通販サイト/システムのリニューアルのフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

通販サイト/システムのリニューアルでフルスクラッチを選ぶかどうかは、ブランド独自の購入体験をどこまで追求するか、そのためにフルスクラッチが本当に必要かで判断します。ヘッドレスコマースの普及により、この判断の前提も変わりつつあります。

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・通販サイト/システムのリニューアルの完全ガイド

  • 通販サイト/システムのリニューアルにおけるフルスクラッチ・オーダーメイド開発の位置づけと、ほかの投資判断との違い
  • フルスクラッチを選ぶべきケースと、その特徴
  • ヘッドレスコマースという新しい選択肢と、その仕組み

通販サイト/システムのリニューアルにおけるフルスクラッチ・オーダーメイド開発の位置づけ

フルスクラッチを選ぶかどうかを判断する前に、まず論点の位置づけを押さえておく必要があります。同じ「通販サイト・通販システムをゼロから作る」というテーマでも、何を目的にフルスクラッチを検討するかによって判断基準は大きく変わるためです。

モダナイゼーション・刷新・更改・ECリニューアル(総論)との違い

フルスクラッチを検討する動機は、言葉によって次のとおり異なります。

  • モダナイゼーション:リビルド(フルスクラッチ再構築)の動機は、既存システムの技術的負債やブラックボックス化の解消という技術的な事情にあります。
  • 刷新:会員基盤や受注実績という資産をどう成長させるかという経営判断が動機で、フルスクラッチを含む投資規模を検討します。
  • 更改:保守契約満了やEOS/EOLという期限内にどう対応するかという制約条件が、フルスクラッチを選択肢に含める動機です。

「ECリニューアル」は、業態を問わない一般的なECサイトを主語に、ASP・クラウドEC活用の1〜2ヶ月からフルスクラッチの4〜8ヶ月以上までを、期間・費用の総論として比較する記事です。

これに対し、本記事が扱う通販サイト/システムのリニューアルでは、フルスクラッチ・オーダーメイド開発を「顧客からどう見えるか」を起点に判断します。定期購入・カタログ通販・テレビ通販という業態特有の業務フローに照らして、顧客体験・ブランドイメージをどこまで独自に追求すべきかを考える点が、最大の違いです。

「UX/UIへのこだわり=フルスクラッチ必須」という前提の変化

「自社ブランドの世界観を体現したい」「独自の購入体験(UI/UX)を追求したい」という目的でフルスクラッチを検討する通販事業者は少なくありません。しかし近年は、「UI/UXへのこだわり=フルスクラッチ必須」という前提が崩れつつあります。

クラウド型ECやパッケージの一部では、裏側のシステム(バックエンド)と、ユーザーが見る画面(フロントエンド)を切り離す「ヘッドレスコマース」というアーキテクチャが普及しています。この構成を使えば、カート機能や在庫管理はベンダーのシステムを使いながら、ユーザーが操作するUI/UXだけをフルスクラッチと同等の自由度で独自に構築できます。

そのため、単に「フロントのUI/UXやデザインにこだわりたい」という理由だけであれば、バックエンドまで数億円かけてフルスクラッチ開発を行う必要性は低くなっています。

ポイント

同じフルスクラッチでも、目的がモダナイゼーション、刷新、更改と違えば判断の軸も変わります。UI/UXへのこだわりだけが理由なら、まずはヘッドレス構成を検討する価値があります。

フルスクラッチを選ぶべきケースと特徴

通販でフルスクラッチが候補になる独自要件を、定期便、価格変動、同梱物、基幹・物流連携の4つのカードで示した図。
定期便の細かな条件から基幹・物流連携まで、標準機能との差が見渡せます。

それでも、通販サイト・通販システムのリニューアルでは、フルスクラッチが有効な選択肢になるケースがあります。そうしたケースの条件と、投資規模の目安を見ていきます。

独自の定期便ロジック・複雑な業務フローを持つ場合

既存のASPやクラウドEC、ECパッケージの標準機能やカスタマイズでは対応しきれないほど独自の定期便ロジックを持つ場合は、フルスクラッチを検討すべきケースに当たります。たとえば、複数商品を組み合わせた独自の周期設定、購買履歴に応じた動的な価格変動、会員ランクごとに異なる同梱物の出し分けなどが挙げられます。

基幹システムや複数倉庫の物流システムと、極めて特殊で高度な連携が必要な大規模な通販事業者も、フルスクラッチを検討すべきケースに該当します。さらに、コールセンターのオペレーター向け管理画面まで含めて、電話・FAX受注と定期便管理を一体的に設計したいという要求が強い場合も、標準パッケージでは対応しきれず、フルスクラッチの検討対象になります。

初期費用・開発期間の目安

フルスクラッチ開発は、既存のシステムをベースにせず、自社の要件に合わせてゼロから完全オーダーメイドで構築するため、カスタマイズの自由度は最大になります。一方で、初期費用は数千万円〜数億円規模に達し、開発期間も長期にわたります。

さらに、公開後のセキュリティ対応やインフラ保守、OS・ブラウザのアップデート対応といったランニングコストを、すべて自社で負担する必要があります。そのため、これらを賄えるリソースと予算があることが、フルスクラッチを選ぶための前提条件になります。

通販特有の定期便・同梱物連動・コールセンター連携という機能まで、ゼロから設計・開発することになります。このため、一般的なECサイトのフルスクラッチよりも開発期間がさらに長期化する傾向がある点も、あらかじめ見込んでおく必要があります。

ポイント

独自の定期便ロジックや基幹・物流との高度な連携が、標準機能やカスタマイズで対応しきれるかが分かれ目です。数千万円〜数億円の初期費用と、保守を自社で賄う体制があるかも併せて判断します。

ヘッドレスコマースという新しい選択肢

ヘッドレスコマースを、バックエンド、API、フロントエンドの3層に分け、各層の役割を記した図。
裏側の通販機能と顧客向け画面を別々に扱う構成です。

ブランド独自のUI/UXを追求したいという目的だけであれば、フルスクラッチに踏み切る前に検討すべき選択肢は、ヘッドレスコマースです。

バックエンドとフロントエンドを分離する仕組み

ヘッドレスコマースは、カート機能・在庫管理・決済処理・定期便管理ロジックといった裏側のシステム(バックエンド)と、顧客が実際に目にする画面(フロントエンド)をAPIで分けるアーキテクチャです。バックエンドはベンダーが提供するクラウドEC基盤やパッケージのAPIをそのまま使い、フロントエンドだけを自社の技術・デザインで構築できます。

これにより、定期便管理やカタログ・テレビ通販の申込番号システムといった通販特有の機能を含む裏側は、実績のあるベンダーの基盤に任せられます。そのうえで、顧客が実際に触れるUI/UXの部分だけを、ブランドの世界観に合わせて自由に作り込めます。

UI/UXだけフルスクラッチ同等の自由度で構築するメリット

ヘッドレスコマースを採用する最大のメリットは、フルスクラッチと同等のUI/UX自由度を確保しながら、バックエンドの開発・保守コストと期間を大幅に圧縮できる点です。定期便のスキップ・周期変更・解約導線や、同梱物のQRコードから遷移するクロスセル画面といった、通販サイトのリニューアルで重視すべき顧客体験に、開発リソースを集中できます。

バックエンドの在庫管理・決済処理・定期便ロジックはベンダーの実績あるシステムに任せるため、フルスクラッチに比べて、セキュリティリスクや保守負荷を抑えられます。通販事業者にとって、この点も見逃せない利点です。

ポイント

UI/UXの独自性が目的なら、バックエンドはベンダーの基盤を使い、フロントエンドだけを作り込めるかを先に考えます。通販特有の機能を裏側に任せられるなら、フルスクラッチの必要性は下がります。

ASP・クラウドEC・パッケージとの比較

フルスクラッチ以外の主な選択肢と比べて、通販サイト・通販システムに求められる機能に対応できるかを確認しておく必要があります。

構築方式別の特徴とUI/UX自由度

ASP型(初期費用数十万〜300万円)は、標準機能の範囲内で構築し、デザインもテンプレートから選ぶため、低コストかつ短期間で立ち上げられます。一方で、小〜中規模向けであり、独自のUI/UXの追求や複雑な業務フローには不向きです。

クラウド型SaaS(初期費用300万〜1,500万円)は、ベンダーが提供するクラウド環境を利用し、自動バージョンアップによってシステムが常に最新・セキュアに保たれる点が強みです。近年はAPI連携が充実し、ヘッドレス構成にも対応しやすくなっています。

パッケージ型(初期費用500万〜数千万円)は、ECに必要な基本機能がそろったベースシステムに独自のカスタマイズを加える方式です。大規模で独自要件が多い企業向けですが、数年ごとのシステム老朽化に伴うバージョンアップ対応やセキュリティ維持のコストは、自社で負担しなければなりません。

通販特有機能(定期便・同梱連動・コールセンター統合)の対応可否

通販サイト・通販システムに求められる定期便管理、同梱物との連動、コールセンター統合といった機能は、ASP型では標準搭載されていないことが多いです。対応する場合には、プラン変更や追加費用が必要になるケースもあります。

クラウド型SaaSやパッケージ型では、定期購入・サブスクリプション向けの機能をあらかじめ搭載した製品も増えています。そのため、まずは標準機能で足りるかどうかを確認することが重要です。また、コールセンター統合では、既存のCTI(電話システム)やCRMとの連携実績がある製品を選ぶことが鍵になります。

近年登場している「パッケージ由来のクラウドEC」は、大規模向けパッケージのノウハウをクラウドで提供する製品で、事業成長後もデータを引き継いでパッケージ版へ移行できます。こうした製品なら、将来の拡張性を確保しながら初期投資を抑えられます。

ポイント

ASP型、クラウド型SaaS、パッケージ型のうち、定期便・同梱物連動・コールセンター統合に標準で応えられるのはどれかを先に見ます。標準で足りるなら、初期投資を抑えられる可能性があります。

発注前に確認すべき判断基準

フルスクラッチの要件を、標準機能、フロントエンドのカスタマイズ、バックエンドまで含めた独自開発の3パネルに分けた図。
要件ごとに対応方法を見比べ、独自開発の範囲を絞り込む構成です。

フルスクラッチは投資対効果の大きい選択です。そのため、後悔しないように、発注前の段階で判断基準を明確にし、それを踏まえてパートナーを選ぶことが欠かせません。

要件の切り分け(標準機能で足りるか、独自開発が必要か)

まずは、自社が実現したい定期便ロジック・顧客体験・コールセンター連携の要件を一覧にします。そのうえで、各要件を「ヘッドレス型のクラウドECやSaaS・パッケージの標準機能で満たせるか」「フロントエンドのカスタマイズで対応できるか」「バックエンドまで含めた独自開発が本当に必要か」の3段階で切り分けます。過剰投資を避けるうえで、これが最も有効な方法です。

要件は「必須(Must)」「重要(Should)」「あれば良い(Could)」に仕分けます。そして、優先度の低いカスタマイズを削り、標準機能で代替できるものを洗い出すことで、フルスクラッチが本当に必要な範囲を絞り込めます。

そのため、まずはヘッドレス型のクラウドECや拡張性の高いSaaS・パッケージで要件を満たせないかを検証します。それでも対応できない独自の裏側ロジックがある場合にのみフルスクラッチを選ぶのが、投資対効果を最大化する基本的な進め方です。

フルスクラッチ実績を重視したベンダー選定

フルスクラッチでも、ヘッドレスコマースでUI/UXを独自に構築する場合でも、依頼先は通販システム特有の定期便ロジックやコールセンター連携を手がけた実績があるかを重点的に確認しましょう。

単なるECサイト構築の実績だけでなく、大規模な会員基盤・受注実績を持つ通販事業者の複雑な業務フローを正確に読み解きながら、要件定義・設計を行った経験も見ておく必要があります。その経験がなければ、開発が進んでから重要な仕様の見落としが発覚し、投資規模に見合わない手戻りを招くリスクが高まります。

プロジェクト開始後は、経営層を含むステアリングコミッティを設置し、定例会議で進捗と課題を共有します。また、全体工程には10〜20%程度のリスクバッファを組み込んでおくことが、大規模投資を伴うフルスクラッチ開発を成功に導く鍵となります。

ポイント

判断基準を決めてから要件を切り分け、標準機能で満たせない独自の裏側ロジックがある場合にだけフルスクラッチを選びます。依頼先は、通販特有の定期便やコールセンター連携の実績を基準に絞り込みます。

まとめ

ここまで、通販サイト/システムのリニューアルにおけるフルスクラッチ・オーダーメイド開発を解説してきました。モダナイゼーションは技術的負債の解消、刷新は資産価値に基づく経営判断、更改は期限内の対応が動機や制約になり、ECリニューアルは業態を問わない総論です。

このテーマの本質は、顧客体験・ブランドイメージをどこまで独自に追求すべきかを、定期購入・カタログ通販・テレビ通販という業態特有の業務フローに照らして判断する点にあります。一方で、近年はヘッドレスコマースの普及により、「UI/UXへのこだわり=フルスクラッチ必須」という前提が崩れつつあります。

独自の定期便ロジックや基幹・物流との高度連携がない限り、まずはヘッドレス型のクラウドECやSaaS・パッケージで要件を満たせないかを検証することが、投資対効果を最大化する基本的な進め方です。要件を明確に切り分けたうえで、通販システム特有の実績を持つ信頼できるパートナーに、早めに相談することをお勧めします。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。