Looker導入のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

Lookerとフルスクラッチのどちらを選ぶかは、カスタマイズ性、費用・期間、運用負荷の3点で比べ、要件に合うほうを選ぶのが基本です。

フルスクラッチは自由度が高い一方で、費用と期間がかかるため、事前の見極めが欠かせません。

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Looker(パッケージBI)とフルスクラッチの位置づけ

LookerのLookMLによるモデリングと、フルスクラッチで設計できる業務フローや画面UIを左右に比べた図解。
業務ロジックの反映から独自設計まで、対応範囲が広がります。

データ分析基盤の構築方法は、SaaS型BIツールを導入する方法と、自社専用のフルスクラッチ開発に分かれます。

一般的なパッケージBIは、用意された機能を設定して使うものが多くあります。一方でLookerは、LookMLによって業務ロジックに合わせた指標やデータモデルを柔軟に構築できます。

Lookerはパッケージ製品の中でもカスタマイズ性が高く、オーダーメイドに近い自由度が特徴です。

フルスクラッチは分析基盤をゼロから作るので、業務フローや画面UI、独自の集計アルゴリズムまで設計できます。ただし、多額の費用と期間、高度な技術力が必要です。

多くの企業は、Lookerなどのパッケージで要件を満たせます。そのため、要件に合う方式を見極めることが、無駄な投資を避ける第一歩です。

LookerはSaaS型パッケージ、LookMLで柔軟にモデリング

Lookerがフルスクラッチの代わりになるかは、提供形態とLookMLで実現できる範囲を見れば分かります。

  • 提供形態:Google CloudのSaaS型(クラウド提供型)エンタープライズBI
  • インフラ:基盤開発なしですぐ使え、管理は基本的にクラウド事業者に任せられるため、運用負荷も低い
  • LookML:セマンティックモデリング言語。指標や計算、テーブル結合をコードで設計できる
  • 業務への適合:「売上」「粗利」「LTV」などの固有指標や分析軸、業務ロジックをかなり反映できる
  • 導入判断:カスタマイズが動機なら、LookMLで検証し、満たせれば高額な独自開発は不要

Looker StudioとLookerとフルスクラッチの三者の違い

選択肢を整理するために、Looker Studio、Looker、フルスクラッチの三者を、手軽さ、指標管理、自由度の観点で比べます。

  • Looker Studio:無料〜低コストで使える軽量な可視化ツール
  • Looker:指標を一元管理できる、カスタマイズ性の高いBIパッケージ
  • フルスクラッチ:プラットフォームの制約なく、基盤を独自に設計する開発方式

Looker Studio(旧Google Data Studio)は、個人や小規模チームが手早く可視化する用途に合っています。

LookMLのようなセマンティックレイヤーがないと、指標の定義が各レポートごとに閉じてしまうため、全社で統一したい場合やガバナンスの確保には不向きです。

Lookerは指標の一元管理、権限管理、埋め込み分析を備えており、全社統一の分析基盤に適しています。一方、フルスクラッチなら、業務フローや画面UI、独自の集計アルゴリズムも完全に自由に設計できます。

ただし、Lookerの自由度はLookerというプラットフォームの範囲内にとどまります。Looker Studioは手軽さが高く、自由度は低い位置にあります。

フルスクラッチの初期費用は1,000万円から1億円以上、開発期間は6ヶ月から2年に及ぶこともあります。

自社に必要なのが、手軽な可視化なのか、全社統一のガバナンスなのか、独自システムなのかを見極めます。

ポイント

Lookerで足りるかは、LookMLで業務ロジックをどこまで反映できるかと、Looker Studioや全社統一の必要性で見極めます。特殊な業務要件が残るときだけ、フルスクラッチを考えます。

パッケージとフルスクラッチの比較

Lookerのようなパッケージとフルスクラッチは、初期費用、ランニングコスト、開発期間、メリット・デメリットで比べます。金額や期間だけでなく、両者の価値とリスクを把握することが、適切な判断につながります。

初期費用・ランニング・期間の比較

初期費用、継続費用、立ち上げ期間を比べると、投資規模と開始時期の違いが分かります。

  • 初期費用:パッケージはアカウント費用が中心で、大規模な初期開発費は不要です。独自開発は1,000万円から1億円以上の場合があります。
  • ランニング:パッケージは月額ライセンスとDWHなどの費用。フルスクラッチは、インフラと保守体制の費用が続きます。
  • 開発期間:パッケージは数週間〜数ヶ月。フルスクラッチは6ヶ月から2年かかります。

パッケージでもLookML設計やデータ整備の工数は発生しますが、基盤自体を作る必要はありません。パッケージのライセンスはユーザー課金型が多く、利用者数が費用に影響します。

フルスクラッチではライセンス費用は不要ですが、保守運用を担う社内体制が必要です。パッケージは早く、安く、低リスクで始められます。これに対してフルスクラッチは高コスト、長期間、高リスクです。特別な理由がなければ、まずパッケージで要件を満たせるかを検討します。

メリット・デメリット

費用や期間だけでなく、方式ごとのメリットとデメリットも判断材料にします。

  • パッケージの利点:すぐ使え、インフラ管理を事業者に任せられ、運用負荷が低い
  • パッケージの制約:仕様内の調整に限られ、特殊な業務ロジックや利用者数に比例するライセンス費用に注意
  • フルスクラッチの利点:業務フロー、画面UI、独自アルゴリズムを自由に設計できる
  • フルスクラッチの負担:高額・長期の開発と高度な技術力が必要。保守を自社で担い運用負荷も高い

LookerはLookMLで業務ロジックをかなり反映できますが、想定外の特殊要件には対応しにくい場合があります。一方で、独自開発だけで実現できる要件は限られます。

フルスクラッチなら、他社が真似できない分析システムも構築できます。ただし、保守運用を自社で担うことになるため、初期費用と継続的な負担を比べて慎重に検討する必要があります。

ポイント

金額や期間を比べる前に、パッケージで要件を満たせるかを確かめます。フルスクラッチは初期費用と開発期間が大きく、要件を見極めずに選ぶと、投資に見合わないおそれがあります。

フルスクラッチが正当化される条件

独自アルゴリズム、外部送信の制約、既存APIやSaaSで満たせない要件を確認する3枚のチェックカード。
判断軸は独自性・外部送信・既存サービスへの適合性に分かれます。

フルスクラッチが適する場合もあります。ただし、条件を見極めたうえで、事前にLookerの埋め込み分析も検討します。

フルスクラッチが正当化される3つの条件

初期費用が1,000万円から1億円以上になるため、次のいずれかに当てはまるかを判断材料にします。

  • 独自アルゴリズム:業界知識を反映した仕組みが競争優位の源泉になる
  • 外部送信の制約:機密性や法規制、契約上の制約でデータを一切外部に出せない
  • 複雑な要件:既存APIやSaaSではシステム要件を満たせない

法規制や契約で外部送信が禁じられる場合、クラウド型パッケージは選べず、自社環境で完結する開発が必要になります。独自の需要予測や価格最適化が事業の核心で、外部ツールでは実現できない場合も、この条件に当たります。

複雑な要件は、LookMLや埋め込み分析でも実現できない極めて特殊な場合に限られます。いずれも特殊で、多くの企業には当てはまりません。明確に当てはまらなければ、Lookerのようなパッケージが合理的です。

埋め込み分析(Embedded Analytics)による組み込み

分析機能を自社の製品に取り込みたい場合でも、フルスクラッチで基盤を一から作る必要がないことは多くあります。

  • 組み込み先:業務アプリ、顧客向けサービス、社内ポータル
  • 提供する機能:Lookerのダッシュボードや分析機能
  • 活用できる仕組み:LookMLで統一した指標定義とLookerの分析機能

埋め込み分析(Embedded Analytics)は、Lookerの分析機能を自社のアプリなどに組み込む仕組みです。自社SaaSの利用者向けにデータ分析ダッシュボードを提供する場合にも活用できます。分析エンジンを一から作らずに済むため、パッケージの利点を保ったまま、独自開発に近い体験を提供できます。

組み込みやカスタマイズが目的であれば、まず埋め込み分析で要件を確かめます。これにより、高リスクな独自開発を避けられる場合があります。

ポイント

独自開発を検討するのは、3つの条件のどれかに当てはまる場合に限ります。当てはまらなければ、埋め込み分析を含むLookerで進めるのが基本です。

安易なフルスクラッチのリスクと判断基準

定型業務の効率化、特殊データの独自学習や連携が不要なケース、短期間・低コストの可視化を示す3枚のパネル。
要件を小さく試せる範囲から、投資判断の材料を集められます。

フルスクラッチを選ぶ前に、正当化の条件を確認することが欠かせません。該当しないまま選ぶと、投資対効果が見合わない深刻な失敗につながります。そのため、リスクと判断基準を先に押さえておくことが大切です。

開発費10倍でも成果は見合わない失敗

分析基盤の価値は、作り込みの度合いではなく、意思決定の質やビジネス成果で判断します。

  • 投資の失敗例:既存ツールなどで成果が出るのに、開発費10倍で精度は1.2倍
  • 見落としやすい負担:開発後も保守運用を自社で担い続ける
  • 確認すべき点:投資に見合う成果が得られるかを、定量的に確かめること

3つの条件に当てはまらず、既存ツールやAPIで成果を得られるのに、「完全なカスタマイズ性」や「高い精度」を漠然と求めて独自開発を選ぶと、失敗のおそれがあります。

精度の向上がわずかなら、投じた費用と期間を正当化できないことがあります。作ること自体が目的になると、費用対効果の検証がおろそかになりやすく、注意が必要です。こうした結果になると、投資対効果(ROI)が全く見合わない事態になります。

SaaS・API活用による事前検証

費用を抑えるためには、まずAPIやSaaSで要件を満たせるかを検証することが大切です。この順番が、コストを抑えるうえでの要点です。

  • パッケージが適する場合:定型業務の効率化が目的のとき
  • パッケージが適する場合:特殊データをAIなどに独自学習・連携させる必要がないとき
  • パッケージが適する場合:短期間、低コストでデータを可視化して試したいとき
  • 独自開発を検討する場合:独自アルゴリズムが競争優位、外部送信不可、既存API/SaaSで複雑要件を満たせない場合に限る

多くの企業のデータ活用ニーズは、パッケージが適するいずれかの状況に当てはまります。そのため、完全なカスタマイズ性を漠然と求める前に、LookerなどをPoCで試すことが大切です。

LookMLと埋め込み分析は、パッケージとフルスクラッチの中間にある広い領域をカバーします。

ポイント

独自開発の前に、パッケージやSaaS、APIで成果が出るかを、PoCで数値を使って確かめます。開発費を上げても成果が見合わないときは、独自開発を見直す判断が必要です。

まとめ

両方式の位置づけ、費用・期間、メリット・デメリット、独自開発の条件とリスクを見てきました。

Lookerは、Google CloudのSaaS型エンタープライズBIで、セマンティックモデリング言語のLookMLと埋め込み分析を備えます。パッケージとフルスクラッチの中間に位置する高いカスタマイズ性も、その特徴です。

フルスクラッチは初期費用1,000万〜1億円以上、開発期間6ヶ月〜2年となることがある高コスト・高リスクの方式です。

フルスクラッチが正当化されるのは、独自アルゴリズム、外部送信制約、既存ツールで満たせない複雑な要件という3つの特殊条件のいずれかに該当する場合に限ります。

「開発費10倍でも精度1.2倍」という失敗を避けるため、まずパッケージをPoCなどで検証します。そのうえで、特殊要件が残る場合に限って独自開発を検討し、複数の開発パートナーにも相談して構築方針を決めます。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。