アプリリニューアルの発注/外注/依頼/委託方法について

アプリリニューアルは、見た目の変更から全面的な作り直しまで、規模がさまざまです。発注担当者は、発注前の準備を整え、資料を作り、開発会社を選んで契約し、品質を管理しながら進めます。

発注の判断を誤ると、既存ユーザーの離脱やストア審査の却下、開発コストの大幅な超過といったリスクが現実になりかねません。

アプリリニューアルの発注前準備

アプリリニューアルの発注前準備として現状分析、目的の明確化、開発会社の判断、プロダクトオーナー設置を示す図
4項目をそろえると、開発会社への依頼内容をまとめやすくなります。

発注を成功させるには、開発会社に声をかける前の発注前準備がもっとも重要です。準備が不足したまま複数社に提案を依頼すると、見積もりの前提が会社ごとに異なり、比べられなくなります。さらに、開発の途中で大幅な仕様変更が頻発しやすくなります。

現状分析とリニューアル目的の明確化

リニューアルの目的には、UIデザインの刷新、機能の追加・改善、技術的負債の解消があります。OS対応やセキュリティ強化、ビジネスモデルの転換も考えられます。

まずは「何のためにリニューアルするのか」を社内で合意し、優先順位を付けておくことが大切です。目的があいまいなままだと、開発会社に伝える要望も定まりません。

現状分析では、アプリの利用状況データ(DAU・MAU・セッション時間・離脱率・クラッシュ率)を集めます。あわせて、ユーザーレビューの定性データや、App Store・Google Playの評価推移も押さえます。

現状分析で集めたデータは、後述する発注資料にも使うため、開発会社と共有できる形に整理しておきましょう。

「見た目だけ変えたい(UIリニューアル)」のか、「根本から作り直したい(フルリビルド)」のかによって、発注するプロジェクトの規模・コスト・期間が大きく変わります。

方針は、次の2つの型のどちらに近いかで整理します。

  • UIリニューアル(部分改修):既存の機能やビジネスロジックに問題がなく、デザインだけを刷新したい場合。
  • フルリビルド(全面作り直し):既存コードの技術的負債が深刻で、改修コストがリビルドを上回る場合。

UIリニューアルは、コードの品質が保たれ拡張性がある場合や、リリースまでの期間が短くコストを抑えたい場合にも当てはまります。

フルリビルドは、開発言語やフレームワークを刷新したい場合(例:ネイティブからFlutterへの移行)にも当てはまります。ビジネスモデルや機能の根幹から変えたい場合や、セキュリティ上の問題が既存コードでは対処できない場合にも適しています。

UIリニューアルとフルリビルドでは、発注先の開発会社の選定基準も変わります。そのため、方針は社内の意思決定者を交えて決め、後から覆らないよう合意を文書に残しておきます。

既存開発会社継続 vs 新規切り替えの判断

アプリリニューアルで悩みやすいのが、既存の開発会社に継続して依頼するか、新しい会社に切り替えるかという判断です。

どちらにもメリットとデメリットがあるため、一概に新しい会社の方が良いとは言えません。次の判断基準に照らして考えます。

既存開発会社への継続が適しているケース

  • 既存コードへの理解:既存コードの構造・技術的負債を深く理解している。
  • コミュニケーション:これまでのやり取りに大きな問題がない。
  • 技術スタックへの対応:既存会社がリニューアル後の技術スタックにも対応できる。
  • 引き継ぎコストの回避:新会社へのキャッチアップ時間(引き継ぎコスト)を回避したい。

新規開発会社への切り替えが適しているケース

既存会社の技術力・体制がリニューアル後の要件に不足している場合(例:新しいフレームワークに対応できない)や、過去のプロジェクトで品質問題・コミュニケーション不全があった場合には、切り替えを検討します。

また、より高いUX設計力・デザイン力を持つ会社が必要な場合や、コスト面で大幅な改善が見込まれる場合も、切り替えの理由になります。

新規開発会社に切り替える場合は、既存コードのソースコード・設計書・環境情報の引き継ぎが必要になります。この引き継ぎを円滑に進めるには、既存開発会社との契約に「ソースコードの知的財産権は発注者(自社)に帰属する」という条項が含まれているかを確認しておきます。含まれていない場合、コードの提供を拒否されるリスクがあります。

社内体制の整備(プロダクトオーナーの設置)

アプリリニューアルを外注で進める場合は、社内にプロダクトオーナー(PO)となる担当者を必ず置きます。プロダクトオーナーは開発会社との窓口となり、仕様の意思決定、要件変更の承認、受入検査の主導などを担います。

プロダクトオーナーの仕事は、開発中の判断を支える役割と、リリース後に改善を動かす役割に分かれます。

  • 要件の優先順位付けと意思決定:開発中の仕様変更や追加要件を、ビジネスの観点から優先順位づけして決める。
  • 関係者との調整:社内の関係部門と連携し、リニューアルの方向性について合意をつくる。
  • 開発会社とのコミュニケーション:開発会社との日常的なやり取りを主導する。
  • リリース後の評価と改善指示:リリース後のKPI(評価指標)を見守り、次のバージョンの改善を指示する。

関係者との調整では、マーケティング、営業、カスタマーサポートなどの部門と連携します。開発会社とのやり取りは、定例ミーティングへの参加、課題管理ツールでの進捗確認、デザインレビューへの関与などで行います。

プロダクトオーナーが不在のまま発注すると、複数の社内担当者が開発会社にそれぞれ指示を出し、指示系統が乱れやすくなります。仕様の一貫性が保てなくなるリスクもあるため、発注前に担当者を明確にしておきましょう。

ポイント

発注前には、リニューアルの目的と方針を社内で合意し、既存の開発会社を続けるか切り替えるかを決めます。あわせて、プロダクトオーナーを社内に置いておきます。

発注資料の作成(アプリ特有の記載事項)

アプリリニューアルの発注資料に含めるプラットフォーム、技術、課題、コード引き継ぎの4項目を示す図
4つの情報がそろうと、開発会社が現状を把握しやすくなります。

アプリリニューアルの発注資料(RFP:提案依頼書)は、一般的なWebシステム開発のRFPと異なり、アプリ特有の情報を含める必要があります。

既存アプリの仕様や課題を整理し、ユーザーデータ、デザイン要件、技術要件もあわせて記載します。そうすることで、開発会社から比較しやすく、質の高い提案を受けられます。

現状アプリの仕様・課題の整理と共有方法

発注資料には、現状アプリの基本情報を詳しく書きます。開発会社が既存の状況を正確に把握できるほど、提案の精度は高まります。基本情報は、次の4項目に分けて整理して渡しましょう。

  • プラットフォーム情報:iOS・Androidのどちらに対応しているか、対応OSバージョンの範囲。
  • 技術スタック:開発言語、フレームワーク、API構成、使用中のサードパーティSDK。
  • 現状の課題と改善要望:ユーザーレビューの不満点、不具合の傾向、改善したい画面や導線。
  • 既存コードの引き継ぎ方針:リポジトリへのアクセス権、設計書や仕様書の有無と形式。

たとえば、iOS 15以上、Android 10以上のように書きます。あわせて、App StoreのアプリリンクとGoogle PlayのアプリリンクおよびアプリIDも整理しておきます。

現在の開発言語・フレームワークは、Swift/Kotlin/Flutter/React Nativeなどで示します。バックエンドのAPI構成は、RESTful API/GraphQLなどで整理します。プッシュ通知、分析、決済などに使うサードパーティSDKも書き出します。

不満点は、ユーザーレビューから抽出したものを渡します。クラッシュレポートも、不具合の傾向を示す資料として添えます。

リポジトリの例はGitHubなどで、アクセス権を付与するかどうかを決めます。設計書や仕様書がConfluenceなどにある場合は、その形式も伝えます。

既存の仕様書が存在しない場合(いわゆる「ドキュメントなし開発」)は、その旨を正直に伝えます。開発会社はコードリーディングによるリバースエンジニアリングに対応することもありますが、その分の工数が見積もりに加算されます。

ユーザーデータ・分析レポートの提供

アプリリニューアルでは、既存ユーザーの行動データを開発会社と共有すると、根拠に基づいた設計が可能になります。さらに、こうしたデータは、ユーザーが実際に感じている課題の把握にも役立ちます。

「なんとなく改善したい」という依頼より、データに基づいて発注するほうが品質の向上につながります。

ベンダーが確認しやすいよう、次のデータとレポートを整理します。

  • アクティブユーザー数:DAU(日次)・MAU(月次)の推移グラフ。
  • ファネル分析データ:会員登録、購入、予約などで、離脱率の高い画面やステップを示すデータ。
  • クラッシュ・エラーレポート:Firebase Crashlyticsなどの障害ログ。
  • App Store・Google Playのレビュー傾向:評価分布(★1〜★5)と、頻出する不満のワード。
  • 端末・OSバージョンの分布:実際のユーザーが使っている端末とOSのシェア。

アクティブユーザー数の推移は、リニューアル後のKPI目標の設定にも活用されます。ファネル分析は、UX改善の優先順位付けに直結します。

クラッシュ・エラーレポートは、技術的負債の深刻度を開発会社が判断する材料になります。

端末・OSのシェアは、対応すべき端末の範囲を決めるために必要です。

これらのデータを共有するときは、個人情報の取り扱いに注意してください。一般的には、集計や匿名化を済ませたデータを提供します。

Googleアナリティクス(GA4)やFirebase Analyticsなどのツールを使っていれば、これらのレポートは比較的容易にエクスポートできます。

デザイン要件と技術要件の記述

発注資料では、デザイン面と技術面の要件を分けて書くことが推奨されます。両者を混ぜると、開発会社の担当者が要件を読み解きにくくなり、見積もりの精度が下がります。

デザイン要件に記載すべき項目:デザインの方向性は、参考アプリのURLや「シンプル」「スタイリッシュ」などのキーワードで示します。ブランドガイドライン(ロゴ、カラーパレット、フォント)の有無と共有方法も記載します。さらに、デザインツール(Figmaなど)の指定や、アニメーション・インタラクションの要否も書きます。

技術要件に記載すべき項目:開発言語やフレームワークの希望(Swift/Kotlin/Flutterなど)と、APIの連携有無および既存APIの仕様を示します。デバイス機能(プッシュ通知、位置情報、カメラなど)や、セキュリティ要件(生体認証、データ暗号化など)も書きます。加えて、対応OSの最小バージョンとパフォーマンス要件(起動時間、画面遷移の速度目標)を記載します。

ポイント

発注資料には、既存アプリの仕様や課題、ユーザーデータを整理して載せます。デザイン要件と技術要件は分けて書くと、開発会社の提案を比べやすくなります。

ベンダー選定と契約締結

発注資料が整ったら、複数の開発会社に提案を依頼して、ベンダーを選定します。

アプリリニューアルに強いベンダーを選ぶには、費用だけで決めず、実績や技術力を総合的に評価することが重要です。加えて、UX設計力やApp Store・Google Playへの対応の知見も見ておきます。

選定基準(iOS/Android実績、UX設計力)

アプリの品質と運用を見据えて、次の評価軸でベンダーを比較します。

  • iOS・Android両対応の実績:両方のOSでの開発とリリースの経験。
  • リニューアル案件の経験:既存アプリの改修や移行を手がけた実績。
  • UX設計・デザイン力:UIの見た目だけでなく、ユーザー視点の設計力。
  • 保守・運用サポート体制:リリース後の保守を継続して任せられるか。
  • コミュニケーション体制:担当者の体制と、課題管理・進捗報告の方法。

ネイティブアプリ(Swift/Kotlin)とクロスプラットフォーム(Flutter/React Native)のどちらにも対応できるかを確かめます。Flutterへの移行などを検討している場合は、Flutterでのリリース実績があるかも見ておきます。

新規開発だけでなく、既存アプリのリニューアルやマイグレーションの経験があるかを確認します。既存コードの解析と引き継ぎには、専門的なスキルが必要です。

UIデザインだけでなく、ユーザーリサーチ、情報アーキテクチャ、ユーザビリティテストまで含めた総合的なUX設計の力があるかを評価します。ポートフォリオで、実際のUIの品質を確かめます。

リリース後の保守、バグ修正、OSアップデート対応を継続して行える体制があるかを確認します。長期的なパートナーとして信頼できるかも、あわせて判断します。

専任のプロジェクトマネージャーが担当するかを確かめます。課題管理と進捗報告の方法(使用ツール、報告の頻度)も、事前に確認します。

契約形態の選択(ラボ型 vs 請負)

アプリリニューアルの契約形態は、プロジェクトの性質に応じて「請負契約」と「準委任契約(ラボ型開発)」を使い分けることが大切です。請負契約は、成果物(完成したアプリ)の納品を対価として支払う契約で、要件が明確で変更が少ないプロジェクトに向いています。「このリニューアル仕様で開発してください」と定義できる場合にも適しています。

ただし、仕様変更が起きると追加費用が必要になり、柔軟性が低い点がデメリットです。ラボ型開発(準委任契約)は、専属の開発チーム(エンジニア、デザイナーなど)を月次で割り当て、工数に応じて費用を支払う契約です。仕様変更や機能追加に柔軟に対応できますが、コスト管理が難しくなるリスクがあります。

スタートアップや要件が流動的なプロジェクトには、ラボ型が適しています。また、UIデザインの段階をラボ型で進めてプロトタイプを作り、実装の段階で請負契約に切り替えるハイブリッドの進め方も有効です。

App Store/Google Play対応の確認事項

アプリリニューアルでは、リリース時に必ずApp Store(Apple)またはGoogle Playの審査を通過する必要があります。

審査に関わる対応を発注前に確認しておくと、リリース遅延のリスクを大幅に減らせます。ストア公開と運用を見据えて、次の事項を開発会社に確認します。

  • ストア審査対応の経験:過去にApp Store・Google Playの審査対応を行った経験があるか。
  • App Store Connect / Google Play Consoleのアカウント管理:開発者アカウントの所有権を、発注側(自社)が持つか。
  • 審査スケジュールの考慮:審査期間をプロジェクトのスケジュールに組み込んでいるか。
  • プライバシーポリシー・権限申告:デバイス機能に伴う申告対応が、契約の範囲に含まれているか。

審査で差し戻された際の修正経験も見ておきます。特にAppleの審査は厳格なため、審査ガイドラインを理解しているかが欠かせません。

開発会社に管理を任せる場合でも、アカウントの所有権は自社が持つことを推奨します。App Storeの審査は通常1〜3営業日、Google Playは数時間から1週間程度かかります。

位置情報、カメラ、マイクなどのデバイス機能を使う場合は、App Storeのプライバシー申告(App Privacy)やGoogle Playのデータ安全セクションへの対応が必要です。

ポイント

ベンダーは費用だけで決めず、実績やUX設計力、ストア審査への対応を見て比べます。仕様が明確で変更が少なければ請負、流動的ならラボ型が選びやすくなります。

【独自】発注者が品質を担保するプロジェクト管理

発注者が品質を担保するための受入検査、デザインレビュー、KPI監視、保守契約確認を示す図
品質管理は受入検査からリリース後の運用まで続きます。

開発を外注しても、品質の最終的な責任は発注者(自社)にあります。「開発会社に任せているから大丈夫」という姿勢では、リリース直前に大量のバグが見つかったり、使いにくいアプリがリリースされたりするリスクがあります。

品質の担保には、発注者自身が積極的に関わることが欠かせません。

テスト仕様書と受入検査の進め方

発注者として品質を担保するうえで最も欠かせないのが、「受入検査(UAT:ユーザー受け入れテスト)」です。

開発会社が内部で行うテスト(単体テスト、結合テスト)とは別に、発注者の観点から、実際の業務フローに沿ったテストを行います。

テスト仕様書の作成ポイント:受入検査の観点は、次の4項目に整理します。

  • 利用シナリオの網羅:実際の利用の流れをもとに、テストケースを作る。
  • エッジケースの対応:通信断や特殊文字の入力など、異常系のシナリオも対象にする。
  • 複数端末でのテスト:iOSとAndroidの代表的な端末で、同じシナリオを試す。
  • 合否判定基準の事前定義:「どの程度の不具合ならリリースできるか」の基準を、事前にそろえる。

利用シナリオは、「新規ユーザーが初めて起動してから会員登録する」「商品を検索して購入する」など、実際の流れに沿って作ります。異常系のシナリオは、「通信が途切れた状態で操作する」「入力フォームに特殊文字を入力する」などが例です。

複数端末では、iOSとAndroidの代表的な端末(最新機種、普及機、小型/大型画面など)で同じシナリオを試し、表示崩れや動作の差がないかを確かめます。

合否判定基準は、発注者と開発会社で事前にそろえておくと、リリース判定の際の認識のずれを防げます。

受入検査で見つかった不具合は、バグ管理ツール(Jira、Redmineなど)で管理します。修正の期限と優先度を明確にして、開発会社に伝えます。さらに、重大なバグが修正されるまでリリースを保留するルールも設けておくと有効です。

デザインレビューの具体的な方法

アプリリニューアルでは、実装に入る前にデザインレビューを徹底することが品質担保の要です。後工程で「デザインが意図と違う」と分かると、実装のやり直しが発生し、コストと時間が大きくかかります。レビューは、次の段階で行います。

  • ワイヤーフレームレビュー:画面の情報構造、遷移の流れ、ボタンの配置。
  • UIデザインモックアップレビュー:ブランドカラー、フォント、アイコン、余白などのビジュアル面。
  • 実機プロトタイプレビュー:操作感、タップのしやすさ、画面の見やすさ。

ワイヤーフレームでは、見た目よりも「ユーザーが迷わず操作できるか」という観点で見ます。この段階で大きな修正を行えば、コストを低く抑えられます。

モックアップは、Figmaなどのデザインツールで作られた精度の高いものを確認します。画面遷移のアニメーションを付けたプロトタイプで操作感を確かめることも有効です。

実機では、デザインプロトタイプを実機にインストールして(TestFlightなど)確かめます。スクリーンショットだけでは分からない細部の品質も見ておきます。

デザインレビューには、社内のマーケティング担当や、実際のユーザーに近い社内メンバーも参加させます。多角的なフィードバックが得られます。

リリース後の継続改善体制の構築

アプリリニューアルのゴールは、リリース当日ではなく、その後のユーザーの定着やKPIの改善にあります。そのため、リリース後も続けて改善できる体制を、発注前から設計しておくことが大切です。

  • KPIモニタリングの設計:リニューアル後に追うKPIと、その計測方法を開発会社と合意する。
  • 保守契約の内容確認:バグ修正、OSアップデート、セキュリティパッチが保守の範囲に含まれるか。
  • ユーザーフィードバックの収集と反映サイクル:レビュー、アプリ内の意見、問い合わせを次のバージョンに反映する。
  • 段階的リリースの活用:一部のユーザーから順次配信し、初期の不具合に備える。

追うKPIには、DAU、継続率、コンバージョン率、クラッシュ率などがあり、計測はFirebase Analyticsなどのツール設定で行います。月次の保守費用と対応範囲は、あらかじめ明確にしておきましょう。

フィードバックは、App Storeのレビュー、アプリ内のフィードバック機能、カスタマーサポートへの問い合わせから集めます。App StoreとGoogle Playは、どちらも段階的リリースに対応しています。リリース初期に致命的な不具合が見つかった場合にロールバックしやすくするため、活用を開発会社と検討しておくと良いです。

ポイント

開発を外注しても、品質の責任は発注者にあります。受入検査とデザインレビューを主導し、リリース後の改善体制まで発注前に決めておくと、品質を保ちやすくなります。

よくある発注失敗パターン

アプリリニューアルの発注では、特定のパターンで失敗が繰り返される傾向があります。事前にリスクを把握しておけば、同じ失敗を避けてプロジェクトを進められます。

「丸投げ」による品質劣化

アプリリニューアルの発注で最も多い失敗は「丸投げ」です。「プロに任せたのだから大丈夫」という姿勢で要件定義以降の関与が薄くなると、完成したアプリを見て「イメージと全然違う」「使いにくい」と後悔するケースが頻発します。

丸投げによる品質劣化は、次のような問題として現れます。

  • 要件の解釈齟齬が修正不能になる:小さな解釈の違いが積み重なり、完成時に大幅な修正が必要になる。
  • 品質基準が開発会社任せになる:合否が開発会社の社内基準で判断され、発注者の「当然の品質」とずれることがある。
  • スコープクリープが発生しやすい:「あれもこれも追加したい」という後付けの要件追加が増える。

特にデザインや操作の流れは言葉で伝わりにくいため、中間レビューなしで進めるリスクは非常に高いです。

テストや品質基準を開発会社だけに任せると、合否は開発会社の社内基準で判断されます。発注者にとっての「当然の品質」と開発会社の「合格基準」がずれていても、気づかないままリリースされることがあります。

スコープクリープは、関与が薄いと起きやすくなり、その結果、スケジュールの遅れやコストの超過につながります。

丸投げを防ぐには、週次または隔週の定例ミーティングを設けること、マイルストーンごとに成果物をレビューすること、プロダクトオーナーが日々の課題管理にかかわることが必要です。

外注でも、開発会社と一緒に作るという意識を持つことが大切です。

既存コードの引き継ぎが雑になるリスク

新規開発会社に切り替える場合、既存コードの引き継ぎが不十分なまま開発が始まることがよくあります。引き継ぎが雑になると、次のような問題が起きます。

  • 開発スコープの見積もり精度が下がる:既存コードの品質や複雑さを把握しないまま見積もる。
  • 既存の挙動が再現されない:仕様書にない細かな挙動が、新しい開発会社に伝わらない。
  • ユーザーデータの引き継ぎ失敗:新アプリにデータを正しく移せず、ユーザーが再登録を求められる。

見積もりの前提が実態とずれていると、後から「想定よりコードが複雑だった」として追加費用を請求されることがあります。新しい会社に切り替える前に、コードの全体を洗い出しておくことを勧めます。

既存アプリの細かな挙動(特定の条件下でのバリデーション、エッジケースの処理など)が仕様書に書かれていないと、新しい開発会社はそれを再現できません。その結果、「リニューアル前の方が良かった」という事態になります。

既存アプリのユーザーデータ(アカウント情報、購入履歴、設定情報など)を新アプリに正しく引き継げないと、ユーザーは再登録を求められ、大量の離脱が起きます。データマイグレーションの設計は、発注前から取り組むべき重要事項です。

コード引き継ぎのリスクを減らすには、切り替え前に既存開発会社と新開発会社の間でコードレビューの場を設けることが有効です。また、引き継ぎ用の技術ドキュメントを既存開発会社に作ってもらい、その作成を契約に含めることや、データマイグレーション計画を詳細に策定することも役立ちます。

ポイント

発注で起きやすい失敗は、丸投げによる品質劣化と、既存コードやユーザーデータの引き継ぎの雑さです。どちらも発注前から手を打っておくと避けやすくなります。

まとめ

アプリリニューアルの外注・発注を成功させるには、次の5点を押さえることが大切です。

  • 方針と開発会社:UIリニューアルとフルリビルドの方針、既存開発会社の継続・切替を決める。
  • 社内体制と発注資料:プロダクトオーナーを設置し、データ・分析・技術情報・課題を発注資料に記載する。
  • 開発会社の選定:iOS/Android、UX、リニューアル、ストア審査の実績で選ぶ。
  • 品質管理:テスト仕様書と受入検査を発注者主導で行い、デザインを段階レビューする。
  • 引き継ぎ準備:既存コードの引き継ぎとデータマイグレーション計画を発注前に策定する。

アプリリニューアルは、バージョンアップにとどまらず、ユーザー体験を根本から作り直す大きなプロジェクトです。

発注者が主体的に関わり、開発会社と真のパートナーシップを築くことが、リニューアル成功の最大の鍵です。リリース後も継続的に改善して、ユーザーに選ばれ続けるアプリを目指しましょう。

アプリリニューアルの発注・外注についてお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。iOS・Android両対応の開発実績を持つ専門チームが、貴社のアプリリニューアルに最適な開発プランをご提案します。

本テーマの全体像は、アプリリニューアルの完全ガイドでご覧いただけます。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。