在庫管理システムのリニューアルの開発期間・スケジュール・納期について

在庫管理システムのリニューアルの納期は、現場ヒアリングからデザイン、プロトタイプ、実装、現場テストまでを積み上げて見積もります。

カスタマイズを伴うパッケージをベースにする場合、要件定義から開発・テストまで「早くても3ヶ月以上」を見込む必要があるとされています。全体像は、次の完全ガイドにまとめています。

▼全体ガイドの記事
・在庫管理システムのリニューアルの完全ガイド

  • 在庫管理システムのリニューアルの位置づけと、刷新・更改・モダナイゼーションとの違い
  • 開発期間・スケジュールの全体像と、工程ごとの期間配分
  • プロトタイプ検証・現場ユーザーテストが納期に与える影響

在庫管理システムのリニューアルの位置づけ(UX/UI・現場体験起点という論点)

同じ在庫管理システムでも、技術手法・経営判断・契約を起点にするものと、現場のUX/UI体験を起点にするものとでは、期間を左右する要因がまったく異なります。そのため、開発期間を検討する前に、本記事の論点がどこに位置するかを押さえておく必要があります。

新規導入・モダナイゼーション(技術HOW)との違い

「在庫管理システム開発」は、ゼロから在庫管理システムを新しく構築するグリーンフィールドの文脈です。これに対してリニューアルは、既に稼働している在庫管理システムの画面と操作体験を作り替えるブラウンフィールドの文脈で、この点はモダナイゼーションとも共通しています。

モダナイゼーションは、在庫計算ロジックやデータベースの構造といったシステムの中身を、5つの技術的アプローチ(リホスト・リプラットフォーム・リファクタリング・リビルド・リプレース)の使い分けで作り替える技術手法です。両者は別の論点ですが、実務では連動することも多いです。

本記事のリニューアルは、日々操作する倉庫スタッフや店舗スタッフの目に画面がどう映るか、迷わず操作できるかに焦点を当てます。技術的なアーキテクチャを変えず、画面デザインとタブレット・スマートフォン対応だけを行うケースもあれば、モダナイゼーションと同時にUI/UXも刷新するケースもあります。

刷新(経営判断WHY/WHEN)・更改(契約起点)との違い

刷新の記事は、過剰在庫や欠品による損失を金額で示し、経営層の稟議と物流・経理・IT各部門の合意形成をどう進めるかという、経営層やプロジェクトマネージャー向けの意思決定プロセスに重心を置きます。一方で更改の記事は、保守サポート契約の満了やベンダーのEOS/EOLといった、自社の都合とは関係なく外部から強制される期限から逆算して、スケジュールを組みます。

本記事のリニューアルで起点になるのは、経営層の投資判断や契約期限より、体験やデザイン面の陳腐化です。たとえば、「現場担当者から使いにくいという声が多い」「画面が古く新入社員の教育に時間がかかる」「他社の在庫管理画面と比べてブランドイメージが見劣りする」といった状態です。

開発期間・納期という同じテーマでも、主眼は異なります。本記事が主眼に置くのは、UI/UXデザインの検証と現場定着にどれだけの期間を見込むべきかです。

開発期間・スケジュールの全体像(UI/UXデザイン工程を含む期間配分)

在庫管理システムのリニューアルにおける上流工程、全体期間、実装・現場テストまでの期間を3つのパネルで示した図。
上流工程と実装・テストでは、見込む期間の幅が異なります。

リニューアルを、既存の画面を差し替えるだけの作業と見ると、工程が抜け落ちやすくなります。現場ヒアリングからデザインコンセプトの決定、プロトタイピング、実装、現場テストまでを、一連の工程として計画する必要があります。

カスタマイズを伴うパッケージシステムをベースにする場合、要件定義から開発・テストまでを含めて「早くても3ヶ月以上」を見込んでおく必要があるとされています。さらに、フルスクラッチで独自のUXを追求する場合は、期間がいっそう延びる傾向があります。

現状分析・現場ヒアリング〜デザインコンセプト決定までの上流工程

上流工程では、まず現行の在庫照会・棚卸画面が現場でどう使われているかを観察します。そのうえで、倉庫スタッフや店舗スタッフへのヒアリングを通じて、どの操作でつまずいているか、どの画面が特に古く感じられるかを洗い出します。

並行して、競合他社や業界内の先進的な在庫管理システムの画面デザインを比べ、自社のブランドイメージとして目指す方向性を定めます。ここで得られた課題とゴールをもとに、共通のデザインパターンやUIコンポーネントの定義方法を固めていきます。

在庫管理システムは日々の入出庫や棚卸といった反復業務を支えるため、見た目の刷新だけでなく、現場が迷わず操作できる一貫性をコンセプトの中心に据えることが重要です。この工程は、対象拠点数や現場ヒアリングの規模によって幅があり、単一拠点の中規模システムであれば1〜2ヶ月程度を見込むのが一般的です。

プロトタイピング・デザイン〜実装・現場テストまでの期間

デザインコンセプトが固まったら、ワイヤーフレーム、デザインカンプ、操作可能なプロトタイプの順に、段階的に精度を上げていきます。プロトタイプが固まると実装に入り、フロントエンドの画面実装に加えて、タブレット・スマートフォンなど複数デバイスへの対応と、既存のバックエンドや在庫データベースとの接続確認が必要になります。

実装が終わったら、必ず現場スタッフを交えたテストの期間を確保します。テスト環境で実際の業務フローに沿って操作してもらい、画面遷移や表示速度に問題がないかを確かめたうえで、本番リリースへ進みます。

プロトタイピングから実装・現場テストまでの期間は、既存の在庫管理システムに手を入れる範囲によって、数ヶ月から半年以上と幅があります。どの場合でも「デザインが固まってからコーディングに入る」という順序を崩さないことが、後述する納期遅延を防ぐ基本になります。

ポイント

期間は、上流の検討から実装・現場テストまでを通して判断します。カスタマイズの範囲や、独自UXを追求するかどうかで、期間は大きく変わります。

プロトタイプ検証・現場ユーザーテストが納期に与える影響

ワイヤーフレームやデザインカンプで操作を確かめ、現場ユーザーの意見を反映してから実装へ進む流れ図。
実装前に操作を確かめる段階が、後工程の手戻りを抑えます。

プロトタイプ検証と現場ユーザーテストは、開発全体の納期を左右する重要な工程です。各工程にかける日数は案件によって異なります。それでも、これらを開発の初期に組み込むことで、結果としてスケジュール全体の遅延を防げる、という構造を理解しておく必要があります。

ワイヤーフレーム・デザインカンプによる手戻り防止

コーディングに入る前に、ワイヤーフレームやデザインカンプという試作品で操作の流れを確かめ、関係者や現場ユーザーから意見をもらっておきます。そうすると、開発後の手戻り、つまり実装済みの画面を作り直す修正の期間やコストを小さく抑えられます。

在庫管理システムの入出庫登録や在庫検索のような定型業務では、ボタンの配置や入力項目の並び順が、日々の作業効率にそのまま響きます。そのため、コーディング後に「やっぱり使いにくい」という声が出てから作り直すのは、期間的にもコスト的にも最も避けたい事態です。

デザインカンプの段階で、できるだけ具体的な操作イメージを固めておくことが、実装をスムーズに進める土台になります。

現場ユーザーテストで「生の迷い」を特定する重要性

実際の倉庫スタッフや店舗スタッフに試作品を操作してもらい、「特定の商品の在庫数を変更する」「棚卸結果を入力する」といった具体的なタスクを依頼します。そして、どこで操作が止まったか、どこで誤解が生じたかを観察し、記録します。このユーザーテストは、開発者の視点では気づきにくい「生の迷い」を特定できる、効果の高い工程です。

このテストを省いてリリースまで進めると、公開後に「使いにくいから改修してほしい」という要望が現場から寄せられます。本来ならリリース前に潰せた修正を、稼働後の限られたリソースで対応することになります。その結果、表面上の開発期間は短く見えても、リリース後の緊急改修に長い時間がかかるという、本末転倒な事態を招きかねません。

そのため、現場ユーザーテストの期間をあらかじめスケジュールに組み込んでおくことが、トータルの納期短縮につながります。

ポイント

プロトタイプ検証と現場ユーザーテストを開発初期に組み込むかどうかで、後の手戻りとリリース後の改修の量が変わります。テストの時間は、最初から確保しておく前提で組むのが目安です。

現場体験起点ならではの納期遅延要因

PC画面だけでの確認や要望の一括実現という遅延要因と、実機検証や対象範囲の段階分けを左右で比べた図。
検証の時期と要望の扱い方が、手戻りを左右します。

UI/UX・現場体験を起点とするリニューアルには、技術移行や経営判断とは異なる、デザイン起点ならではの納期遅延要因があります。代表的なのは、タブレットやスマートフォンの実機検証の甘さと、現場の要望が膨らむことです。

タブレット・スマホ実機検証の甘さによる後戻り

在庫管理システムのリニューアルでは、タブレットやスマートフォンでの操作を前提に画面を設計するケースが増えています。特に、デザインの確認をPCの大きな画面だけで済ませると、後から問題が見つかることになります。

PCとタブレットでは、画面サイズだけでなく、マウスクリックとタッチ操作という操作方法そのものが異なります。それぞれのデバイスに合わせて、レスポンシブデザインを用意し、タッチ操作に適したボタンサイズを設計する必要があります。

実機での検証を後回しにして実装を進めると、終盤になって「ボタンが小さくて押しにくい」「入力項目が多すぎてスクロールが手間」といった現場特有の課題が一気に噴出し、修正のために手戻りが発生します。そのため、プロトタイプの段階から実機を用いた検証を組み込んでおくことが、終盤での大きな後戻りを防ぐ最も確実な対策です。

現場の「あれもこれも使いやすく」という要望肥大化

現場ヒアリングやユーザーテストを丁寧に行うほど、「この画面もついでに直してほしい」「この機能もタブレットで使えるようにしてほしい」という要望が次々と寄せられやすくなります。現場の声を聞くこと自体は大切です。

ただし、すべての要望をオーダーメイドで取り込むと、要件が際限なく膨らみ、当初のスケジュールを大きく超えるリスクが高まります。対策としては、リニューアルの対象範囲を「まず刷新する画面」と「次フェーズ以降で検討する画面」に分け、優先順位を明確にしたうえで現場に説明し、合意を取っておくことが有効です。

ヒアリングで出た要望をすべて一度に実現しようとせず、段階的な改善計画として位置づけることが、現場の納得感を保ちながら納期を守る鍵になります。

ポイント

納期を遅らせやすいのは、実機検証を後回しにすることと、現場の要望をすべて同時に取り込もうとすることです。判断に迷ったら、対象範囲を段階に分けて優先順位を決めます。

納期を守るための実務的な進め方

期間の目安と遅延要因を踏まえると、納期を守るためには、デザインの土台づくりと発注前の準備の両方を固めることが欠かせません。

デザインシステム・UIコンポーネントの先行定義

画面ごとにボタンの配置や色使いがばらばらだと、現場スタッフは操作のたびに迷いやすくなります。そこで、共通のデザインパターンやUIコンポーネントを先に定義し、全画面で統一しておきます。

統一しておくと、現場の学習コストが下がり、直感的に操作できるようになります。開発側も、画面ごとにデザインを一から作り直す手間が省けるため、実装のスピードが上がります。

デザインシステムの整備は一見遠回りに見えますが、リニューアル対象の画面数が多いほど、先行投資として大きな効果を発揮します。プロジェクトの初期段階でこの土台を固めておくことが、後工程全体の期間短縮につながります。

発注前の準備と依頼先選定のポイント

発注前に要件概要書をまとめておくと、複数のベンダーから見積もりとスケジュール提案を比べやすくなります。要件概要書には、リニューアル対象の画面一覧、対応が必要なデバイス(PC・タブレット・スマートフォン)、現場ヒアリングで得た優先要望を入れておきます。既存の在庫データベースとの接続要件も、あわせて書いておくと見積もりの前提がそろいます。

依頼先を選ぶときは、単に画面デザインが作れるかだけでなく、業務システム・BtoBシステムのUI/UX改善の実績があるかを確認することが大切です。加えて、現場ユーザーテストの設計や実施に伴走できるか、タブレット・スマートフォンを含むマルチデバイス対応の経験が豊富かも見ておきます。

プロジェクト開始後は、週次などの定例会議で、デザインの進捗と現場の声を見える形で共有します。仕様変更は口頭で済ませず、変更要求として起票するルールを徹底します。さらに、全体工程に10〜20%程度のリスクバッファを組み込んでおくことが、想定外の事象が起きたときも稼働時期を守る備えになります。

ポイント

デザインの土台づくりと発注前の準備が、納期を守る条件になります。依頼先は、業務システムのUI/UX改善の実績と、現場ユーザーテストへの伴走の可否で比べます。

まとめ

カスタマイズを伴うパッケージをベースにする場合、要件定義から開発・テストまでで早くても3ヶ月以上を見込む必要があります。さらに、フルスクラッチで独自UXを追求する場合は、長期化する傾向があります。

上流工程と、プロトタイピングから実装・現場テストまでの工程には、それぞれ相応の期間が必要です。技術手法や経営判断、契約を起点とする場合と違い、リニューアルの最大の変動要因は、デザインと体験の検証のプロセスに潜んでいます。

具体的には、タブレット・スマホの実機検証をどこまで丁寧に行うか、現場の要望をどう優先順位づけして段階的に取り込むかという点です。

デザインシステムの先行整備と、業務システムのUI/UX改善の実績が豊富なパートナーへの早めの相談が、在庫管理システムのリニューアルを納期内に成功させる鍵になります。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。