基幹システム/ERPリニューアルの開発期間・スケジュール・納期について

基幹システム/ERPリニューアルは、会計・人事給与・生産管理・販売管理・在庫管理といった全社の基幹システムについて、現場が毎日使う画面の操作性と入力効率を作り替える取り組みです。開発期間は作り替える範囲によって数週間から12ヶ月規模まで変わり、調査から定着化までの工程を積み上げて決まります。

  • 前提と位置づけ
  • 具体的な検証・設計・期間
  • 依頼先選定と進め方

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・基幹システム/ERPリニューアルの完全ガイド

基幹システム/ERPリニューアルの位置づけ(現場の操作性・画面UI起点)

基幹システム/ERPリニューアルとは何か(現場の操作性・画面UI起点という位置づけ)

開発期間を見積もる前に、この記事が扱う論点の位置づけと、UIが陳腐化していく典型的なパターンを押さえておく必要があります。また、技術手法や経営判断、契約期限とは別の「体験」という切り口を理解することが、見積もりの最初の一歩になります。

モダナイゼーション・刷新・更改との違い(体験起点という観点)

モダナイゼーションの記事は移行アプローチという技術手法の選定を、刷新の記事は稟議や全社合意形成という経営判断を、それぞれ中心に据えています。また、更改の記事は保守契約やハードウェアリースの満了という契約実務を中心にしています。

これに対し、この記事で扱うリニューアルは、システムの裏側の仕組みや経営層の判断よりも、画面を触る現場の担当者の体験に焦点を当てます。具体的には、「入力しやすいか」「迷わず操作できるか」「業務スピードを妨げていないか」を問います。期間を検討するときは、まず「誰にとっての、何の体験を良くするのか」をはっきりさせます。

基幹システムは会計・生産・販売・人事といった複数部門が日常的に使います。そのため、UIの使いにくさは一部門にとどまらず全社の生産性に影響し、Webサイトやアプリのリニューアルとは異なる重みを持ちます。

基幹システムのUI/UXが陳腐化する典型パターンと現場への影響

基幹システムのUIは、導入時点では最新でも、10年や20年と使い続けるうちに確実に陳腐化します。典型的なのは、法改正対応や部門ごとの個別要望への継ぎ足し開発によって、入力項目や画面遷移が年々複雑になり、当初はシンプルだった画面が使いにくくなるケースです。

操作性の悪いシステムは現場から敬遠され、導入したはずのシステムが社内に浸透しないことも少なくありません。そのため、現場担当者が個別にExcelでデータを管理し始め、いわゆるシャドーIT化が進みます。その結果、システム間のデータ連携やリアルタイムな情報共有ができなくなるという悪循環に陥ります。さらに、入力ミスなどのヒューマンエラーも誘発されやすくなります。

範囲を決める前に、自社の基幹システムがどの段階まで陳腐化しているかを把握しておくと、リニューアル範囲を決める判断の材料になります。

ポイント

期間を見積もる前に、誰のどの操作を良くしたいのかを決めておくことが判断の目安になります。体験起点で捉えると、どの画面をどこまで直すかの線引きも見えてきます。

開発期間・スケジュールの全体像(ユーザビリティ調査から定着化までの工程配分)

開発期間・スケジュールの全体像(ユーザビリティ調査から定着化までの工程配分)

基幹システム/ERPリニューアルは、現状のユーザビリティを把握する調査から始め、稼働後の定着化までを一連の流れとして計画します。画面の作り込みは、その後の工程です。

現状ユーザビリティ調査〜要件定義までの上流工程

上流工程では、現場担当者へのヒアリングや操作ログの分析を通じて、どの画面のどの操作で迷いやミスが起きているかを洗い出します。続いて、改善したい操作フローに優先順位をつけ、画面デザイン、入力方式、ダッシュボード構成といった要件を定義します。

現場からは「入力フォームを自動補完してほしい」「ダッシュボードを見やすくしてほしい」といった要望が次々に出てきます。これらを整理せずに集めすぎると、要件が際限なく膨らみ、後工程のスケジュールを圧迫する原因になります。

現状の分析から要件定義、プロトタイプ作成までには、対象システムの規模にもよりますが、約1〜3ヶ月かけるのが一般的です。また、この段階で、後述するMust(必須)とWant(希望・第2フェーズ以降)の仕分けを済ませておく必要があります。

UI/UXデザイン〜フロントエンド開発〜稼働後定着化までの期間

要件が固まると、ワイヤーフレームやデザインカンプの作成を経て、フロントエンド開発に進みます。フロントエンド開発の期間は対象範囲によって大きく変わり、部門やモジュールを絞った小〜中規模のリニューアルなら約3〜6ヶ月、全社の基幹モジュールを横断する大規模なリニューアルなら約6〜12ヶ月が目安です。

本番稼働が済んだ後も、定着化のフェーズが続きます。現場担当者への操作研修やマニュアル整備、利用状況のモニタリングと追加改善を、数ヶ月にわたって行う必要があります。

せっかく使いやすい画面を作っても、定着のための教育期間を見積もりに含めなければ、旧来の操作から抜け出せず、改善効果が発揮されないまま終わるおそれがあります。

ポイント

上流に1〜3ヶ月、フロントエンド開発に範囲に応じた3〜12ヶ月を見込み、稼働後の定着化まで含めて見積もるのが目安です。範囲が広いほど長くなります。

リニューアル範囲別に見る期間の違い(画面デザインのみ・UI+機能改修・フルリニューアル)

リニューアル範囲別に見る期間の違い(画面デザインのみ・UI+機能改修・フルリニューアル)

基幹システム/ERPリニューアルの開発期間は、どこまで手を入れるかという範囲によって大きく変わります。全画面を一度に作り替える必要はなく、目的に応じて範囲を絞ることも有効な選択肢になります。

画面デザインのみを刷新する軽量リニューアルの期間

業務ロジックやデータ構造には手を加えず、既存画面の見た目や配色、レイアウト、フォントサイズを刷新する軽量リニューアルは、最も短い期間で効果を出せるアプローチです。ボタンの配置や色使いを統一して視認性を高めたり、よく使う機能へのショートカットを整理したりといった改善が中心になり、期間の目安は数週間から3ヶ月程度に収まるケースが多くなります。

既存の入力フローや業務ロジックはそのまま維持されるため、現場担当者の再教育の負担も小さく済みます。ただし、根本的な入力効率の改善や画面遷移の複雑さの解消までは踏み込めないため、応急処置的な位置づけになりやすい点に注意が必要です。

UI+入力フロー改修、フルリニューアルの期間

画面デザインに加えて入力フローや操作手順も見直すUI+入力フロー改修では、ユーザーが目的を達成するまでの手順を一覧にし、無駄なステップを減らす操作フロー設計が中心になります。入力の自動補完やエラー表示の分かりやすさといった機能改善も伴うため、期間の目安は3〜6ヶ月程度です。

全社の基幹モジュールを横断してUI/UXを刷新するフルリニューアルは、対象範囲の広さから6〜12ヶ月規模の中長期プロジェクトになります。特に、物流システムや会計システムなど他システムとの連携仕様の確認漏れは後から発覚しやすく、追加開発とスケジュール遅延を招くケースがあります。そのため、連携範囲の洗い出しを上流工程で徹底しておくことが、期間を守るうえで欠かせません。

ポイント

期間を左右するのは、どこまで手を入れるかという範囲です。見た目の改善が目的なら画面デザインのみ、入力の手間を減らすなら入力フローの改修までを範囲に入れて考えます。

基幹システムUI/UXリニューアル特有の納期遅延要因

基幹システムUI/UXリニューアル特有の納期遅延要因

体験起点のリニューアルには、技術手法や経営判断が中心のプロジェクトとは異なる、UIならではの遅延要因があります。代表的なのは、要件の肥大化と、部門間で「使いやすさ」の基準がずれることです。

Must/Wantの仕分け不足による要件肥大化

UI/UXの改善では、「もっとこうしたい」という要望が際限なく出やすい性質があります。現場から寄せられる画面改善の要望を、業務上どうしても必要なMust(必須)と、あれば嬉しい程度のWant(希望・第2フェーズ以降)に仕分けないまま進めると、開発工数やテスト項目が次々と増えます。その結果、当初のスケジュールが大きく崩れます。

加えて、ワイヤーフレームを使った初期検証を省略して本格開発に入ると、実装の後半になって「思っていたのと違う」という手戻りが起き、結果として期間が長引きます。こうした手戻りを防ぐには、要件定義の段階でMust/Wantの線引きを明確にし、優先順位に沿ってフェーズを分けることが、UI/UXリニューアルのスケジュール管理の第一歩になります。

部門ごとに異なる「使いやすさ」の基準のすり合わせ難航

基幹システムは会計・生産・販売・人事といった複数部門が共通の画面を使うため、何をもって「使いやすい」とするかは部門ごとに異なります。ある部門にとって理想的な画面レイアウトが、別の部門にとってはかえって操作しづらいことも珍しくありません。

この基準を巡る部門間のすり合わせに十分な期間を取らず、デザイナーやエンジニアの感覚だけで進めると、リリース直前に現場から強い反発が出て手戻りが発生するリスクが高まります。そこで、実際の業務担当者をレビュー工程に加え、デザインを見た目だけで評価せず、業務フローを一通り操作してもらう仕組みを、設計段階から組み込んでおくことが大切です。

ポイント

納期の遅れは、要件の肥大化と部門間の基準のずれから起きがちです。要望の仕分けルールと、部門を交えた検証を早い段階で決めておく必要があります。

納期を守るための実務的な進め方

納期を守るための実務的な進め方

ここまでの期間の目安や遅延要因を踏まえると、基幹システム/ERPリニューアルの納期を守るには、プロトタイプでの検証と発注前の準備の両方が欠かせません。

プロトタイプ検証とPDCAサイクルの設計

本格的な開発に入る前に、開発会社がワイヤーフレームやデザインカンプでプロトタイプを作り、関係者や実際の現場ユーザーに操作フローを確かめてもらう工程を、必ず組み込んでおきます。この工程こそ、手戻りによる期間の延長を防ぐ最も効果的な対策です。

現状の分析でどこに迷いが生じているかを把握し、改善の仮説を立てて、プロトタイプで直して再び検証するというPDCAサイクルを、設計段階から回します。このサイクルを回せば、本開発に入ってからの大きな仕様変更を減らせます。

プロトタイプ検証の期間は全体のごく一部に見えても、そこで手戻りにつながる問題を早めに見つけておくことが、結果として全体の期間を守ることにつながります。

発注前の準備と依頼先選定のポイント

発注する側は、ユーザビリティ課題の一覧と対象範囲、連携仕様、希望する稼働時期を、要件概要書にまとめておきます。そうすると、複数のベンダーから比べやすい提案とスケジュールが集まります。

依頼先を選ぶ際は、UI/UXデザインの実績に加えて、業務データを扱う基幹システム特有の要件定義力を見ます。さらに、Fit&Gap検証やプロトタイプ検証を丁寧に行う姿勢があるかも確かめます。

プロジェクト開始後は、週次などの定例会議で進捗と課題を共有し、現場からの追加要望はMust/Wantの仕分けルールに沿って起票する運用を徹底します。さらに、全体工程に10〜20%程度のリスクバッファを組み込んでおくと、納期を守るための実務的な備えになります。

ポイント

納期を守るには、プロトタイプで手戻りを早めに見つけることと、発注前に要件概要書をまとめておくことが基本になります。どちらも、後から期間を延ばさないための備えです。

まとめ

基幹システム/ERPリニューアルの開発期間まとめ

ここまで、基幹システム/ERPリニューアルの位置づけを現場の操作性と画面UIから捉え、工程配分や範囲別の期間、体験起点特有の納期遅延要因を整理しました。そのうえで、納期を守るための実務的な進め方も解説しています。

上流のユーザビリティ調査と要件定義には1〜3ヶ月、フロントエンド開発は範囲に応じて3〜6ヶ月から6〜12ヶ月規模まで変わります。また、稼働後の定着化にも、一定の教育期間が必要です。

技術的な移行手法は基幹システム/ERPのモダナイゼーションの記事に、経営層への説明は基幹システム/ERP刷新の記事に、契約期限からの逆算スケジュールは基幹システム/ERP更改の記事に譲ります。この記事で特に強調したいのは、Must/Wantの仕分けとプロトタイプ検証を丁寧に行うことが、体験起点のリニューアルを期日どおりに終える最大の要因だという点です。

現場の声を聞きながら要件を絞り込める、実績豊富なパートナーに早めに相談することをお勧めします。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。