アプリ移行の実行を支援するツールを探すと、クラウドベンダーが自社サービスへの移行専用に提供するもの、インフラベンダーが仮想マシン単位での移行に特化したもの、生成AIを使ってレガシーコードの解析やモダナイゼーションまで支援するものなど、性質の異なる製品が並びます。名称や機能一覧だけでは違いが分かりにくく、対応環境の確認を怠ると、いざ導入した後に自社のオンプレミス構成や連携先に対応していないことが判明することもあります。
本記事では、アプリ移行ツールの提供形態の違いを整理したうえで、2026年7月時点で現行の公式情報を確認できた主要7製品を紹介します。各製品の得意領域、課題別の絞り方、料金・契約前に確認すべきこと、デモやPoCで確かめるべきポイントまで解説しますので、候補を比較する際の基準としてご活用ください。
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アプリ移行ツールの3つの提供形態

アプリ移行を支援するツールは、大きく分けるとクラウドベンダー純正の移行サービス、インフラベンダー製の仮想マシン移行ツール、生成AIを活用したモダナイゼーション支援ツールの3つに分類できます。どの形態が自社に合うかは、移行先の環境と、どこまで自動化を任せたいかによって変わります。
クラウドベンダー純正の移行サービスは移行先が決まっている場合に有力です
AWSやMicrosoft Azure、Google Cloudといった各クラウドベンダーは、自社のクラウドへの移行を前提とした純正サービスを無償または低コストで提供しています。移行先のクラウドがすでに決まっている場合、追加のライセンス費用をあまりかけずに着手できる点が利点です。ただし、これらのサービスは基本的に「そのクラウドへ移す」ことを前提に設計されているため、複数クラウドを比較検討している段階では、特定ベンダーへの依存を強める判断になる点に留意が必要です。
独立系ツールとAI活用型ツールは特定用途に強みを持ちます
インフラベンダーが提供する仮想マシン移行ツールは、特定の仮想化基盤や複数クラウドをまたいだ移行に対応しやすく、移行先を柔軟に選びたい場合の候補になります。一方、独立系ベンダーが提供するレプリケーション型の移行ツールは、物理・仮想・クラウドを問わず幅広い環境間の移行に対応する汎用性が特徴です。さらに近年は、生成AIを使ってレガシーコードの仕様を解析し、テストや変換作業を自動化するモダナイゼーション支援ツールも登場しており、旧システムの仕様書が失われている場合に検討する価値があります。
製品を比較するときの共通軸

製品紹介ページの機能一覧だけでは、自社のシステム構成に適合するか判断できません。対応環境、ダウンタイム、データ移行の対応範囲、料金体系、サポート体制という軸で条件をそろえて比較することが重要です。
移行元・移行先の対応範囲とダウンタイムを確認します
最初に、自社の現行環境(オンプレミスの物理サーバー、特定の仮想化基盤、他クラウドなど)をその製品が正式にサポートしているかを確認します。「幅広い環境に対応」という説明でも、実際に自社の構成が動作検証済みかどうかは製品によって差があります。あわせて、切替時に許容できるダウンタイムの水準と、リアルタイムレプリケーションのような継続的な同期に対応しているかどうかも比較します。
データ移行の対応範囲と料金体系まで確認します
第三に、ツールがカバーするのはインフラ・OS層の移行までなのか、アプリケーションのデータベースやユーザーデータの移行支援まで含むのかを確認します。多くのインフラ移行ツールはOSやディスクの複製が中心で、アプリケーション固有のデータ整合性チェックは別途自社で設計する必要があります。第四に、料金体系です。ツール自体が無償で、移行先・移行元のインフラ利用料だけが発生する形態もあれば、ソースサーバー数やデータ量に応じた従量課金が発生する形態もあります。評価軸はアプリ移行の選定ポイント・選び方・種類でも整理していますので、方式選定とあわせて確認するとよいでしょう。
アプリ移行の主要製品7選

ここでは、2026年7月時点で現行の公式ページと提供内容を確認できた7製品を紹介します。掲載順は優劣を示すランキングではありません。製品ごとに得意とする移行元・移行先や料金体系が異なるため、自社の環境と条件をそろえて比較することが重要です。
AWS Application Migration Service(AWS MGN)
AWS Application Migration Serviceは、物理サーバーやVMware・Hyper-Vなどのオンプレミス環境、他のパブリッククラウド、AWSリージョン間の移行を、AWSへ寄せて進めたい企業の候補です。移行と同時にディザスタリカバリ構成への転用やOS・ライセンスの見直しといったモダナイゼーションも組み込める点が特徴です。2026年7月時点の公式サイトによると、ソースサーバーごとに90日間の無料期間が設けられ、それ以降はサーバー数・データ転送量・レプリケーションに使うEC2の稼働・ディスクサイズに応じた従量課金となっています。適用条件や最新の単価は見積時に公式ページで確認してください。
AWS Transform
AWS Transformは、メインフレームやVMware環境、Windows/.NETアプリケーション、SQL Serverなど、旧仕様の把握が難しくなりがちな領域のモダナイゼーション・移行を、エージェンティックAIで支援するサービスです。自然言語での要件のやり取りを通じて、既存コードの解析やテストデータの収集、変換スクリプトの生成まで自動化できる点が特徴で、旧システムの仕様書が失われている、または理解できる技術者が不足している企業にとって検討価値があります。料金は本文では非公開で、公式サイトの料金ページや見積もりで確認する必要があります。
Microsoft Azure Migrate
Azure Migrateは、オンプレミスや他クラウドの環境を評価し、Azureへの移行を計画・実行するための統合ツールです。2026年7月時点の公式サイトによると、Azure Migrateのツール自体は無償で提供されており、移行中・移行後に利用するAzure仮想マシンやストレージなどのリソース利用料が別途発生する体系になっています。すでにAzureを主要なクラウドとして利用している、あるいは移行先として決めている企業にとって、追加のツールライセンス費用をかけずに評価から実行までを進めやすい点が利点です。
Google Cloud Migration Center
Google Cloud Migration Centerは、現行のオンプレミスやマルチクラウド環境を検出・評価し、Google Cloud移行後のコストを見積もったうえで、移行シナリオに応じた各種ツールを提供する候補です。移行計画の初期段階で「クラウドに移すといくらかかりそうか」を把握したい企業に向いています。Migration Center自体の個別料金は公式ページに明記されておらず、Google Cloud全体の料金体系や無料クレジットの範囲内で利用が始められる形になっています。
Nutanix Move
Nutanix Moveは、vSphereやHyper-V、AWSなど複数の環境からNutanixの基盤へ仮想マシンを移行できるツールで、リファクタリングや再構築を伴わずに移行できる点が特徴です。2026年7月時点の公式サイトによると、Nutanixの顧客であれば追加コストなしで利用できるとされており、すでにNutanix環境を保有している、またはこれから採用を検討している企業にとって導入のハードルが低い候補です。特定の仮想化基盤に依存せず複数ソースからの移行に対応できる柔軟性も、検討材料になります。
OpenText Migrate(旧Carbonite Migrate)
OpenText Migrateは、物理・仮想・クラウド環境を組み合わせた移行を、バイトレベルのリアルタイムレプリケーションによって進める独立系ツールです。AWS、Azure、Google Cloud、VMware、Hyper-Vなど複数の移行先に対応しており、特定のクラウドベンダーに依存せず移行先を柔軟に選びたい企業や、業務を止められない基幹システムの移行で最小限のダウンタイムを重視する企業の候補になります。料金は公式サイトに公開されておらず、デモや問い合わせを通じて確認する必要があります。
Corent Technology MaaS
Corent Technology MaaSは、クラウド移行に加えて、既存アプリケーションをマルチテナント対応のSaaSへ作り替えるSaaS化までを視野に入れたサービスです。単純にインフラを移すだけでなく、将来的に自社製品を外部提供するSaaSビジネスへ展開したい企業にとって、移行とSaaS化を一つのベンダーで検討できる点が特徴です。料金は公式サイトに公開されておらず、個別の相談・見積もりが必要です。
自社の課題別に候補を絞る方法

7製品を一斉に細部まで比較するより、移行先クラウドが決まっているか、複数クラウドを比較中か、旧システムの仕様把握に不安があるかという課題を先に決め、必須要件で候補を絞る方が効率的です。
移行先クラウドが決まっている場合
AWSへの移行を決めているならAWS Application Migration ServiceやAWS Transformを、Azureへの移行を決めているならAzure Migrateを、Google Cloudへの移行を決めているならGoogle Cloud Migration Centerを軸に検討します。純正サービスであるため追加のライセンス費用を抑えやすく、移行後の運用サポートもクラウドベンダーの窓口に集約できる利点があります。
移行先を比較中、または仕様把握に不安がある場合
複数クラウドを比較検討している段階であれば、特定ベンダーに依存しないNutanix MoveやOpenText Migrateを候補に、移行先を柔軟に選べる状態を保ちながら検証を進める方法があります。旧システムの仕様書が失われている、あるいは理解できる技術者が不足している場合は、AWS TransformのようなAI活用型ツールを候補に、仕様解析からの支援が受けられるかを確認します。将来的に自社製品のSaaS化まで見据えているならCorent Technology MaaSも比較対象になります。
料金・契約前に確認すべきこと

ツール自体が無償に見えても、移行先で利用するインフラ費用や、並行稼働期間中の二重運用コストまで含めると総費用は変わってきます。料金表に載る単価だけでなく、移行準備から切替後の運用までを含む総保有コストで判断します。
「無料」の範囲と別途課金される項目を切り分けます
クラウドベンダー純正の移行ツールは、ツール自体の利用料が無料と案内されていても、移行先で稼働するインフラの利用料や、レプリケーション用に一時的に立ち上げるサーバーの費用は別途発生します。「無料」という言葉がどこまでの範囲を指すのかを見積もり時に確認し、並行稼働期間が長引いた場合の想定コストまで含めて試算しておくことが大切です。料金が非公開の製品についても、確認できない具体額を比較表へ推測で入れることは避け、見積もり取得後に反映します。
データの保護範囲と乗り換え時の条件も確認します
移行ツールは、通信中・保存中のデータ暗号化、アクセス権限の管理、障害発生時の切り戻し手順にどこまで対応しているかを確認します。あわせて、将来別のツールやクラウドへ再度移行する場合に、現在の構成情報や移行履歴をどの程度引き継げるかも比較しておくと、特定ベンダーへの過度な依存を避けやすくなります。
デモとPoCで製品一覧を最終候補へ絞る

資料比較で2〜3製品まで絞ったら、実際のサーバー構成やデータの一部を使ってデモまたはPoCを行います。情報システム部門だけでなく、実際にアプリを運用する担当者も参加すると、切替後の運用イメージのずれを減らせます。
影響の小さいサーバー1台をパイロットとして移行します
本番の主要システムをいきなり対象にするのではなく、影響範囲が限定的なサーバーやアプリを1つ選び、実際にレプリケーションから切替、切り戻しまでの一連の操作を試します。ダウンタイムの実測値、データ整合性の確認にかかった時間、操作画面の分かりやすさを記録し、公開資料の説明と実際の使用感にギャップがないかを確かめます。
想定コストと実際のコストの差を測定します
PoC前に、見積もり段階で想定していた移行費用・期間・作業工数を記録し、PoC実施後の実測値と比較します。特にクラウドベンダー純正ツールでは、レプリケーション用に一時的なリソースが稼働するため、想定より利用料が増える場合があります。差分が生じた要因を洗い出しておくと、本番移行時の予算超過を防ぎやすくなります。
アプリ移行の製品比較で押さえておきたいポイント

製品一覧から候補を選ぶ際は、無料という表示やおすすめ順位だけでなく、自社の環境と移行範囲を同じ条件で比較する必要があります。ここでは、選定時に判断が分かれやすいポイントを整理します。
複数クラウドを併用する場合は特定製品に固定しません
複数のクラウドを併用する、あるいは将来的にクラウド間の再移行も視野に入れる場合は、特定ベンダー純正のツールだけに頼らず、Nutanix MoveやOpenText Migrateのような移行先を選ばないツールも比較対象に含めておくと、後の選択肢を狭めずに済みます。
AI活用型ツールもデータ整合性の最終確認は人の手で行います
生成AIによる仕様解析やテストスクリプトの自動生成は、人手にかかる工数を大幅に削減する可能性がありますが、生成された内容が自社の業務要件と合致しているかの最終確認は、業務を理解した担当者が行う必要があります。AIが出した結果をそのまま承認するのではなく、確認プロセスをどう組み込むかを導入前に検討してください。
料金は移行期間全体の総コストで比較します
同じサーバー台数、データ量、想定移行期間を各社へ提示し、ツール利用料だけでなく、並行稼働期間中のインフラ二重コストや自社側の作業工数まで含めた総コストで比較してください。
まとめ

アプリ移行ツールの市場では、クラウドベンダー純正の移行サービス、インフラベンダー製の仮想マシン移行ツール、AI活用型のモダナイゼーション支援ツールという性質の異なる製品が並びます。今回紹介した7製品にも、移行先の自由度、料金体系、AIによる仕様解析支援の有無など、異なる特徴があります。
移行先の方針と仕様把握の状況から候補を絞ります
移行先クラウドがすでに決まっているか、複数クラウドを比較中か、旧システムの仕様把握に不安があるかを整理し、対応環境・ダウンタイム・料金体系を同じ質問で比較すれば、無料という表示だけに左右されず候補を絞れます。
最後はパイロット移行で実測して決定します
資料上の機能数ではなく、自社のサーバー構成とデータを使ったパイロット移行でダウンタイムと実コストを確認したうえで決定してください。既製の移行ツールでは、レガシー特有のデータ形式や複雑な条件分岐を伴うクレンジングまでは対応しきれない場合があります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、製品比較で明らかになった不足機能の整理や、移行専用スクリプトの開発、既存システムと新環境をつなぐ連携構築を支援しています。
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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
