生成AIシステム開発の発注/外注/依頼/委託方法について

生成AIシステム開発の外注は、要件整理、発注先の選定、契約、開発中の協働の順に進めると、自社の課題を解決しやすくなります。

発注前に目標と評価条件を決めておくと、発注先の提案を比べやすくなります。

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生成AIシステム開発を外注するメリット・デメリット

外注するメリット

外注すれば、専門的な技術力をすぐに活用できます。さらに、自社で知識を習得する時間とコストも抑えられます。

  • 高度な技術:LLM(大規模言語モデル)のファインチューニングやRAG(Retrieval-Augmented Generation)構築を任せられます。
  • データ基盤:ベクトルデータベースの設計など、最先端の技術スタックを活用できます。
  • 開発期間:実績ある外注先なら、数か月以内にMVP(最小限の機能を持つプロダクト)を出せる場合があります。

PoC(概念実証)を経て本開発へ進む段階的な進め方も有効です。PoCの費用は規模によって異なりますが、概ね100万円〜500万円程度が目安です。

PoCの実績が豊富な外注先であれば、本開発へ移る時期も相談できます。一方で、内製で体制をゼロから作ると、1年以上かかるケースもあります。

外注するデメリットと対策

外注では、開発ノウハウが社内に残らないことがあります。その結果、仕組みや改善方法を理解できず、運用を続けにくくなるおそれがあります。

ある中小企業では、200万円で開発したAIの仕組みを引き継げず、エラーが起きても社内で対応できないまま、実質的に使えなくなった事例があります。

  • 役割分担:プロンプト設計や運用改善は内製し、システム開発は外注する。
  • 契約の明確化:開発ドキュメントと知的財産の帰属を取り決める。
  • 共有の仕組み:定期レビュー会、週次報告、Slackなどによる開発の透明性の確保。

日々の改善に自社が関わることで、AIの知見を段階的に内製化できます。また、高度な実装を外注する場合も、共有の仕組みでコミュニケーションコストを抑える工夫が欠かせません。

ポイント

外注で得られる技術力と開発期間の利点を、社内にノウハウが残りにくい不利益と並べて考えます。そのうえで、社内に残す役割と外注に任せる役割を分けると、判断の材料がそろいます。

発注前の準備事項

発注前にそろえる改善目標、作業時間、性能基準、品質とデータの4項目をカードで示した図。
4項目を同じ基準で書き出すと、要件の抜けを見つけやすくなります。

要件定義と目的の明確化

生成AI開発で多い失敗原因は、要件定義のずれです。「AIを導入したい」という段階のまま依頼すると、外注先から最適な提案を受けにくくなります。

要件のずれを防ぐには、目標と評価条件を、改善目標から品質とデータまでの4つの観点で測れる形にしておく必要があります。各観点の書き方は次の例のとおりです。

  • 改善目標:問い合わせ対応を月50時間減らすなど、数値で定める。
  • 作業時間:提案書の初稿を2時間から30分にするなど、測定できる形にする。
  • 性能基準:回答正解率90%以上、応答速度3秒以内の水準。
  • 品質とデータ:月次エラー率1%未満、データの形式の確認。

「精度が高い」といった曖昧な基準のままでは、納品後に合否をめぐって争いになりかねません。生成AIの性能は学習データや参照データの質に左右されるため、データを洗い出して提供できるかを確かめておくと、後工程の手戻りを防げます。

予算・スケジュールの設定

費用は開発規模と複雑さで変わるため、下の相場を、複数社の見積もりを比べる基準にできます。

  • PoC:概念実証の段階で、100万〜500万円。
  • 本開発:月額80万〜250万円×人月。
  • 運用・保守:月額10万〜50万円程度。

開発費だけで予算を組むと、運用後も続く費用が漏れやすくなります。APIの従量課金などを、予算に含めておきます。

生成AIは、仮説と検証を繰り返すアジャイル的な開発が効果的です。このため、一度で完璧なものを作ろうとせず、段階を分けて進めることが成功の鍵です。

  1. PoCを1〜3か月行い、技術的な実現性を確かめる。
  2. 3〜6か月でMVPを作り、限定機能を本番環境で試す。
  3. 検証結果を踏まえ、フルスケールの開発に進む。

社内の承認、担当者の確保、テスト環境の準備にかかる期間も、予定に入れておきます。発注前に現実的な予定を社内で合意しておくと、遅延のリスクを下げられます。

ポイント

目標と評価条件を数字で決めてから発注先を探すと、要件のずれを防げます。費用は開発費だけでなく、運用後も続く継続コストまで含めて予算を組みます。

発注先の選び方

発注先の実績、技術領域、本番後の監視と改善、業務やデータの聞き取りを4つのパネルで示した図。
商談では技術力と、課題を聞き取る姿勢の両方を確かめます。

生成AI開発の実績と専門性の確認

「AI開発に対応」と掲げる会社でも、ChatGPTのAPIを呼ぶ簡単なラッパーだけを作るケースがあります。実績がどこまで具体的かを、まず確かめておきましょう。

判断材料は、業界や課題を含めて、技術と成果まで説明できるかどうかです。たとえば、RAGで問い合わせ対応を自動化し、時間を40%削減した事例を具体的に話せるかを見ます。

対応できる技術領域も、商談で尋ねます。LLMのAPI活用に加えて、ファインチューニングやRAGアーキテクチャへの対応を確かめます。さらに、ベクトルデータベースやMLOpsにも対応できるかを見ます。

本番環境では、モデルの挙動が開発環境と異なることがあります。そのため、継続的な監視と改善を担う体制も評価の対象にします。

  • リリース後:稼働後のサポート体制を確かめる。
  • SLA:サービスレベルの取り決め内容。
  • 障害対応:対応体制を事前に確かめる。

提案力とコミュニケーション能力

優れた外注先は、課題を聞き取ったうえで言語化してくれます。要件のずれは失敗の要因の一つであり、そのぶんヒアリング力も問われます。

  • 業務フロー:現在の仕事の流れを尋ねるか。
  • データ:どんな情報が活用できるかを確かめるか。
  • 成功基準:成果をどう測るかを尋ねるか。

こうした点を丁寧に聞く会社に頼めば、要件のずれを防げます。「どんなシステムが欲しいか」だけを聞く会社と比べると、違いがはっきり表れます。

商談の段階では、返信の速さや回答の明瞭さ、技術をビジネスの言葉で説明する力も見ておきます。商談中のやり取りは、開発中の連携を予測する材料になります。

実際に開発するエンジニアと事前に面談できる会社は、信頼度を測る手掛かりになります。営業担当だけでなく、開発担当との相性も確かめておきます。

複数社に初期相談し、担当チームの質を比べてください。エンジニアとの意思疎通に問題があると、開発中に認識のずれが生じるおそれがあります。

ポイント

発注先は、実績の具体性、対応できる技術領域、本番後の監視と改善を担う体制で比べます。提案力は、業務やデータ、成功基準を丁寧に聞いてくるかで判断します。

発注の流れとステップ

RFPの作成、複数社の見積もり比較、契約書と秘密保持契約の確認へ進む3段階の図。
条件をそろえて比較してから、情報管理と権利を確認します。

RFP(提案依頼書)の作成

RFP(Request for Proposal:提案依頼書)は、自社の課題・要件・条件を候補企業へ伝える文書です。文書があると、比べやすい提案を受け取れます。

同じ条件を示せば、各社の提案の質をそろえて公平に比べられます。さらに、発注側にとっては要件を整理する機会にもなり、発注前の考えをまとめる役にも立ちます。

生成AI向けのRFPには、一般的な開発項目に加えて、データや精度、権利など、AI固有の条件を書き添えます。書く項目は次の4つです。

  • データ:種類、量、品質。
  • 機能と精度:期待する機能と精度の基準。
  • 連携と安全性:既存システムとの連携、セキュリティやプライバシーの要件。
  • 進め方と権利:PoCの有無と期間、知的財産の帰属方針。

RFPはA4換算で10〜20ページ程度が、実務的な目安です。詳しすぎると提案側の工夫の余地がなくなります。逆に、簡略すぎると的外れな提案につながります。

複数社への見積もり依頼と比較

同じ要件を渡しても、見積もりは会社によって数倍の差が出ることがあります。その背景には、要件の解釈や技術構成の違いがあります。差の理由は、見積もりの内訳と、安い・高い見積もりそれぞれの根拠を見ると分かります。

  • 候補数:3〜5社に依頼して、価格や提案、開発方法を比べます。体制と予定も確かめます。
  • 見積もり内訳:費用の内訳、人員配置、PL・PM・エンジニアの役割と人数。
  • 安い見積もり:要件の理解不足や追加費用の可能性を考え、金額の理由を尋ねる。
  • 高い見積もり:PoCでのリスク検証や専任PMの配置など、合理的な根拠を確かめる。
  • コンペ:質疑応答で、各社の理解度と説明の根拠を見る。

契約書と秘密保持契約の確認

開発契約を結ぶ前に、NDA(秘密保持契約)を締結します。業務データや顧客データを共有する際の情報漏洩対策として欠かせません。そのため、詳しい業務情報や機密データは、NDAを結ぶ前に渡さないようにします。

開発契約では、知的財産の帰属も確認しておきます。生成AIには、従来のソフトウェアにはなかった対象も含まれるため、特に注意が必要です。

  • モデル:学習後の重み(ウェイト)。
  • プロンプト:指示文のテンプレート。
  • データ:調整に使った学習用一式や生成サンプル。

知的財産が発注側と受注側のどちらに帰属するかを曖昧にしたまま進めると、トラブルの原因になります。

経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」には、AIを使う受託開発の契約上の注意点が整理されています。契約書を作る際の参考になります。

ポイント

RFPで条件をそろえて複数社から見積もりを集め、NDAと契約書の内容を確かめてから進めるのが基本です。見積もりの差は、要件の解釈や技術構成の違いとして読み取ります。

失敗しないための注意点

丸投げの回避

外注先に丸投げすることは、生成AI開発でよくある失敗です。専門家に任せておけば大丈夫だという考えは、大きなリスクを伴います。

使いやすさや業務への適合度は、技術の完成度とは別の問題です。外注先は現場の細かな事情や利用者の感覚を知らないため、発注側が補う必要があります。

発注側にも、明確なオーナーシップを持つプロジェクト担当者を置くことが不可欠です。

  • 週次確認:進捗を定期的に把握する。
  • 中間レビュー:プロトタイプやデモの確認。
  • 現場の声:利用者から集めるフィードバック。

ある大手企業は、内製と外注の担当を明確に分けました。業務要件、プロンプト改善、効果測定は内製側が担いました。

外注先はシステム基盤、モデル選定、API連携を担当し、役割を分けたことで双方の強みを生かしました。外注先を、成果をともに育てる協働者として位置づけます。

契約形態の選び方(請負 vs 準委任)

契約形態には請負と準委任があり、どちらを選ぶかで後のトラブルの起きやすさが変わります。それぞれの責任範囲を確認しておきましょう。

  • 請負:完成した納品物に対して対価を払い、受注者が品質に責任を負う。
  • 準委任:業務の遂行に対して対価を払い、受注者は完成を保証しない。

生成AIは、契約時点で精度や性能を保証しにくい場合があります。このため請負では、仕様を満たしたかどうかをめぐる争いも起こり得ます。AI開発には試行が必要であり、法律専門家や経産省の指針も準委任との親和性を指摘しています。

PoCや要件定義は準委任、仕様が確定した後の実装は請負とする方法が有効です。初期の不確実性を双方で共有しつつ、後半は品質保証を明確にできます。

準委任契約では、月次の成果報告書や進捗レポートの提出を義務に含めておきます。これにより、作業の透明性を保てます。

ポイント

外注先に任せきりにせず、発注側の担当者が進捗と現場の声を見続けます。初期は準委任、仕様確定後は請負とする組み合わせも、判断の参考になります。

まとめ

生成AI開発を外注する際は、準備、発注先選び、契約、開発中の関与を順に進めます。まず、改善したい業務と目標を数値で定めます。

データを洗い出し、予算と予定を現実的に設定します。PoCから小さく始めて結果を見てから本開発へ進むと、大きな失敗を防ぎやすくなります。

発注先は、実績、運用体制、ヒアリング力を見て、複数社を比べます。契約の前にNDAを結び、知的財産の帰属も明確にします。

開発の不確実性に応じて、準委任、請負、あるいは両者を組み合わせた契約を選びます。そのうえで、自社の担当者が主導し、外注先と協働してください。

野村総合研究所の調査では、2025年時点で57.7%の企業が生成AIを導入済みと回答し、前年の44.8%から増加しています。導入企業が増えるほど、遅れるリスクも大きくなります。

ここまでの手順に沿って準備を進め、自社の課題を解決する生成AIシステムの外注に取り組んでください。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。