アプリ移行のパッケージ/クラウド製品一覧

アプリ移行ツールは、クラウドベンダー純正の移行サービス、インフラベンダー製の仮想マシン移行ツール、AI活用型のモダナイゼーション支援ツールの3つに大別できます。主要7製品の特徴、課題別の絞り方、料金と契約前の確認事項を順に取り上げます。なお、各テーマの詳細は関連記事でも扱っています。

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アプリ移行ツールの3つの提供形態

アプリ移行を支援するツールを、クラウドベンダー純正、仮想マシン移行、生成AI活用型の3種類に分けた図。
移行先や仕様把握の状況に応じて、検討する提供形態が分かれます。

アプリ移行を支援するツールは、提供元によって3つの形態に分かれます。代表例は、クラウドベンダー純正の移行サービス、インフラベンダー製の仮想マシン移行ツール、生成AIを活用したモダナイゼーション支援ツールです。独立系のレプリケーション型ツールも、仮想マシン移行の一種として扱います。

どの形態が自社に合うかは、移行先の環境と、どこまで自動化を任せたいかによって変わります。

移行先が決まっている場合に有力な、クラウドベンダー純正の移行サービス

AWSやMicrosoft Azure、Google Cloudといった各クラウドベンダーは、それぞれのクラウドへの移行を前提とした純正サービスを提供しています。

  • 料金:ツール自体は無償か、低コストで使えます。
  • 利点:移行先のクラウドが決まっている場合、追加のライセンス費用をあまりかけずに着手できます。
  • 留意点:「そのクラウドへ移す」ことを前提に設計されているため、複数のクラウドを比較中の段階では、特定ベンダーへの依存が強まります。

特定用途に強みを持つ独立系ツールとAI活用型ツール

仮想マシン移行ツール(独立系を含む)とAI活用型ツールは、それぞれ得意とする用途が異なります。

AI活用型は、旧システムの仕様書が失われている場合に検討する価値があります。

  • インフラベンダー製の仮想マシン移行ツール:特定の仮想化基盤や複数クラウドの移行に対応しやすく、移行先を柔軟に選べます。
  • 独立系ベンダーのレプリケーション型移行ツール:物理・仮想・クラウドを問わず、幅広い環境間の移行に対応できる汎用性が特徴です。
  • 生成AI活用型のモダナイゼーション支援ツール:レガシーコードの仕様解析やテスト・変換作業を自動化できます。

ポイント

移行先のクラウドが決まっているかと、自動化をどこまで任せたいかで、候補にすべき形態が変わります。決まっていれば純正サービス、比較中なら独立系ツールを中心に見ると絞り込みやすくなります。

製品を比較するときの共通の観点

製品比較の共通軸として、対応環境、ダウンタイム、データ移行の対応範囲、料金体系、サポート体制を示した図。
同じ観点を各製品に当てはめると、条件をそろえて見比べられます。

製品紹介ページの機能一覧を見ても、自社のシステム構成に適合するかは判断できません。そこで、同じ観点で条件をそろえて比べることが大切です。

まず比べたいのは、対応環境、ダウンタイム、データ移行の対応範囲の3つです。加えて、料金体系とサポート体制も、同じ条件で比べます。

移行元・移行先の対応範囲とダウンタイム

まず、自社の現行環境(オンプレミスの物理サーバー、特定の仮想化基盤、他クラウドなど)を、その製品が正式にサポートしているかを確かめます。「幅広い環境に対応」と説明されていても、自社の構成で動作検証済みかどうかは製品によって差があります。

あわせて、切替時に許容できるダウンタイムの水準と、リアルタイムレプリケーションのような継続的な同期に対応しているかどうかも比べます。

データ移行の対応範囲と料金体系

三つ目の観点として、ツールがカバーするのが、インフラ・OS層の移行までか、アプリケーションのデータベースやユーザーデータの移行支援まで含むかを確認します。

  • 対応範囲:多くのツールはOS・ディスクの複製が中心で、データベースの整合性チェックは自社で設計する必要があります。
  • 料金体系:ツール自体が無償でインフラ利用料のみ発生する形態と、サーバー数やデータ量に応じた従量課金の形態に分かれます。

評価軸の詳しい考え方は、アプリ移行の選定ポイント・選び方・種類でも整理しています。方式の選定と合わせて確認してください。

ポイント

製品を比べるときは、対応環境とダウンタイムを先に確かめると、候補を早く減らせます。そのうえで、データ移行の対応範囲と料金体系を同じ条件で見比べると、違いが見えてきます。

アプリ移行の主要製品7選

2026年7月時点で、現行の公式ページで提供内容を確認できた7製品を取り上げます。掲載順は優劣を示すランキングではありません。

製品ごとに得意とする移行元・移行先や料金体系は異なります。そのため、自社の環境と条件をそろえて比べることが大切です。

AWS Application Migration Service(AWS MGN)

AWS Application Migration Serviceは、物理サーバーやVMware・Hyper-V環境からの移行に対応するサービスです。また、他クラウドやAWSリージョン間の移行にも対応します。

  • 特徴:移行と同時に、ディザスタリカバリ構成への転用やOS・ライセンスの見直しも組み込めます。
  • 料金:ソースサーバーごとに90日間の無料期間があり、以降はサーバー数・データ転送量・EC2稼働・ディスクサイズに応じた従量課金です。

AWSへ寄せて進めたい企業の候補として挙げられます。なお、適用条件や単価は、見積もりの際に公式ページで確認してください。

AWS Transform

AWS Transformは、メインフレーム、VMware、Windows/.NET、SQL Serverなどの移行を支援するサービスです。

  • 特徴:自然言語のやり取りを通じて、エージェンティックAIが既存コードの解析、テストデータ収集、変換スクリプト生成までを自動化します。
  • 対象企業:旧仕様書が失われている、または理解できる技術者が不足している企業が候補になります。

料金はここでは示さず、公式サイトの料金ページか見積もりで確認する必要があります。

Microsoft Azure Migrate

Azure Migrateは、オンプレミスや他クラウドの環境を評価し、Azureへの移行を計画・実行するための統合ツールです。

  • 料金:2026年7月時点の公式サイトによると、ツールは無償で、Azure仮想マシンやストレージなどの利用料は別途発生します。
  • 利点:Azureを主要クラウドとして利用中、または移行先に決めている企業なら、追加のライセンス費用をかけずに評価から実行まで進めやすくなります。

Google Cloud Migration Center

Google Cloud Migration Centerは、現行のオンプレミスやマルチクラウド環境を検出・評価するツールです。

  • 機能:Google Cloud移行後のコストを見積もったうえで、移行シナリオに応じた各種ツールを提供します。
  • 料金:Migration Center自体の個別の価格は、公式ページに明記されていません。

利用は、Google Cloud全体の料金体系や無料クレジットの範囲内で始められます。移行計画の初期段階で「クラウドに移すといくらかかりそうか」を把握したい企業に合っています。

Nutanix Move

Nutanix Moveは、vSphereやHyper-V、AWSなど複数の環境からNutanixの基盤へ仮想マシンを移行できるツールです。

  • 特徴:リファクタリングや再構築を伴わずに移行でき、2026年7月時点の公式情報では、Nutanix顧客なら追加コストなしで利用できます。
  • 候補企業:Nutanix環境を保有している、またはこれから採用を検討している企業にとって、導入のハードルが低い選択肢です。

特定の仮想化基盤に依存せず、複数のソースからの移行に対応できる柔軟性も、検討材料になります。

OpenText Migrate(旧Carbonite Migrate)

OpenText Migrateは、物理・仮想・クラウド環境を、バイトレベルのリアルタイムレプリケーションで移行する独立系ツールです。

  • 対応移行先:AWS、Azure、Google Cloud、VMware、Hyper-Vなど、複数の移行先に対応します。
  • 候補企業:特定のクラウドベンダーに依存せず移行先を柔軟に選びたい企業や、業務を止められない基幹システムでダウンタイムを重視する企業です。

料金は公式サイトに示されていないため、デモや問い合わせを通じて確かめる必要があります。

Corent Technology MaaS

Corent Technology MaaSは、クラウド移行に加えてSaaS化までを視野に入れたサービスです。既存アプリケーションを、マルチテナント対応のSaaSへ作り替える機能も含みます。

インフラの移行だけでなく、将来的に自社製品をSaaSとして外部に提供したい企業にとっては、移行とSaaS化を一つのベンダーで検討できる点が特徴です。料金は公式サイトに掲載がなく、個別の相談と見積もりが必要です。

自社の課題別に候補を絞る方法

7製品を最初から細部まで比べるより、自社の課題を先に決めて絞り込むほうが効率的です。そこで、移行先クラウドが決まっているか、複数クラウドを比較中か、旧システムの仕様把握に不安があるかを、必須要件として整理します。

移行先クラウドが決まっている場合

移行先クラウドが決まっている場合は、そのクラウドの純正サービスから検討します。

  • AWSへの移行を決めている場合:AWS Application Migration ServiceとAWS Transformが候補になります。
  • Azureへの移行を決めている場合:Azure Migrateから検討します。
  • Google Cloudへの移行を決めている場合:Google Cloud Migration Centerを候補に加えます。

純正サービスなので追加のライセンス費用を抑えやすいうえ、移行後の運用サポートもクラウドベンダーの窓口にまとめられる利点があります。

移行先を比較中、または仕様把握に不安がある場合

移行先を比較中の場合や、仕様把握に不安がある場合は、状況ごとに候補を絞り込みます。

  • 複数クラウドを比較検討している場合:Nutanix MoveやOpenText Migrateを候補にします。
  • 仕様書が失われている、または技術者が不足している場合:AWS TransformなどのAI活用型ツールで、仕様解析の支援を確認します。
  • 自社製品のSaaS化まで見据えている場合:Corent Technology MaaSも比較対象になります。

特定ベンダーに依存しないツールであれば、移行先を柔軟に選べる状態を保ちながら検証を進められます。

ポイント

移行先クラウドが決まっているかどうか、仕様把握に不安があるかどうかで、比べる候補を先に絞れます。絞ったあとに細部を比べるほうが、7製品を一斉に見るより効率的です。

料金・契約前の確認事項

ツール自体が無償に見えても、移行先で使うインフラの費用や、並行稼働期間中の二重運用コストを加えると、総費用は変わります。そのため、料金表の単価に加えて、移行準備から切替後の運用までを含む総保有コストで判断します。

「無料」の範囲と別途課金される項目

クラウドベンダー純正の移行ツールは、ツール自体の利用料が無料と案内されることがあります。

  • 別途発生する費用:移行先で稼働するインフラの利用料や、レプリケーション用に一時的に立ち上げるサーバーの費用です。
  • 確認のポイント:「無料」の範囲を見積もりの時点で確認し、並行稼働期間が長引いた場合の想定コストまで試算しておきます。

料金が公開されていない製品について、確認できていない具体額を比較表に推測で入れることは避けます。見積もりを取得してから、比較表に反映します。

データの保護範囲と乗り換え時の条件

移行ツールが、通信中・保存中のデータ暗号化、アクセス権限の管理、障害時の切り戻し手順にどこまで対応しているかを確認します。加えて、将来別のツールやクラウドへ再度移行する場合の引き継ぎやすさも比べておきます。現在の構成情報や移行履歴をどこまで引き継げるかを確かめると、特定ベンダーへの過度な依存を避けやすくなります。

ポイント

判断には、ツール利用料に加えて移行から運用までの総保有コストを使います。「無料」の範囲と並行稼働期間の想定、暗号化や切り戻し、乗り換え時の条件を、同じ表で比べます。

デモとPoCによる最終候補の絞り込み

PoCで確認する項目として、ダウンタイムの実測値、データ整合性の確認にかかった時間、操作画面の分かりやすさを並べた図。
3項目をそろえて記録すると、公開資料と実際の使用感を照合できます。

資料で比べて2〜3製品まで絞ったら、実際のサーバー構成やデータの一部を使い、デモまたはPoCを行います。

情報システム部門だけでなく、実際にアプリを運用する担当者も参加すると、切替後の運用イメージのずれを減らせます。

影響の小さいサーバー1台によるパイロット移行

本番の主要システムを最初から対象にするのは避け、影響範囲が限定的なサーバーやアプリを1つ選びます。選んだ対象で、レプリケーションから切替、切り戻しまでの一連の操作を実際に試します。

ダウンタイムの実測値、データ整合性の確認にかかった時間、操作画面の分かりやすさを記録します。

記録した値は、公開資料の説明と照らし合わせ、実際の使用感にずれがないかを確かめます。

想定コストと実際のコストの差の測定

PoCの前に、見積もり段階で想定していた移行費用・期間・作業工数を記録しておき、PoC後の実測値と比べます。特に、クラウドベンダー純正ツールはレプリケーション用に一時的なリソースが稼働するため、想定より利用料が増えることがあります。そのため、差が生じた要因を洗い出しておくと、本番移行時の予算超過を防ぎやすくなります。

ポイント

デモやPoCでは、自社の構成とデータを使い、ダウンタイムと実コストを実測できるかで最終候補を決めます。想定との差が大きい製品は、要因を確かめてから残すかを判断します。

アプリ移行の製品比較で押さえておきたいポイント

製品一覧から候補を選ぶときは、無料という表示やおすすめ順位に頼らず、自社の環境と移行範囲を同じ条件で比べる必要があります。

判断が分かれやすい点も、あわせて見ておきます。

複数クラウドを併用する場合の製品選び

複数のクラウドを併用する場合や、将来クラウド間の再移行も視野に入れる場合は、特定ベンダー純正のツールだけで決めないようにします。そこで、Nutanix MoveやOpenText Migrateのような移行先を選ばないツールも比較対象に含めておくと、後の選択肢を狭めずに済みます。

AI活用型ツールの出力に対する人による最終確認

生成AIによる仕様解析やテストスクリプトの自動生成は、人手にかかる工数を大幅に削減する可能性があります。ただし、生成された内容が自社の業務要件に合っているかは、業務を理解した担当者が最終確認する必要があります。そのため、AIが出した結果をそのまま承認せず、確認の流れをどう組み込むかを導入前に検討してください。

移行期間全体の総コストによる料金比較

各社に同じサーバー台数、データ量、想定移行期間を提示します。

ツール利用料に加えて、並行稼働期間中のインフラの二重コストや自社側の作業工数まで含めた総コストで比べてください。

まとめ

アプリ移行ツールは、クラウド純正、仮想マシン移行、AI活用型の3形態に分かれ、それぞれ得意な用途が異なります。今回取り上げた7製品も、移行先の自由度、料金体系、AIによる仕様解析支援の有無などで違いがあります。

移行先の方針と仕様把握の状況による候補の絞り込み

移行先クラウドが決まっているか、複数クラウドを比べているか、仕様把握に不安があるかで、見るべき候補が変わります。対応環境、ダウンタイム、料金体系を同じ質問で比べれば、無料という表示に引きずられずに候補を絞れます。

パイロット移行による実測と決定

資料に並ぶ機能数よりも、自社のサーバー構成とデータを使ったパイロット移行で、ダウンタイムと実コストを確かめてから決定してください。

パイロット移行では、既製ツールで足りない部分も見えてきます。

  • 既製ツールの限界:レガシー特有のデータ形式や複雑な条件分岐を伴うクレンジングまでは対応しきれない場合があります。
  • riplaの支援範囲:不足機能の整理、移行専用スクリプトの開発、既存システムと新環境をつなぐ連携構築です。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。