通販サイト/システムリプレイスの選定ポイント/選び方/種類

通販サイトのリプレイス先は、標準化できる業務と独自業務を分けて選びます。

ECパッケージ、定期購入対応SaaS、フルスクラッチは得意な領域が異なり、知名度だけで選ぶと移行後も手作業が残るおそれがあります。

選定は、課題の洗い出しから候補方式を決め、共通の評価軸と実データで比べてRFPからPoCへ進みます。

本テーマの全体の流れは、以下の記事で確認できます。

▼全体ガイドの記事
・通販サイト/システムリプレイスの完全ガイド

選定前に整理すべき自社の課題

まず、現行システムで負担やリスクが生じている工程を特定します。保守費用、定期契約、同梱ルールを整理しておくと、比較する製品タイプを絞り込めます。

保守コストとブラックボックス化の兆候

自社スクラッチでは、保守・運用費が初期開発費の年10〜20%程度とされます。たとえば開発費が1,000万円なら、年間100万〜200万円程度が固定費の目安になります。

担当者の異動などで仕様が分からなくなっていると、新しいベンダーへの引き継ぎ調査だけで30万〜100万円程度かかる場合もあります。

費用の固定化や属人化が課題になっているなら、比較を始めるべきです。一方で、保守体制と費用が明確なら、急いで乗り換える必要はありません。

定期契約データと決済情報の複雑さの洗い出し

定期契約マスタには、次回配送予定日、配送周期、継続回数など、時間とともに変わる情報が含まれます。そのため、正確に移行するにはリハーサルと検証が欠かせません。

決済代行会社も変更する場合は、カード情報のトークン移行や洗替によって、スケジュールが1〜2ヶ月以上遅れるケースがあります。

契約データの複雑さと決済会社の変更の有無を整理しておけば、評価とPoCで確認する項目を具体的に決められます。

頒布会・同梱物ルールの独自性の切り分け

たとえば、初回は本品とパンフレット、2回目は詰め替え用、3回目はプレゼントといった同梱物の出し分けが、売上や解約防止に結びついているかを確かめます。

業務上の理由を説明できないルールは、過去の慣習として残っている可能性があります。そのため、新システムの標準機能に合わせて簡略化できるかを検討します。

ポイント

保守費用の固定化や仕様の属人化が見えるなら、比較を始める目安になります。定期契約データや同梱ルールの複雑さも整理し、比較する製品タイプを絞り込みます。

乗り換え先として比較される3つの選択肢

リプレイス先の選択肢を3枚のパネルで示し、自社スクラッチの維持、汎用ECパッケージ、定期購入対応SaaSを並べた図。
まず3方式を並べると、比較の軸をそろえやすくなります。

リプレイス先は、大きく分けて、自社スクラッチを維持する方法、汎用ECパッケージへ乗り換える方法、定期購入対応SaaSへ乗り換える方法の3つに整理できます。

実際には、要素を組み合わせたハイブリッド構成もあります。ただし、まずはこの3つの型で自社の方向性を考えると、比較の軸をそろえやすくなります。

自社スクラッチを維持する場合の判断ポイント

自社独自の複雑な頒布会ルールや特殊な商流が競争力の源泉になっている場合は、スクラッチを維持したまま部分的に改修する選択肢が残ります。

維持を選ぶと、次の2点が自社の継続課題になります。

  • 維持コストと属人化のリスク:保守の費用と担当者への依存を、継続して負うことになる。
  • 自社側の追従作業:法改正への対応やセキュリティパッチの適用を、自社で追い続ける必要がある。

維持を選ぶ場合も、担当者一人に仕様が集中した状態を放置しないことが大切です。設計書や運用手順を洗い出し、他の担当者が引き継げる形に整えておきます。将来乗り換えを検討するときに、現状のブラックボックス化がそのまま障壁にならないよう、日頃から仕様の可視化を進めておく価値があります。

汎用ECパッケージへ乗り換える場合の判断ポイント

幅広い商品構成やBtoB取引があり、定期購入も扱う企業では、汎用ECパッケージが候補になります。

発注側は、定期購入の機能が追加開発になるのか、標準で対応できるのかを確認します。

複数チャネルを一つの基盤で扱えることは、汎用ECパッケージの利点です。ただし、頒布会の同梱ルールを標準機能で扱えるかは、契約前のデモで確かめます。

定期購入対応SaaSへ乗り換える場合の判断ポイント

単品リピート通販や頒布会が中心なら、定期契約や同梱物の機能を備えたSaaSが候補になります。

定期購入SaaSは、業界特有の運用を標準機能で扱える一方、他社と似た構成になりやすい方式です。そのため、差別化は同梱物や特典の運用で図る考え方になります。

契約前に、次の2点を確かめます。

  • 契約費用の中身:月額利用料に含まれる内容と、決済手数料などの変動費。
  • 売上拡大時の収支:売上が伸びて変動費が増えても、利益を確保できるかの試算。

ポイント

乗り換え先は、自社スクラッチの維持、汎用ECパッケージ、定期購入対応SaaSの3つで比べます。維持は競争力を守れる一方で保守負担を抱えるため、業務の標準化度合いで選び分けます。

製品選定で比較すべき評価軸

製品選定の評価軸を3枚のチェックカードで示し、業務と移行、費用と連携、運用と安全性を並べた図。
同じ観点を候補各社に当てると、説明の印象に流されにくくなります。

候補製品は、同じ条件を使い、次の観点で比べます。各社への質問と、デモや仕様書で確認できた根拠を記録しておくと、説明の印象だけで評価するのを避けられます。

  • 業務と移行:業務範囲、定期契約や決済の移行、同梱ルールへの対応力。
  • 費用と連携:固定費・変動費を含むTCOと、外部サービスとの接続性。
  • 運用と安全性:権限・ログ、データ返却条件、導入後の支援体制。

定期契約マスタと決済データの移行対応力

定期契約マスタの配送日、周期、継続回数を、CSVやAPIで正確に取り込めるかを確認します。

カードトークンの移行では、決済代行会社間の洗替実績と所要期間を各社に尋ねます。

自社に近い規模や契約件数の移行を担当した人が、今回も参加するかを確認します。実績の年数だけでは分からない対応力も、この確認で見極められます。

TCOと変動費構造、外部連携、セキュリティ

月額利用料に決済手数料や従量料を加えて、TCOを試算します。

外部連携、権限・ログ、解約時のデータ返却条件も確認します。

各社に同じ売上と注文件数を示して、TCOを出してもらいます。そのうえで、月額費用だけでは見えない従量料の差も比べます。

頒布会・同梱物ロジックの再現性とサポート体制

自社の同梱物の制御ルールが、新システムの標準機能(シナリオ設定など)でどこまで再現できるかを、実際の設定画面を見ながら確認します。

あわせて、ベンダーのPM・サポート担当が業務内容を理解し、標準機能での代替運用を提案できるかも確認します。この伴走姿勢は、稼働後の運用負荷を左右する重要な評価軸です。

ポイント

移行対応力、TCO、頒布会ロジックの再現性は、どの候補でも同じ条件で確かめます。デモや仕様書で得た根拠を残すと、印象に頼らない比較になります。

標準化業務と独自業務を切り分ける選び方

標準化できる業務と独自業務を左右で比較し、一般的なカート機能などと頒布会の同梱物制御などを示した図。
共通機能と独自性の境目が、方式を選ぶ分かれ目になります。

方式選定では、標準化する業務と独自に残す業務を分けます。そのうえで、Must・Should・Could・Wonʼtの4段階で要件を整理し、対象外の範囲も明らかにしておくと、候補を絞り込めます。

標準化できる業務のSaaS・ECパッケージ活用

一般的なカート機能、会員管理、定期購入の休止・再開などは、業務をSaaSやECパッケージの標準機能に合わせる方法を優先します。

運用の一部を簡略化する代わりに、開発期間を抑え、継続費用を見通しやすくできます。

独自業務が競争力に直結する場合のフルスクラッチ・ハイブリッド

頒布会の同梱物制御や特殊な商流が売上・継続率に直結するなら、その部分を個別に開発し、受注や決済の管理は既製サービスに任せる構成も候補になります。

この構成を採用する場合は、正となるデータの所在と、再送や取消時の処理担当を、先に決めておく必要があります。

ポイント

標準化できる業務は既製サービスの標準機能に合わせ、競争力に直結する独自業務だけを個別開発の対象にするのが目安です。個別開発を組み合わせる場合は、正となるデータの所在と、再送・取消時の担当を先に決めます。

RFP・比較表の作り方

複雑な定期ルールへの対応方法は、機能一覧の〇×よりも実際の業務の流れに沿って確かめる必要があります。そのため、RFPには実業務のシナリオと非機能要件を記載します。

比較表には、各回答を確認した方法も記録しておきます。

RFPに記載すべき業務シナリオと非機能要件

RFPでは、対象範囲と確認条件を候補各社に共通して伝えます。少なくとも次の情報を整理し、各要件を実際の業務シナリオに結びつけます。

  • 現行の前提:商品構成、受注・定期契約件数、同梱物や配送日のルール。
  • 業務シナリオ:休止・再開・解約などの顧客操作と頒布会の運用。
  • 非機能と契約終了:権限・ログ・障害対応・データ保管、エクスポート形式と返却条件。

確認方法までそろえた比較表

標準機能なのか追加開発なのかは、「定期購入に対応」という回答だけでは確かめられません。そこで、デモや仕様書、契約条項など、確認に使った根拠を記録します。

未確認の項目は採点せず、保留にしておきます。必須条件を満たさない候補を除いたうえで、残りの候補をTCOと運用負荷で比べます。

ポイント

RFPは実業務のシナリオと非機能要件で書き、比較表には回答の確認方法も残します。機能一覧の〇×だけでは、複雑な定期ルールへの対応は見極めにくい点に注意します。

デモ・PoCで検証すべき実データ項目

稼働後に残る手作業は、最終候補に自社の実データに近い条件を示すことで把握します。通常処理と例外処理を、デモやPoCで確かめます。

実データによる定期契約マスタと決済情報の検証

実契約に近い条件で、配送日や周期、カードトークンによる継続課金を試します。決済会社を変える場合は、洗替の時期と影響も確認します。

頒布会・同梱物ロジックとマイページ操作性の検証

段階別の同梱物が帳票に反映されるかを試します。あわせて、マイページとCS・物流向け画面も、業務担当者と一緒に確認します。

通販サイト・システムリプレイス選定前に確認しておきたいポイント

候補を絞った後も、売上規模やセキュリティ、PoCの範囲などで判断に迷う点は残ります。選定の途中でよく出る疑問を、順に見ていきます。

売上規模が小さくても選定を始める価値

受注件数が少なくても、仕様を担当者しか把握していない場合は、比較検討を始める余地があります。また、決済代行会社とのやり取りが属人化している場合にも、比較の余地があります。

現行システムが安定し、保守体制も明確なら、乗り換えを急ぐ必要はありません。

SaaSのセキュリティとデータ返却条件

クラウド型の定期購入対応SaaSであっても、権限管理や操作ログ、バックアップの確認は欠かせません。加えて、契約終了時のデータ返却・削除条件も確かめます。

とくに決済情報や個人情報を扱うため、解約時に契約・請求・定期契約の履歴を一般的な形式で取り出せるかを、契約前に質問しておきましょう。

PoCの実案件と例外処理までの検証

一案件を招待から会計連携まで通し、差し戻しや契約変更も試します。そのうえで、処理時間や手入力、問い合わせ箇所を記録し、運用負荷を比べます。

まとめ

リプレイス先の選定は、自社課題を特定して候補の方式を決めるところから始まります。その後、共通の評価軸で比べ、RFPと実データによるPoCを経て候補を絞り込みます。

自社課題の特定と評価軸の統一

現行業務の負荷やリスクを起点に、同じ評価軸と確認方法で候補を比べます。これは、導入後の認識違いを抑えるためです。

製品一覧による具体的な候補の比較

候補製品を比べる際は、通販サイト・システムリプレイスのパッケージ・クラウド製品一覧をご覧ください。

既製品では扱いにくい独自の頒布会ロジックや基幹連携が必要な場合は、riplaが要件整理から個別開発まで支援します。

▼全体ガイドの記事
・通販サイト/システムリプレイスの完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。