アプリ改修のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

アプリ改修とは、既存のWebアプリ・モバイルアプリの特定の機能・画面・モジュールだけを手直しする取り組みです。フルスクラッチ・オーダーメイド開発は、追加する機能をゼロから作るか、既存の部品を組み合わせて作るかを決める判断です。判断では、費用差、適用時期、判断条件の3つを順に確認します。

  • 費用差:現行を維持する場合と見直す場合で、費用がどれだけ違うかを比べます。
  • 適用時期:いつから見直しを適用できるかという条件です。
  • 判断条件:自社に合う選択肢かどうかを評価します。

関連する全体像は、次の記事にまとめています。

▼全体ガイドの記事
・アプリ改修の完全ガイド

アプリ改修におけるフルスクラッチ・オーダーメイドの位置づけ(他6つとの違い)

他の取り組みとアプリ改修を左右に分け、アプリ全体の作り直しと機能単位の部品選択を比較した図解。
判断対象の粒度によって、検討する作り方が変わります。

アプリ改修でフルスクラッチ・オーダーメイド開発を検討するときは、まず他6つの取り組みとの粒度の違いを押さえておく必要があります。アプリケーションのモダナイゼーションは、技術手法が中心となり、アーキテクチャ全体の作り替えを指します。アプリ刷新は、経営判断が中心となり、大規模投資の意思決定を指します。

アプリ更改は、契約やEOS/EOLを起点とし、フレームワークEOLに伴う止むを得ない全面作り直しを指します。アプリリニューアルは、UX/UIを起点とし、ブランドの世界観を全面的に表現するものです。

他の取り組みは、いずれもアプリ全体を単位とします。一方で、アプリ改修のフルスクラッチ・オーダーメイド開発は、追加する1機能・1モジュール単位で、ゼロから独自実装するか、既存ライブラリ・SaaS部品・ノーコードツールを組み合わせて実現するかを決める判断です。その粒度の小ささが最大の違いです。

同じ「ゼロから作る」という選択でも、対象がアプリ全体か1機能かによって、判断の重みも費用への影響も異なります。この違いを見誤ると、本来なら既存部品の組み合わせで安く済むはずの改修に、全面刷新並みの予算と期間を投じてしまうことになりかねません。

「アプリ全体」ではなく「1機能単位」のビルド・バイ判断

アプリケーションのモダナイゼーション、アプリ刷新、アプリ更改、アプリリニューアル、アプリリアーキテクチャ、アプリリプレイスでフルスクラッチを選ぶ場合は、いずれも「アプリ全体をゼロから作り直すかどうか」という判断です。その規模は数百万〜数千万円に及ぶ、大きな意思決定です。

これに対してアプリ改修では、追加するこの1機能を、既存の部品を流用して安く早く作るか、自社独自の要件に完全対応させるために作り込むかを決めます。判断の粒度は、機能単体・モジュール単体です。判断の対象がアプリ全体から1機能に縮まるため、意思決定のスピードも求められる予算規模も、大きく異なる水準になります。

改修における「既定路線」は既存部品の活用

アプリリニューアルのフルスクラッチがブランド差別化のための「積極的な選択」であるのに対し、低予算・短納期が前提のアプリ改修では、フルスクラッチは後回しにするのが基本です。まず既存ライブラリ・SaaS部品・ノーコードツールの活用を第一の選択肢として検討し、それでは要件を満たせない場合にのみフルスクラッチを選ぶ「消極的選択」が既定路線になります。

この優先順位を逆にすると、本来数十万円で済む改修が数百万円規模に膨らみ、部分改修の予算感を大きく超えてしまいます。

ポイント

追加する機能の粒度を先に見極めることが大切です。アプリ全体の作り直しと同じ感覚で判断すると、既存部品で足りる改修にも大きな予算を投じてしまいます。

既存ライブラリ活用と完全オリジナル実装の費用差

軽微な機能追加、お問い合わせ・フィードバック、プッシュ通知、ログインの費用と人月の目安を4つのパネルで示した図解。
機能の種類ごとに、費用幅と必要な工数の幅を見比べられます。

1機能を追加するとき、既存の部品を使うかゼロから作るかで、費用は大きく変わります。この差を理解しておくことが、低予算の改修を実現する第一歩です。

既存パッケージ・OSSベースのカスタマイズによる費用削減効果

既存のパッケージソフトやオープンソース(OSS)をベースにカスタマイズして使えば、フルスクラッチの完全オリジナル開発と比べて、費用を40〜60%程度抑えられる可能性があります。ただし、既存のものを使う場合はシステムの自由度が下がるため、自社の要件に合うかどうかを事前にしっかり確認しておく必要があります。

一般的な顧客管理、決済システム、チャットツールなどの汎用機能は、一から作らずに既存のクラウドサービスやパッケージを使います。そのうえで自社システムと連携(API連携など)させると、開発費用を大きく抑えられます。

機能単位の費用相場の目安

既存の汎用機能を組み合わせる軽微な機能追加は、1回あたり10万〜80万円(約0.3〜1人月)が目安です。お問い合わせ・フィードバック機能の追加は、20万〜50万円(0.3〜0.8人月)の水準です。プッシュ通知機能の追加は10万〜80万円(0.5〜1人月)、ログイン機能の追加は20万〜80万円(0.5〜1.5人月)という水準です。

これに対し、既存部品では対応できず独自ロジックをフルスクラッチで作り込む場合は、同じ「1機能追加」でも、数百万円規模に費用が跳ね上がることがあります。

予算超過を防ぐには、この価格差を発注前に把握しておくことが欠かせません。

ポイント

判断の目安は、1機能でも既存部品で足りるか、独自ロジックが要るかです。軽微な追加は10万〜80万円、独自ロジックは数百万円規模になることがあるため、発注前に切り分けてください。

機能単体でもフルスクラッチが必要になるケース

既存部品の活用が既定路線であっても、機能単体でフルスクラッチが避けられない場合があります。

独自の商習慣・コア業務プロセスに関わる機能

既存のクラウドサービス(SaaS)やパッケージ製品は、「標準的な業務処理」を前提に作られています。そのため、導入する際には自社の業務フローをシステム側に合わせる必要があります。

しかし、独自の商習慣や特殊な業務フロー(自社の競争力の源泉となるコア業務プロセス)を、完全にシステムに反映させたい場合は、既存製品のカスタマイズだけでは限界があります。このため、現場の業務に完全にフィットさせ、将来の機能拡張や仕様変更にも柔軟に対応させたい機能は、機能単体であってもフルスクラッチ・オーダーメイドでゼロから作り込む必要があります。

既存コードとの整合性が既製部品では取れないケース

長年の機能追加で複雑になり、仕様書(ドキュメント)が整備されていない既存アプリでは、外部ライブラリやSaaS部品を組み込んでも、既存のデータ構造や認証方式との整合性が取れないことがあります。その結果、接続部分の作り込みに手間がかかり、既製品を導入するメリットが相殺されかねません。

他社が開発した保守性の低いシステムに部品を継ぎ足すより、影響範囲を見極めたうえで対象機能だけをフルスクラッチで作るほうが、かえって安上がりで安全になる場合もあります。この点は、判断材料として押さえておくべきです。

ポイント

業務が標準的な処理に収まるか、既存コードに部品を接続できるかが分かれ目です。収まらなければ、その機能だけをフルスクラッチで作る選択肢が現実的です。

低予算・短納期での実現方法

汎用部分とコア機能の分担、MVP、短いスプリントのアジャイル開発、ローコード・ノーコードツールを4枚のカードで整理した図解。
機能の絞り込みと実装手段の選択を並べて確認できます。

限られた予算と納期の中で機能追加を実現するには、いくつかの実務的な工夫が有効です。全面刷新のような大がかりな体制を組まなくても、小回りの利くアプローチを組み合わせることで、質を落とさずにコストと期間を圧縮できます。

汎用部分は連携、コア部分のみオーダーメイドのハイブリッド戦略

汎用的な機能は既存のSaaSやOSS・ツールを組み合わせてコストと期間を圧縮し、自社独自の強みとなるコア機能だけをフルスクラッチで作り込みます。このメリハリをつけたハイブリッドなアプローチが、低予算・短納期の改修案件を成功させる基本方針です。

最初から高機能なものを作ろうとすると、使われない機能に無駄なコストがかかります。そのため、目的を達成するための最低限の必須機能(MVP)だけに絞って開発・リリースする、スモールスタートも有効です。

また、将来の拡張をあらかじめ想定した柔軟な設計にしておくと、初期費用を低く抑えつつ、後から機能を追加しやすくなります。

アジャイル開発・ローコード/ノーコードツールの活用

数週間程度の短い期間(スプリント)で設計・実装・テストを小さく回すアジャイル開発を取り入れると、早い段階で動くシステムを確認できます。これにより、仕様の認識のズレによる大きな手戻りを防ぎやすく、短納期にもつながります。

また、プログラミングの記述を最小限に抑えられるローコード・ノーコードツールを使えば、開発期間を大幅に短縮し、人件費も削減できます。フルスクラッチが必要なコア機能を見極めたうえで、それ以外の周辺機能にはこうしたツールを積極的に使うことが、限られた予算内で機能追加を実現する実務的な近道になります。

ポイント

迷ったときは、既存部品の組み合わせを第一の案にし、自社の強みとなるコア機能だけを作り込むかどうかを基準に考えてください。

依頼先選定とフルスクラッチ判断の精度

既存部品を使うべきか、フルスクラッチにすべきかというビルド・バイの判断は、依頼先の提案力によって精度が大きく変わります。同じ要件でも、提案するベンダーによって見積もり金額や実装方針は大きく異なります。その違いは、ビルド・バイの判断への向き合い方に起因していることが少なくありません。

「作りすぎない」提案をしてくれるかの見極め

売上を大きくしたいベンダーほど、既存部品で十分に対応できる要件でも、フルスクラッチを提案しがちな傾向があります。

依頼先を選ぶ際は、既存のライブラリ・SaaS・ノーコードツールで実現できないかを、まず検討しているかを確かめます。そのうえで、それでも要件を満たせない部分だけをフルスクラッチとして切り分けて提案してくれるかを見ます。

現場の「現状の業務フローを変えたくない」という要望を、すべて受け入れて無理なカスタマイズを勧めるベンダーは、保守コストを増大させるリスクがあるため、注意が必要です。

発注前に確認すべき体制

発注前には、依頼先が既存コードの解析と影響範囲の調査を丁寧に行い、ビルド・バイの判断根拠を明確に説明できるかを確認しておく必要があります。

ローコード・ノーコードツールの活用実績や、外部ライブラリ・SaaS連携の実装経験は、低予算・短納期の改修を得意とするパートナーかどうかを見極める材料になります。さらに、自社と同業種・同規模のアプリでの改修実績があれば、ビルド・バイの判断の精度もより信頼できるものになります。

ポイント

依頼先を選ぶときは、既存部品で実現できない部分だけをフルスクラッチとして切り分けて提案するかを見てください。根拠を説明できるかが、選定の目安になります。

まとめ

アプリ改修のフルスクラッチ・オーダーメイド開発は、他の取り組みとは粒度の異なるビルド・バイの判断です。他の取り組みとの位置づけの違いから、既存ライブラリ活用と完全オリジナル実装の費用差、機能単体でもフルスクラッチが必要になるケース、低予算・短納期での実現方法、依頼先選定のポイントまで、順に見てきました。

既存部品の活用で費用を40〜60%程度抑えられる一方、自社独自の商習慣に関わるコア機能は、機能単体でもフルスクラッチが必要になります。そのため、汎用部分は連携し、コア部分だけをオーダーメイドにするハイブリッド戦略が現実的な落としどころです。

「作りすぎない」提案をしてくれる誠実なパートナーを選び、限られた予算の中で最適なビルド・バイの判断を行うことをお勧めします。

▼全体ガイドの記事
・アプリ改修の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。