに着手できます。

たとえば、社内規程のPDFをアップロードして要約や質問応答を試したり、過去の問い合わせメールの束を読み込ませて自由記述の傾向を分析したりします。こうした検証を数時間〜数日という短期間で行えば、「この活用テーマは有望か」の一次スクリーニングが可能です。

この段階では厳密なシステム構築は不要です。総務担当者自身が日常業務の中でプロンプトを試し、手応えを記録していくだけでも、十分な判断材料が得られます。

ノーコードRAG構築ツールでのプロトタイプ作成

Difyのようなノーコードのワークフロー構築ツールを使えば、専門知識がなくても、数時間〜数日でプロトタイプを組み上げられます。アカウント作成から文書のアップロード、検索設定を経て、チャットUIの試作と限定ユーザーへの公開まで進められます。

まずは「就業規則」「経費精算規程」など特定の1〜2文書に絞ってナレッジベース化し、その質問への回答精度を検証します。範囲を狭めるほど効果を実感しやすく、試作の結果をチームでレビューして、良かった点と改善点を洗い出したうえで、対象文書の範囲を段階的に広げていくのが有効です。

OCR自動仕分けの場合は、クラウド型OCRサービスのトライアルプランを使えば、実際の契約書・請求書のサンプルを数十件読み込ませるだけで、実用レベルの精度が出せそうかを短期間で見極められます。

ポイント

導入済みのツールでプロンプトを試して一次判断を行い、有望なテーマだけをノーコードのプロトタイプで検証するのが、判断の目安です。

PoCでよくある失敗パターンと回避策

PoCでよくある失敗パターンと回避策

PoCは正しく設計しなければ、時間とコストをかけたにもかかわらず有用な判断材料が得られないまま終わってしまいます。特に総務におけるAI活用では、よくある失敗の型に注意が必要です。

綺麗すぎるテストデータでの検証

整理された綺麗な文書や質問だけで検証し、「精度が高い」という結果だけを見て本番展開を決めてしまうと、失敗につながります。表記の揺れや古い版が混在する実際の社内文書や、曖昧な言い回しの多い社員からの質問に当たった途端に、精度が崩れてしまうからです。

社内にある規程文書には、部署ごとに異なる呼び方をする社内用語、改訂履歴が整理されていない古い版、口頭のやり取りを前提にした曖昧な表現などが含まれます。だからこそ、PoCの段階から、あえて表記の揺れを含む実データの一部で検証すると、本番運用時のギャップを事前に把握できます。

活用テーマを広げすぎる検証設計

もう一つの典型的な失敗は、「総務は何でも屋」という性質から、一度のPoCで問い合わせ対応や書類仕分け、アンケート集計、備品管理を同時に検証しようとしてしまうことです。検証対象を広げすぎると、テーマごとの検証期間や工数が薄まり、どのテーマも「なんとなく使えそう」という曖昧な評価にとどまってしまいます。

対策としては、PoCの段階で投資対効果が最も見込みやすい1〜2テーマに絞り込みます。そこで得た知見(文書整備の勘所、社員への周知方法、精度改善のコツ)は、次に検証する活用テーマへ横展開していくのが有効です。

さらに、定量的なGo/No-Go基準(例えば、要約・検索回答の的中率85%以上、OCR仕分けの誤分類率5%未満など)は、検証開始前に定義しておく必要があります。定義しないままだと、「なんとなく良さそう」という感覚的な評価にとどまり、投資判断が長期化してしまいます。

ポイント

綺麗なデータだけで検証せず、表記の揺れや古い版を含む実データで試すことと、テーマを1〜2つに絞ることが、失敗を避ける目安です。

PoCから本開発への移行判断基準

PoCから本開発への移行判断基準

PoCの結果をどう評価し、本開発に進むかをどう判断するかは、総務におけるAI活用プロジェクト全体の成否を左右する重要なステップです。

Go/No-Go基準の設定方法

Go/No-Go基準は、PoCで検証すべき5つの指標のそれぞれに、事前に具体的な数値目標を設定しておくのが基本です。たとえば、「要約・検索回答の的中率85%以上」「総務担当者の対応工数30%削減」「OCR仕分けの修正なしでの処理可能率70%以上」のように、定量的かつ測定可能な基準を関係者で合意しておきます。

基準を満たせば、対象文書や範囲を広げた本開発へ進みます。一方で、満たさなかった場合も、どの指標がどの程度足りなかったかを分析すると、追加のデータ整備やナレッジベースの構造改善が必要な範囲を特定できます。単に「良い」「悪い」で終わらせず、次のアクションにつながる形でPoCの結果を評価することが重要です。

段階的な活用範囲拡大のロードマップ

本開発への移行が決まった後も、全社・全業務へ一度に広げるより、PoCで合格基準を満たしたテーマから段階的に活用範囲を広げるロードマップを描くことが有効です。

たとえば、第1段階では影響範囲の限定的なテーマ(特定規程の要約検索、定型書類のOCR仕分け)を本番展開の対象にします。第2段階では対象文書の種類やアンケートの実施部署を広げ、第3段階では全社員が日常的に使う情報基盤として複数の活用テーマを統合します。

段階を踏めば、現場の総務担当者や全社員がAI活用に慣れながら信頼を積み上げられます。そのため、急な全面展開による現場の反発や運用トラブルを避けられます。

ポイント

移行は、検証開始前に決めた数値基準を満たしたかで判断し、満たしたテーマから対象を段階的に広げます。基準を満たさない場合も、足りなかった指標を分析して次の改善に役立てます。

まとめ

総務におけるAI活用PoCまとめ

ここまで、総務におけるAI活用のPoCについて、目的や進め方、費用の目安、素早い検証の方法を見てきました。そのうえで、失敗の回避策と本開発への移行判断基準も確認しました。

総務のAI活用は活用テーマの候補が多岐にわたるため、要約・検索回答の精度や業務時間の削減効果などの指標を、検証開始前に定量的な基準として定義しておくことが大切です。

スモールスタート型PoCは期間数日〜3週間・費用数万〜数十万円、中規模PoCは期間3週間〜1.5か月・費用50万〜150万円が目安です。また、既存の汎用生成AIツールやDifyなどのノーコードツールを使えば、追加のシステム開発をせずに検証を始められます。

綺麗すぎるテストデータでの検証や、活用テーマを広げすぎる設計は避けたいところです。そこで、1〜2テーマに絞って検証し、得た知見を横展開しながら活用範囲を段階的に広げていくロードマップを描くことが、総務におけるAI活用を成功させるうえで欠かせません。

まずは影響範囲の限られたテーマで小さく試し、定量的な基準で効果を見極めることをお勧めします。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。