通販サイト/システムのリニューアルのフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

通販サイト/システムのリニューアルにおけるフルスクラッチ・オーダーメイド開発を検討する際、まず押さえておきたいのが、本記事が扱う投資判断は「通販サイト/システムのモダナイゼーション」「通販サイト/システム刷新」「通販サイト/システム更改」「ECリニューアル」とは異なるという点です。モダナイゼーションにおけるリビルド(フルスクラッチ再構築)は、既存システムの技術的負債をどう解消するかという技術手法(HOW)の一環として語られ、刷新における投資判断は会員基盤・受注実績という資産価値を根拠にした経営判断(WHY/WHEN)として語られ、更改における選定は保守契約満了やEOS/EOLという期限内にどう対応するかという制約の中で語られます。ECリニューアルは、業態を問わない一般的なECサイトを主語に、ASP・クラウドEC活用からフルスクラッチまでの選択肢を総論として比較する記事です。

これに対し本記事が扱う通販サイト/システムのリニューアルにおけるフルスクラッチ・オーダーメイド開発は、顧客からどう見えるかという体験・デザイン起点は「ECリニューアル」と共通しつつ、定期購入・カタログ通販・テレビ通販という通販特有の業態において、ブランド独自の購入体験・UI/UXをどこまで追求すべきか、そのためにフルスクラッチが本当に必要なのかという判断基準に焦点を当てます。近年はヘッドレスコマースの普及により「UI/UXへのこだわり=フルスクラッチ必須」という前提そのものが崩れつつあり、通販特有の複雑な業務フローを持つ企業ほど、この判断を誤ると数千万円単位の過剰投資、あるいは逆に将来の拡張性を欠く過小投資に陥りかねません。まずは本記事が扱う論点の位置づけから見ていきましょう。

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・通販サイト/システムのリニューアルの完全ガイド

通販サイト/システムのリニューアルにおけるフルスクラッチ・オーダーメイド開発とは

通販サイト/システムのリニューアルにおけるフルスクラッチ・オーダーメイド開発とは

フルスクラッチを選ぶべきかどうかを判断する前に、本記事が扱う論点の位置づけを明確にしておく必要があります。同じ「通販サイト・通販システムをゼロから作る」というテーマでも、何を目的にフルスクラッチを検討するのかによって、判断基準がまったく異なるためです。

モダナイゼーション・刷新・更改・ECリニューアル(総論)との違い

「通販サイト/システムのモダナイゼーション」がリビルド(フルスクラッチ再構築)を扱う場合、その動機は既存システムの技術的負債やブラックボックス化の解消という技術的な事情にあります。「通販サイト/システム刷新」がフルスクラッチを含む投資規模を検討する場合、その動機は会員基盤・受注実績という資産をどう成長させるかという経営判断にあります。「通販サイト/システム更改」がフルスクラッチを選択肢に含める場合、その動機は保守契約満了やEOS/EOLという期限内にどう対応するかという制約条件にあります。「ECリニューアル」は、業態を問わない一般的なECサイトを主語に、ASP・クラウドEC活用の1〜2ヶ月からフルスクラッチの4〜8ヶ月以上までを、期間・費用の総論として比較する記事です。これに対し本記事が扱う通販サイト/システムのリニューアルにおけるフルスクラッチ・オーダーメイド開発は、顧客体験・ブランドイメージをどこまで独自に追求すべきかという「顧客からどう見えるか」起点の判断を、定期購入・カタログ通販・テレビ通販という業態特有の業務フローに照らして行う点が最大の違いです。

「UX/UIへのこだわり=フルスクラッチ必須」という前提の変化

「自社ブランドの世界観を体現したい」「独自の購入体験(UI/UX)を追求したい」という目的でフルスクラッチを検討する通販事業者は少なくありません。しかし、近年は「UI/UXへのこだわり=フルスクラッチ必須」という前提が崩れつつあります。クラウド型ECやパッケージの一部で、裏側のシステム(バックエンド)とユーザーが見る画面(フロントエンド)を切り離す「ヘッドレスコマース」というアーキテクチャが普及しており、この構成を利用すれば、カート機能や在庫管理はベンダーのシステムを使いつつ、ユーザーが操作するUI/UXだけをフルスクラッチと同等の自由度で独自に構築できます。単に「フロントのUI/UXやデザインにこだわりたい」という理由だけであれば、バックエンドまで数億円かけてフルスクラッチ開発を行う必要性は低くなっているという点を、判断の出発点として押さえておく必要があります。

フルスクラッチを選ぶべきケースと特徴

フルスクラッチを選ぶべきケースと特徴

それでもなお、通販サイト・通販システムのリニューアルでフルスクラッチが有効な選択肢となるケースがあります。ここでは具体的な条件と投資規模の目安を解説します。

独自の定期便ロジック・複雑な業務フローを持つ場合

既存のASPやクラウドEC、ECパッケージの標準機能やカスタマイズでも対応できないほど、極めて独自の定期便ロジック(複数商品を組み合わせた独自の周期設定、購買履歴に応じた動的な価格変動、会員ランクごとに異なる同梱物の出し分けなど)を持つ場合や、基幹システムや複数倉庫の物流システムと極めて特殊かつ高度な連携が必要な大規模な通販事業者は、フルスクラッチを検討すべきケースに該当します。また、コールセンターのオペレーター向け管理画面まで含めて、電話・FAX受注と定期便管理を一体的に設計したいという要求が強い場合も、標準パッケージでは対応しきれず、フルスクラッチの検討対象になります。

初期費用・開発期間の目安

フルスクラッチ開発は、既存のシステムをベースにせず自社の要件に合わせてゼロから完全オーダーメイドで構築するため、カスタマイズの自由度が最大である一方、初期費用は数千万円〜数億円規模に達し、開発期間も長期にわたります。加えて、公開後のセキュリティ対応やインフラ保守、OS・ブラウザのアップデート対応といったランニングコストをすべて自社で負担する必要があるため、これらを賄えるリソースと予算があることが、フルスクラッチを選択するための前提条件になります。通販特有の定期便・同梱物連動・コールセンター連携という機能まで含めてゼロから設計・開発する場合、一般的なECサイトのフルスクラッチよりもさらに開発期間が長期化する傾向にあることも見込んでおく必要があります。

ヘッドレスコマースという新しい選択肢

ヘッドレスコマースという新しい選択肢

ブランド独自のUI/UXを追求したいという目的だけであれば、フルスクラッチに踏み切る前に検討すべき選択肢がヘッドレスコマースです。

バックエンドとフロントエンドを分離する仕組み

ヘッドレスコマースは、カート機能・在庫管理・決済処理・定期便管理ロジックといった裏側のシステム(バックエンド)と、顧客が実際に目にする画面(フロントエンド)とをAPIで分離するアーキテクチャです。バックエンドはベンダーが提供するクラウドEC基盤やパッケージのAPIをそのまま利用し、フロントエンドだけを自社独自の技術・デザインで構築できます。これにより、定期便管理やカタログ・テレビ通販の申込番号システムといった通販特有の機能を含む裏側のロジックは実績のあるベンダーの基盤に任せながら、顧客が実際に触れるUI/UXの部分だけをブランドの世界観に合わせて自由に作り込むことが可能になります。

UI/UXだけフルスクラッチ同等の自由度で構築するメリット

ヘッドレスコマースを採用する最大のメリットは、フルスクラッチと同等のUI/UX自由度を確保しながら、バックエンドの開発・保守コストと期間を大幅に圧縮できる点です。定期便のスキップ・周期変更・解約導線や、同梱物のQRコードから遷移するクロスセル画面といった、通販サイトのリニューアルで重視すべき顧客体験の部分に開発リソースを集中投下できます。バックエンド側の在庫管理・決済処理・定期便ロジックはベンダーの実績あるシステムに任せることで、フルスクラッチに比べてセキュリティリスクや保守負荷を抑えられる点も、通販事業者にとって見逃せない利点です。

ASP・クラウドEC・パッケージとの比較

ASP・クラウドEC・パッケージとの比較

フルスクラッチ以外の主な選択肢との比較を整理し、通販サイト・通販システムに求められる機能の対応可否を確認しておきましょう。

構築方式別の特徴とUI/UX自由度

ASP型(初期費用数十万〜300万円)は、標準機能の範囲内で構築しデザインもテンプレートから選ぶため、低コストかつ短期間で立ち上げられますが、小〜中規模向けであり独自のUI/UXの追求や複雑な業務フローには不向きです。クラウド型SaaS(初期費用300万〜1,500万円)は、ベンダーが提供するクラウド環境を利用し、自動バージョンアップによってシステムが常に最新・セキュアに保たれる点が強みで、近年はAPI連携が充実しヘッドレス構成にも対応しやすくなっています。パッケージ型(初期費用500万〜数千万円)は、ECに必要な基本機能が揃ったベースシステムに独自のカスタマイズを加える方式で、大規模で独自要件が多い企業向けですが、数年ごとのシステム老朽化に伴うバージョンアップ対応やセキュリティ維持のコストを自社で負担する必要があります。

通販特有機能(定期便・同梱連動・コールセンター統合)の対応可否

通販サイト・通販システムに求められる定期便管理、同梱物との連動、コールセンター統合といった機能は、ASP型では標準搭載されていないことが多く、対応する場合はプラン変更や追加費用が必要になるケースがあります。クラウド型SaaSやパッケージ型では、定期購入・サブスクリプション向けの機能をあらかじめ搭載した製品も増えており、標準機能で足りるかどうかをまず確認することが重要です。近年登場している「パッケージ由来のクラウドEC」のように、大規模向けパッケージのノウハウをクラウド(SaaS)として提供し、事業成長後にデータを引き継いでパッケージ版へ移行できる製品であれば、将来の拡張性を担保しつつ初期投資を抑えることも可能です。コールセンター統合については、既存のCTI(電話システム)やCRMとの連携実績がある製品を選ぶことが、通販サイトのリニューアルを円滑に進める鍵になります。

発注前に確認すべき判断基準

発注前に確認すべき判断基準

フルスクラッチという投資対効果の大きい選択を後悔しないためには、発注前の段階で判断基準を明確にし、それを踏まえたパートナー選定を行うことが欠かせません。

要件の切り分け(標準機能で足りるか、独自開発が必要か)

まずは、自社が実現したい定期便ロジック・顧客体験・コールセンター連携の要件を洗い出し、それぞれについて「ヘッドレス型のクラウドECやSaaS・パッケージの標準機能で満たせるか」「フロントエンドのカスタマイズで対応できるか」「バックエンドまで含めた独自開発が本当に必要か」の3段階で切り分けることが、過剰投資を避ける最も有効な方法です。要件を「必須(Must)」「重要(Should)」「あれば良い(Could)」に仕分けし、優先度の低いカスタマイズを削り、標準機能で代替できるものを洗い出すことで、フルスクラッチが本当に必要な範囲を絞り込めます。結論として、まずはヘッドレス型のクラウドECや拡張性の高いSaaS・パッケージで要件を満たせないかを検証し、それでも対応不可能な独自の裏側ロジックがある場合にのみフルスクラッチを選択するのが、投資対効果を最大化する基本アプローチです。

フルスクラッチ実績を重視したベンダー選定

フルスクラッチ、またはヘッドレスコマースによるUI/UX独自構築のいずれを選ぶ場合も、依頼先を選ぶ際は通販システム特有の定期便ロジックやコールセンター連携を手がけた実績があるかを重点的に確認しましょう。単なるECサイト構築の実績だけでなく、大規模な会員基盤・受注実績を持つ通販事業者の複雑な業務フローを正確に読み解きながら要件定義・設計を行った経験がなければ、開発が進んでから重要な仕様の見落としが発覚し、投資規模に見合わない手戻りを招くリスクが高まります。プロジェクト開始後は、経営層を含むステアリングコミッティを設置し、定例会議で進捗と課題を可視化するとともに、全体工程には10〜20%程度のリスクバッファを組み込んでおくことが、大規模投資を伴うフルスクラッチ開発を成功に導く鍵となります。

まとめ

通販サイト/システムのリニューアルのフルスクラッチまとめ

本記事では、通販サイト/システムのリニューアルにおけるフルスクラッチ・オーダーメイド開発について解説しました。技術的負債の解消を動機とするモダナイゼーション、資産価値を根拠にした経営判断を動機とする刷新、期限内対応を制約とする更改、そして業態を問わない一般総論であるECリニューアルとは異なり、本記事が扱う通販サイト/システムのリニューアルの本質は、顧客体験・ブランドイメージをどこまで独自に追求すべきかという判断を、定期購入・カタログ通販・テレビ通販という業態特有の業務フローに照らして行う点にあります。近年はヘッドレスコマースの普及により「UI/UXへのこだわり=フルスクラッチ必須」という前提が崩れつつあり、独自の定期便ロジックや基幹・物流との高度連携がない限り、まずはヘッドレス型のクラウドECやSaaS・パッケージで要件を満たせないかを検証することが、投資対効果を最大化する基本アプローチです。要件を明確に切り分けたうえで、通販システム特有の実績を持つ信頼できるパートナーに早めに相談することをお勧めします。

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株式会社riplaでは、IT事業会社出身のプロフェッショナルが「Impact-Driven型支援」を通じて、プロダクトやシステムの納品・提供を目的とせず、お客様と同じ目線で、事業成果の達成をゴールとして、高品質なDX/開発支援をいたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。IT事業会社出身のプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、「Impact-Driven型支援」を掲げ、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の実現に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。