業務システム更改の選定ポイント/選び方/種類

業務システム更改の選定は、期限と評価軸を先に固定してから、進め方とベンダーを比べるのが基本です。

自社の課題を整理して進め方を選び、期限から逆算した日程のなかで、評価軸とTCOによりベンダーを検討します。契約満了までの残り期間に合わせて、比べる順序を決められます。

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検討前に整理する自社の課題

候補ベンダーの資料を集める前に、自社の更改がどの外圧トリガーで発生しているのかを特定しておく必要があります。トリガーが違えば、優先すべき評価軸も、検討に使える期間も変わります。

更改の起点(保守満了・EOS/EOL・契約更新)の特定

起点によって、最初に確認する資料が変わります。

  • 保守契約の満了:契約書に記載された更新条件と残り期間をまず確認します。
  • パッケージのEOS・EOL:ベンダーが公表するサポート終了日と、それまでに必要な移行手順の有無
  • SaaS契約の更新:提示された新料金と仕様変更の内容を精査し、現行維持と乗り換えのどちらが経済的に合理的かを判断する材料になります。

トリガーを取り違えると、必要のない機能に評価の重みを置いてしまい、比較そのものが的外れになります。

あわせて、担当者だけの記憶に頼らず、契約書そのものを情報システム部門と法務・経理部門で共有しておくことも欠かせません。さらに、契約更新の可否を判断する権限者と、更新条件を確認する部署を一覧にしておきます。そのうえで、社内で合意しておく範囲も決めておくと、期限直前の調整を避けられます。

基幹システムか部門システムかによる意思決定の違い

更改の対象が全社に影響する基幹システムか、特定部門で使う情報系システムかによって、検討に関わる部門の数と意思決定の重さが変わります。基幹システムの更改では、経理・人事・現場など複数部門の要件をすり合わせる必要があるため、検討期間も長くなりがちです。

部門特化型システムの更改では、外部SaaSとの連携実績や画面の使いやすさが優先されることが多く、比較的短い期間で判断できる場合もあります。

基幹か部門特化型かを最初に見極めておくと、関係部門と検討期間の目安が明確になります。途中で関係者が増えてやり直す事態も防げます。

ポイント

起点が保守満了、EOS・EOL、SaaS更新のどれか、また基幹か部門システムかによって、重視する評価軸と検討期間の長さが変わります。迷ったときは、動かせない期限から逆算して判断します。

業務システム更改の3つの進め方

更改の進め方は、業務をどこまで変えるかと、標準機能にどれだけ合わせられるかで整理できます。候補を比べるときは、次の3方式を起点に、自社の期限と業務要件を照らし合わせます。

  • 現行踏襲更改:業務手順を大きく変えずに乗り換える方式
  • 刷新型更改:更改に合わせて業務フローや機能を見直す方式
  • フルスクラッチ更改:固有要件を優先して個別に作り直す方式

業務を止めずに乗り換える現行踏襲更改

現行踏襲更改は、機能や画面を大きく変えずに次のシステムへ移る方式です。

この方式は、業務手順を保ちやすく、利用者教育の負担を抑えられます。

一方で、現行の非効率な運用まで引き継ぐ可能性があります。契約期限が近く、検討期間が短い場合には、スケジュールを優先する選択肢になります。

更改のタイミングで機能改善も行う刷新型更改

刷新型更改は、更改を機に業務フローや承認ルートを見直し、標準機能への適合(Fit to Standard)を進める方式です。

標準機能へ合わせられる業務が多いほど、パッケージやクラウドサービスが候補になります。検討期間は現行踏襲より長くなりやすいものの、更改後の運用効率を高めやすい点が特徴です。

競争優位に直結する業務で選ぶフルスクラッチ更改

自社固有の業務プロセスが競争優位に直結し、標準機能へ合わせにくい場合は、フルスクラッチが選択肢になります。柔軟な機能追加や外部SaaS・APIとの連携が重要な業務では、個別開発の適合度を確認します。

ただし、開発期間が長くなりやすい方式です。全社への影響が大きいシステムで選ぶ場合は、契約満了までの余裕を早い段階で見極めておきます。

ポイント

契約期限が近く検討期間が短いなら現行踏襲、標準機能へ合わせられる業務が多いなら刷新型、競争優位に直結する固有の業務があるならフルスクラッチを候補にします。

期限から逆算したスケジュールの立て方

期限から検討開始、ベンダー選定、契約・移行作業へ進む更改スケジュールの図解。
選定後の契約・移行に使う時間も見込めます。

更改は、契約満了やEOS・EOLという動かせない期限から逆算してスケジュールを組みます。

着手が遅れるほど、比較検討やPoCに使える時間が縮まります。

ベンダー選定にかかる1.5〜2.5カ月程度の見込み

ベンダー選定では、技術適合評価とRFI送付、PoCによる実地検証、コンプライアンスや契約条件の精査を順に行います。

各工程の期間をあらかじめ置いておくと、選定だけで1.5〜2.5カ月程度かかることが見込めます。

その後の契約や移行作業も必要になります。そのため、更改全体の実務期間を確保できるよう、選定工程だけで予定を埋めないことが大切です。

期限の半年〜1年前からの検討開始

契約満了やEOS・EOLの期限が決まったら、遅くとも半年前、余裕を持たせるなら1年前には現状課題の整理とRFI送付を始めます。開始が遅いと、候補の比較やPoCを省略したまま契約を急ぐことになりかねません。そのうえで、切替までに次の準備を進めます。

  • 逆算した予定の共有:いつまでに何を決めるかを社内で明確にしておく
  • 本番切替前のリハーサル:処理時間とエラーの有無の確認
  • ロールバック計画(コンティンジェンシープラン):移行に失敗したら旧システムへ戻す。切替日の問題に備えて戻し方を決めておくと、業務停止への備えになる

ポイント

着手は契約満了やEOS・EOLから逆算し、遅くとも半年前、余裕を持つなら1年前に始めます。選定だけで1.5〜2.5カ月程度かかるため、比較やPoCを省かない時間を残すことが目安です。

ベンダー選定で比較すべき評価軸

6つの評価軸のうち、技術力と業務理解、セキュリティ・ガバナンスは、求める機能の実現性や業界の商習慣、権限管理やデータの保管場所を各社の回答で確かめる軸です。

  • 導入実績:PoCだけでなく本番運用まで到達した事例を重視
  • 伴走体制:導入後の問い合わせ対応と運用定着まで支援するか
  • コスト・契約条件:初期費用だけでなく3〜5年のTCOで比べる

評価軸の中身は、次の見出しで順に確認します。

各社に同じ質問を投げかけ、回答を同じ基準で採点すると、説明の分かりやすさに評価が引っ張られにくくなります。

技術力・業務理解・導入実績の確認

技術力・実装力は、求める機能を標準機能または追加開発で実現できるかを確認します。

業務理解では、業界特有の商習慣や規制を把握しているかを見ます。また、導入実績は、PoCだけでなく本番運用まで到達した事例を重視します。

採点は○(5点)・△(2点)・×(0点)のように基準をそろえます。重視する項目に重みを付け、配点表を事前に社内で合意しておくと、選定理由を説明しやすくなります。

セキュリティ・伴走体制・コストと契約条件の確認

評価の観点は、セキュリティ、伴走体制、コストと契約条件の3つに分けて見ます。

  • セキュリティ:権限管理と操作ログ、データの保管場所と委託先の確認
  • 伴走体制:導入後の問い合わせ対応と運用定着まで支援するかどうか
  • コストと契約条件:初期費用だけでなく3〜5年のTCOで比べます。

6つの評価軸を100点満点で配点し、自社の優先順位に合わせて調整すると、候補を同じ土俵で見比べられます。

ポイント

同じ質問と同じ採点基準で各社を比べ、重視する項目には重みを付けます。説明の上手さや知名度に引っ張られていないかを採点表で確かめると、選定の根拠を社内に説明できます。

TCOでコストを比較する視点

初期費用と運用保守費用を含めたTCOを、3〜5年で現行維持とベンダー変更について比べる図解。
継続して発生する費用も比較期間に含まれます。

更改の費用は、初期費用だけで判断すると失敗の原因になります。

運用保守費用まで含めた複数年のコストで、現行維持と乗り換えを比べる必要があります。

初期費用と運用保守費用で構成されるTCO

TCOは、初期費用と運用保守費用で構成されます。初期費用には、ライセンス費、開発費、導入支援費などが含まれます。運用保守費用には、月額利用料、保守サポート費、サーバー費が含まれ、加えてAPI従量課金も入ります。

初期費用だけでなく、継続して発生する費用を分けて整理します。運用保守費用は構築費用の10〜15%程度とされます。そのうえで、3〜5年でシミュレーションし、現行維持とベンダー変更の経済性を比べます。

ベンダーロックインがもたらす将来のコスト増大リスク

特定ベンダーの独自仕様に依存すると、将来の保守や機能追加でコストが増えることがあります。次の項目を、TCO比較の条件に含めます。

  • データ移行:解約時のCSVなど汎用形式での返却可否
  • 技術の開放性:独自仕様への依存の避けやすさ
  • 引き継ぎ条件:SLAと保守移管に必要な文書の有無

ポイント

導入時の費用だけでなく、3〜5年の運用保守費用まで含めて現行維持と乗り換えを比べます。解約時のデータ返却や独自仕様への依存も条件に含めると、将来のコスト増を抑えられます。

RFP・PoC・UATの進め方

RFPで現行業務のシナリオと必須要件を提示し、PoCとUATへ進む流れを示した図解。
候補の資料だけでなく実際の業務条件で確かめます。

候補を絞り込んだ後は、RFP(提案依頼書)で業務シナリオを提示し、PoCとUATで実際の適合度を検証します。

判断の材料は、資料の説明より、実在する業務データを使った確認を優先します。

RFPに記載する現行業務のシナリオと必須要件

RFPには、対象部署と利用者数、現行システムの機能を記載します。加えて、解決したい課題と、実在する業務シナリオや例外処理の扱いを示します。

要件は「必須」「望ましい」「将来」の3段階に分けておくと、すべてを必須にして候補を失う事態を避けられます。

PoCとUATでのフルパス検証

PoCでは、実際の業務データに近い条件で、一連の業務を最初から最後まで通します。処理時間と手戻りの発生箇所を記録し、参加したエンジニアが本番後も担当を続けるかも確認します。

UATは本番に近いデータと環境で行い、正常処理と例外処理を検証します。繁忙期や月末・期末の取引も項目に含めると、本番後の不具合を抑えられます。

候補製品は業務システム更改のパッケージ・クラウド製品一覧で比べられます。

業務システム更改の導入前に確認するポイント

更改の進め方を選ぶときに判断が分かれやすい点を、順に見ていきます。

検討期間が短い場合の現行踏襲更改の優先

契約満了までの期間が短く、比較検討に十分な時間を割けない場合は、現行踏襲更改を優先し、機能改善は次回の更改やその後の刷新プロジェクトに回す判断も有効です。一方で、無理に刷新型やフルスクラッチを選ぶと、検討期間が不足して拙速な意思決定につながるおそれがあります。

現行ベンダーとの契約更新を含めた比較対象

乗り換え先の比較と並べて、現行ベンダーとの契約更新も同じ評価軸とTCOの条件で比べます。

スイッチングコストを踏まえると、条件によっては現行ベンダーとの更新が経済的に合理的になる場合もあります。また、現行ベンダーにも他社と同じ質問シートを使って条件の明示を求めると、比較の土台を公平に保てます。

影響の大きい業務からのPoC対象の選定

PoCで検証する業務は、候補となる業務の中から、業務量が多い業務や例外処理が複雑な業務を優先して選びます。影響の小さい業務だけで検証すると、本番移行後に想定外の手戻りが起きるリスクが残ります。

まとめ

業務システム更改の選定では、まず自社の更改がどの外圧トリガーによるものかを特定します。そのうえで、現行踏襲更改、刷新型更改、フルスクラッチ更改のどれが適するかを判断します。

候補のベンダーは、技術力・業務理解・セキュリティ・導入実績・伴走体制・コストの評価軸で比べ、3〜5年のTCOで経済合理性を確かめることが大切です。

評価軸を固定してからの候補ベンダーの比較

評価軸を先に固定したうえで、同じ質問を各ベンダーに投げかけます。こうすると、説明の分かりやすさや知名度に評価が引っ張られにくくなります。

RFP・PoC・UATを通じて、資料に書かれた機能より実際の業務適合度を確かめます。そのうえで、最終候補を絞り込んでください。

更改の基本的な考え方や仕組みは、業務システム更改とは?|考え方・特徴・仕組み・目的を解説で確認できます。

既製品で対応しきれない要件への個別開発の検討

自社固有の業務プロセスが標準機能に合わせにくい場合、既製パッケージやクラウドサービスへの単純な置き換えでは、要件を吸収しきれないことがあります。

riplaはフルスクラッチ開発の立場から、要件整理から既存システムとの連携を含む構築まで支援しています。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。