Looker導入の進め方/やり方/流れや方法/手法/工程/手順

Looker導入は、要件定義・現状分析、設計・設定、テスト・本番移行の順に進めます。各工程で決めることを積み重ねると、組織全体で一貫したデータ活用につながります。

Looker導入の全体像

Lookerの概要と主な機能

Lookerは、2012年創業の米国Looker Data Sciences社が提供するBIツールです。Googleは2019年に約2,600億円で同社を買収し、Google Cloudの製品群に加えました。現在は、「Looker」と「Looker Studio」の2製品が提供されており、名称は似ていても位置づけは異なります。

  • Looker:エンタープライズ向けBIプラットフォーム
  • Looker Studio:旧Googleデータポータル

Lookerの中核は、LookMLと呼ばれる独自のデータモデリング言語です。SQLをベースに記述し、データエンジニアやアナリストが業務ロジックをモデル化します。

LookMLでは、たとえば売上やアクティブユーザー数の定義を一か所で管理できます。部門ごとの集計の差を抑えられ、組織全体で共通のデータを使いやすくなります。

Lookerの機能は、表示や分析だけでなく、配信や権限管理までに及びます。

  • 表示:インタラクティブなダッシュボードを作成
  • 分析:Explore機能でセルフサービス分析
  • 配信:レポートをスケジュールに沿って自動送付
  • 連携・管理:Slack、Salesforce、スプレッドシートとの連携やRBACによる権限管理

これらの機能がそろうことで、データを集めてから画面で確認し、活用するまでを一つの製品で扱えます。

Lookerが選ばれる理由

Lookerが選ばれる背景には、データの一貫性、Google Cloudとの連携、利用者層の広さがあります。なかでも一貫性は、LookMLの仕組みと深く関わります。

  • 一貫性:LookMLで指標の定義を共通化
  • Google Cloud連携:BigQueryなどと接続して分析
  • 利用者の広がり:SQLを使わない利用者もデータを探索

LookMLでデータモデルを一か所にまとめて管理すると、部門ごとの数値の食い違いを抑えられます。さらに、ExcelやTableauで個人が独自にレポートを作り、スプレッドシートが乱立する事態も避けやすくなります。

BigQueryの数億行を超えるデータも、ダイレクトクエリ方式を使えば、リアルタイムに近い分析ができます。Lookerへデータをコピーせず参照するため、最新の情報を確認できる点も特徴です。また、セルフサービス分析では、SQLを知らない利用者もグラフやレポートを作成できます。

Gartner社のBIツールのマジッククアドラント2024年版で、Lookerは高く評価されています。同評価では、MicrosoftやTableauと並ぶリーダーポジションです。加えて、グローバルな競合製品と比べても、遜色のないツールとして認知されています。

ポイント

数値の食い違いを抑えたい、データの定義を組織で共通にしたいという課題があるかどうかが、Lookerを検討する目安になります。

Looker導入の進め方・フロー

Looker導入を要件定義・現状分析、設計・設定、テスト・本番移行の3工程で示す図。
前工程で整理した内容を次の工程へ引き継ぐ構成です。

要件定義・現状分析フェーズ

まず、現在のデータ利用状況と導入で達成したい目標を整理します。誰がどのようにデータを使っているかを把握せずに進めると、後工程で手戻りが生じる恐れがあります。整理の対象は、データ、業務、課題、目標の4つです。

  • データ:種類や保管場所、更新頻度、品質
  • 業務:既存レポートと分析業務、利用頻度
  • 課題:データ活用への不満や改善要望
  • 目標:KPI(重要業績評価指標)で成果を明確にする

データソースには、データウェアハウス、RDB、SaaS系サービスなどがあります。ヒアリングは経営層と事業部門を対象にし、IT部門やデータ分析チームにも話を聞きます。各立場の要望を拾うと、後工程の品質向上につながります。

目標の例として、月次レポート作成を月40時間から5時間以下へ減らすことが挙げられます。ほかにも、売上ダッシュボードを経営陣がリアルタイムで見ることや、営業担当者がスマートフォンで日次の進捗を確認することを目標にできます。

ユーザーごとに必要な機能と権限を整理します。対象には、経営層やマネージャー層のほか、現場担当者とエンジニアも含まれます。

一般的なエンタープライズ導入では、要件定義におよそ2〜4週間かかります。スコープが曖昧なままだと後工程でコスト超過につながるため、この段階には十分な時間と人員を充てることが推奨されます。

設計・設定フェーズ

要件定義のあとは、設計と設定を進めます。設計で決めるのは、インフラ、データモデル、ダッシュボードの3つです。

  • インフラ:ホスティング方式と接続先を設定
  • データモデル:LookMLでビューとモデルを作成
  • ダッシュボード設計:KPIタイル、グラフ、表を配置

Google Cloudの環境では、マネージドホスティングが主流の選択肢です。BigQueryに接続する場合は、Google Cloudでサービスアカウントを作成します。

作成したアカウントに付与するロールは、BigQueryデータ編集者とBigQueryジョブユーザーです。認証用のJSONキーファイルは、Lookerの管理画面に登録します。さらに、シングルサインオン(SSO)とVPC Service Controlsも設定します。

データモデルでは、ビューファイルにテーブルやカラムを定義し、モデルファイルにExploreと業務ロジックを記述します。たとえば、受注金額をどのテーブルやカラムから計算するかも、LookMLの中で明示されます。

開発と本番を分けるため、Gitと連携します。LookML変更はプルリクエストでレビューし、承認後に本番へ反映します。こうした仕組みを初期の段階で作っておくと、長期的なデータ品質を保てます。

画面に載せるのは、関係者が日常業務で見るものです。直感的に状況を把握できる形に、レイアウトを整えます。

設計・設定にかかる期間は、規模によって異なります。中規模では1〜3ヶ月が一般的です。

テスト・本番移行フェーズ

設計が終わったら、データや操作を検証し、段階的に本番環境へ移行します。検証では、数値の一致から操作性、クエリの費用、公開の進め方まで、4つの観点で確かめます。

  • 整合性:既存レポートと数値を突合
  • 操作性:利用者に試用を依頼し、使いやすさや画面の見やすさを確認
  • 費用:BigQueryのクエリコストを確認
  • 移行:小さく公開してから対象を拡大

売上金額や顧客数など、経営判断に関わる数値は、複数のパターンで検証します。そのうえで、利用者の意見を受けて、画面レイアウトやフィルター機能を調整します。

本番移行では、まず部門や少人数の利用者に先行して使ってもらい、問題がないことを確かめてから次の段階へ進みます。

スタディサプリを運営するリクルートマーケティングパートナーズ(現リクルート)の事例では、少数チームから活用を始めました。その後、徐々に全社へ展開するアプローチが奏功したと報告されています。

移行後は旧レポートツールと並行稼働し、利用者が慣れてから終了します。本番移行はテスト期間を含めて1〜2ヶ月を見込みます。

要件定義からリリースまでは、小規模で3〜4ヶ月が目安です。一方、中〜大規模では全体で6〜12ヶ月程度かかります。

ポイント

要件定義で目標を決めたうえで、テストで既存レポートとの数値の食い違いを確かめてから本番へ移すと、手戻りを減らせます。

Looker導入の費用相場

Looker導入の総保有コストをライセンス費用、構築費、インフラ、運用保守に分けた図。
ライセンス以外の費用も含めて全体を見渡せます。

ライセンス費用の目安

エンタープライズ向けLooker(旧Looker Core)の価格は、公式サイトで公開されていません。利用規模や要件に応じた個別見積もりになります。

公開情報や導入支援ベンダーの情報では、年間費用は最低でも数百万円からです。ただし、ユーザー数や利用モジュールの数によっては、数千万円規模になるケースも珍しくありません。

料金は、インスタンス稼働にかかるプラットフォーム料金と、個々の利用者にかかるユーザー料金で構成されます。ユーザー料金は全社展開で増える傾向で、主に次の種別に分かれます。

  • Developer:LookMLの開発や管理を担当
  • Standard:ダッシュボード閲覧や簡単な分析を担当

ユーザー種別によって単価が異なる場合があるため、開発担当者数の管理が重要です。

Looker Studioは無料で始められます。Googleアカウントで利用でき、Google Analytics、BigQuery、Google広告などのデータからダッシュボードを作成できます。

Looker Studio Proは1ユーザー・1プロジェクトで月額9ドルです。チームワークスペース、権限管理、SLA保証などの機能が加わります。

Looker Studioは、エンタープライズLookerとは異なるアーキテクチャです。たとえば、LookMLによるデータモデリングと高度なガバナンスは、エンタープライズ版の機能です。

データ成熟度と予算を踏まえて、利用する製品を判断します。Looker Studioから始め、組織の成熟に合わせて移行する方法もあります。

導入・構築コストの内訳

ライセンス費用だけでなく、構築や運用にかかる費用も予算に含めます。構築費は、要件定義から利用者トレーニングまでの5つの作業に分けて捉えられます。

  • 要件定義・設計:要件整理とシステム設計
  • LookML開発:データモデルの開発
  • ダッシュボード開発:画面やレポートの開発
  • テスト・移行支援:検証と本番移行の支援
  • ユーザートレーニング:利用者向けの研修

構築では、SIer(システムインテグレーター)やコンサル会社へ依頼する場合があります。エンジニアやコンサルタントの人月単価は、100〜200万円程度が相場です。

ユーザー数50〜100名程度の中規模企業では、初期導入プロジェクトの外部支援費が500万〜2,000万円前後になるケースが多いとされます。加えて、年間ライセンス費は数百万〜数千万円です。初年度の総コストが1,000万〜5,000万円を超えることもあります。

接続先のBigQueryなどデータウェアハウスの利用料も、見落とせません。LookerはBigQueryへ直接クエリするため、分析が活発になると費用が増えます。

BigQueryにはオンデマンド課金と定額料金プランがあります。オンデマンド課金は2025年時点で1TBあたり約620円です。そこで、想定クエリ量から費用を試算し、適切なプランを選びます。

パーシステントDTテーブル(PDT)で頻出クエリの結果をキャッシュできます。この機能により、BigQueryのクエリコストを大幅に削減できます。

総保有コスト(TCO)は、ライセンスや構築、インフラ、運用保守を含めて試算します。そのうえで、3年〜5年の視点からROIを評価することが推奨されます。

ポイント

費用は、ライセンスだけでなく構築費やBigQueryの利用料、運用保守まで含め、3年〜5年の視点で比べると判断しやすくなります。

Looker導入を成功させるポイント

Looker導入後の定着策として、教育、改善、統制、評価を示す4つのカード図。
教育と運用の見直しを続ける視点が並びます。

社内体制と担当者の選定

導入を進める前に、必要なスキルを持つ担当者をそろえ、社内体制を組みます。社内の役割は5つに分かれ、経営層の判断から現場の要望の窓口まで、担う範囲がそれぞれ異なります。

  • プロジェクトオーナー:経営層または事業部長
  • プロジェクトマネージャー:プロジェクトの実務管理
  • データエンジニア:LookMLの開発
  • ビジネスアナリスト:ダッシュボード設計と要件整理
  • 現場代表者:各部門のユーザー要件の窓口

プロジェクトオーナーには、予算配分や部門間の調整を決める権限が必要です。また、データエンジニアが担うLookMLのデータモデル設計は、導入工程のなかでも専門性が求められます。

LookMLはSQL知識を土台にした独自言語のため、習得に時間がかかります。Google Cloud公式資格には、Professional Data EngineerやProfessional Cloud Architectなどがあります。LookML専門の資格トレーニングプログラムも整備されています。

社内に担当者がいないと外部依存が続き、運用コストが増える恐れがあります。そこで、導入初期から社内エンジニアが開発に参加し、外部支援と一緒に学びます。

経営層自身が会議でLookerのダッシュボードを使う姿勢も大切です。その行動が、データを使う文化を組織に根付かせる動機になります。

ベンダー選びと外部支援の活用

外部支援を選ぶときは、技術力のほかに、どの観点で比べるかを決めておくことが大切です。比べる観点は、同じ業界での導入実績、データ基盤の構築経験、導入後の支援力の3つです。

  • 業界経験:自社と同じ業界での導入実績
  • 基盤経験:BigQueryなどデータウェアハウスの構築経験
  • 継続支援:導入後の保守や改善への対応力

Google Cloudのパートナープログラムには、Looker認定パートナーがいます。国内では、クラウドエース、電算システム、G-genなどが支援実績を持ちます。そのなかにはripla も含まれます。

複数社に提案を依頼し、費用とアプローチを比較して選定します。社内とベンダーで、どこまでを誰が受け持つかを事前に決めておくことも必要です。

たとえば、要件整理は社内が主導し、初期設計やインフラ構築は外部へ依頼できます。また、社内エンジニアがペアプログラミングで学ぶと、内製化と品質確保を両立できます。

契約には、プロジェクト全体の固定費用(ランプサム)で結ぶ方式と、作業量に応じた時間・材料契約があります。要件変更が多い場合は、時間・材料契約で総費用を抑えられることがあります。また、定例会議や進捗レポートの方法は、契約時に決めておくと管理が透明になります。

導入後の定着・活用推進

Lookerは、導入後に定着させ、使い続けることで価値を発揮します。活用を続けるには、ユーザーへの継続的な教育とサポートが特に欠かせません。定着させるための取り組みは、教育、改善、統制、評価の4つに分けられます。

  • 教育:操作説明会と業務別トレーニングを実施
  • 改善:利用者の意見を画面や運用に反映
  • 統制:LookML変更のレビューと承認を設定
  • 評価:利用状況とKPIを継続確認

初期リリース後は、全社説明会で基本操作とExplore分析を案内します。各部門では、業務シナリオに沿った実習を行い、使い方を具体化します。

ZOZOテクノロジーズの事例では、社内勉強会を定期開催しました。現場の意見をダッシュボードの改善に反映し、利用定着につなげたと報告されています。また、SlackやTeamsのグループで、活用のヒントや更新情報を発信できます。

誰でもLookMLを変更できる状態では、モデルの混乱や信頼低下を招きます。Gitのプルリクエストで変更を見直し、本番に反映する前に承認を得る流れにします。

不要になったダッシュボードや古いLookMLは、定期的に整理します。加えて、システムアクティビティデータから閲覧者や参照頻度を確認できます。利用の少ないダッシュボードは、原因を調べて改善を続けます。

利用状況の確認と改善を続けるPDCAサイクルが、活用率の維持につながります。具体的には、導入から6ヶ月後や1年後にROIを見直し、KPIの達成状況を確認します。

ポイント

社内で担当者を育てられるか、どこまでを社内で受け持つかを先に決めておくと、導入後も外部へ頼り続ける状態を避けやすくなります。

まとめ

Looker導入は、要件定義、設計・設定、テスト・本番移行の順に進みます。データモデリングとスケーラビリティを活かせば、組織の活用水準を高められます。

成功させるには、明確な要件と、LookMLを扱える人材が必要です。そのうえで、段階的に移行し、継続して使う体制も作っておきます。

LookMLの仕組みを理解して設計することが、長期的な品質を支えます。内製化によるレポート工数の削減や意思決定の迅速化といった効果が、積み上がっていきます。そのため、投資対効果も十分に見込めます。

エンタープライズLookerのライセンスは、年間数百万円からが目安です。導入構築費と合わせると、初年度は数百万〜数千万円規模になる場合があります。

データの一貫性が高まることで、経営判断の質の改善にもつながります。また、Looker Studioから小さく始める方法もあり、予算や成熟度に応じて選べます。

導入時は、自社のデータ成熟度と課題を整理し、Google Cloud認定パートナーに相談します。さらに、適切なパートナーと計画を立てることが、導入の成功を支えます。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。