クラウド移行・クラウドシフトの戦略と進め方|成功のためのロードマップと事例

クラウド移行・クラウドシフトは、現状と目的の整理から始め、移行方式とクラウドサービスを選び、計画を立てて段階的に移し、移行後も運用を改善し続けるという流れで進みます。

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・システム刷新・モダナイズ/アーキテクチャ設計の完全ガイド

クラウド移行・クラウドシフトが注目される背景

クラウドシフトは、IT基盤を置き換えること自体よりも、企業の競争力を高めることを目指す戦略的な取り組みです。市場の変化や運用の負担、DXやセキュリティへの要請が重なるなかで、移行を検討する企業が増えています。

事業スピードと変化対応力の必要性

市場の変化が速いなかで、オンプレミスは環境の構築に時間がかかり、事業のスピードについていけません。一方で、クラウドは必要なリソースをすぐに確保できるため、柔軟で迅速なIT基盤を用意できます。

コストと運用負荷の削減ニーズの高まり

サーバーの調達や保守、更新などにかかるオンプレミスの運用負担が大きくなっています。そこで、クラウドは初期投資を抑えながら運用を自動化できるため、費用と人的リソースを大きく節約できます。

DX推進とセキュリティ強化の基盤としてのクラウド

データ活用やAIなどのDX施策では、クラウドが前提になっています。最新のセキュリティ対策や高い可用性も、クラウドのほうが実現しやすくなっています。さらに、レガシーシステムの老朽化も重なって、クラウド移行は企業の標準になりつつあります。

クラウド移行・クラウドシフトのメリット

クラウド移行の効果を事業スピード、コスト、セキュリティと可用性、データ活用の4つに分けた図。
4つの観点を並べると、自社の課題に近い効果から検討できます。

クラウド移行によって、事業のスピード、コスト、セキュリティ、データ活用の4つの面で効果が期待できます。

事業スピードの向上と変化に強いIT基盤

クラウドは必要なリソースをすぐに準備できるため、環境構築にかかる時間を大幅に短縮できます。新サービスの立ち上げや機能追加も素早く行えるので、競争の激しい市場でも迅速な意思決定と展開につなげられます。

コスト最適化と運用負荷の軽減

オンプレミスのようなサーバーの調達・保守・更新作業が不要になるため、初期投資を抑えながら運用の効率を高められます。使った分だけ支払う従量課金の仕組みにより、過剰な設備投資を避けられ、トータルコストの最適化にもつながります。また、自動バックアップや自動パッチ適用によって、運用作業の負担も軽くなります。

セキュリティと可用性の強化

クラウドは、専門チームによる24時間監視、最新のセキュリティ更新、複数リージョンでの冗長化などを標準で提供しています。自社だけの体制では実現しにくい水準のセキュリティと可用性を利用できるため、事業継続性も高まります。

データ活用とDX推進の基盤

クラウドには、データ連携、DWH、AIサービス、API接続など、最新のデータ活用環境が揃っています。そのため、DXや高度な分析を進めやすくなります。オンプレミスでは難しかった規模の拡大や、外部サービスとの連携も容易に行えます。

ポイント

メリットは、スピード、コスト、セキュリティ、データ活用のうち自社の課題に近いものから優先順位をつけると、検討の軸がぶれにくくなります。

クラウド移行の進め方

クラウド移行は一朝一夕では成功しないため、計画から運用まで段階を追って進めることが大切です。

1. 現状分析と課題整理

移行の出発点として、既存システムの構成や利用状況、課題を把握します。アプリケーションごとの依存関係や老朽化の状況も整理しておくと、どこから移すかを検討する材料になります。

2. 移行の目的と戦略の明確化

コスト削減、柔軟性の向上、新規事業への対応など、移行の目的は企業によって異なります。目的に応じて、クラウド戦略を立てます。

3. 移行方式の検討

クラウド移行には、いくつかの方式があります。

  • リフト&シフトは、現行システムをそのままクラウドへ移す方式です。
  • リファクタリングは、クラウド向けに最適化しながら移す方法です。
  • リビルドは、新規にクラウドネイティブとして作り直す方式です。

どの方式を選ぶかは、目的とリソースに応じて決めます。

4. クラウドサービスの選定

AWS、Azure、GCPなど複数のサービスを比べ、自社に合うクラウド環境を選びます。その際は、セキュリティ、コスト、サポート体制などを比較の観点にします。

5. 移行計画の策定

移行スケジュール、テスト計画、トレーニング計画を含むプロジェクト計画を立てます。段階的な移行を前提に組んでおくと、リスクを小さく抑えられます。

6. 移行の実行

・データ移行
・アプリケーションの移行
・テストと検証

どの作業も計画に沿って、一度に切り替えず段階的に進めます。

7. 運用・改善

移行後も運用を見直しながら、コストの最適化やセキュリティの強化を続けていきます。

ポイント

移行方式とクラウドサービスは、目的を決めたあとで選ぶのが基本です。目的が曖昧なまま選ぶと、後から方式や計画を組み直すことになりかねません。

クラウド移行・クラウドシフトの注意点

クラウド移行で管理する移行方針、セキュリティ設定と権限管理、従量課金の3つのリスク要因を並べた図。
計画時に管理担当と範囲を定めると、手戻りや想定外の費用を防ぎやすくなります。

クラウド移行はメリットが大きい分、進め方を誤ると失敗につながりやすくなります。

移行方針の曖昧さによる手戻りとコスト増

どのシステムを、リフト&シフトとリファクタリングのどちらで移すかが決まっていないと、データ移行や改修が後から増えていきます。その結果、プロジェクトが迷走してしまいます。

セキュリティ設定と権限管理の不備による重大リスク

クラウドは設定ミスがそのまま情報漏洩につながるので、認証、アクセス権限、ネットワーク制御などのガバナンスを徹底する必要があります。

従量課金の管理不足による想定外のコスト

監視や最適化を怠ると、リソースの使用量が増え続け、クラウドの費用も膨らんでいきます。そのため、コストの管理とスケールの設計は欠かせません。

ポイント

移行方針、セキュリティ設定、従量課金の3つは、計画の段階で誰がどこまで管理するかを決めておくと、手戻りや想定外の費用を防ぎやすくなります。

クラウドシフトの成功事例

クラウド移行を実際に成功させた3社の事例です。移行の対象も目的も社ごとに異なるため、事例ごとの前提を押さえて読むことが大切です。

製造業A社:基幹システムのクラウド移行

基幹システムをAWSに移行したことで、インフラの保守コストを30%削減しました。さらに、災害時の事業継続性も大幅に向上しました。

小売業B社:クラウド活用によるデータ分析基盤の構築

オンプレミスでは難しかった大規模なデータ分析を、クラウド上で実現しました。その結果、購買データをリアルタイムに分析できるようになり、マーケティングの精度が向上しました。

金融業C社:ハイブリッドクラウド戦略

規制の要件を満たすため、一部はオンプレミスに残し、クラウドを併用しています。柔軟性とセキュリティを両立させている点が特徴です。

ポイント

3社の事例はいずれも、移行の対象と目的が異なります。どの事例を参考にするかは、自社の現行システムと移行の目的に近いかで選ぶと、判断の軸がそろいやすくなります。

クラウド移行のロードマップ

クラウド移行のスモールスタート、経営層のコミットメント、継続的な最適化を循環で示した図。
小さく始めた知見を次の領域へ活かし、移行後の見直しにつなげます。

クラウド移行を成功させるには、短期的なコスト削減だけでなく、長期的な企業戦略を踏まえたロードマップが不可欠です。

スモールスタートと段階的な拡大

クラウド移行は、一気にすべてを移すよりも、小さな領域から始めて段階的に広げるのが定石です。まずは負荷の少ないシステムやデータから移行し、運用のノウハウやリスク要因を把握します。そして、その知見をもとに、ミッションクリティカルな領域へ拡大し、リスクを抑えながら進めます。

経営層のコミットメント

クラウド移行は、業務・組織・コスト構造にも関わる“全社変革”です。そのため、経営層が明確な方針と優先順位を示し、部門をまたいだ協力体制をつくることが欠かせません。経営の関与が弱いと、部門間の調整が進まず、移行計画は途中で停滞してしまいます。

継続的な最適化

クラウド移行は、移した後も性能やコストの見直し、セキュリティ強化、構成の変更などの改善を続けていく取り組みです。クラウドは機能が常に進化するため、運用の設計も見直し続けることで効果を最大限に引き出せます。定期的なレビューと改善サイクルを組み込み、“移して終わり”の状態を避けることが大切です。

ポイント

ロードマップは、小さな領域から段階的に広げる形で組み、経営層が方針と優先順位を示せるかで実効性が大きく変わります。短期の削減だけで組まないことも大切です。

まとめ

クラウド移行・クラウドシフトは、企業の競争力を高めるための重要な戦略です。

・現状を分析し、課題を整理します。
・目的に応じたクラウド戦略を立てます。
・段階的な移行計画を組みます。
・セキュリティ、コスト管理、人材育成に目を配ります。

これらのポイントを押さえて進めれば、失敗のリスクを減らし、クラウドのメリットを最大限に引き出せます。クラウドを活用した次世代のIT基盤は、企業の成長を支えます。

システム刷新とアーキテクチャ設計まで広く確認したい場合は、次の記事が参考になります。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。