通販サイト/システム改修の保守・運用費用・ランニングコストについて

通販サイト/システム改修後の保守・運用費用は、改修規模、外部連携の数、保守範囲によって、月額数万円〜10万円台まで変わります。

費用の幅は、外部連携の数と保守範囲の決め方によって大きく変わります。全体像は通販サイト/システム改修の完全ガイドもご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・通販サイト/システム改修の完全ガイド

保守・運用費用から見た通販サイト/システム改修の位置づけ

保守・運用費用を考えるには、まず本記事が扱う論点の位置づけを確認しておく必要があります。改修が全体か一部かで、費用の見方が変わるためです。

他の6記事群・EC改修との違い(通販・頒布会特化という論点)

6記事群のうち、モダナイゼーションや刷新、更改の記事は、いずれもシステム全体の作り替えを前提にしています。リニューアル、リアーキテクチャ、リプレイスの記事も、システム全体の作り替えを前提にしています。

これらの記事は、技術の進め方(HOW)、経営判断(WHY/WHEN)、期限管理の視点から費用を論じています。さらに、顧客体験、構造の再設計、製品の乗り換えといった視点も加わります。

第7波にあたるEC改修と通販改修の記事では、対象範囲が次のように異なります。

  • EC改修:業態を問わない決済方法の追加やカートの軽微な改善
  • 本記事の通販改修:通販・カタログ通販・定期購入に特有の定期便変更や頒布会・同梱物選定ロジックの改修費

対象範囲が限られるぶん、全面刷新とは費用の規模が異なります。また、本記事は改修後に発生する保守・運用費用を扱う点にも特徴があります。

「小さく直す」から生まれる低予算という前提

小規模な改修は初期費用を抑えやすく、保守費用は一般に改修費の年間15〜20%が目安です。初期改修費が数十万〜100万円台であれば、年間の保守費用も限られた額に収まりやすい構造です。

定期課金バッチ処理や与信・決済連携、CRM・物流システムとの連携を伴う改修では、障害調査や原因の切り分けに時間がかかり、工数が増えます。

こうした連携は保守費用を押し上げる要因になります。そのため、通販・頒布会の業態では、見積もりの段階で連携の複雑さも確かめておく必要があります。

ポイント

保守費用を見積もる前に、改修が全体か一部かを切り分けておきましょう。部分的な改修なら低予算に収まりやすい一方で、外部連携が増えるほど、保守費用も見込む必要があります。

改修後の保守・運用費用の相場

システム全体の保守と部分的な対応の月額相場を左右に比較した図。
対象を絞ると月額の目安も小さくなります。

一般的な通販サイト・会員制サイトの月額保守相場は15万円〜で、年間では180万円〜になります。これはシステム全体を対象とする中規模保守の目安です。一方で、部分的な対応の保守費用は、これより抑えられます。

月額数万円〜10万円台に収まる理由

部分的・小規模な機能に限った保守は、月額数万円から10万円前後に収まるケースが多く見られます。その背景には、保守費用を改修費の年間15〜20%で算出する考え方があります。

たとえば、定期便のお届け頻度の変更、休止・スキップ設定の追加、頒布会・同梱物選定ロジックの修正は、システムをゼロから作る場合に比べて、初期開発費を抑えやすい改修です。

保守費用は改修費に比例するため、改修規模が小さいほど保守費用も小さくなり、この関係が費用見積もりの出発点になります。

定期課金バッチ・CRM連携が費用を押し上げる要因

保守費用を左右するのは、改修箇所が外部システムと連携しているかどうかです。定期通販では、次の連携が保守範囲に関わります。

  • 定期課金バッチ処理:決まった周期で請求を回す処理
  • 与信・決済連携:決済に関わる外部システムとの接続
  • コールセンターCRM・物流連携:顧客対応や物流を担うシステムとの連携

これらは、API通信や複雑なデータ連携を伴うため、障害の調査や原因の切り分けに時間がかかります。そのため、月額15万円の標準相場より高くなる可能性があります。

バグ修正やマイページの軽微な改善のように、外部連携を伴わない改修なら、保守費用は低予算に収まります。なお、決済やCRMの連携を保守範囲に含める場合は、それに見合った費用を見込んでおく必要があります。

ポイント

保守費用の幅は、外部連携の有無と保守の対象範囲で決まります。月額15万円の標準相場を基準に、決済やCRMの連携が含まれるかどうかで上下を見ると判断しやすくなります。

契約形態の選び方(コア機能は月額固定、軽微調整はチケット制)

停止を避けたいコア機能と不定期な軽微調整を、それぞれ月額固定型とチケット制へ結ぶ分岐図。
停止時の影響と調整の発生頻度が選び分けの軸です。

保守・運用費用を適正に保つには、契約形態の選び方も欠かせません。通販・頒布会の業態では、機能ごとに必要な対応スピードが異なります。

決済連携・定期課金バッチに向く月額固定型

決済連携や定期課金バッチ処理のように、停止を避けたいコア機能には、月額固定型(定額制)が適しています。決済エラーやバッチ処理の失敗は業務への影響が大きく、迅速な障害対応(SLA)が求められるためです。

月額固定型では、一定額のまま、緊急時にすぐ動ける体制を確保できます。

新しい決済方法や与信連携を追加した直後は、想定外の連携エラーが起きる可能性がやや高くなります。そこで、公開後の数ヶ月間は月額固定型で手厚く支え、安定稼働後に契約を見直す方法もあります。

同梱物設定などの軽微調整に向くチケット制

頒布会の同梱物設定や画面の小さな変更が不定期に発生する場合は、作業時間をあらかじめ購入しておき、発生するたびに消化していく契約が適しています。

  • フロント画面の軽微な修正:お客様の目に触れる部分の小さな手直し
  • 頒布会の同梱物設定:商品の組み合わせに関する小さな調整

月額固定型にするほど頻繁ではなくても、ときどき発生する改修ニーズには、チケット制やポイント制が向いています。固定費を抱えずに済み、予算も管理しやすくなります。

トラブルの頻度が低い部分であれば、従量課金型(時間課金型)も選択肢になります。ただし、障害が重なると費用が高額になるおそれがあります。

決済エラーのような突発的な障害は月額固定型で体制を確保し、運用開始後の機能追加や同梱物設定の変更はチケット制にする、といった組み合わせもあります。運用の状況に応じて、契約を見直していきます。

ポイント

停止したときの影響が大きい決済連携や定期課金バッチは月額固定型に、不定期に起きる軽微な調整はチケット制にと、停止の影響と調整の頻度で分けると迷いにくくなります。

改修範囲を限定してコストを抑える設計

契約前に整理する保守範囲と仕様変更時の追加費用の境界を4項目で示した図。
対象内外と追加費用の線引きを契約前に揃えます。

ランニングコストを適正に保つには、保守範囲をどこまで絞るかを契約の前に固めておく必要があります。また、改修対象外の機能まで含めるかどうかも、同じ時点で決めておきます。

改修箇所周辺のみに保守範囲を絞る考え方

コストを抑える基本は、システム全体ではなく改修箇所と周辺機能に保守を絞ることです。たとえば、お届け頻度の設定や同梱物の選定ロジックが対象になります。

改修対象外の部分は、従来どおり別の体制や契約で保守されることが多くあります。そのため、契約が重ならないよう、両方の保守範囲を契約書で明確にしておきます。

保守範囲と追加費用(仕様変更)の境界線を契約時に明確化

定期通販では、新しい同梱物パターンの追加やお届け頻度の選択肢の追加などが、運用中に起こりがちです。このため、軽微な修正の範囲を契約時に確認しておく必要があります。

保守に含む範囲と追加費用(仕様変更)の境界は、契約時に決めておきます。曖昧な契約は、小さな変更のたびに見積もりを招き、コストの高騰につながります。

こうなると、低予算という前提が崩れることもあります。発注前に、契約条件を丁寧にすり合わせておきます。

ポイント

保守範囲は、改修箇所と周辺機能に絞るのが基本です。改修対象外との境界や、追加費用になる仕様変更の範囲を契約書で分けて書いておくと、後からの費用のずれを防ぎやすくなります。

コストを適正化する実務ポイント

費用を適正に保つには、見積もりを比べることと、将来を見据えて契約条件を決めておくことが必要です。初期費用だけで判断せず、運用後の費用も含めて確認します。

相見積もりと保守費用込みの内訳確認

改修費用だけで発注先を決めると、保守・運用費用の見込みが甘くなるおそれがあります。そこで、見積もりは次の項目を同じ条件にそろえて比べます。

  • 初期費用:改修費用の内訳
  • 保守契約:相場、契約形態、対応範囲
  • 総額と根拠:初期費用と数年間のランニングコスト、見積もりの内訳

2〜3社から相見積もりを取ることが望ましいといえます。相場より極端に安い場合は、保守費用が別途高額だったり、テスト工程が省かれていたりする可能性があります。

「改修費用は安いが、決済連携の保守費用が割高」というケースもあります。そのため、金額の安さだけで決めず、内訳や根拠を確かめ、数年間の総額で比べます。

将来の追加改修を見据えた契約条件の整備

通販サイト/システム改修は一度で終わらず、頒布会のラインナップ変更や季節のキャンペーンに応じて、継続して手を入れることが多いプロジェクトです。このため、次の点を契約時に確認しておきます。

  • 仕様書の納品:改修範囲と実装内容の記録
  • 契約範囲の整理:複数ベンダー間の対応範囲の把握

仕様書があれば、次回の改修を別のベンダーに依頼する場合も、過度な乗り換えコストを避けやすくなります。一方で、低予算や短納期を優先して記録を省くと、次の改修で同じ調査の手間がかかる可能性があります。

決済方法やお届け頻度、同梱物ロジックの変更が重なると、保守契約が複数のベンダーに分かれることがあります。さらに、契約形態や対応範囲も、ベンダーごとに異なる場合があります。

年に一度は保守契約の全体を一覧にし、範囲が重なっていないか、更新が必要な条件はないかを見直します。そうすることで、長期的なランニングコストの適正化につながります。

ポイント

見積もりは初期費用だけでなく数年間の総額と内訳で比べ、仕様書の納品や年1回の保守契約の見直しも条件に含めておくと、長期の費用を読みやすくなります。

まとめ

改修後の保守・運用費用の相場、契約形態、改修範囲の設計、コストを適正に保つ実務について解説しました。

モダナイゼーションや刷新、更改の記事とは異なり、通販・頒布会に特有の部分改修を扱います。リニューアル、リアーキテクチャ、リプレイスの記事とも対象が異なります。一般EC改修とも、対象が異なります。

対象は、定期便の変更や頒布会・同梱物選定ロジックの修正です。部分改修の保守費用は、月額数万円から10万円台に収まる場合があります。

費用は改修規模や外部連携、保守範囲によって変わります。コア機能は月額固定型、軽微な調整はチケット制とし、仕様書の納品や年に一度の保守契約の見直しも検討します。

▼全体ガイドの記事
・通販サイト/システム改修の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。