業務システムのモダナイゼーションの保守・運用費用・ランニングコストについて

保守・運用費用は月額数百円〜数十万円と幅があり、金額は利用する人数や範囲、改修や連携の有無によって変わります。

基幹の保守費は経営会議で議論される一方で、部門費は現場経費として見過ごされ、非効率な運用が長引きがちです。

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老朽化した部門業務システムを放置した場合のコスト構造

部門システムの見えにくい運用コストを4枚のカードで示した図解。
保守料金の外側にも、属人化や手作業の負担が重なります。

ERPなど基幹システムの老朽化は危機として認識されやすい一方で、小規模な部門システムは問題が見過ごされ、費用が積み上がりがちです。保守・運用費用を考えるときは、放置した場合に生じるコストも合わせて把握しておく必要があります。

放置コストは、見えやすい費用と見えにくい費用に分けられます。保守ベンダーへの支払いだけを見ていると、見えにくいコストを過小評価するおそれがあります。その見えにくいコストは、属人化のリスクと手作業の残存という2つの面に現れ、それぞれ3つの項目に分けると把握しやすくなります。

Excel/VBA/Accessへの依存と属人化リスク

モダナイズせずに放置すると、部門システムでは見えにくい運用コストが膨らみます。仕様や保守が特定の担当者に頼りきりになっていることも、その一因です。

  • 仕様のブラックボックス化:ExcelマクロやAccessの仕様が明文化されず、異動や退職の後に中身が分からなくなる
  • 保守体制の脆さ:基幹システムと異なり、現場担当者が片手間で保守を担うことがある
  • 修正費用の発生:改修履歴が残っていない見積・案件管理Excelは、退職後に外部業者へ依頼する必要があり、小さな仕様変更でも高額な修正費用がかかることがある

基幹システムは情報システム部門が体系的に保守しますが、部門システムには、担当者が不在になると保守が機能しなくなる脆さがあります。さらに、属人化はデータの整合性や内部統制の課題も生みます。

手作業残存による隠れコストの膨張

老朽化したシステムの隠れコストは、手作業と保守の両面に表れ、どちらも社内で気づかれにくい点が特徴です。

  • 手作業の人件費:連携できないシステム同士を人の手でつなぐため、運用の負荷が高まる
  • 高止まりする保守費用:古い技術や独自仕様では、改修の範囲や対応できる人材を特定しにくく、小さな追加や障害でも費用が下がりにくい
  • 見えにくい業務コスト:手作業にかかる費用は月次の保守費に計上されにくく、残業や機会損失として積み重なっていく

たとえば経費精算では、紙の領収書回収、科目仕訳、上長の個別承認に月あたり数十時間かかる場合があります。時給に換算すると、年間で数百万円規模になることもあります。

この費用は決算書や予算計画に現れにくいため、経営層が老朽化した部門システムの問題を過小評価する要因になります。基幹システムの保守費とは異なる厄介さが、この点にあります。

ポイント

保守料金の比較だけでは、手作業の人件費や残業のような見えにくい負担を見落としやすくなります。社内で続いている手作業の時間も合わせて見積もると、判断の材料がそろいます。

モダナイゼーション後のランニングコストの目安

SaaSライセンス費用に関わるユーザー単位、企業規模、利用量の3つの課金軸を並べた図解。
見積もりでは、各プランの課金軸をそろえて確認します。

システムのモダナイゼーションにより、年間運用費の20〜40%を削減できるとされています。部門システムでは特に、SaaSへリプレースした場合に効果が表れやすい傾向があります。

一方、基幹システムでは、インフラのマネージドサービス化やコンテナ化により、運用コストを60〜90%削減できる可能性があります。ただし、効果を得るまでには、FinOps体制や運用監視設計の準備が必要です。

部門システムは絶対額が小さいぶん、削減率だけでなく、意思決定から効果が出るまでの期間の短さも投資判断に関わります。

SaaS移行時のライセンス費用感

クラウドSaaSのライセンス費用は、課金の単位と利用規模によって変わります。

  • ユーザー単位の費用:勤怠管理や経費精算では、1ユーザーあたり月額数百円〜数千円程度が一般的
  • 企業規模による目安:従業員数百名規模の企業でも、月額数万円〜数十万円で収まるケースが多い
  • 利用量に応じた課金:見積管理や案件管理には、案件数やユーザー数に応じたプランが用意されていることもある

クラウド向けに機能が最適化されていることが、一般的なライセンス費用に収まる背景です。これに対してERPは、ライセンスやインフラの維持に年間数千万円かかることもあります。

SaaSでは自社サーバーの維持管理費がかかりません。法改正や機能追加もベンダーが自動で更新するため、自社のテストや改修開発の費用をほぼゼロに抑えられます。

たとえば、繁忙期と閑散期で利用規模が変わる部門では、従量課金にすることで不要なライセンス費用を払い続けずに済み、ランニングコストを抑えられます。

運用支援コストの早期フェードアウト

稼働直後の支援から通常運用へ移るときは、支援の期間と体制を見積もっておく必要があります。

  • 初期の定着支援:ハイパーケア期間には、コンサルティングの支援費用がかかる
  • 標準サポートの活用:問い合わせ対応やヘルプデスクを、SaaSベンダーに任せられることがある
  • 自社体制の縮小:対象ユーザーが限られる部門システムでは、大規模な保守チームを置かずに済むことが多い

部門システムは現場に定着しやすく、数ヶ月後には人的な支援を外して、安価なライセンス費用のみの運用へ移りやすい傾向があります。一方で、基幹システムは複数部門の業務を支えるため、運用サポートを長く維持する必要があります。

ハイパーケアは稼働後1〜3ヶ月程度が目安です。操作方法の問い合わせやマスタ設定の微調整を支援する契約を結んでおくと、混乱を抑えて運用を自走化しやすくなります。

ポイント

移行後の費用を比べるときは、まず課金の単位をそろえてから見ます。単位が違うまま比べると、ライセンス費用の高低を取り違えるおそれがあります。

基幹システムと比べて運用保守がシンプルになる理由

ERPのような全社的な基幹システムは、稼働後も複雑な運用保守が必要になります。これに対して部門特化型システムは、保守の工数や突発的な障害対応を抑えやすくなります。

特に、限られた人員で情報システム部門を運営する中堅・中小企業では、保守負荷が低いことも、部門システムを優先してモダナイズする理由になります。

「非競争領域」ゆえの「Fit to Standard」の徹底しやすさ

部門業務でFit to Standardを進めやすい理由は、業務の性質とシステム範囲にあります。

  • 標準化された業務:IT資産の分類では、総務・人事・会計は自社の差別化要因ではなく、差別化につながらない非競争領域に分類される
  • 標準機能への適合:独自のロジックを作り直さず、業務をSaaSの機能に合わせやすい
  • 限定された保守範囲:単一業務のシステムは、兼務の担当者でも対応できる規模であることが多い

部門システムでは、独自の複雑なロジックをフルスクラッチで作り直す必要がありません。カスタマイズが増えるほど保守費用が上がる構造は基幹システムと共通しますが、部門システムは標準機能に合わせやすく、改修が生じにくい点が異なります。

ERPでは、会計・購買・生産のモジュール連携やアドオンの整合性を保つため、専任の保守要員が必要です。

独自カスタマイズを持たないことで得られる恩恵

標準機能を使うと、保守や障害対応の負担を軽くできます。

  • 更新時の検証:SaaSベンダーの最新アップデートを取り込みやすく、自社カスタマイズの動作テストも要らない
  • 障害の調査:外部連携が少ないため、影響範囲や原因を短時間で絞り込める
  • 人員の活用:保守工数を減らし、限られた担当者の時間を付加価値の高い業務へ回せる

部門システムは基幹システムより外部連携が少ないうえ、担当者一人がカバーできるシステム数も相対的に多くなります。

たとえば、勤怠管理を独自開発から標準的なSaaSへ刷新し、打刻集計や給与システムへの再入力をAPI連携で自動化した企業もあります。その結果、情報システム部門が月に数十時間かけていた作業が不要になったという声もあります。こうした保守の軽さは、部門システムの投資対効果が高いと評価される理由です。

ポイント

保守の軽さを判断材料にするときは、カスタマイズをどこまで避けられるかを先に決めておくと、保守範囲の見通しが立てやすくなります。

コストを最適化するための実践的なポイント

ランニングコストを見直す4項目をチェックカードで示した図解。
契約の棚卸しと費用レビューを運用に組み込みます。

モダナイズしただけで、コストが自動的に抑えられるとは限りません。そのため、ランニングコストを継続的に抑えるには、稼働後も利用状況を確認し続ける必要があります。

基幹システムでは、FinOpsチームや専任の運用監視担当がコストの見直しを続けるのが一般的です。部門システムに大規模な体制は要りませんが、レビューの機会がないと、取り組みそのものが忘れられがちです。

ライセンス数・プランの定期的な見直し

ライセンスの見直しでは、全社の利用状況を一覧にして、契約の重複や統合できる契約がないかを確かめます。

  • 不要アカウントの解約:退職や異動の後に残ったままのライセンスが対象になる
  • プランの見直し:利用頻度の低い部署では、下位のプランへの切り替えを検討する
  • 契約の統合:機能が重なるSaaSを部門ごとに別々に契約していないかを、全社で見る

ライセンス費用はユーザー数に応じて増えるため、不要な分を放置すると、費用が徐々に膨らみます。

部門システムでは現場の担当者が管理することがあります。情報システム部門がまとめて管理する基幹システムとは異なり、退職者アカウントの解約漏れが重なりやすい点に注意が必要です。

利用状況は、情報システム部門と各部門の運用責任者で役割を分けて確認します。四半期ごとの定例チェックで利用状況を見直し、退職や異動のあとに残ったアカウントはその都度解約します。年に一度は稼働状況とコスト構造を見直し、年次契約の更新時期に合わせて契約も確かめておくと、属人的な見直しを避けられます。

案件管理や見積管理では、営業・製造・経理の各部門が類似ツールをそれぞれ契約することがあります。さらに、年次契約の更新時期がずれていると、棚卸しを逃して重複した費用を払い続けるおそれがあります。

「新たなシャドーIT」を生まない運用ルールの整備

部門システムは着手しやすい一方で、稼働後のルール整備が後回しになりがちです。これを怠ると、数年単位でコストを抑える効果が目減りしていきます。

  • 要望時の相談先:標準機能で足りないときは、情報システム部門や支援パートナーに話を持ち込む
  • Excelに戻さない対応:追加機能やAPI連携で解決できないかを、まず検討する
  • 費用の定期確認:年に一度、稼働状況とコスト構造を見直し、想定していた費用との差を定例レビューで見る

標準機能で足りない業務をExcelで補うと、シャドーITが生まれ、数年後に属人化・ブラックボックス化した仕組みが積み上がるおそれがあります。

部門システムは意思決定が速く、「なし崩し」のカスタム運用も起きやすいため、稼働直後のルール整備が長期的な運用コストの行方を左右します。

SaaSのAPIやノーコード連携ツール(iPaaS)を使い、足りない機能を軽量な連携アドオンで補う方針にすると、保守費用が再び膨らむのを防ぎやすくなります。

ポイント

ライセンスの見直しは、退職や異動が発生したときと、年次契約の更新時期に合わせて行うと取りこぼしを減らせます。

まとめ

老朽化した部門システムには、Excel・VBA・Accessへの依存による属人化や、手作業による隠れコストのリスクがあります。一方で、SaaSへの移行によって、年間運用費を20〜40%削減できる可能性があります。

判断の材料としては、放置した場合のコストと移行後の費用を並べて比べます。SaaSのライセンスは1ユーザーあたり月額数百円〜数千円程度が一般的で、ERPのライセンスやインフラの維持に年間数千万円かかることもある点と比べると、違いが分かりやすくなります。

部門システムは対象範囲が限られ、非競争領域の業務も多いため、Fit to Standardを進めやすい特徴があります。部門システムは基幹システムより外部連携が少ないうえ、担当者一人がカバーできるシステム数も相対的に多いため、独自カスタマイズを避ければ保守の負担も抑えられます。

稼働後は、ライセンスの定期的な見直しと、シャドーITを生まない運用ルールを続けることが大切です。対象部門を絞ってスモールスタートすれば、基幹システムより早く投資対効果を実感しやすくなります。

まず、自社の部門システムが生んでいる隠れコストを洗い出してみてください。放置コストを把握することが、モダナイズの投資判断につながります。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。