DXコンサルのフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

DXコンサルの実行支援フェーズにおいて、企業が選択肢として悩むことの多いテーマの一つが「既製のパッケージやSaaSを導入するのか、それとも自社専用のフルスクラッチ・オーダーメイド開発による内製化体制を構築するのか」という判断です。DXコンサルは、診断(現状分析)から戦略立案、実行計画の策定を経て、実際のシステム開発や組織変革を実行支援フェーズとして伴走するサービスであり、この実行支援フェーズにおいて、自社の競争優位の源泉となるコア領域については、パッケージの枠に収まらないフルスクラッチ・オーダーメイド型の内製化体制を、コンサルタントの伴走のもとで一から構築していくアプローチが選択されることがあります。単にシステムを作って納品するのではなく、社内にノウハウを移転し、自走できる体制を作り上げていくという点が、この分野におけるDXコンサルの大きな役割です。

本記事では、DXコンサルにおけるフルスクラッチ・オーダーメイド開発(内製化・自社専用体制構築)に焦点を当て、パッケージ・既製ツール導入との違い、自社専用の体制を一から構築するメリット・デメリット、DXコンサルによる人材育成・ノウハウ移転の内容、そして進め方のステップまでを体系的に解説します。なお、DX戦略コンサルが経営層向けのDXビジョン策定・中期経営計画への組込みという上流の構想策定に特化し、DX推進コンサルが全社的なDX推進体制構築・部門横断プロジェクトの推進管理という組織展開・推進管理に特化し、DX支援が現場で手を動かす伴走・内製化支援という下流の実行支援に特化するのに対し、DXコンサルはこれら3つの機能を包括する総合型サービスとして位置づけられます。戦略立案の段階でコア領域を見極め、実行支援フェーズで内製化まで一気通貫に伴走できる点が、DXコンサルにおけるフルスクラッチ開発の大きな強みです。これから内製化体制の構築を検討している経営企画・DX推進部門の方はもちろん、すでにパッケージ導入とフルスクラッチの間で判断に迷っている方にとっても、実務に役立つ判断軸が身に付く内容です。

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DXコンサルにおける内製化・自社専用体制構築とは(パッケージ導入との違い、他3サービスとの違い)

DXコンサルにおける内製化・自社専用体制構築とは(パッケージ導入との違い、他3サービスとの違い)

システムを導入する際、SaaSやパッケージソフトを活用するか、フルスクラッチ(オーダーメイド)で内製化するかの違いは、「そのシステムが自社の競争力に直結するかどうか」という戦略的な切り分け(ハイブリッド戦略)に基づきます。DXコンサルは診断・戦略立案フェーズにおいて、どの業務領域がコア(競争優位の源泉)で、どの業務領域がノンコア(業界共通の定型業務)かを見極めたうえで、コア領域についてはフルスクラッチ・オーダーメイド型の内製化を、ノンコア領域についてはパッケージ・SaaS導入を提案するという使い分けを行います。この見極めこそが、内製化を検討するうえでの出発点になります。

パッケージ・既製ツール導入(ノンコア領域向け)との違い

パッケージ・既製ツール導入は、経費精算や勤怠管理など、業界共通の定型業務(ノンコア業務)に適しています。あらかじめ必要な機能が備わっているため、一から開発する必要がなく、導入コストや運用コストを大幅に抑えられ、社内にIT人材がいなくても短期間で導入できるのが特徴です。その反面、独自のカスタマイズには限界があり、「自社の業務をシステムに合わせる」必要があります。これに対してフルスクラッチ・オーダーメイド型の内製化は、独自の顧客体験(UI/UX)やビジネスモデルに直結するデータ基盤など、自社の競争優位の源泉をシステムに直接投影するためのアプローチです。パッケージの枠に収まらない柔軟なシステムを構築でき、「システムを自社のビジネスに合わせる」ことが可能になります。

DX戦略コンサル・DX推進コンサル・DX支援による内製化支援との違い

内製化支援の位置づけを理解するうえで混同を避けたいのが、DX戦略コンサル、DX推進コンサル、DX支援それぞれによる内製化への関わり方の違いです。DX戦略コンサルは、経営層向けのDXビジョン策定という上流の構想策定に特化しているため、「コア領域を内製化すべきか」という戦略的な方向性の提示にとどまり、実際の開発体制構築には深く関与しないことが一般的です。DX推進コンサルは、全社的な推進体制構築・部門横断プロジェクトの推進管理という組織展開・推進管理に特化しているため、内製化体制を全社的な推進計画の中にどう位置づけるかという観点から関与しますが、個別の技術移転や現場でのペアプログラミングには入り込まないケースが多くなります。DX支援は、現場で手を動かす伴走・内製化支援という下流の実行支援に特化しているため、実際の技術移転や体制構築には強みを発揮しますが、その内製化がなぜ必要なのかという戦略的な位置づけは前提として与えられることが多くなります。これに対してDXコンサルは、コア/ノンコアの見極めから内製化の戦略的位置づけ、実際の技術移転までを一つのチームで一気通貫に担うため、内製化の目的と実務の両方に一貫性を持たせやすいという特徴があります。

自社専用の体制を一から構築するメリット・デメリット

自社専用の体制を一から構築するメリット・デメリット

自社専用の開発体制をフルスクラッチで構築することには、大きなメリットがある一方で、見過ごせないデメリットも存在します。DXコンサルを活用する際は、この両面を正しく理解したうえで意思決定することが重要です。

メリット:スピード・柔軟性、ナレッジ蓄積、長期コスト最適化

メリットの1つ目はスピードと柔軟性の劇的な向上です。外注ベンダーとの契約交渉や見積もり調整にかかるリードタイムが排除され、顧客のフィードバックや市場動向の変化に合わせて、即座(アジャイル)に機能の追加や改善を回せるようになります。2つ目はナレッジの蓄積とベンダーロックインの回避です。なぜその設計にしたのかという判断基準や技術的知見が「組織の資産」として社内に蓄積されます。また、自社でシステムの主導権を握るため、特定ベンダーに依存して身動きが取れなくなる(ベンダーロックイン)リスクを根絶できます。3つ目は長期的なコスト最適化です。初期投資はかかるものの、中長期的には外注に伴う中間マージンや追加開発ごとのコストが削減され、総所有コスト(TCO)が最適化されます。

デメリット:採用・育成のハードル、属人化・ブラックボックス化のリスク

デメリットの1つ目は採用・育成のハードルと初速の遅さです。IT人材市場は超売り手市場であり、優秀なエンジニアやPMを採用・定着させるのは困難です。また、社内メンバーがスキルを身につけて自走できるようになるまでには時間がかかります。2つ目は属人化とブラックボックス化のリスクです。適切な仕組みづくりを行わずに内製化を進めると、特定の担当者しかシステムの中身を理解できない「属人化」が発生し、その人材が退職すると保守が破綻するリスクがあります。DXコンサルによる伴走支援は、まさにこの2つのデメリットを軽減するために存在します。採用・育成の面ではコンサルタントが即戦力として初期の開発を支えながら社内メンバーを育成し、属人化の面では標準化されたプロセスの設計によってリスクを抑えます。

費用・期間へのインパクトとパッケージ導入との比較

フルスクラッチ・オーダーメイド型の内製化は、パッケージ導入と比較して費用・期間ともに大幅に増加する点も見過ごせません。費用はパッケージ導入の数倍〜数十倍、対象範囲によっては数億円規模になるケースも珍しくなく、期間も最短で1年〜3年以上を要することが一般的です。特に要件定義フェーズでは、パッケージであれば既製の機能一覧から選択すれば済むところを、ゼロベースであるべき姿を描き切る必要があるため、膨大な時間がかかりやすい傾向にあります。この費用・期間のインパクトを経営層に正しく説明できるかどうかが、内製化プロジェクトの初期段階における最大の関門です。DXコンサルが診断・戦略立案フェーズで投資対効果の試算まで一気通貫で行っていれば、この説明責任を果たすための材料をすでに手元に持っている状態で実行支援フェーズに入ることができます。

DXコンサルが内製化をどう支援するか(人材育成・ノウハウ移転、向いている企業)

DXコンサルが内製化をどう支援するか(人材育成・ノウハウ移転、向いている企業)

総合型のDXコンサルは、単にシステムを「作って納品する(丸投げ)」のではなく、お客様が自走できるように「一緒に手を動かしながらノウハウを移譲する(伴走型支援)」のが特徴です。

フュージョンチームによるOJTと属人化しない仕組みづくり

DXコンサルによる人材育成・ノウハウ移転は、主に3つの取り組みで構成されます。1つ目はフュージョンチームの組成(OJTを通じた技術移転)で、コンサルの専門エンジニアが、お客様のIT部門や業務部門のメンバーと同じチームに入り込みます。一緒にペアプログラミング等を行いながら開発を進めることで、実践的なスキルやアジャイル開発の進め方(型)を直接社内メンバーへ教育・伝承します。2つ目は「属人化しない仕組み(構造)」の提供で、個人のスキルに依存しないよう、コンサルが主導して「誰が見ても理解できる設計書・運用マニュアルのフォーマット」や「コードレビューの基準」「開発フロー」などの標準化されたプロセスを設計し、社内に定着させます。3つ目は学習プロセスの組み込みで、定期的な勉強会やハンズオン研修など、社内人材(非IT人材も含む)が継続的に学べる育成プログラムをプロジェクト内に組み込み、組織全体のITリテラシーを底上げします。

フルスクラッチでの内製化が向いている企業の特徴

フルスクラッチでの内製化体制構築(コンサルの伴走支援)に向いているのは、大きく3つのタイプの企業です。1つ目はコア事業で独自の提供価値を持ちたい企業で、既存のパッケージやSaaSでは要件を満たせず、自社独自のサービスやデータ活用で他社と明確な差別化を図りたい企業です。2つ目はビジネスの変化が激しい業界の企業で、サービスリリース後も、短いサイクル(週単位など)で仮説検証とシステムの継続的なアップデートを繰り返す必要がある企業です。3つ目は経営層が長期的な視点で投資できる企業で、短期的なコスト削減ではなく、自社のデジタルケイパビリティ(組織能力)を高めること自体を中長期的な経営戦略・投資と位置づけられる大企業や中堅企業です。これらの条件に当てはまるかどうかを診断・戦略立案フェーズで見極めることが、内製化への投資判断を誤らないための重要なステップになります。

進め方のステップ

進め方のステップ

伴走型のDXコンサルと協働し、属人化を防ぎながら段階的に内製化を進めるステップは、大きく5つに整理できます。

Step1〜3:要件定義から標準化、アーキテクチャ設計まで

Step1は業務の棚卸しと戦略・要件定義です。現状の業務とシステムを可視化し、内製化の目的を定義します。すべてを内製化するのではなく、「どの領域(コア)を内製化し、どの領域(ノンコア)をSaaS等で代替するか」という前提設計を行います。これはDXコンサルの診断フェーズで培った現状分析の知見が最も活きるステップです。Step2はプロセス設計と標準化の仕組みづくりです。開発を始める前に、開発フロー、ドキュメントの規約、コードレビューの基準などを文書化し、特定の個人のみに知識が偏らない(属人化しない)ためのルールを設計します。Step3はアーキテクチャ設計とツール選定です。自社の技術レベルに合わせて、クラウド基盤、CI/CDツール(自動化ツール)、あるいは非エンジニアを巻き込むためのローコード/ノーコードツールなどの開発環境を選定・構築します。

Step4〜5:共同開発による学習から段階的な自走移管まで

Step4は伴走支援による共同開発と学習です。コンサルの専門家と社内メンバーで混成チームを作り、影響範囲の小さい領域からスモールスタートで開発(アジャイル開発)を開始します。コンサルが手を動かしながら、社内メンバーへ技術とノウハウを移譲します。Step5は段階的な内製(自走)への移管です。最初から100%内製を目指すのではなく、徐々に社内メンバーへ主導権を移していきます。最終的にコンサルは「直接開発する立場」から「技術アドバイザー」へと退き、3〜5年かけて自社のみでシステムを継続改善できる自走体制を完了させます。この5つのステップを通じて、診断・戦略立案の段階で見極めたコア領域の内製化が、実行支援フェーズを通じて着実に社内へと根付いていくことになります。

陥りやすい罠:「現行踏襲」の罠と要件の肥大化

フルスクラッチでの内製化プロジェクトが失敗する典型パターンとして、「現行踏襲(As-Isのシステム化)」の罠が挙げられます。ゼロベースであるべき姿(To-Be)を描くはずが、現場ヒアリングを重ねる中で「今の画面や帳票と同じにしてほしい」という要望に押し切られ、結局は非効率な現行業務をそのまま高額な新システムに乗せ替えただけになってしまう失敗です。もう一つの典型パターンは、要件の肥大化・終わらない要件定義です。「何でも作れる」がゆえに各部門から際限なく要望が寄せられ、予算・スケジュールが破綻しやすくなります。これらの罠を避けるには、「本当に競争優位を生む機能か」を判断し切り捨てるスコープマネジメントが経営層に求められます。また、数年後の完成形を最初から完璧に定義するのは不可能であるという前提に立ち、MVPを作りパイロット部門で動かし、フィードバックを得て修正を繰り返すアジャイル・アプローチを内製化の初期段階から取り入れることが、これらの罠を回避しながら着実に自走体制を築いていくための成功の鍵となります。

まとめ

DXコンサルのフルスクラッチ・オーダーメイド開発まとめ

本記事では、DXコンサルにおけるフルスクラッチ・オーダーメイド開発(内製化・自社専用体制構築)について、パッケージ・既製ツール導入との違い、自社専用の体制を一から構築するメリット・デメリット、DXコンサルによる人材育成・ノウハウ移転、進め方のステップを体系的に解説しました。DXコンサルにおける内製化支援の本質は、DX戦略コンサル(上流の構想策定)、DX推進コンサル(組織展開・推進管理)、DX支援(現場の実行支援)のいずれか単体では実現しにくい、コア/ノンコアの見極めから実際の技術移転までを一気通貫でつなぐ一貫性にあります。スピードと柔軟性、ナレッジ蓄積、長期コスト最適化というメリットを享受しながら、採用・育成のハードルや属人化のリスクというデメリットをコンサルタントの伴走によって軽減し、フュージョンチームによるOJTと標準化された仕組みづくりを通じて、3〜5年かけて自走体制へと段階的に移行していくことが、フルスクラッチでの内製化を成功させる王道です。内製化体制の構築を検討されている方は、まずは自社のどの業務領域がコアにあたるのかを整理したうえで、複数のコンサルティングパートナーに相談し、現実的な移行計画を立てることから始めることをお勧めします。

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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。