EC刷新の見積相場や費用/コスト/値段について

EC刷新の費用は、開発方式、企業規模、機能要件、連携範囲によって、300万円から1億円以上まで変わります。金額の幅を読むには、どの要素が費用をどう動かすのかを、項目ごとに見ておくことが大切です。

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EC刷新にかかる費用の全体像

EC刷新にかかる費用を開発費、PM費、環境費、保守費の4層で示した図
初期費用とリリース後の費用を分けて確認できます。

EC刷新の費用は、初期開発費用とランニングコストに分かれます。また、決済基盤や在庫管理、会員データベースや物流連携などが、見積もりに影響します。

開発費用の構成要素(工数×人月単価+PM費+環境費+保守)

費用は初期費用と運用費に分けると、項目ごとの違いが見えてきます。見積もりの金額を比べるときも、どの費用が初期にかかり、どれが運用で続くかを分けて見る必要があります。

  • 開発費:工数と人月単価で決まります。
  • PM費:複雑な案件では専任PMを置き、その分の費用がかかります。
  • 環境費:サーバーやステージング環境の費用です。
  • 保守費:本番リリース後も継続して発生します。

2026年現在、国内フリーランスエンジニアの平均月単価は78.3万円から80万円程度です。プロジェクト規模によっては、10名以上のエンジニアが数ヶ月稼働することもあります。

専任PMの月単価は80万円から120万円程度が相場です。また、開発環境の構築費用は50万円から200万円程度になることがあります。開発環境には、サーバー、クラウド環境、ステージング環境などが含まれます。

本番リリース後の保守費用も、長期的なコスト計画に含めておく必要があります。

規模別の費用レンジ(中小規模/中規模/エンタープライズ)

費用レンジを比べるには、企業規模ごとに機能要件がどう増えるかを見ると、違いが分かりやすくなります。

  • 中小規模:商品数や注文件数を絞りやすい規模です。
  • 中規模:独自業務や在庫管理の要件が増えます。
  • エンタープライズ:グローバル対応などが加わります。

年商1億円未満の中小規模ECでSaaSを使う場合、初期費用は300万円から800万円程度が目安です。費用が抑えられるのは、扱う商品数や注文件数が限られ、カスタマイズの範囲を絞りやすいためです。

年商1億円から10億円程度の中規模ECは、初期費用が800万円から3,000万円程度が目安です。独自の業務フローや複雑な在庫管理の要件が生じることもあります。

このほか、会員システムや購買履歴データの移行費用が加算されます。既存の基幹システムとのAPI連携費用も、見積もりに含まれます。

年商10億円を超えるエンタープライズECは、初期費用が3,000万円から1億円以上になることがあります。特に、グローバル対応や多言語化、大規模トラフィックへの対応は、費用を上げる要因になります。

ポイント

費用を比べるときは、規模や機能要件ごとのレンジを、初期開発費と運用費に分けて読むのが判断の目安です。どちらか一方だけで見ると、総額を見誤りやすくなります。

SaaS EC vs スクラッチのコスト比較

SaaS ECとスクラッチ開発を初期費用、継続費用、独自要件で比較した図
導入時だけでなく継続費用と独自要件も比較軸になります。

EC刷新では、SaaS ECとスクラッチのどちらを選ぶかが大きな判断になります。そのうえで、初期費用だけでなく、5年・10年のトータルコストも比べる必要があります。

Shopify Plus等のSaaS EC:初期費用を抑えランニングコストで回収

SaaS ECは初期投資を抑えやすい一方で、利用量に応じた費用を見込んでおく必要があります。

  • 導入費:デザインやアプリ連携が中心です。
  • 月額費:売上規模に応じて変動します。
  • 従量課金:決済やAPI利用で増えることがあります。

Shopify Plusの月額費用は約3万円から10万円程度で、売上規模によって変動します。

プラットフォーム自体の開発費は、ほぼゼロから始められます。ただし、テーマ開発なども含めた初期費用は、100万円から500万円程度に収まるケースが多くあります。

独自決済以外を使う場合、Shopify Plusでは0.15%から0.3%の追加手数料が発生します。

commercetoolsでは、APIコール数に応じた従量課金が発生します。トラフィックが増えるほど、API駆動型プラットフォームの費用も上がります。さらに、月商が大きくなるほど、SaaS費用の比率が無視できなくなります。

スクラッチ開発:初期費用は高いがカスタマイズ自由度で差別化

スクラッチ開発は、初期費用と引き換えに独自要件へ対応しやすい方式です。

  • 初期投資:SaaSより高くなりやすい方式です。
  • 独自要件:業務に合わせた機能を構築できます。
  • 運用負担:技術負債やセキュリティ対応が必要です。

独自のポイントプログラムや複雑なセット販売ロジックに対応できます。また、B2B特有の与信管理など、既存SaaSで難しい要件にも向いています。

中規模ECの初期費用は1,500万円から5,000万円が相場です。さらに、エンタープライズ規模では、初期費用が1億円を超えることもあります。

SaaS月額や追加手数料が不要なため、長期的に有利になることがあります。一方で、機能追加の開発費も発生します。

5年間トータルコストで考えるべき理由

方式を選ぶときは、導入時と運用時の支出を同じ期間で比べる必要があります。

  • 初期費用:導入時に必要な投資額を比べます。
  • 継続費用:月額、保守、追加アプリを積み上げます。
  • 将来計画:売上や機能拡張も試算に入れます。

SaaS ECの初期費用を300万円に抑えても、継続費用は積み上がります。月額10万円の費用と年間保守契約100万円が、5年間続く場合があります。加えて、追加アプリ費用も加わると、5年間のトータルコストは1,000万円以上になることがあります。

スクラッチ開発では、初期に2,000万円を投じるケースもあります。その場合、年間保守費用を初期費用の15〜20%とすると、300万円から400万円です。

保守費用を含めた5年間の合計は、3,500万円から4,000万円程度になることがあります。ただし、中規模EC以上で月商が一定以上なら、スクラッチが有利になる場合があります。

売上規模、機能要件、将来の拡張計画を踏まえて、5年間のシミュレーションを行う必要があります。

ポイント

判断の目安は、初期費用だけでなく5年間の継続費用で比べることです。独自要件の多さと月商の規模を合わせて見ると、方式を選びやすくなります。

【2026年最新】エンジニア単価の相場データ

EC刷新では、エンジニアの人月単価が見積もりの精度を左右します。人材市場や技術トレンドで単価は変わるため、古いデータのままでは見積もりが実態からずれる原因になります。

国内フリーランス単価(平均78.3万〜80万円)と言語別トレンド

国内単価は、使用言語とレガシー移行の経験によって差が出ます。

  • TypeScriptとGo:平均単価が高い領域です。
  • PHPとJava:従来型ECで比較的落ち着いています。
  • 移行経験:希少な知見には上乗せがあります。

2026年の国内フリーランスエンジニアの平均月単価は78.3万円から80万円程度です。なお、TypeScriptを主力とするエンジニアは、平均85.5万円です。

Go言語エンジニアは、平均87.0万円と高水準を維持しています。このため、Next.jsとGo言語を組み合わせるECでは、調達コストが見積もりに影響します。

一方で、PHPやJavaを使う従来型ECの刷新では、70万円から75万円程度が相場です。レガシーシステムの解読や移行ノウハウを持つ人材は希少です。そのため、該当するエンジニアにはスキルプレミアムが乗ることがあります。

AI活用エンジニアの単価プレミアム(+10万円)

AI活用エンジニアは、単価と生産性を合わせて評価する必要があります。

  • 単価差:非AI活用層より高くなる傾向があります。
  • 生産性:コード生成で工数を減らせる場合があります。
  • 選定基準:単価より総開発費で比べます。

GitHub Copilotなどのコード生成AIを使い、コードの50%以上をAIで生成できる人材は、同等スキルの人材より高単価です。

その差は、月単価で平均約10万円です。AI活用エンジニアは、開発工数を20〜30%削減できるケースがあります。そのため、単価が高くても、トータルの開発費用を抑えられることがあります。

見積段階では、AI活用エンジニアを採用するベンダーも比較対象になります。

オフショア単価の逆転現象(中国58.3万円の突出上昇)

オフショアは、国ごとの単価の変動と、管理にかかるコストを合わせて評価する必要があります。

  • 中国:単価が大きく上昇しています。
  • インド:単価が下落しています。
  • 総費用:単価に加えて、作業全体の総額で比べます。

2026年の中国エンジニアの平均単価は58.3万円です。中国の単価は、前年比31.3%増という顕著な上昇を記録しています。このため、中国オフショアのコスト削減効果は、以前より薄れています。

インドエンジニアの平均単価は37.5万円で、前年比29.6%減となっています。一方で、インドへのオフショア需要が増え、競争が激化しています。

評価の際は、コミュニケーションや品質管理、時差による工数ロスも含めます。中国を前提にした見積もりは、最新の単価で再試算する必要があります。

EC特有のランニングコスト

EC特有のランニングコストとして決済手数料、CDN費用、SEO維持コスト、年間保守費用を並べたチェックリスト
公開後に続く4つの費用項目を確認できます。

EC刷新では、リリース後も続く費用を初期費用と分けて管理する必要があります。稼働後に想定外の支出を防ぐには、ランニングコストの構造を把握しておくことが欠かせません。

SaaS月額・決済手数料・CDN費用の実態

SaaS以外の継続費用も、注文数とアクセス量を基準に見積もります。

  • 決済手数料:すべての注文にかかります。
  • CDN費用:データ転送量で変わります。
  • 繁忙期:トラフィックスパイクを試算します。

GMOペイメントゲートウェイの手数料は2.4〜3.6%です。また、Stripeでは3.6%の決済手数料が発生します。月商1,000万円のECでは、毎月24万円から36万円になります。

大量の商品画像を扱うECでは、CDN費用も膨らみやすくなります。セールイベントなどで、月間のCDN費用が数万円から数十万円に達することがあります。

Cloudflare、AWS CloudFront、Fastlyは料金体系が異なります。そのため、繁忙期のトラフィックスパイクを見越して試算する必要があります。

Google Core Web Vitals対応・SEO維持コスト

SEOを維持する費用は、性能改善と移行作業に分けて考えます。

  • 性能改善:Core Web Vitalsへの対応が必要です。
  • URL移行:旧URLから新URLへの切り替えを行います。
  • 専門支援:外部SEOコンサル費が発生します。

Google Core Web Vitalsには、LCP、FID、CLSが含まれます。その対応には、数十万円から数百万円規模の投資が必要になることがあります。

LCP(Largest Contentful Paint)の改善では、画像最適化、サーバーサイドレンダリング、キャッシュを見直します。また、専門的なフロントエンドエンジニアのスキルも求められます。

URLを変えると、検索順位に影響するリスクがあります。このため、301リダイレクト、構造化データ、サイトマップの引き継ぎが必要です。

外部SEOコンサルタントに依頼する場合、その費用は50万円から200万円程度です。移行費用を含めないと、公開後に検索流入が激減するおそれがあります。

年間保守費用の算出式:初期開発費 × 15〜20%

保守費用は、算出式と契約形態を分けて確認する必要があります。

  • 算出式:初期開発費を基準に、年間の金額を決めます。
  • 月額固定型:予算を立てやすい契約です。
  • 従量課金型:実稼働に応じて支払います。

年間保守費用は、初期開発費の15〜20%で算出します。初期開発費が2,000万円なら、年間300万円から400万円が目安です。

保守費用には、障害対応、セキュリティ更新、依存ライブラリ更新が含まれます。軽微な機能改善も、保守費用の対象になります。

月額固定型は、稼働量が少ない月もコストが発生します。一方、従量課金型は、障害が頻発した月に費用が増えるリスクがあります。

契約形態は、保守ニーズの安定性と予算管理の方針を見て決めます。

保守時間達成率は、実稼働時間を見積時間で割って算出します。この指標は、定期的に確認できる体制を整えておくことが推奨されます。

ポイント

判断の目安は、売上や通信量に応じて増える費用と、保守費のように決まって発生する費用を分けて把握することです。

資金調達と補助金の活用

EC刷新では、公的支援制度を使うと費用負担を軽減できる場合があります。ただし、申請手続きの複雑さと、入金までのキャッシュフローを確認しておくことが欠かせません。

IT導入補助金の申請から給付までのリアル

IT導入補助金は、対象ツールの選定から給付まで複数の手続きがあります。

  • 対象選定:導入するITツールを決める段階です。
  • 申請準備:ID取得や事業計画を進めます。
  • 給付待ち:採択後も入金まで期間があります。

補助率は1/2〜3/4で、補助上限額は枠によって異なります。

EC関連のデジタル化投資では、数百万円単位の補助を受けられる可能性があります。

対象ツールは、経済産業省が認定したIT導入支援事業者から選びます。そのうえで、gBizIDの取得、SECURITY ACTIONの自己宣言、事業計画の策定が必要です。

交付申請は、一連の手続きを経てから行います。申請から採択通知までは、通常1〜2ヶ月かかります。交付決定から実績報告と補助金給付までは、3〜6ヶ月程度です。

入金は、プロジェクト開始から半年以上後になることもあります。入金までの開発費は、自社資金またはつなぎ融資で賄う必要があります。

キャッシュフロー影響と対策

補助金を使う場合は、給付前に必要な資金をどう確保するかを先に決めておく必要があります。

  • 後払い:事業完了後の給付を前提にします。
  • つなぎ融資:入金までの不足を補う手段です。
  • 支払交渉:ベンダーと時期を調整します。

補助金は後払いのため、開発費を先に支払わなければなりません。

たとえば、500万円の補助を予定していても、入金までの半年間は全額を自社で負担します。

日本政策金融公庫や地方銀行のつなぎ融資を使える場合があります。補助金採択通知書を担保として、融資を受けられるケースもあります。

ベンダーと交渉し、補助金の給付後に最終支払いを設定する方法もあります。補助金は後から入ってくる資金として扱い、先に資金計画を固めておきます。

ポイント

補助金を前提にするなら、入金までに必要な資金をどう手当てするかを先に決めることが判断の目安です。入金時期を見てから計画を組むと、資金が不足しやすくなります。

コスト削減のための実務テクニック

EC刷新の費用は、構成と開発体制の組み方で見直せます。

Headless Commerceの採用と委託範囲の見直しは、長期の費用にも影響します。

Headless Commerce導入によるフロント/バック分離のコスト最適化

Headless Commerceは、表示層とEC機能層をAPIで分離するアーキテクチャです。

  • 構成分離:フロントとバックを独立して刷新します。
  • 段階刷新:機能を順番に分けて、少しずつ刷新します。
  • 保守性:将来の乗り換え負担を抑えます。

バックエンドをShopifyやcommercetoolsで賄う構成も可能です。また、フロントエンドだけをNext.jsでゼロから構築する選択もできます。全機能を一度に作り直すわけではなく、段階を分けて進められます。

EC機能の開発費を抑えながら、独自のUXやデザインを実現できます。さらに、UIの改善サイクルが速くなり、A/Bテストや機能追加の費用も下がります。

バックエンドSaaSを乗り換えるときも、フロントの再開発を抑えられます。

委託範囲の見直しと属人化の排除

外注と内製の範囲を先に決めておくと、将来の依存コストを管理しやすくなります。

  • 委託範囲:外注する工程と内製する工程を分けます。
  • 属人化対策:仕様とコードの所有を明確にします。
  • 内製化:軽微な更新を社内で担います。

全工程をベンダーに一括委託すると、長期的には高コストになりがちです。

特定のベンダーや担当者しか仕様を知らない状態では、属人化が進みます。その結果、保守や改修、乗り換えの際にコストが発生します。

初期段階から、ドキュメント整備を契約要件に含めておくことが大切です。加えて、ソースコードの所有権を自社に帰属させることも必要です。

デザインや軽微な更新は、社内のノーコード・ローコードツールで対応できます。内製化を進めると、ベンダー依存のランニングコストを段階的に削減できます。

EC刷新は、自社のデジタル運用能力を高める機会にもなります。そのうえで、委託と内製のバランスを設計することが、中長期の費用を抑えることにつながります。

本テーマの全体像は、次の全体ガイドにまとめています。

ポイント

判断の目安は、フロントとバックを分けて刷新範囲を絞れるか、委託と内製の境目を決められるかです。どちらも、長期の費用を左右する点として確認しておく価値があります。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。