基幹システム/ERP移行の移行先は、会計特化のクラウド会計、特定業務向けのノーコード基盤、複数モジュールの統合ERPの3つに分けられます。
まず提供形態の違いを押さえ、次に比較の共通軸と移行先候補の6製品を見ていきます。全体の流れは、下の記事でも確認できます。
▼全体ガイドの記事
・基幹システム/ERP移行の完全ガイド
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パッケージ型とクラウド型ERPの違い(移行先を選ぶ視点)

移行先を検討する際は、まず提供形態の違いを理解しておく必要があります。
自社でサーバーを持つパッケージ型と、ベンダーが運用するクラウド型では、移行後の運用負荷や、旧システムからのデータ引き継ぎのしやすさが変わってきます。
パッケージ型の論点は自社運用と個別移行要件への対応
従来型のパッケージやオンプレミス型の統合ERPは、自社のサーバーやデータセンターに導入する形態を指すのが一般的です。
自社固有のアドオンや閉域網でのセキュリティ要件に対応しやすい一方で、サーバーの調達から監視まで、運用の範囲が自社側の責任になります。バックアップやバージョンアップも、自社で担うことになります。
移行では、導入時の自由度とあわせて、旧システムからのデータ移行を誰が設計するのか、リハーサルをどこまで支援してもらえるかも確認しておく必要があります。
クラウド型の適性は短期導入と移行後の継続的な更新
クラウド型は、サーバーを調達せずに利用を始めやすいことに加え、ベンダー側で機能更新や法改正対応を継続して受けられる点が特徴です。
基幹システム・ERPは移行後も長く使い続けるため、ベンダーが継続して更新できる体制があるかを確認しておく必要があります。その際は、導入実績や更新頻度が判断の材料になります。
自社独自の業務ロジックが多い場合は、クラウド型の標準機能だけでは吸収しきれず、追加のカスタマイズや連携開発が必要になることもあります。
移行先を比較するときの共通軸
製品紹介ページの機能一覧を見ても、自社からの移行がどれだけ円滑に進むかは読み取りにくいものです。
候補を同じ条件で比べるため、データの引き継ぎ範囲、連携方式、移行実績の3点を、どの製品にも共通する質問に置き換えます。
移行元データの引き継ぎ範囲とAPI・CSV連携
「データ移行に対応」と書かれていても、CSVの手動インポートと、APIやコネクタによる自動取り込みでは、移行作業の工数が大きく異なります。そのため、次の点を製品ごとに確認します。
- マスタデータの自動変換範囲:取引先マスタ、勘定科目、品目コードなどをどこまで自動で変換できるか、また対応できない項目の範囲
- 周辺システムとの連携:会計・生産・販売システムとのAPIまたはCSV連携で、どのデータをどの頻度で同期できるか
同業種・同規模での移行実績と支援体制
製品の機能が優れていても、自社と近い業種・規模での移行実績が少ないベンダーやパートナーでは、想定外の遅延が起きやすくなります。
移行支援を製品ベンダーが直接行うのか、認定パートナー経由になるのかによって、対応のスピードや費用も変わります。評価の手順は、基幹システム/ERP移行の選定ポイント・選び方・種類で詳しく整理しています。
基幹システム/ERP移行の移行先候補6製品
ここでは、2026年7月時点で現行の公式ページを確認できた6製品を紹介します。掲載順は優劣を示すランキングではありません。
会計特化のクラウドサービスから複数モジュールを含む統合ERPまで性格が異なるため、自社の移行範囲と照らし合わせて比べてください。
freee会計
freee会計は、freee株式会社が提供するクラウド会計ソフトです。2026年7月時点の公式サイトでは、法人向けに次の料金プランが掲載されています(いずれも年払い時)。
- ひとり法人:月額2,980円
- スターター:月額5,480円から
- スタンダード:月額8,980円から
- アドバンス:月額39,780円から
- エンタープライズ:規模の大きい企業向けで個別見積もり
基幹システムの会計モジュールだけを先に移行する場合の候補になります。ただし、現行の勘定科目体系や仕訳ルール、固定資産台帳をどこまで引き継げるかは、移行前に個別の確認が必要です。
最新の料金やプラン内容は、公式サイトで確認してください。
マネーフォワード クラウド会計
マネーフォワード クラウド会計は、株式会社マネーフォワードが提供するクラウド会計サービスです。2026年7月時点の公式サイトでは、次の料金プランが掲載されており、いずれも初期費用は0円です。
- ひとり法人プラン:年払いで月々2,480円(月払い3,980円)
- スモールビジネスプラン:年払いで月々4,480円(月払い5,980円)
- ビジネスプラン:年払いで月々6,480円(月払い7,980円)
会計モジュールの移行と合わせて、他の基幹業務システムとの連携も検討する場合は、API連携やCSV連携で引き渡せる項目の範囲を確認してください。
料金やキャンペーンの内容は変わることがあるため、最新の情報は公式サイトで確認してください。
kintone
kintoneは、サイボウズ株式会社が提供する業務改善プラットフォームです。2026年7月時点の公式サイトでは、次の料金プランが掲載されています。
- ライトコース:1ユーザーあたり月額1,000円(最低10ユーザーから)
- スタンダードコース:1ユーザーあたり月額1,800円(最低10ユーザーから)
- ワイドコース:1ユーザーあたり月額3,000円(最低1,000ユーザーから)
受発注や在庫管理など特定の業務から段階的に移行先を作りたい場合の候補になります。基幹システム全体を一度に置き換えず、業務ごとに移す進め方に合っています。
既存の基幹システムが持つマスタデータを、kintone側にどこまで複製するか、都度APIで参照する構成にするかを決めることになります。この設計で移行後の運用負荷が変わるため、早い段階から考えておきましょう。
Microsoft Dynamics 365 Business Central
Microsoft Dynamics 365 Business Centralは、日本マイクロソフトが提供する中小・中堅企業向けのクラウドERPです。
2026年7月時点の公式サイトでは、次の料金プランが掲載されているほか、30日間の無料試用版も用意されています。
- Essentialsプラン:1ユーザーあたり月額11,994円(財務管理・サプライチェーン管理が中心)
- Premiumプラン:1ユーザーあたり月額16,491円(Essentialsに製造・サービス管理が加わる構成)
- Team Membersプラン:1ユーザーあたり月額1,199円
財務管理や販売、サービス、業務管理などのモジュールを組み合わせて使えます。そのため、既存の基幹システムを複数モジュールごと移したい中堅企業の候補になります。
移行対象の業務範囲が、どのプランに含まれるかを事前に確認しておきます。
OBIC7
OBIC7は、株式会社オービックが提供する統合業務ソフトウェアです。2026年7月時点の公式サイトのトップページでも、同社の中核ソリューションとして現行紹介されていることを確認しています。
会計、人事給与、販売管理など、複数のモジュールを組み合わせて使える統合型のパッケージです。大企業・中堅企業が基幹システム全体をまとめて移行する際の候補になります。
料金は公式ページで公開されていないため、個別に見積もりを依頼する必要があります。その際は、移行対象のモジュールと、現状のデータ量やレコード件数を伝えます。
Oracle NetSuite
Oracle NetSuiteは、オラクルが提供するグローバル対応のクラウドERPです。
2026年7月時点の公式サイトでは、経営管理ソリューションとして現行紹介されています。会計や在庫管理に加え、注文管理やサプライチェーン管理、倉庫管理までをオールインワンで扱える点が特徴です。
料金体系は、次の3要素で構成される年間ライセンス制であることが確認できます。
- コア・プラットフォーム
- オプション・モジュール
- ユーザー数
具体的な金額は公式ページで公開されていないため、個別見積もりが必要です。海外拠点を持つ企業や、複数通貨・複数言語で運用する企業が、基幹システムを一体で移行する際の候補になります。
自社の移行対象別に候補を絞る方法

6製品を一律に比べるよりも、移行対象がどこにあるかを先に決め、必須要件で候補を絞り込む方が効率的です。そこで、移行対象別に検討の出発点を整理します。
会計・経理業務を優先して移行したい場合
まず会計モジュールだけを切り出して移行し、業務全体は段階的に進めたい場合には、freee会計やマネーフォワード クラウド会計を検討の起点にします。
法改正への対応をベンダー側が継続して取り込んでくれる点は、自社で改修を続けるより、期日を守るうえで有利になり得ます。ただし、既存の基幹システムとの連携方法は、個別に確認しておく必要があります。
特定業務から段階的に移行したい場合
受発注や在庫管理など、特定の業務から先に移行したい場合は、kintoneのようなノーコード基盤が候補になります。運用が定着したかを確かめながら、対象業務を広げていく進め方に合っています。
移行済みの業務と、既存の基幹システムに残る業務とのあいだで、データの整合性をどう保つかが課題になります。この点は、移行の前に設計しておく必要があります。
複数モジュールを含む基幹システム全体を移行したい場合
複数モジュールにまたがる基幹システム全体を、新しい基盤へ移行する場合があります。対象には、会計や人事給与、販売管理に加えて、生産管理が含まれることもあります。
この場合は、統合ERPを候補にします。具体的には、Microsoft Dynamics 365 Business Central、OBIC7、Oracle NetSuiteの3製品が挙がります。
海外拠点があるか、業種特有の生産管理機能が必要かによって、適した製品は変わってきます。そのため、自社の業務要件を先に整理してから比べることが大切です。
料金・契約前に確認すべきこと

公開されている月額料金だけで移行先を決めると、データ移行や並行稼働にかかる費用が想定外に膨らむことがあります。そのため、移行にかかる総費用で比べることが大切です。
課金の対象と単位
クラウドERPの料金は、ユーザー数、モジュール数、取引データ量など、課金の単位が製品ごとに異なります。
見積もりの際は、現在の利用人数だけでなく、移行後の想定人数や将来のモジュール追加の可能性まで伝えます。そのうえで、次の項目を同じ条件で確認します。
- 初期費用
- 最低利用期間
- API利用料
- 導入支援費用
料金を公開していない製品も少なくないため、確認できていない具体額を比較表に推測で書き込まないよう注意してください。
データ移行と並行稼働にかかる費用も含めた比較
移行先の月額料金だけでなく、次の費用まで含めて比べることが大切です。
- データ移行支援費用:初期のデータ移行にかかる支援費用
- 二重運用コスト:旧システムとの並行稼働期間に発生する費用
- ハイパーケア費用:移行後しばらく続く問い合わせ対応の費用
製品によっては、標準的なデータ移行ツールが用意されています。一方で、自社特有のアドオンやカスタムフィールドの移行には、個別開発が必要になることもあります。
契約前には、どこまでが標準のサポート範囲かを明確にしておく必要があります。
デモとPoCによる移行先候補の最終絞り込み
資料比較で2〜3製品に絞り込んだら、実際の自社データを使ったデモまたはPoCで、移行先としての適合性を確かめます。
担当者だけでなく、経理や生産、情報システムなど関係部門にも参加してもらうと、導入後の行き違いを減らせます。
実データを使ったサンプル移行による適合性の検証
自社の取引先マスタや過去の伝票データの一部を使い、実際に移行先へ取り込んでみます。そうすると、コードの変換精度や、想定外の文字化け、必須項目の欠落を早い段階で見つけられます。
カタログの「データ移行対応」という表記だけで判断せず、実データでの動作確認まで行うことが大切です。
移行後の保守・サポート体制
移行が完了した直後は、想定していなかった不具合や操作の問い合わせが増える傾向があります。
ベンダーやパートナーが、移行後どれくらいの期間、優先的にサポートしてくれるかを確かめます。あわせて、追加の修正依頼が発生した場合の費用体系も、契約前に確認しておきます。
基幹システム/ERP移行の製品比較で押さえておきたいポイント
製品一覧から候補を選ぶ際は、料金の安さやプラン名だけでなく、自社の移行範囲と現行システムの複雑さを同じ基準で比べる必要があります。選定の場面で判断が分かれやすいポイントを、次に整理します。
オンプレミス型が必要な場合の比較対象(個別開発を含む)
今回紹介した製品は主にクラウド型ですが、閉域網の要件やセキュリティポリシーによっては、オンプレミス型が必須になる場合もあります。
オンプレミス型が必須の場合は、統合ERPパッケージのオンプレミス版と、個別開発による移行先の構築も、あわせて比べてください。
移行対象の範囲による移行先の違い
全企業に共通する唯一の正解はなく、会計モジュールだけの移行か、複数モジュールを含む全体の移行かによって、適した製品が変わります。
まず必須要件で2〜3製品に絞り込み、同じデータを使ったデモまたはPoCで比べてください。
料金・プラン内容の最新情報と確認方法
本記事で紹介した料金は、2026年7月時点で各社の公式サイトに掲載されていた情報です。料金プランやキャンペーン内容は変わることがあるため、契約前には必ず公式サイトや見積もりで、最新の条件を確認してください。
まとめ
基幹システム/ERP移行の移行先は、大きく3つに整理できます。会計モジュールに強いクラウド会計、特定業務から段階的に移行できるノーコード基盤、複数モジュールを含む統合ERPです。
今回紹介した6製品にも、会計特化から複数モジュール一体型まで、それぞれ異なる特徴があります。移行対象を先に特定してから比べることが、選定を効率よく進める近道です。
資料に並ぶ機能の数よりも、旧システムからのデータ移行がどれだけ円滑に進むかが重要です。
既製のクラウド製品では、独自のアドオンや、複数モジュールにまたがるマスタ統合を吸収しきれない場合があります。その場合は、個別開発による移行スクリプトの構築や、既存システムとの連携開発も選択肢になります。
riplaはフルスクラッチ開発の立場から、製品比較で見えてきた移行要件の整理を行っています。また、自社業務に合わせた移行支援やシステム構築にも取り組んでいます。
▼全体ガイドの記事
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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
