業務システム改修の保守・運用費用・ランニングコストについて

業務システム改修とは、見積管理・案件管理・勤怠管理・経費精算といった特定部門または少数部門で運用されている業務システムについて、システム全体を作り替えるのではなく、特定の機能や特定のモジュールだけを対象にした部分的・小規模な修正を行う取り組みを指します。同じ「業務システムを作り替える」というテーマでも、技術手法を並列に扱う「業務システムのモダナイゼーション」、経営判断・稟議プロセスを扱う「業務システム刷新」、契約満了やEOS/EOLを起点とする「業務システム更改」、操作体験を扱う「業務システムリニューアル」、アーキテクチャ再設計を深掘りする「業務システムリアーキテクチャ」、製品・ベンダー乗り換えを扱う「業務システムリプレイス」とは、前提がまったく異なります。これら6つがいずれも「システム全体を何らかの形で作り替える」ことを前提とするのに対し、改修は「全部は変えない、気になる部分だけを直す」という第三の選択肢であり、全面刷新には予算的に踏み切れないが、特定業務フローの改修・軽微な機能追加だけは行いたいという予算制約企業に刺さる切り口です。

本記事では、業務システム改修における保守・運用費用・ランニングコストに焦点を当て、「改修費用(スポット)」と「保守・運用費用(ランニングコスト)」の違い、費用相場の目安、改修を重ねることで保守費用が膨らむ仕組み、改修後の保守体制の選び方、想定外のコスト超過を防ぐ契約・SLAの作り方までを体系的に解説します。全面刷新の年額・月額コストとは桁が異なる、低予算・短納期の改修案件ならではの費用感を、具体的な数字とともに整理します。低予算で「気になる部分だけを直したい」という現場の要望を、無理なく継続的な保守体制に落とし込むための判断材料としてお役立てください。

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・業務システム改修の完全ガイド

業務システム改修の保守・運用費用を検討する前提(他3記事との違い)

業務システム改修の保守・運用費用を検討する前提(他3記事との違い)

業務システム改修の保守・運用費用を正しく見積もるには、まず「何にかかる費用なのか」を明確に切り分ける必要があります。ここでいう「業務システム」とは、見積管理・案件管理・勤怠管理・経費精算・ワークフロー(申請承認)など、特定の部門または少数部門の業務プロセスを支える中小規模のシステムを指します。改修における費用検討が他の作り替えプロジェクトと決定的に違うのは、対象が「システム全体の保守費用」ではなく「特定機能を直すための一過性の改修費用」と「それを継続的に安定稼働させる保守・運用費用」という、性質の異なる2種類の小さなコストの積み重ねである点です。全面刷新の年額数百万円規模の議論とは異なり、改修は数万円〜数十万円単位の意思決定が中心になります。

「改修費用(スポット)」と「保守・運用費用(ランニングコスト)」の違い

改修費用(スポット費用)とは、システムの機能追加、仕様変更、部分的な作り直しなど、システムに新たな価値を付加するための開発にかかる一過性の費用です。これに対して保守・運用費用(ランニングコスト)とは、システムを止めずに安定稼働させ続けるための定常的な監視・管理(運用)と、障害発生時の原因究明や復旧、プログラム修正、セキュリティのアップデート(保守)にかかる継続的な費用を指します。改修を検討する際は、この2種類の費用のどちらに該当する作業なのかを最初に切り分けておくことが、想定外の請求を避けるための第一歩です。

軽微な改修が月額保守費用の範囲内に収まるかどうかの境界

システムの機能改善や小規模な追加・バージョンアップなどは、「ソフトウェア運用保守費」の一環として、月額の保守費用の範囲内で対応してもらえるケースがあります。しかし、契約時に「月額保守の対応範囲(月◯時間までの作業を含む等)」を明確に定めていないと、軽微な機能追加であっても範囲外とみなされ、その都度別途「改修費用(スポット見積もり)」を請求されることになります。境界線を曖昧にしたまま契約を続けていると、「これくらいなら無償だろう」という発注者側の認識と、開発会社側の請求範囲がすれ違い、想定外のコストが積み重なる原因になります。

保守・運用費用の相場(年額・月額の目安)

保守・運用費用の相場(年額・月額の目安)

業務システムを改修した場合、システム全体の規模や複雑さがわずかに増すため、ランニングコストである保守・運用費用も改修前よりスライドして高くなるのが一般的です。ここでは、費用相場を年額・月額の両面から整理します。

初期開発費用に対する年額5〜15%という目安

一般的なシステムの運用保守費用は、初期開発費用(改修後の総システム規模)の年額5〜15%程度が目安とされ、年額としては60万〜240万円程度が一般的な相場です。ただし業務システム改修の場合、対象がシステム全体ではなく特定機能・特定モジュールに限定されるため、この目安をそのまま総システム規模に適用するのではなく、「改修によって追加された機能分の保守負担がどの程度上乗せされるか」という差分ベースで捉えることが実務的です。複雑なシステムや高度なカスタマイズが施されている場合は、保守費用が最大で開発費の20%まで高騰することもあるため、改修内容がどの程度システムを複雑化させるかを事前に見極めておく必要があります。

システム規模別の月額保守費用の目安

業務システム(部門特化型のエンタープライズシステム)の場合、開発・改修にかかった総費用が1,000万〜5,000万円規模であれば、月額の保守費用目安は約4.1万〜62.5万円以上となります。ただし、サポートの手厚さやシステムの要件によっては、開発費1,000万円のシステムに対して保守運用費が月額50〜150万円程度かかるという高額なケースも存在します。これらの費用には、サーバーやネットワークの維持費(ハードウェア保守費)、バグ修正費(ソフトウェア保守費)、ヘルプデスク対応などのサービス委託費が含まれ、クラウドサーバーの利用料などのインフラ費用は別枠でかかるのが一般的です。部分改修のみを繰り返す業務システムであれば、この規模別レンジの下限に近い水準に収まることが多い点も、あわせて押さえておきたいポイントです。

改修を重ねることで保守費用が膨らむ仕組み

改修を重ねることで保守費用が膨らむ仕組み

1回あたりの改修費用が小さいからといって、それを何度も繰り返せば保守費用への影響がゼロになるわけではありません。ここでは、改修の積み重ねが保守費用に与える構造的な影響を整理します。

改修のたびに複雑化する規模とコストの関係

1件1件は数万円〜数十万円規模の軽微な改修であっても、それが年に何度も積み重なると、システム全体のコードやデータ構造は少しずつ複雑になっていきます。保守費用は「システムの複雑さ」に比例して増加する性質を持つため、個々の改修費用は小さくても、累積した保守費用の増分は当初の想定より大きくなりがちです。改修を発注するたびに「この機能追加が将来の保守費用にどの程度影響するか」を開発会社に確認する習慣をつけることが、長期的なコスト管理には欠かせません。

属人化・ブラックボックス化が招く「見えないコスト」

小規模な改修を繰り返していると、特定のエンジニアしかシステムの中身を理解できない「属人化」に陥りがちです。担当者が異動・退職したタイミングで、次の担当者が改修内容を一から解読する調査費用が発生したり、想定より高い見積もりを提示されたりするケースも珍しくありません。この「見えないコスト」は保守契約書の金額には表れにくいため、改修を依頼するたびに変更履歴や仕様の簡単なドキュメントを残してもらうよう発注時に取り決めておくことが、将来的なコスト超過を防ぐ実務的な対策になります。

改修後の保守体制の選び方

改修後の保守体制の選び方

業務システムの部分改修を行った後、どのように保守体制を構築・維持すべきかについては、以下の選択肢と注意点を押さえておく必要があります。

改修を行った開発会社への継続依頼とMSP活用の比較

改修を行った開発会社にそのまま保守も継続依頼する方式は、システムの内部構造や追加した機能の仕様を最も理解しているため、トラブル時の原因究明がスムーズで安定した稼働が期待できます。一方、24時間365日の死活監視などインフラの定型的な監視に特化したMSP(マネージド・サービスプロバイダ)を別途活用する方式もあり、自社にリソースがなく監視業務だけを外出ししたい場合に有効です。改修頻度が高い業務システムであれば、改修と保守の窓口を一本化した方が、都度の見積もり調整の手間を省けるという実務上のメリットもあります。

チーム体制の確認と属人化防止

小規模な改修を重ねると、前述の通り特定のエンジニアしかシステムの中身を理解できない「ブラックボックス化(属人化)」に陥りがちです。外注先に保守を任せる際は、「担当者1〜2名」ではなく、「チームとして保守に対応してくれるか」を必ず確認し、属人化を防ぐ必要があります。改修のたびに担当者が変わる開発会社よりも、少人数でも継続的にチームで対応してくれるパートナーを選ぶ方が、長期的な保守費用の安定にもつながります。

想定外のコスト超過を防ぐ契約・SLAの作り方

想定外のコスト超過を防ぐ契約・SLAの作り方

改修と保守の費用がなし崩し的に膨らむ最大の原因は、契約時点で対応範囲を文書化していないことにあります。発注前に以下の2点を押さえておくことが、想定外のコスト超過を防ぎます。

対応範囲・SLAの明文化(月◯時間まで等)

改修を機に保守契約を見直す場合、「24時間対応が必要か」「どのレベルの作業(軽微な改修や障害対応)までを月額定額に含めるか」といった業務範囲を明確にし、SLA(サービスレベル合意)として文書化しておくことが、予期せぬコスト超過を防ぐ鍵となります。「月◯時間まで無償」「それを超えた分は時間単価で精算」といった具体的な線引きを契約書に落とし込んでおけば、改修のたびに料金交渉を一からやり直す手間もなくなります。

改修費用と保守費用を切り分けた見積もりの取り方

見積もりを依頼する際は、「この改修は保守契約の範囲内で対応できるのか」「範囲外であればスポット費用としていくらかかるのか」を必ず分けて提示してもらうことが重要です。両者を一括りにした見積もりでは、次回以降の改修コストの見通しが立てにくくなります。あわせて、改修によって月額保守費用そのものが値上がりするのかどうかも確認しておくことで、単発の改修費用だけでなく、その後の継続的なランニングコストまで含めた総額を把握したうえで発注判断ができます。

まとめ

業務システム改修の保守・運用費用まとめ

本記事では、業務システム改修の保守・運用費用・ランニングコストについて、改修費用と保守・運用費用の違い、費用相場の目安、改修を重ねることで保守費用が膨らむ仕組み、改修後の保守体制の選び方、想定外のコスト超過を防ぐ契約・SLAの作り方を、部分的・小規模修正、低予算・短納期という軸に絞って体系的に解説しました。運用保守費用は初期開発費用の年額5〜15%が目安ですが、改修は対象範囲が限定される分、この目安の下限に近い水準に収まりやすいのが実態です。軽微な改修が月額保守費用の範囲内に収まるかどうかの境界を契約で明文化し、改修費用と保守費用を切り分けた見積もりを取ることが、想定外のコスト超過を防ぎながら着実に改修を積み重ねる近道です。全面刷新には踏み切れないが特定業務フローだけは早急に直したいという場合は、信頼できるパートナーに早めに相談することをお勧めします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。