既存アプリの設計が古くなり、改修や性能改善が進みにくくなったとき、そうした状況を打開するのが「アプリリアーキテクチャ(再設計・再構築)」の外注です。外注は現状の把握から検収まで段階を追って進むため、発注側は、各段階で何を用意し、どこまでを誰が受け持つかを決めておく必要があります。
- 発注前の準備とRFP作成:現状を把握し、依頼資料にまとめる
- 契約・品質・移行計画の設計:保守体制、テスト、段階移行の進め方を契約に含める
- 成果物・テストコード・費用の定義:納めるものと費用の目安を決めておく
- 失敗パターンを避ける発注者管理:発注側が判断を担い、スコープの広がりを抑える
通常の新規開発と違い、既存ユーザーへの影響を抑えながら移行するため、発注前の準備と契約の組み方が結果を左右します。
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発注前に必ず行うべき準備作業

リアーキテクチャの外注を成功させるには、発注前の準備が通常の新規開発以上に重要です。現状のシステムを正確に把握し、ベンダーに伝えられる状態にしておくことで、提案の質と開発の精度が大きく変わります。
現在のアーキテクチャ図の作成と技術スタックの棚卸し
ベンダーへの最初の依頼資料として最も重要なのが、現在のシステムアーキテクチャ図です。フロントエンド・バックエンド・データベース・インフラ(クラウド・オンプレミス)の構成と、サービス間の依存関係を図にまとめます。
たとえばWebアプリなら「フロントエンド(React/Vue等)→ APIサーバー(Node.js/Ruby on Rails等)→ DB(PostgreSQL/MySQL等)」のように、層のつながりを整理します。一方、モバイルアプリなら「iOS/Androidクライアント→ BFFレイヤー→ マイクロサービス群→ データストア」のように並べます。
技術スタックの棚卸しでは、次の3点を一覧にしておきます。
- フレームワークやライブラリのバージョン:版数を一覧にし、EOLに近いものを把握します
- 外部APIやSaaSへの依存関係:どの外部サービスに、どこまで頼っているか
- デプロイ方法:CI/CDパイプラインの有無
特にEOLに近いバージョンは、リアーキテクチャの優先度が上がります。
テストコードのカバレッジ(多くのレガシーアプリは10〜20%未満であることが多い)やドキュメントの整備状況も、あわせて書き出します。
数年運用されたアプリでは、「ドキュメントが存在しない」「当初の設計者が退職している」「本番のみに存在する設定がある」といったケースも珍しくありません。こうした負債の実態を正直に開示することが、現実的なスコープと費用見積もりにつながります。技術スタックを洗い出す作業は、規模にもよりますが、一般的に1〜2週間程度を見込んでください。
パフォーマンス要件の定量化とSLA定義
リアーキテクチャの目的がパフォーマンス改善である場合、要件を数字で定義しておくことが契約上のトラブル回避に直結します。「速くする」「スケールさせる」といった曖昧な表現のままでは、達成できたかどうかを判断できません。そこで、具体的なSLA(サービスレベル合意)を、計測基準とあわせて発注仕様書に明記します。
- 応答時間の目標値:APIのP95レイテンシを500ms以下、初期表示のLCP(Largest Contentful Paint)は2.5秒以下とします。
- 同時接続数・スループット:ピーク時の同時接続1,000セッションを処理でき、1秒あたりのリクエスト処理数(RPS)を500以上に保つことを求めます。
- 可用性:月間稼働率99.9%(ダウンタイムは月43分以内)を目標とし、計画メンテナンス時間の上限を規定します。
- スケーラビリティ:ユーザー数が現状の3倍になっても追加インフラコストを○○円以内に抑え、オートスケーリング対応を必須とします。
応答時間の500msは、現状の平均2秒と比べて大きく縮める目標です。これらのSLAは、本番リリース前の負荷テスト(Apache JMeter、k6、Locustなどのツールを使用)で検証する形で、契約に組み込みます。
負荷テストのシナリオ、合格基準、実施方法を事前に合意しておけば、「要件を満たしているか否か」の検収判断を客観的に行えます。
リアーキテクチャ外注の全体フローと発注ステップ
リアーキテクチャの外注は、通常の新規開発と比べて「現状分析」「移行計画」に多くの工数がかかるのが特徴です。
段階的に進めると、リスクを抑えながら移行を確実に完了できます。
発注の5ステップ詳細(現状分析→RFP→選定→契約→移行・検収)
発注は5段階で進みます。現状分析とRFP作成で依頼の材料をそろえ、ベンダーを選んで契約を結んだあと、段階的に移行して検収します。
- 現状分析(発注前)
アーキテクチャ図や技術スタックを用意し、現状の問題点を明らかにします。 - RFP(提案依頼書)の作成
現状システムの資料(アーキテクチャ図・技術スタック一覧・既知の問題点)を添付します。 - ベンダー選定
3〜5社から提案を受け、技術力・移行実績・コミュニケーション能力・保守体制を総合的に評価します。 - 契約締結
後述する「リリース後の保守体制」を含めて契約を設計し、検収基準を明確にします。 - 段階的移行と最終検収
フィーチャーフラグなどを使った段階的なリリースで進めます。
現状分析では、パフォーマンス計測を含めて技術的負債の種類と量を把握します。あわせて、リアーキテクチャの目的(パフォーマンス改善・スケーラビリティ確保・開発速度向上・コスト削減等)と、優先度の高い移行領域を整理します。この段階で、「すべてを一度に作り直す(Big Bang型)」か「段階的に移行する(Strangler Fig型)」かの方針も社内で決めておきます。
依頼内容には、目標アーキテクチャのイメージ、完了の期限、予算の目安、成果物要件(ソースコード・APIドキュメント・テストコード等)を明記します。リアーキテクチャ特有の項目として、移行中の既存サービス継続要件も必ず記載します。
リアーキテクチャは既存コードの深い理解が必要なため、「コードリーディングの品質」を評価軸に加えることを推奨します。提案書だけでなく、技術選定の理由や移行リスクの考え方について技術的なディスカッションを行い、ベンダーの実力を見極めます。
契約形態(請負型・準委任型のハイブリッドが多い)、知的財産権の帰属、移行期間中のSLAも、あわせて明確にします。
移行フェーズごとに中間チェックポイントを設け、品質と進捗を確かめます。最終検収では、SLAで定めたパフォーマンス要件を負荷テストの結果で確かめます。あわせてAPIドキュメントとテストコードの成果物を見たうえで、移行後の安定稼働を通常1〜2週間の監視期間で見届け、検収を完了とします。
リアーキテクチャ専門ベンダーの選定ポイント
リアーキテクチャを得意とするベンダーかどうかは、実績、移行アプローチ、テスト戦略の3点に表れます。
- 実績の質:課題や技術スタックに近い実績があるかを見ます。
- 移行アプローチの論理性:停止の難しいサービスに、一気に全部作り直すBig Bang型は不向きだと理解しているかを見ます。
- テスト戦略への理解:移行前のテスト整備を、具体的に説明できるかを見ます。
「○件のリアーキテクチャ実績がある」という説明だけでなく、近い事例があるかを確かめます。たとえば、「モノリスからマイクロサービスへの移行」「Railsアプリのモジュラーモノリス化」「レガシーAndroidアプリのKotlin化」などです。
移行の進め方では、「Strangler Fig(ストラングラー・フィッグ)パターン」などの段階移行手法を提案できるかも評価します。
テストコードが乏しいレガシーアプリに対して、移行前にどのようにテストを整備するかを説明できるベンダーは信頼できます。たとえば、E2Eテストを先に書いてリグレッションを防ぐ方法があります。
Strangler Figパターンは、Martin Fowlerが提唱した移行パターンです。新旧システムを並行稼働させながら機能を段階的に移すため、サービスを止めずにリアーキテクチャを進める際の標準的なアプローチになります。
リリース後の保守体制を含む契約設計の重要ポイント
リアーキテクチャプロジェクトの契約設計で見落とされがちなのが、移行完了後の保守体制です。
特に、新しいアーキテクチャが本番稼働した直後は隠れていた問題が表面化しやすく、迅速な対応体制が欠かせません。
移行後の瑕疵担保・保守契約の設計
リアーキテクチャの開発契約と保守契約は、分けて設計したうえで連動させるのが基本です。具体的には、次の点を契約に盛り込みます。
- 瑕疵担保期間と保証範囲:検収後に見つかったバグの無償対応について、期間と範囲を決めます。
- 移行後の緊急対応SLA:リリース後3ヶ月間の障害対応時間を、契約に明示します。
- モニタリング・ログ管理の引き継ぎ:監視の仕組みを、社内チームへのハンドオーバーとして契約に含めます。
民法改正(2020年)以降、「瑕疵担保」から「契約不適合責任」に変わりましたが、実務上は「検収後○ヶ月以内に発見されたバグは無償対応」という形で契約します。リアーキテクチャでは、複雑な移行に起因するバグが検収後に発覚するケースが多いため、一般的な6ヶ月ではなく12ヶ月の瑕疵担保期間を設けることを推奨します。
たとえば、「重大障害(P1)の初回応答1時間以内・解決4時間以内」「軽微なバグ(P3)の対応1週間以内」といった対応時間を定めます。障害対応の連絡手段(Slack/メール/電話)と担当者も、あらかじめ決めておきます。
Datadog・New Relic・AWS CloudWatchなどの監視ツールの設定、アラートルール、ダッシュボードを成果物として示します。「運用できる状態で引き渡す」ことを文章で明記しておくと、引き渡しの範囲で行き違いが起きにくくなります。
請負型・準委任型のハイブリッド契約設計
リアーキテクチャは要件が途中で変わりやすく、現状調査の結果次第でスコープも動きます。そのため、フェーズによって契約形態を使い分けるハイブリッド型が適しています。
- 現状分析・設計フェーズ(準委任型):既存コードの分析や移行計画の策定は、作業に対して報酬を払う準委任契約が向いています。
- 移行実装フェーズ(請負型):設計が固まったものから順に、請負契約でマイルストーンごとに契約します。
- 保守フェーズ(月額準委任型):本番リリース後は、SLAを定めた月額の保守契約に切り替えます。
月額固定制(例:月100万円×2ヶ月)でエンジニアをアサインし、分析と移行設計に集中してもらいます。
「認証モジュールの移行完了:○○万円」「決済APIの刷新完了:○○万円」のように機能単位で区切ると、成果に対して費用を払う透明性が生まれます。
保守範囲(バグ修正のみか、小規模な機能追加も含むか)、月間の対応工数の上限、超過時の追加費用も明記します。
フィーチャーフラグを活用した段階的リリース計画の発注仕様への組み込み方

サービスを停止せずにリアーキテクチャを進める際に、最も有効な技術手法が「フィーチャーフラグ(Feature Flag / Feature Toggle)」です。フィーチャーフラグとは、コードの変更をデプロイしたままにしながら、機能のオン/オフをリアルタイムに切り替えられる仕組みです。
フィーチャーフラグの発注仕様書への記載方法
フィーチャーフラグを使った段階的リリースは、発注仕様に要件として組み込みます。
- フィーチャーフラグ管理基盤の要件:コードを再デプロイせずに切り替えられ、変更履歴が残ることを求めます。
- カナリアリリース計画の仕様化:問題がなければ1%から10%、50%、100%へ広げる展開計画を書きます。
- ロールバック手順の明文化:旧システムへ切り戻す手順と、その所要時間(目標:5分以内)を定めます。
フラグ管理には、LaunchDarkly・Unleash・AWS AppConfig等のツール(または自社実装)を使います。あわせて、ユーザーセグメント(内部ユーザー・ベータユーザー・全ユーザー)ごとに切り替えられることも要件にします。
各ステージのロールアウト判断基準(エラーレート○%以下・P95レイテンシ○ms以下など)も、発注仕様書に記載します。
フィーチャーフラグによるロールバックは、コードを再デプロイせずに実行できるため、インシデント時の影響時間を最小限に抑えられます。
カナリアリリースは、Netflix、Amazon、Facebookなどのテック企業が採用する標準的な手法で、リアーキテクチャのリスクを大幅に低減します。
段階的移行フェーズの設計と発注スコープの区切り方
リアーキテクチャの発注スコープを全体で一括に出すより、フェーズに分けるほうが、ベンダーへのリスク移転と発注者側のコントロール性を両立できます。一般的なフェーズ分割では、基盤整備、コアモジュールの移行、残りの移行の順に進みます。
- フェーズ1(基盤整備・3〜4ヶ月):テストコードのカバレッジを最低60%まで引き上げ、CI/CDや監視、フィーチャーフラグの基盤を整えます。
- フェーズ2(コアモジュールの移行・4〜6ヶ月):ビジネスへの影響が大きいコアモジュール(認証・課金・ユーザー管理等)から優先して移行します。
- フェーズ3(残余モジュールの移行・3〜4ヶ月):優先度の低い機能を移行し、旧システムのコードを削除します。
このフェーズは次のフェーズの品質を担保する土台であり、省略すると後工程のリスクが著しく高まります。
各モジュールを独立したデプロイ単位に分け、フィーチャーフラグで新旧を切り替えながら本番に投入します。
旧システムのインフラを停止すると、コスト削減の効果が実現します。
UI変更を伴う場合のUXテスト計画の組み込み方
リアーキテクチャに伴ってUIも刷新する場合は、UXの品質を発注仕様に組み込むことが欠かせません。
技術的な動作が正常でも、UIの変更によってユーザーが操作方法を見失い、離脱率が急上昇するおそれがあります。実際に、大手ECサイトがリニューアル後に売上を10〜20%低下させるケースは珍しくありません。
UXテスト要件の発注仕様書への記載方法
UXテストを発注仕様に含めるときは、ユーザビリティ、A/Bテスト、アクセシビリティの3つに分けて要件を書くと伝わりやすくなります。
- ユーザビリティテストの実施要件:リリース前に、実際のユーザーか代表的な属性の被験者5〜8名で実施します。
- A/Bテスト計画の組み込み:フィーチャーフラグで新旧UIを一定割合のユーザーに並行提供し、判断期間(2週間以上)を合意します。
- アクセシビリティ要件:WCAG 2.1 AA準拠をUX要件として明示します。
主要タスク(例:商品購入フロー・プロフィール変更・パスワードリセット)の完了率と所要時間を計測・記録します。また、NPS(Net Promoter Score)またはSUS(System Usability Scale)のスコアを移行前後で比べることを、成果物要件として規定します。
判断に使うメトリクス(クリック率・コンバージョン率・エラー発生率)もあらかじめ合意しておくと、データに基づいて移行を判断できます。
スクリーンリーダー対応、キーボード操作対応、色コントラスト比(4.5:1以上)を検収基準に含め、リアーキテクチャ後のアクセシビリティ品質を担保します。
モバイルアプリ特有のリアーキテクチャ発注における注意点
モバイルアプリ(iOS/Android)のリアーキテクチャには、Webアプリとは異なる固有の課題があります。
- アプリストアの審査期間:iOS App StoreではAppleの審査に1〜7日程度かかるため、Webアプリのような即時ロールバックができません。
- 旧バージョンの並行サポート:旧APIとの後方互換性を保つ期間(例:リリースから6ヶ月間)を明記します。
- デバイスフラグメンテーション:テストデバイスのマトリクス(最低10機種・OSバージョン3世代以上)を要件に含めます。
審査リスクを考えたリリース計画と、フィーチャーフラグによるサーバーサイド制御(アプリ更新なしで機能を切り替える)の仕組みを発注仕様に含めることが重要です。
モバイルアプリは、ユーザーがアップデートしないケースが多いため、この期間が欠かせません。強制アップデートを促す画面のUI実装も、成果物として定義します。
Androidはメーカーや OSバージョンの多様性が高いため、この要件が必要になります。あわせて、自動化テスト(Espresso/XCUITest等)の実施も求めます。Firebase Test Lab等を使ったクラウドデバイステストも検討します。
成果物要件:APIドキュメント・テストコードの定義方法
リアーキテクチャ後の長期的な保守性を確保するには、ソースコードに加えて「ドキュメント」と「テストコード」を成果物として明示的に定義することが大切です。
両者を発注仕様に含めておくと、後継ベンダーへの引き継ぎや、社内エンジニアによる内製化への移行がスムーズになります。
APIドキュメントの成果物要件の定義
APIドキュメントは、リアーキテクチャ後に社内チームや後継ベンダーがシステムを理解して維持するための欠かせない資産です。発注仕様書には、ドキュメントの形式と内容を要件として明記します。
- OpenAPI(Swagger)仕様書:全APIエンドポイントを、スキーマや認証方式、エラーコードまで記述します。
- アーキテクチャドキュメント:移行後の全体構成図(コンポーネント図・シーケンス図・ERD)とADRを含めます。
- 運用手順書:障害対応、定期メンテナンス、スケーリングの手順を成果物に含めます。
記述はOpenAPI 3.0以上の形式とし、SwaggerUI等で閲覧できる形式で提供することも、成果物要件とします。コードと同期して更新される仕組み(コードファーストのドキュメント生成ツール等)を採用することも、要件に含められます。
ADRは技術的な意思決定の記録(Architecture Decision Record)です。環境構成(開発・ステージング・本番)とデプロイ手順書も、成果物として定義します。構成図とADRは、引き継ぎ時に「なぜこの設計にしたか」を後から理解するために不可欠です。
障害発生時のRunbook(障害種別ごとの対応手順)、定期メンテナンス手順(DBバックアップ・証明書更新等)、スケーリング手順(手動・自動スケーリングのトリガーと操作方法)が対象です。
テストコードの品質要件と成果物定義
テストコードを「資産」として発注仕様に明示すると、ベンダーが後から付け足すのではなく、開発と並行して作る文化を育てられます。
- テストカバレッジの定量要件:ユニットテストのライン/ブランチカバレッジを80%以上とし、検収基準に含めます。
- テストの自動化要件:テストをCI/CDパイプライン(GitHub Actions・GitLab CI等)に統合し、プルリクエストごとに自動実行させます。
- パフォーマンステストの成果物:負荷テストのシナリオファイルと結果レポートを定めます。
ビジネスロジック層は90%以上とし、統合テストは主要なAPIエンドポイントを100%カバーすることを検収基準に含めます。E2E(エンドツーエンド)テストで主要ユーザーフロー(購入・登録・ログイン等)を網羅することも求めます。カバレッジレポートはCI/CDパイプラインで自動生成し、成果物として提出することを義務づけます。
テスト実行時間は、ユニットテスト10分以内・E2Eテスト30分以内とし、開発速度を保ちます。読みやすく保守しやすいコードで書かれているかは、検収時にコードレビューで確かめます。
結果レポートには、ピーク時のスループット・レイテンシ分布・エラー率を含め、ボトルネックの特定と改善の記録も残します。シナリオファイル(k6・JMeter等)は、将来自社で負荷テストを再実施するときの資産になります。
リアーキテクチャ外注の費用相場とコスト最適化

外注費用は、システムの規模・複雑度・移行期間によって大きく変わります。あくまで目安として、規模別の相場を見ておくと判断の材料になります。
規模別の費用相場と内訳
小規模リアーキテクチャ(500〜1,500万円):ユーザー数1万人未満、機能数20以下の小規模Webアプリが対象です。技術スタックを刷新します(例:PHP5系からLaravelへの移行、JQueryからReactへのフロントエンド置き換え)。期間は3〜6ヶ月が目安で、テスト整備とCI/CD構築を含みます。
中規模リアーキテクチャ(1,500〜5,000万円):ユーザー数1〜10万人程度、機能数50〜100のWebアプリまたはモバイルアプリが対象です。アーキテクチャを刷新します(例:モノリスからモジュラーモノリスへの移行、APIの全面刷新)。期間は6〜12ヶ月が目安で、フィーチャーフラグ基盤、パフォーマンステスト、ドキュメント整備を含みます。
大規模リアーキテクチャ(5,000万円〜):ユーザー数10万人超、複雑な業務ロジックを持つシステムのマイクロサービス化やクラウドネイティブ化が対象です。期間は12〜24ヶ月が目安で、複数チームによる並行開発体制が必要になります。海外のSaaS企業の事例では、2〜3年・数十億円を投じるケースも珍しくありません。
コスト最適化のための発注設計テクニック
外注コストを適切に抑えるには、発注の組み方にも工夫が要ります。
- スコープの優先度付けと段階発注:全機能を一度に発注せず、影響の大きい領域から段階的に移行します。
- 社内エンジニアとの分業:現状分析、テスト作成、ドキュメント整備を社内で担い、移行実装をベンダーに依頼します。
- マネージドサービスの活用:フラグ管理や監視、CI/CDを使うと、ベンダーの実装工数を減らせます。
効果を検証しながら次のフェーズへ進み、フェーズ1の完了後に予算承認を得る進め方にすると、ROIを確かめながら投資を続けられます。
この形にすると、外注コストを30〜50%削減できるケースがあります。ただし、社内エンジニアの工数確保と役割分担を事前に明確にしておくことが前提です。
対象は、フィーチャーフラグ管理(LaunchDarkly等)、モニタリング(Datadog等)、CI/CD(GitHub Actions等)です。初期費用はかかりますが、長期的なTCO(総所有コスト)を下げる効果があります。
リアーキテクチャ外注でよくある失敗パターンと対策
リアーキテクチャプロジェクトは、通常の開発プロジェクトと比べて失敗のリスクが高い傾向があります。業界調査では、大規模なシステム刷新プロジェクトの約30〜40%が期待どおりに完了しないとされています。
代表的な失敗パターンと対策を理解しておくことは、発注者にとって欠かせません。
Big Bang型移行への固執と「第2システム効果」
最もよくある失敗が、「すべてを一度に作り直す」Big Bang型移行への固執です。「古いシステムを全部捨てて1から作れば綺麗になる」という判断は、エンジニアリングの観点では誤りとは言えません。ただし、ビジネス上のリスクが非常に高い選択です。
「第2システム効果」(Frederick Brooksが「人月の神話」で指摘した概念)として知られるように、「1から作り直した新システム」は往々にして当初の見積もりの2〜3倍の期間・コストがかかります。リリース時点で旧システムの機能を完全に再現できていないケースも、多くあります。
旧システムには、次のものが積み重なっています。
- 暗黙の仕様:書面に残っていない前提や決まり
- エッジケースへの対応:例外的な入力や状況への対処
- 長年の改善:運用を重ねて積み上げた手直し
それらを再発見しながら作り直す難しさは、想定以上に高いのです。
対策:前述のStrangler Figパターンによる段階移行を基本とし、Big Bang型を選ぶのは相応の理由がある場合に限ります。たとえば、旧システムのライセンスが切れる、セキュリティ上の理由で即時廃棄が必要、といったケースです。RFPにもこの方針を明記し、ベンダーに段階移行のアプローチを求めます。
スコープの無制限拡大(スコープクリープ)と発注者側の管理責任
リアーキテクチャの途中で「ついでにこの機能も追加しよう」「新しいアーキテクチャに合わせてUIも全面刷新してほしい」と要望が重なり、スコープが無制限に広がること(スコープクリープ)は、期間とコストの超過の主因です。移行中に機能を追加すると、システムの複雑さが倍増し、ベンダーの混乱も招きます。
対策:契約書に、スコープ変更の手続き(Change Request Process)を明文化します。変更の手続きは、次の流れにします。
- 変更は書面で申請する
- ベンダーが影響範囲と追加費用を見積もる
- 発注者が承認し、追加契約を結ぶ
「リアーキテクチャ完了後に機能追加のフェーズを設ける」という原則を社内でも徹底することが重要です。
リアーキテクチャの外注を成功させるには、発注者自身が「プロジェクトオーナー」として主体的に関わり、明確な意思決定を素早く行える体制を整えることが何より大切です。ベンダー任せにせず、週次のステータスレビューと月次のアーキテクチャレビューを実施して、技術的な判断にも積極的に加わることが、期待どおりの完成への近道になります。
アプリリアーキテクチャ全体の考え方は、アプリリアーキテクチャの完全ガイドでも確認できます。
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会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
