通販サイト/システムのモダナイゼーションの保守・運用費用・ランニングコストについて

通販システムの刷新費用は、方式、独自機能、連携範囲によって、数百万円から2億円まで幅があります。

費用は、刷新費、放置時の費用、移行後のコストに分けると整理しやすくなります。全体像は通販サイト/システムのモダナイゼーションの完全ガイドもご覧ください。

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通販サイト/システムのモダナイゼーションと保守・運用費用の関係

老朽化した自社通販システムからセキュリティ対応、改修負担、シャドーITへつながる図
システム外のツール維持費も保守費用を押し上げます。

刷新の初期費用と、刷新せずに払い続けるコストを比べて判断する必要があります。老朽化した自社の通販システムは、使い続けるほど保守費用が上がる傾向にあるため、両方を並べて見比べることが欠かせません。

新規構築・「ECのモダナイゼーション」総論との違い

新規に開発した通販システムの保守費用は、導入後のシステムを維持することを前提に考えます。一方で、本記事の対象である自社通販システムの刷新では、すでに高騰している保守コストをどう削減するかが論点になります。

  • ECのモダナイゼーション総論:基盤や事業形態を問わず当てはまる、一般的なコスト削減の考え方
  • 自社通販システムの刷新:保有システム固有の通販基盤が持つコスト構造

自社システムには、EC-CUBEの独自カスタマイズや、スクラッチ開発のOMSがあります。電話・FAX・Web・実店舗のチャネル統合やコールセンター運用も対象に含まれ、基幹(ERP)・WMS・EDIとの連携も、通販基盤に固有のコスト要因になります。

老朽化した自社通販システムの保守費用が膨らむ構造

老朽化したパッケージや長期運用のシステムでは、OSやハードウェアのサポートが終了する場合があります。その影響は次のように表れます。

  • セキュリティ対応:PCI-DSSなど最新基準への準拠が難しくなる
  • 改修負担:複雑なカスタマイズの蓄積で、小規模な改修にも莫大な費用と時間がかかる
  • シャドーIT:ExcelやAccessなど、システム外のツールの維持費が積み上がる

現行機能が使いにくいため、現場がExcelやAccessで業務を回すケースもあります。この見えにくい費用も含めて、モダナイゼーションでコスト構造を変える必要があります。

ポイント

初期費用だけで比べると、刷新せずに払い続ける保守費を見落としやすくなります。老朽化の度合いと、保守費が年々どれだけ伸びているかを並べて見るのが目安です。

移行前後のランニングコスト比較

自社通販システムを刷新すると、運用コストがどう変わるのかを、代表的な例で見ていきます。

SaaS・クラウド移行によるコスト削減効果

SaaSやクラウドへ移行すると、老朽化した環境の改修費や、インボイス制度などの法改正への対応費を削減できます。

  • システム保守:バージョンアップやセキュリティ対応をベンダーが継続して提供
  • インフラ費:需要の変動に合わせて拡張し、平常時の過剰な維持費を抑える

自社ECをクラウドECへ、自社OMSをSaaS型の受注管理サービスへ置き換える形があります。その場合、システム本体の更新を自社で一から改修する負担が軽くなります。

オートスケーリングなら、テレビ通販の放送直後やカタログ配布直後のアクセス増にも対応できます。そのため、アクセス増による機会損失も防げます。

基幹・WMS連携に残る「隠れコスト」

基幹システムやWMSなどの外部システムとAPI連携していると、相手の更新ごとに調整や追加開発が必要になり、継続的な隠れコストになります。

  • 継続費用:刷新後も連携を維持するためのコストが残る
  • 保守性:標準APIや疎結合構成で仕様変更に追従しやすくなる
  • 移行時の工数:決済テストや在庫データの整合性検証が発生する

標準APIや疎結合の構成を選ぶと、独自連携を都度改修する場合に比べて、長期の保守費の増加を抑えられます。ただし、連携の刷新には工数がかかるため、短期の移行費用は、独自連携を都度改修する場合より高めに見積もる必要があります。

5手法別に見るコスト構造の違い

自社の通販システムに5つの手法を当てはめると、コスト構造と削減効果の違いが見えてきます。この節では、そのうちリプレース、リホスト、リファクタリング、リビルドの4つを取り上げます。

リプレース・リホストの低コスト構造と限界

初期費用と移行の条件から見ると、2つの手法にはそれぞれ特徴があります。

  • リプレース:初期費用は数百万円〜数千万円
  • リホスト:コードは変えず、インフラのみをクラウド化

リプレースは、自社ECをクラウドECへ、自社OMSをSaaSへ置き換える手法です。開発や維持管理の費用を自社で抱え込まずに済むため、5手法の中で最も低コストです。ただし、Fit to Standardとして、自社業務を標準機能に合わせることが前提になります。

また、独自の受注フローや割引ルールにこだわって改修を重ねると、新たなレガシーを生む恐れがあります。

リホストは低コストかつ短期間で移行できる一方、過剰なサイジング設定には注意が必要です。未使用のリソースにも課金されるため、クラウド利用費が高騰する「クラウドリフトの罠」に陥る場合があります。

リファクタリング・リビルドで得られる長期的なコスト最適化

初期投資と長期的な費用効果を比べると、両手法の規模感の違いが分かります。

  • リファクタリング:初期投資は約500万〜2,500万円
  • リビルド:初期投資は約3,000万〜2億円

リファクタリングでは、在庫引当や連携部分のAPI化、バッチのサーバーレス化を行います。そのうえで、将来のキャンペーン機能や決済手段を追加する工数を減らし、保守費の伸びを抑えます。

リビルドは、クラウドネイティブでフルスクラッチから再構築する方法で、初期投資が最も大きくなります。

マイクロサービス化すると、機能単位でスケーリングやデプロイができます。たとえば、セール時に負荷が集中する在庫検索や決済処理だけに、リソースを割り当てられます。

特に、独自の受注・在庫引当ロジックが競争力に直結する通販事業では、長期の投資が総保有コスト(TCO)の最小化につながります。

ポイント

初期費用を優先するか、長期の保守費の伸びを抑えるかで、候補になる手法が変わります。判断の前に、独自の受注や在庫引当のロジックをどこまで残すかを決めておくと比べやすくなります。

見落とされがちな移行固有コスト

移行固有コストを並行稼働、データ整備、会員告知、業務の取り込みに分けた図
移行前から予算に含めると追加費用を把握しやすくなります。

自社で所有するシステムでは、既存資産の引き継ぎ費用が上乗せされます。また、見積もりで見落とされがちな項目もあります。

並行稼働の二重コストとデータクレンジング費用

移行予算には、並行稼働とマスタ整備に伴う費用も含めておく必要があります。

  • 並行稼働:旧・新システム双方の保守費用
  • データ整備:マスタの表記揺れや重複を修正する作業

受発注を止められないため、移行直後は旧・新の両方を動かす必要があります。この並行期間の長さで移行初年度の総コストが変わるため、計画の段階から見込んでおくことが欠かせません。

長年運用してきた会員・商品マスタのクレンジングには、一般に2〜3ヶ月分の作業費用がかかります。作業を過小評価すると、稼働直前に追加費用が発覚します。

会員データ移行・PCI-DSS対応・技術的負債という潜在コスト

会員情報や現場業務を移行する場合、次のような追加費用も見込んでおく必要があります。

  • 会員情報:再登録を促す告知コンテンツの制作・配信費
  • セキュリティ:PCI-DSSなど最新基準への準拠対応費
  • 業務の取り込み:シャドーツールの作業をシステム化する追加改修費

会員への告知が必要になるのは、暗号化された会員パスワードやカード情報が、原則として移行できないためです。そのため、新システムの稼働後に、顧客への案内を出す必要があります。

老朽化したシステムほど、会員への案内にかかる費用が高くなる傾向があります。また、ExcelやAccessなどのシャドーツールに依存した実運用が定着している場合は、取り込む範囲に応じて追加改修費が生じます。

移行固有の費用を当初から予算に含めることが、想定外の出費を防ぐ鍵になります。

ポイント

移行固有の費用は、見積もりで見落とされがちな項目です。並行稼働やマスタ整備、会員告知の費用を初期予算に含めるかどうかが、判断の目安になります。

保守契約と見積もりで確認すべきポイント

障害対応、監視・連絡、作業と料金、5年間のTCOを確認するチェックリスト
各社の条件を同じ項目にそろえると費用範囲を比べやすくなります。

費用を適正に管理するには、契約や見積もりの対象範囲を明確にしておくことが欠かせません。確認すべきは、保守範囲とTCOの2点です。

保守範囲・SLAの明確化

保守契約では、保守範囲とサービスレベル(SLA)を明確にしておくことが求められます。

  • 障害対応:対応時間、休日・夜間の対応内容
  • 監視・連絡:監視対象、障害時の連絡フローと初動時間
  • 作業と料金:定例作業の範囲、追加作業の料金体系

基幹やWMSとの連携が停止すると業務全体に影響するため、SLAを明記しておきます。また、大規模な機能追加やバージョンアップのように保守に含まれない作業も、書面で確認しておきます。

5年間のTCOによる複数社の比較評価

開発会社や保守ベンダーを選ぶときは、初期の移行費だけでなく、5年程度のTCOで比べます。

  • 社内工数:ベンダーへの支払額に加える分
  • 移行関連費:並行稼働のインフラ費と会員告知の制作費

実質的な総費用は、ベンダー見積もりの1.3〜1.5倍程度を見込んでおくと安全とされています。5年分の見積もりを複数社で比べると、初期金額だけでは見えない費用の構造が分かります。

老朽化したシステムを維持する費用とも比べたうえで、利益が残る運用体制を選ぶことが、事業の持続性を左右します。

ポイント

見積もりの金額だけで比べず、保守範囲、SLA、5年間のTCOを同じ条件でそろえると、ベンダー間の差が見えやすくなります。

まとめ

老朽化した自社通販システムは、保守費や改修費が膨らむ傾向にあります。本記事は、新規構築やEC全般の総論とは異なり、EC-CUBEの独自カスタマイズや独自スクラッチOMSなど、自社保有の通販システムを対象にしています。

SaaS・クラウド移行は費用の削減につながりますが、基幹・WMS連携の維持費は残ります。5手法のうち、リプレース・リホストは低コストで着手しやすい一方、クラウドリフトに注意が必要です。

リファクタリング・リビルドは初期投資が大きいものの、長期的な費用最適化につながります。また、二重稼働やデータ整備の費用に加えて、会員告知やPCI-DSS対応の費用も予算に含めておきます。

保守範囲とSLAを明確にしたうえで、5年間のTCOをもとに複数社を比べて判断します。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。