業務システムリプレイスの選定ポイント/選び方/種類

業務システムリプレイスの選定は、自社の課題と業務のコア・ノンコアの切り分けを整理してから始めます。ビルド・バイ・ハイブリッドのどれを選ぶかは、独自性を保つ業務と標準化できる業務の分け方で決まります。

課題の整理からPoCまでの流れを、比べる観点とあわせて順に示します。

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業務システムリプレイス選定前に整理すべき自社の課題

自社の課題整理を中心に、保守負担、独自要件、現場と経営層の視点を示す図。
比較候補を絞る前に、運用と業務の両面から課題を集めます。

最初に行うべきは、現行システムのどこに保守負担が集中しているか、どの業務が自社独自の要件なのかを特定することです。ベンダーの資料を集めるのは、この整理のあとになります。

課題を具体的な言葉で説明できると、比較に含めるべき製品と、検討から外してよい選択肢が見えやすくなります。

課題の洗い出しを情報システム部門だけで進めると、実際に使う現場や経営層の視点が欠けがちです。現場と、コストを管理する経営層の意見もあわせて集めておくと、後段の評価軸の抜けを防げます。

保守費用の高騰と技術者不足

自社スクラッチを長く運用すると、改修のたびにコードが複雑になり、当時の実装を理解できる技術者が社内外で減っていく傾向があります。

まずは直近数年の改修件数と費用の推移を洗い出し、負担がどの機能に集中しているかを把握します。

小さな改修にも調査時間がかかり、保守費用が年々膨らんでいる場合は、ビルド継続の負担が限界に近づいているサインです。さらに、改修1件あたりの調査・実装・テストの時間も年々伸びているなら、担当者の経験と勘に頼る運用がすでに限界に近い可能性があります。

独自業務要件と競争優位性の関係

負担が大きい業務でも、それが自社の競争優位性の源泉であるコア業務なら、標準パッケージに合わせることで、かえって強みを失う可能性があります。反対に、勤怠管理や経費精算のように、どの企業でも似た処理を行うノンコア業務なら、標準機能への統一を優先できます。

業務ごとにコア・ノンコアを仕分けておくと、後段のビルド・バイの判断が一段と具体的になります。担当者の思い入れと事業上の優先度を切り分けて考えられる点も、仕分けの利点です。

  • コア業務:独自ルールや承認フローが、顧客への提供価値に直結するもの
  • ノンコア業務:他社と共通する処理で、標準機能に合わせられるもの

ポイント

保守負担が集中する箇所と自社独自の要件を先に特定しておくと、比較に含める製品と、検討から外してよい選択肢が見えやすくなります。

ビルド・バイ・ハイブリッドという3つの方向性

ビルド、バイ、ハイブリッドの3方式を並べた図。
業務領域の独自性に応じて、方式を使い分ける考え方です。

業務システムリプレイスの方向性は、自社スクラッチを維持するビルド、業務パッケージへ乗り換えるバイ、両者を組み合わせるハイブリッドの3つに大別できます。

実際には、コア業務とノンコア業務が混在しています。そのため、全社を一律に一つの方向性へそろえるより、業務領域ごとに使い分けるほうが現実的です。

方向性を決める段階で経営層の合意を取っておくと、後工程のRFP作成やPoCで方針が揺れ戻るのを防げます。

コア業務の自由度を守るビルド継続

独自の業務ルールや複雑な承認フローが競争優位性に直結しているなら、自社スクラッチを維持し、必要な改修を続けるビルドが適しています。

発注側は、改修コストと技術者の確保という負担が続くことを理解したうえで選ぶ必要があります。

ビルドを選ぶ場合も、設計書や仕様の記録を残す運用を並行して整えておかないと、次のリプレイスで同じ属人化の課題が繰り返されます。

ノンコア業務の負担を減らすバイとハイブリッド

バイは、SaaS型の業務パッケージにFit to Standardで合わせ、法改正対応や機能更新をベンダー側に任せる選択肢です。ただし、標準機能から外れるカスタマイズを増やすほど、当初の想定より総費用が膨らみやすいので注意が必要です。

ハイブリッドは、共通化しやすいノンコア業務をバイに寄せ、独自性が必要なコア業務だけをビルドとして残し、両者をAPIで連携させる構成です。また、比較評価の議論も、業務領域ごとに判断したほうが現実的になります。

ハイブリッドを選ぶ場合は、SaaS側と基幹システム側のどちらを正のデータとするか、連携が止まった際にどちらが復旧を主導するかを、選定段階で決めておくと、後々の運用トラブルを減らせます。

ポイント

判断の目安は、独自性を保つ業務はビルドに、標準化できる業務はバイに寄せるかどうかです。業務領域ごとに分けて考えると、方式が決めやすくなります。

製品・ベンダー選定で比較すべき7つの評価軸

候補は、7つの軸で比べます。なかでも業務カバー範囲と外部連携は、現行業務をどこまで標準機能で受けられるかに直結するため、このあとの見出しで掘り下げます。残る5つは、カスタマイズの余地、費用、セキュリティ、サポート、データの扱いに関わる軸です。

  • カスタマイズ自由度
  • 料金体系とTCO
  • セキュリティ
  • サポート体制
  • データの持ち出しやすさ

各社に同じ質問をそろえて提示し、回答とデモ結果を横並びにすると、営業説明の印象ではなく適合度で判断できます。

評価表は、選定チーム内で事前に配点の考え方をすり合わせておくと、部門ごとに評価がぶれる事態を避けられます。

業務カバー範囲・外部連携・TCO

まずは、現行の業務のうちどこまでが標準機能で対応でき、どこからが追加開発になるかを確認します。

次に、会計や人事、既存の基幹システムとのAPIまたはCSV連携について、対象データ、同期方向、エラー時の復旧方法まで確かめます。

費用は、初期費用と月額料金だけでなく、データ移行、カスタマイズ、教育、社内運用までを含めたTCOで比べます。特にデータ移行とクレンジングの費用は見落とされがちですが、プロジェクト全体費用の一定割合を占めることが多いため、早い段階で見積りに含めておく必要があります。

セキュリティ・サポート・データ持ち出しやすさ

セキュリティでは、権限管理と操作ログ、バックアップや障害時の対応方針を確認します。サポート体制では、導入時の伴走支援、問い合わせ窓口の対応時間、法改正時の更新方針まで押さえます。

データ持ち出しやすさでは、契約終了時にCSVなどの一般的な形式でデータを取り出せるかを確かめ、将来の再乗り換えに備えます。さらに、カスタマイズ自由度では、標準機能で対応できない業務をアドオン開発で吸収できるか、その場合の概算費用と開発期間を提示してもらいます。

比較結果は、「デモで確認」「仕様書で確認」「契約条項で確認」のように証拠を残しておくと、評価者の自由採点に頼らず、選定後の認識違いを防げます。

ポイント

各社に同じ質問をそろえ、回答とデモ結果を横並びで比べると、印象ではなく適合度で判断できます。評価表の配点の考え方も、事前に選定チームでそろえておきます。

カスタマイズ自由度とTCOのジレンマの判断

バイを選んだ企業でつまずきやすいのが、標準機能から離れたカスタマイズを積み重ね、当初の想定より総費用が膨らんでしまうケースです。

カスタマイズ率が一定の水準を超えると、総費用が当初予算の2〜3倍に達することもあるとされます。そのため、比較評価の段階から歯止めをかけておく必要があります。

逆に、ビルドを選んだ場合でも、独自機能への投資が事業上の合理性を欠いたまま続いていないかを、定期的に見直す仕組みを持つことが望ましいといえます。

カスタマイズ率が膨らむリスクへの備え

「この機能さえあれば」という要望を積み重ねていくと、気づいたときには標準機能の恩恵がほとんど残っていない状態になりがちです。

そこで、要件を「必須」「望ましい」「将来」の3段階に分けます。必須要件だけをカスタマイズの対象にし、残りは運用でカバーできないかを先に検討します。

部門ごとの要望をすべて必須として提出させると要件が膨らみやすいため、選定プロジェクトの責任者が、横断的に優先順位を調整する役割を担う必要があります。

データポータビリティとAPI連携の余白

カスタマイズを抑えたとしても、選んだ製品にデータが強く縛られてしまうと、将来の再乗り換えが難しくなります。

契約終了時に契約・取引履歴を一般的な形式で取り出せるか、既存の基幹システムとAPIやCSVで連携できる余白があるかを、選定段階のうちに確認しておくと、将来のベンダーロックインを避ける備えになります。また、RFPの段階でエクスポート仕様やAPIドキュメントの提示を求めておくと、契約後になって初めて制約に気づくという事態を防げます。

ポイント

カスタマイズを重ねるほど総費用は膨らみやすいため、標準機能で業務が回るかを比較評価の段階で確かめておくことが判断の目安になります。

RFI・RFPの作成と比較表の進め方

全体の目安2〜4か月程度の中で、RFI回答回収、RFP作成、提案と見積受領の期間を時系列に示す図。
RFP作成には、回答回収や見積受領より長い期間を見込みます。

比較評価を効率よく進めるには、最初から全てのベンダーを深く調べず、RFIで候補を絞り込んでから、RFPで実務シナリオを提示する段階を踏みます。

全体のプロセスには、RFI・RFP・提案評価・PoCを合わせて2〜4か月程度かかることが多いです。そのため、社内スケジュールにあらかじめ組み込んでおくと、関係者の調整を進めやすくなります。

RFIによる3〜5社への絞り込み

RFIでは、対象ベンダーへ基本的な機能概要と対応可能な業務範囲を問い合わせ、明らかに要件を満たさない候補を早い段階で除外します。

回答の形式もそろえてもらうよう依頼しておくと、後工程の比較の手間が減ります。

なお、RFIの発行から回答回収までは1〜2週間程度が目安とされます。この段階では無理に絞り込みすぎず、次のRFPで具体的な差を見極める前提で候補を残しておくのが有効です。

RFPに載せる業務シナリオと非機能要件

RFPには、対象部署と利用者数、現行フローを書きます。あわせて、解決したい課題と、実際に発生する業務パターンや処理量を具体的に記載します。

非機能要件には、権限や操作ログ、バックアップの扱いを含めます。また、障害時の対応、データの保管場所、エクスポート形式も書いておきます。

関係部門へのヒアリングを踏まえてRFPを作る工程には、1〜3か月程度かかることが多いです。そのうえで、提案と見積の受領までさらに2〜3週間ほど見込んでおきます。

PoC・サンドボックスでの検証方法

提案を数社に絞った後は、資料上の機能一覧だけで判断せず、サンドボックス環境やPoCを通じて、実際の業務がどこまで回るかを確認します。

デモの説明が分かりやすいことと、実際の運用に耐えることは別問題です。その前提で臨むと、評価の軸がぶれにくくなります。

フィット&ギャップの3分類

サンドボックス環境では、業務要件を「標準機能で対応」「運用変更で吸収」「要カスタマイズ」の3分類に整理します。

この分類には2〜8週間程度かかることが多く、期間を惜しんで簡単に済ませると、後段のカスタマイズ費用を見誤る原因になります。カスタマイズ前提の提案を続けるベンダーは、後工程での費用増加につながりやすいため、標準機能でどこまで業務が回るかを重視して評価します。

実データ・実業務負荷による性能の検証

PoCでは、実際のデータ量に近い条件と、月末の締め処理のような繁忙期の負荷を想定して動作を確認します。2〜4週間程度の短いサイクルに区切って段階的に検証すると、問題が起きた際の原因の切り分けに役立ちます。

机上の比較だけで進めると、大容量データのバッチ処理で性能面の見積りの甘さが本稼働直前に露呈しかねません。具体的な候補製品は、業務システムリプレイスのパッケージ・クラウド製品一覧で確認でき、共通の評価軸で比べる出発点になります。

ポイント

判断は資料上の機能一覧ではなく、実データや繁忙期の負荷での動きに基づけます。デモの分かりやすさと運用に耐えることは別なので、この前提で評価の軸をそろえるとぶれを抑えられます。

業務システムリプレイス導入前に確認しておきたいポイント

候補を絞った後も、参加者の顔ぶれや評価の記録方法によって選定の質は変わります。選定プロジェクトの担当者からは、規模の小さい乗り換えで工程を省いてよいか、現場をどこまで選定に加えるか、PoCをどこまで行うかといった疑問が寄せられることが多いです。比較表の機能欄だけでは見えにくい観点を先に押さえておくと、導入後の手戻りを防げます。

小規模な乗り換えでも省けない比較評価の工程

対象人数が少なくても、RFI・RFP・PoCという一連の流れを省くと、標準機能で対応できない業務が本稼働後に見つかることがあります。

そのため、規模が小さい場合でも、各工程の期間を短く区切ったうえで、一巡は確実に行うことが大切です。小規模な組織であれば、意思決定から本稼働まで1〜6か月程度に収まることも多く、短い期間だからこそ各工程を丁寧に一巡させる価値があります。

現場キーマンの参加と導入後の定着

経営層や情報システム部門だけでデモやPoCを評価すると、実際に使う現場の感覚とずれた判断になることがあります。

そこで、業務部門の代表者も評価に加え、標準機能で日常業務が回るかを実感してもらいます。これが、導入後の定着を左右します。

あわせて、ベンダー側の担当者が自社の課題をどこまで正確に理解しているかを、提案の受け答えから見極めます。契約後の伴走支援の質を予測する材料にもなります。

PoC不足が招く失敗

机上の比較表だけで候補を決め、実データや実業務負荷での検証を省くと、繁忙期の処理でシステムが想定どおりに動かないことがあります。その結果、工期の延伸や予算超過につながるおそれがあります。

最終候補の段階では、実業務に近い条件でPoCを行い、性能面の見積りに無理がないかを確かめてください。

まとめ

業務システムリプレイスの選定では、保守費用の高騰や独自業務要件の所在といった自社課題を特定します。そのうえで、ビルド・バイ・ハイブリッドという3つの方向性から、出発点を選びます。

候補は7つの評価軸で比べ、業務カバー範囲、外部連携、TCOは特に具体的に確かめます。さらに、実業務に近いPoCで性能面まで確認します。

業務システムリプレイスの基本的な考え方と基本記事での確認

ビルド・バイの意思決定という基本的な考え方は、業務システムリプレイスとは?|考え方・特徴・仕組み・目的を解説で整理しています。選定の前に全体像を押さえておくと、評価軸の理解が深まります。

比較の前に自社課題を一文で言語化すること

保守費用の高騰や属人化の解消、独自業務の維持など、いちばん優先したい課題を一文で言い表せると、比較に含める製品と評価軸が具体的になります。

評価結果は選定後も記録として残し、次にリプレイスを見直す際の判断材料として引き継げるようにしておきます。そうすると、社内の知見が属人化しにくくなります。

標準的なSaaS製品でFit to Standardを進める方法に加え、既製品では吸収しきれない独自の承認フローや基幹システム連携が必要な場合は、個別開発やハイブリッド構成も選択肢になります。riplaは、フルスクラッチ開発の立場から、製品選定前の要件整理、既製SaaSと基幹システムをつなぐ連携、独自業務に合わせた個別開発まで支援しています。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。