EC改修の開発期間・スケジュール・納期について

EC改修の開発期間は、おおむね1〜3ヶ月が目安です。EC改修とは、稼働中のECサイト・ECシステムのうち、特定の機能やモジュールだけに手を入れる部分的・小規模な修正案件を指します。期間を左右するのは、工程の配分、リリース時期、遅延の要因です。

  • 工程配分:開発期間とスケジュールの内訳
  • タイミング:リリース時期の条件
  • 遅延要因:納期を左右する条件

本テーマの全体像は、以下の記事で解説しています。

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EC改修の位置づけ(部分的・小規模修正という論点)

全面刷新に踏み切るだけの予算や工数を確保できない事業者にとって、現実的な打ち手となるのがEC改修です。「ECを直す」という点では同じでも、全面的に作り替える場合と特定の機能だけを直す場合とでは、スケジュールに影響する要因がまったく異なります。そのため、開発期間を考える前に、本記事が扱う論点の位置づけを明確にしておく必要があります。

「ECを作り替える」というテーマには、「ECのモダナイゼーション」があります。これはリホスト・リプラットフォーム・リファクタリング・リビルド・リプレースという5つの技術的アプローチを扱うものです。ほかにも「EC刷新」「EC更改」「ECリニューアル」「ECリアーキテクチャ」「ECリプレイス」があります。

モダナイゼーション・刷新・更改・リニューアル・リアーキテクチャ・リプレイスとの違い

「ECのモダナイゼーション」は、5つの技術的アプローチをEC特有の制約に当てはめる「どう技術的に刷新するか(HOW)」の総論です。「EC刷新」は、経営層への説明や稟議承認にあたる「なぜ・いつ刷新するか(WHY/WHEN)」を中心に扱います。

「EC更改」は保守契約満了やEOS/EOLという「期限管理」に、「ECリニューアル」は顧客体験やブランドイメージを起点とする「UX/UI」に重心を置きます。「ECリアーキテクチャ」はヘッドレスコマース・MACHアーキテクチャへの「構造再設計」、「ECリプレイス」は自社スクラッチ維持か他社製品への乗り換えかという「ビルド・バイ判断」を扱います。

これらはいずれも、システム全体を作り替えることを前提に議論されています。それに対してEC改修は、システム全体には手を付けず、決済方法の追加やバグ修正、カート機能の軽微な改善といった部分対応に絞り込むため、規模と予算の点でまったく異なる選択肢です。技術手法や経営判断の詳細は、それぞれの記事もあわせてご覧ください。

EC改修が対象とする典型的な改修メニュー

EC改修が扱う典型的な改修メニューには、新しい決済方法の追加(後払い決済、QRコード決済、キャリア決済など)があります。ほかにも、カート機能の軽微な改善(数量変更のしやすさ、送料表示の見直しなど)や、特定ページのバグ修正があります。レスポンシブ対応やバナー・文言の差し替え、CSV出力機能やSNS連携・LINE通知といった軽微な機能追加も挙げられます。

いずれも既存システムの根幹構造には手を付けず、フロントエンドの一部やバックエンドの限定的な処理だけを対象にする点が共通しています。

全面刷新であれば数ヶ月〜数年単位の投資判断が必要になりますが、EC改修は「今すぐ困っている一点」を短期間で解消することを目的とするため、意思決定のハードルも低くなります。

ポイント

システム全体には手を付けず、決済方法の追加やバグ修正などの部分対応で済むかどうかが、EC改修として検討できるかの目安になります。全面刷新の期間感とは分けて考えます。

開発期間・スケジュールの全体像(1〜3ヶ月が目安)

EC改修の工程別配分を示す図。要件定義・設計は約20〜30%、開発・実装は約40〜50%、テスト・公開は約20〜30%。
3工程の中では開発・実装に最も多くの期間を配分します。

EC改修の標準的な開発期間は、おおむね1〜3ヶ月が目安です。対象範囲が特定の機能・モジュールに限られているため、全面刷新のような数ヶ月〜数年単位にはなりません。

この短さが、EC改修を現実的な選択肢にしている最大の理由です。

標準的な工程比率(要件定義・開発・テストの配分)

EC改修の1〜3ヶ月は、標準的に要件定義・設計が全体の約20〜30%、開発・実装が約40〜50%、テスト・公開が約20〜30%の比率で配分されます。

全面刷新であれば要件定義だけで数ヶ月を要することも珍しくありませんが、EC改修では対象範囲が最初から絞り込まれているため、要件定義フェーズを数週間程度に圧縮できます。

ただし、対象が小さくても、要件定義は省けません。「どのページの、どの機能を、どこまで直すのか」という改修範囲の線引きを最初に文書にしておくと、後工程での手戻りを防げます。

決済方法追加など外部API連携を伴う場合の期間上乗せ

EC改修のなかでも特に期間の見積もりを誤りやすいのが、新しい決済方法の追加のように外部API連携を伴う改修です。

決済代行会社との仕様確認、テスト環境での連携動作の確認、相手企業からの回答待ちなど、自社だけでは制御できない要因で遅延が生じることがあります。そのため、実装フェーズに1〜2ヶ月程度を上乗せし、決済方法の追加を含む改修は全体で2〜4ヶ月程度を見込んでおくのが安全です。

バグ修正やカート機能の軽微な改善のように外部連携を伴わない改修であれば、1ヶ月前後で完了するケースも少なくありません。このように改修の内容で期間感が大きく変わるため、発注前に依頼先とすり合わせておく必要があります。

ポイント

改修に外部連携を伴うかどうかで見込む期間が大きく変わるため、改修ごとに期間を分けて考えるのが判断の目安になります。連携の有無を発注前に依頼先と確かめておくと、納期のずれを減らせます。

繁忙期を避けたリリースタイミングの設計

EC改修の公開時期と事前準備の確認項目を示す図。閑散期や業務スケジュールに余裕のある時期を選び、年末商戦・大型セールを避け、切り戻し手順を用意する。
公開時期の選定と、トラブル時の備えを一緒に確認できます。

対象範囲が小さい改修でも、公開のタイミングは慎重に決める必要があります。公開時期を誤ると、規模が小さくても事業に影響が及びます。

デグレードリスクと閑散期を狙った公開日設定

小規模な改修でも、修正したプログラムが既存の正常な機能に悪影響を及ぼす「デグレード(新たな不具合)」が起きるリスクはゼロではありません。

年末商戦や大型セールといった繁忙期に決済エラーや画面表示の不具合が起きれば、売上機会の大きな損失や顧客対応への深刻な悪影響を招きます。

そのため、改修の規模にかかわらず、業務への影響が最小限で済む時期かどうかを必ず考慮する必要があります。万が一トラブルが起きても対応に時間を割ける閑散期や、業務スケジュールに余裕のある時期を狙って公開日を設定するのが鉄則です。

小規模だからこそ実現できる機動的な切り替え

一方で、EC改修には全面刷新にはない機動性というメリットもあります。対象範囲が限られているため、テストや影響範囲の調査も限定的で済み、公開直前までリリース日を柔軟に調整しやすいという特徴があります。

全面刷新のように半年〜1年先の閑散期まで待つ必要はありません。直近数ヶ月以内の比較的落ち着いた時期を選んで公開できる点が、EC改修ならではのスケジュール上の強みです。

規模が小さい改修であっても、公開後に想定外の不具合が発覚した場合の切り戻し手順は、事前に用意しておくのが望ましいといえます。

ポイント

公開日は、業務への影響が小さく、トラブルが起きても対応に時間を割ける時期かどうかで決めます。年末商戦や大型セールの時期は避けるのが基本です。

短納期を実現するための実務ポイント

EC改修を段階的に進める流れを示す図。必須機能を決め、最小限の構成でリリースし、その後に追加改修を進める。
最初の公開範囲を絞ることで、追加機能を後から検討できます。

1〜3ヶ月というスケジュールをさらに短縮し、スピーディーに改修を実現するためには、発注側の協力と工夫が欠かせません。

必須要件の絞り込みとスモールスタート

「必須機能」と「あると便利な機能」を明確に分ければ、最初からすべての理想を盛り込まずに済み、それが短納期実現の第一歩になります。

最も重要な課題を解決する最小限の構成で先にリリースし、運用しながら段階的に追加改修していく進め方を取ると、初期の開発期間を大幅に圧縮できます。

決済方法の追加であれば、まず主要な決済手段を1〜2種類に絞って公開し、利用状況を見ながら追加を検討する方法があります。また、こうした段階的なアプローチは、限られた予算のなかで効果を早く実感するうえでも有効です。

発注側の即応体制と外部連携タスクの先行着手

仕様の確認やデザイン案のチェックといった発注側の確認作業が1日遅れると、開発全体が1日以上後ろ倒しになるリスクがあります。そのため、チャットツールなどを使い、当日から翌日中に返答や意思決定ができる社内体制を整えておくと、数週間単位の期間短縮につながります。

決済代行サービスとの連携のように遅延の最大の要因になりやすい外部連携タスクは、プロジェクトの初期段階で最優先に着手します。そのうえで、テスト期間を長めに確保するよう依頼先と調整しておく必要があります。

テストパターンの作成や社内向けマニュアルの作成など、自社で対応できる作業を引き受ければ、外注工数の削減と納期短縮の両方につながります。

ポイント

短納期を狙うなら、必須機能を絞ったうえで、発注側が当日から翌日中に判断できる体制と外部連携の先行着手を組み合わせられるかが目安になります。

依頼先選定・発注前の準備

EC改修の納期を守るためには、発注前の準備と依頼先選定の質が、その後のスケジュール全体の余裕度を大きく左右します。

改修範囲を明確化した要件概要書の作成

正確な納期の回答を得るには、まず改修範囲を要件概要書にまとめてから見積もりを依頼することが第一歩です。たとえば、「このページのこの部分を、こう変えたい」と具体的に書き、「使いやすくしてほしい」のような曖昧な要望は避けます。

対象ページや対象機能、現状の不具合を明記し、実現したい仕様や希望する公開時期も添えておくと、複数社の見積もりとスケジュール提案を並べて比べられます。

要件定義が曖昧なまま発注すると、開発中に仕様変更(手戻り)が頻発し、小規模な改修でも納期遅延と追加費用の原因になります。

低予算・短納期案件を得意とするパートナーの見極め

大規模な全面刷新の実績が豊富な会社であっても、小規模・短納期の改修案件を効率よくこなす体制を持っているとは限りません。

依頼先を選ぶ際は、部分改修・保守開発を専門に手がけているか、少人数・短期間のプロジェクト管理に慣れているかを確認しましょう。

相場より極端に安い見積もりは、既存機能への影響範囲の調査やテスト工程を省いている可能性があります。その場合、デグレードによる二重コストを招くリスクがあります。そのため、2〜3社から相見積もりを取り、内訳とテスト工程の有無を比べるのが望ましいといえます。

ポイント

依頼先は、部分改修の経験と見積もりの内訳にテスト工程が含まれるかで比べるのが目安です。相場より極端に安い見積もりは、内訳を特に確かめておく必要があります。

まとめ

EC改修の開発期間は、部分的・小規模な修正であることを前提に、おおむね1〜3ヶ月が目安です。開発期間・スケジュールの目安から、繁忙期を避けた公開設計、短納期を実現する実務ポイント、依頼先選定と発注前の準備まで、順に整理してきました。

全面的な作り替えを前提とする「ECのモダナイゼーション」「EC刷新」などの記事群とは異なります。EC改修の本質は、システム全体には手を付けず、決済方法の追加やバグ修正、カート機能の軽微な改善といった部分対応で済ませる点にあります。

要件を絞った短期のスケジュール、繁忙期を避けた公開設計、低予算・短納期案件に慣れた依頼先への相談を組み合わせることが、EC改修を成功に導く近道です。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。