データモダナイゼーションとは?|考え方/特徴/仕組み/目的を解説

オンプレミスのデータベースを長年使い続けるうちに、部署ごとに似たようなデータが重複し、バッチ処理が夜間に収まらなくなり、新しい分析基盤を追加するたびに連携が複雑になっていく。こうした状態に心当たりのある情報システム部門は少なくありません。老朽化した既存のデータベースやデータ形式を、クラウド型のデータウェアハウスやデータレイクハウスなど現代的な基盤へ計画的に刷新する取り組みが、データモダナイゼーションです。

本記事では、データモダナイゼーションの基本的な考え方と特徴、刷新の仕組みとなる5つの手法、老朽化したデータ基盤が引き起こす具体的な課題、主要な機能、導入目的で得られる効果、DWH導入やアプリケーションのモダナイゼーションとの違いを順に解説します。データ基盤の刷新という言葉を初めて聞いた担当者の方でも、自社の状況と照らし合わせながら理解を深められる内容です。

本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。

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データモダナイゼーションとは何か?基本的な考え方と特徴

データモダナイゼーションの全体像を確認する担当者

データモダナイゼーションは、アプリケーションの画面や機能ではなく、その裏側にあるデータベースやデータの持ち方そのものを刷新の対象とする取り組みです。老朽化したオンプレミスのRDBMSに蓄積された取引データ、部署ごとにばらばらな形式で残されたファイル、長年の運用で崩れてしまったデータ構造を整理し、クラウド型のデータ基盤へ移し替えることを指します。

対象はアプリケーションではなくデータそのものです

一般的な「システムのモダナイゼーション」がアプリケーションのコードやインターフェースを対象にするのに対し、データモダナイゼーションはデータベース、データウェアハウス、データレイクといったデータ基盤そのものの刷新に特化します。画面を新しくしても、その裏にあるデータモデルが古いままでは、業務の変化にあわせてシステムを直せる速度も、データの整合性も、新しい分析を追加できる拡張性も改善しないというのが出発点にある考え方です。

実際、レガシーアプリケーションが変更しにくいと言われる原因の多くは、画面やロジックではなくデータモデルそのものの古さにあります。テーブル設計が業務の変化に追随できていない、同じ情報が複数のシステムに重複して存在する、リアルタイムに近い形でデータを取り出せないといった状態は、アプリケーション層をいくら手直ししても解消しません。データモダナイゼーションは、この根本にあるデータの構造と持ち方を見直す取り組みだと理解すると、他のIT刷新施策との違いが見えやすくなります。

老朽化した既存基盤からの移行であることが前提です

データモダナイゼーションは、何もない状態から新しい分析基盤を作るプロジェクトとは前提が異なります。長年運用してきたオンプレミスのRDBMSがあり、そこに業務の歴史とともに蓄積された取引データ、部署固有のコード体系、個別に作られたバッチ処理が存在することが出発点です。これらの既存資産を安全に移行し、整理し直しながら、新しい基盤へ引き継ぐという「老朽化した既存環境からの刷新」である点が特徴になります。

そのため、単純に新しいソフトウェアを導入すれば完了するわけではありません。移行対象のデータがどのシステムにどのような形式で存在するのか、どの項目が重複または矛盾しているのか、移行中も業務を止められない期間はどこかといった、既存環境の実態を踏まえた計画が欠かせません。この移行元の複雑さを軽視すると、後述するように移行プロジェクトの遅延や失敗につながりやすくなります。

データモダナイゼーションの仕組み:5つの手法とデータ層への適用

データモダナイゼーションの5つの手法を整理する図

システムのモダナイゼーション全般で語られるリホスト、リプラットフォーム、リファクタリング、リビルド、リプレースという5つの手法は、データ層に適用する場合も基本的な考え方は共通しています。ただし、動かす対象がアプリケーションのコードではなくデータそのものであるため、それぞれの手法が意味する作業内容は少し異なります。

リホスト・リプラットフォームは既存のデータ構造を保ったまま基盤を移します

リホストは、既存のデータベースエンジンやスキーマ構造をほぼそのまま、稼働環境だけをオンプレミスからクラウドの仮想サーバーへ移す方法です。リプラットフォームは、それに加えてクラウドのマネージドデータベースサービスなど、運用管理の負担を軽減できる形態に置き換えます。いずれもテーブル設計やデータの持ち方には大きく手を入れないため、比較的短期間で着手できる一方、老朽化したデータモデルそのものの課題は解消されません。

リファクタリング・リビルドはデータモデルとスキーマ自体を見直します

リファクタリングは、既存のデータを保持したまま、テーブル設計や正規化の状態、コード体系の統一といったデータモデルの内部を整理し直す手法です。リビルドは、業務要件を見直したうえでスキーマを新規に設計し、既存データをクレンジングしながら移し替えます。部署ごとにばらばらだったデータ形式を統合し、重複や矛盾を解消する工程が中心になるため、後述するように開発工程の中でも最も時間を要しやすい部分です。

リプレースは新しいデータ基盤へ全面的に置き換えます

リプレースは、既存のオンプレミスRDBMSを前提とせず、クラウド型のデータウェアハウスやデータレイクハウスなど、新しい製品・アーキテクチャへ全面的に切り替える手法です。データパイプラインもゼロから設計し直すため取り組みの範囲は最も広くなりますが、ストレージとコンピュートを分離した現代的な構成に移行できるため、後述する運用コストの構造転換やリアルタイム分析の実現につながりやすい手法でもあります。自社のデータ基盤がどの手法に該当するかは、老朽化の度合いと解決したい課題の大きさによって変わります。

老朽化したデータ基盤が引き起こす具体的な課題

老朽化したデータ基盤が引き起こす課題を確認する会議

データモダナイゼーションを検討する企業の多くは、特定の課題に直面してから動き出します。代表的なのは、データが部署ごとに分散して全体像が見えないサイロ化と、データモデル自体が古いためにアプリケーションを直しても効果が出にくいという問題です。

部門ごとに乱立したストレージがサイロ化を招きます

長年の運用の中で、部署ごとに独自のストレージや個別のバッチ処理を積み重ねてきた企業では、同じ顧客や取引の情報が複数の場所に別々の形で存在し、全社横断で状況を把握することが難しくなります。AWSが公開している導入事例では、富士通が社内に乱立していたデータストレージや個別のバッチ処理群を、クラウド上の全社データ活用プラットフォームへ統合し、データのサイロ化を解消してリアルタイムに近い分析基盤を実現したことが紹介されています。個別最適で積み上がった仕組みを、全社で使えるデータ基盤へまとめ直す発想は、多くの企業に共通する出発点です。

データモデルの古さがアプリ改修の効果を打ち消します

画面やAPIだけを新しくしても、その裏にあるデータモデルが古いままだと、変更速度、データの整合性、新しい分析軸を追加できる拡張性のいずれも十分に改善しないという課題があります。たとえば、新しい商品カテゴリや取引形態が生まれるたびにテーブル構造の制約に突き当たり、担当者が手作業で例外処理を追加し続けている状態は、アプリケーション側の改修だけでは解消できません。データモダナイゼーションが「アプリのモダナイゼーション」と別に語られる理由は、この根本原因がデータ層にあるという認識にあります。

主要な機能とデータパイプラインの構成要素

データパイプラインの構成要素を確認する担当者

データモダナイゼーションを支える基盤は、単一の製品というより複数の機能が組み合わさったデータパイプラインとして構成されます。大きく分けると、データの収集と変換、ストレージとコンピュートの分離、データガバナンスという3つの要素が中心になります。

ETL/ELTによるデータ収集とクレンジング機能

既存のオンプレミスRDBMSや業務システムからデータを取り出し、形式をそろえ、重複や欠損を取り除いたうえで新しい基盤へ流し込む機能です。移行元のシステムごとに項目名やコード体系が異なる場合が多く、このクレンジング工程がデータモダナイゼーションの開発期間の中でも最も時間を要する部分になりやすいという特徴があります。データの正しさを機械的にチェックするルールを組み込みながら、段階的に品質を高めていく設計が求められます。

ストレージとコンピュートを分離したクラウド構成

クラウド型のデータウェアハウスやデータレイクハウスの多くは、データを保存する部分と、それを処理する計算リソースを分離した構成をとっています。オンプレミスのRDBMSでは保存領域と処理能力が一体になっていたため、データ量が増えるたびに高価なハードウェアを増強する必要がありましたが、分離型の構成であれば、処理が必要なときだけコンピュートリソースを増減させられます。この構造が、後述する運用コストの考え方の転換につながります。

データガバナンス・カタログ・アクセス制御機能

どのデータがどこにあり、誰が利用でき、どのように加工されてきたかを管理する機能も欠かせません。データカタログによって各部署が同じ定義でデータを探せるようにし、アクセス権限を役割ごとに分けることで、個人情報や機密情報を含むデータの取り扱いを統制します。データを移行しただけで終わらせず、継続的に整備・棚卸しする運用体制とあわせて機能を設計することが重要です。

導入目的と得られる効果

データモダナイゼーション導入の効果を確認する担当者

データモダナイゼーションの目的は、単にデータベースを新しくすることではありません。コスト構造そのものを変え、経営や現場が必要なときにデータを使える状態を作り、全社的なデータ活用の土台を再構築することにあります。

固定費中心から従量課金中心へコスト構造が変わります

オンプレミスのRDBMSを運用する場合、サーバーやライセンス、専任のデータベース管理者にかかる人件費など、使う量に関わらず発生する固定費が中心になります。クラウド型のデータ基盤へ移行すると、ストレージとコンピュートが分離された構成を生かして、実際に使った分だけ課金される変動費中心の構造へ転換できます。ストレージとコンピュートを切り分け、使用量にあわせてリソースを調整するFinOpsの考え方に取り組むことで、年間の運用コストを大きく圧縮できたとする移行事例も見られますが、削減幅は移行前の構成や運用体制によって変わるため、自社の現状コストを基準に試算することが欠かせません。

バッチ処理からリアルタイムに近い分析基盤へ転換します

夜間バッチで翌朝にならないと最新の状況が分からなかった環境から、日中でも比較的新しいデータを参照できる環境へ切り替えられることも大きな目的の一つです。在庫状況や販売実績を当日中に近い形で把握できれば、翌日の判断ではなく当日の判断に業務を変えていける可能性が広がります。ただし、リアルタイム性を高めるほどデータパイプラインの設計や監視の負荷も増すため、どの業務にどこまでの鮮度が必要かを見極めたうえで範囲を決めることが重要です。

データガバナンスを再構築し全社的な活用を進めます

データが一箇所に集まっても、誰がどのデータを使ってよいか、どの数値を正としてよいかが曖昧なままでは活用が進みません。データモダナイゼーションを機に、データの定義、責任部門、更新頻度、アクセス権限を整理し直すことで、各部署が同じ数値を根拠に議論できる状態を作ります。技術的な刷新だけでなく、社内のデータに関するルールを合わせて見直す機会として捉えることが、投資対効果を高めるうえで重要です。

DWH導入・アプリケーションのモダナイゼーションとの違い

データモダナイゼーションと他の刷新施策の違いを整理する図

データモダナイゼーションは、名称が近い他の取り組みと混同されやすい施策です。特にDWH導入と、アプリケーションを対象にしたモダナイゼーションとは、出発点も進め方も異なるため、切り分けて理解しておく必要があります。

DWH導入とは出発点が異なります

データ活用やBIの文脈で語られるDWH導入は、多くの場合、まだ整った分析基盤がない状態から新しく構築するプロジェクトです。これに対してデータモダナイゼーションは、老朽化したオンプレミスのRDBMSや個別のバッチ処理といった既存資産がすでに存在し、それを移行・整理し直すという前提に立ちます。既存データの棚卸しと移行という工程が加わる分、ゼロから作るDWH導入とは必要な計画とリスクの種類が異なります。

アプリケーションのモダナイゼーションとは対象レイヤーが異なります

業務システムのモダナイゼーションなど、アプリケーション層を対象にした刷新は、画面、業務ロジック、システム間の連携方式を主な対象にします。データモダナイゼーションはその裏側にあるデータの持ち方を対象にするため、両者は排他的な選択肢ではなく、あわせて検討されることも少なくありません。ただし、進め方や検証方法は大きく異なるため、自社がどちらの課題を優先すべきかを最初に切り分けることが重要です。データ層の課題が大きい場合の具体的な選定ポイントは、データモダナイゼーションの選定ポイント・選び方・種類で整理しています。

データモダナイゼーション導入前に確認しておきたいポイント

データモダナイゼーション導入前の確認事項をまとめる担当者

データモダナイゼーションを進めるかどうかは、老朽化の度合いだけで決まるものではありません。どこから着手するか、移行期間中の業務継続をどう担保するか、自社開発とクラウド製品のどちらを選ぶかを事前に整理することで、着手後の手戻りを防げます。

どのデータから着手すべきかは業務インパクトで判断します

すべてのデータを一度に刷新しようとすると、要件定義とデータソース調査だけで時間を要し、成果が見えるまでの期間が長くなります。売上分析や在庫最適化など、1つの業務領域に絞って先行着手し、成果を確認してから対象範囲を広げる進め方が現実的です。優先領域を選ぶ基準は、データの利用頻度が高く、かつ現状のサイロ化による損失が大きい業務から選ぶことです。

移行期間中はデータの並行稼働と整合性確認が欠かせません

データ移行は、切り替えの瞬間に業務が止まるリスクを伴います。旧システムと新しいデータ基盤を一定期間並行稼働させ、同じ処理を両方に流して結果が一致するかを確認する工程を設けることで、切り替え後に数値の食い違いが発覚する事態を避けやすくなります。並行稼働の期間と確認方法は、移行対象データの重要度に応じてあらかじめ計画しておく必要があります。

データ基盤本体のフルスクラッチは原則として避けます

データウェアハウスやデータレイクハウスのエンジン自体を独自に開発することは、多くの企業にとって過剰投資になりやすく、既製のクラウド製品を採用することが基本方針になります。フルスクラッチが正当化されるのは、極めて低いレイテンシやペタバイト級のデータ量を扱う特殊な要件がある場合など、限られたケースにとどまります。一方で、既存の基幹システムとの独自連携や、業界特有のデータモデルにあわせた個別のパイプライン設計には、自社の要件に合わせた開発が必要になる場面もあります。

まとめ

データモダナイゼーションの要点をまとめる担当者

データモダナイゼーションは、老朽化したオンプレミスのデータベースやデータ形式を、クラウド型のデータウェアハウスやデータレイクハウスへ計画的に移行し、データそのものの構造とガバナンスを刷新する取り組みです。リホストからリプレースまでの手法を状況に応じて選び、サイロ化やデータモデルの制約という根本課題に向き合うことで、コスト構造の転換とリアルタイムに近いデータ活用を実現できます。

技術刷新と社内ルールの見直しを両輪で進めます

データ基盤を新しくするだけでは、活用が自動的に進むわけではありません。どのデータを正とするか、誰がアクセスできるか、どのタイミングで更新するかといったルールを、技術の刷新とあわせて整備する必要があります。移行手法の選定、優先領域の絞り込み、並行稼働による検証を計画的に進めることが、投資を成果につなげる鍵になります。

現状のデータ資産を棚卸しすることから始めます

まずは、既存のデータベースやファイルにどのようなデータがどの形式で存在し、どこにサイロ化や重複が生じているかを棚卸ししてください。優先すべき業務領域と目指すコスト構造が明確になれば、既製のクラウドデータ基盤で対応できる範囲と、自社独自の連携やパイプラインが必要な範囲を切り分けやすくなります。riplaはフルスクラッチ開発の立場から、既製クラウド製品では吸収しきれないデータ連携の要件整理や、既存の基幹システムと新しいデータ基盤をつなぐ開発を支援しています。

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・データモダナイゼーションの完全ガイド

株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。