在庫管理システムリプレイスの選定ポイント/選び方/種類

在庫管理システムの乗り換え先は、機能数や知名度だけで選ぶと業務に合わないおそれがあるため、自社の業務との適合度で選びます。

選定は、課題を整理し、ビルド・バイと製品タイプの方針を決めるところから始まります。その後、業務適合度や移行費用を比べ、RFP、Fit&Gap、PoCで候補を確かめます。

リプレイス全体の検討手順は、次のガイドで確認できます。

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在庫管理システムリプレイス選定前に整理すべき自社課題

在庫管理システムリプレイス選定前の課題診断

製品比較に入る前に、現行システムの負担やリスクが集中する業務を特定しておきます。課題を具体的に示せるほど、比べるべき製品タイプと、不要な機能を切り分けられます。

保守体制のブラックボックス化とコスト増

仕様を把握できる担当者が限られ、改修のたびに調査が必要になっているなら、保守体制がブラックボックス化している可能性があります。また、スクラッチの保守運用費用は、初期開発費用の年間10〜20%程度が目安です。引き継ぎ時の調査だけで30万〜100万円程度かかった事例もあります。

調査費用が繰り返し発生するなら、保守を製品ベンダーへ移す選択肢も比較対象に含めます。

在庫データ・ロケーション情報の移行難易度

在庫数量やロケーション情報、品目マスタが、どの程度整っているかも見ておきます。複数システムのデータを統合した事例では4ヶ月程度かかったことがあり、移行工数はデータの状態によって変わります。

対象データを先に洗い出しておくと、候補製品ごとの移行見積もりを同じ前提で比べられます。

ポイント

保守の調査が繰り返し必要になっていないか、在庫データがどこまで整っているかを見ておくと、保守を製品ベンダーへ移す案を含めて、比較の前提を決めやすくなります。

ビルド・バイ判断の最初の決定事項

在庫管理システムのビルド・バイ判断を検討する会議

最初に、自社開発を続ける「ビルド」と既製品を使う「バイ」のどちらを軸にするかを決めます。方針を先に定めてから比べると、候補を選ぶ途中で判断がぶれにくくなります。

競争力の源泉かどうかの判断

判断の軸は、在庫管理業務が自社の競争力に直結するか、標準化できるかです。たとえば、独自の在庫引当や複雑な倉庫間移動が強みなら、自社開発を続ける根拠になります。

入出庫、発注点管理、棚卸の多くが一般的な業務であれば、クラウド型SaaSへの移行も候補に入ります。

フルスクラッチ維持のメリット・デメリット

スクラッチを維持すれば、業務に合わせて機能を柔軟に変えられる点が利点です。とはいえ、初期開発に数千万円〜数億円、期間に半年〜1年以上かかる場合があり、担当者への依存も課題になります。

たとえば、従業員50名規模の企業が在庫・受注・売上管理を開発した事例では、総費用1,200万円、期間6ヶ月、年間保守費用120万〜240万円でした。

クラウド型SaaS・パッケージ乗り換えのメリット・デメリット

SaaSやパッケージは数ヶ月で導入でき、保守の多くをベンダーへ任せられます。また、月額費用は1ユーザー数千円〜数万円、企業全体で5万〜30万円程度が目安です。

投資回収の損益分岐点は1.5〜4年程度とされていますが、独自業務に合わせるカスタマイズ率が50%を超えると、費用が2〜3倍になるリスクがあります。

ポイント

業務が自社の競争力に直結するかを先に見極め、その軸で自社開発と既製品の費用、期間、カスタマイズの範囲を見比べます。

在庫管理システムリプレイス先の3つの種類

在庫管理システムリプレイス先の3つの種類

候補は、クラウド型SaaS、パッケージ・オンプレミス型、既存環境と組み合わせるハイブリッド型の3種類です。どの方式が合うかは、導入費用や期間、保守の担当範囲を自社課題と照らして判断します。

3つの方式は、業務を標準機能に寄せるか、自社環境や独自の条件を優先するか、標準と独自を分けて組み合わせるかで性格が変わります。そのため、方式ごとの違いを先に並べておくと、比較対象を選びやすくなります。

  • クラウド型SaaS:標準機能を使い、保守をサービス側へ任せやすい方式。
  • パッケージ・オンプレミス型:自社環境や固有のセキュリティ条件を重視する場合の選択肢。
  • ハイブリッド型:標準業務と独自業務で仕組みを分けて組み合わせる構成。

クラウド型在庫管理SaaS

クラウド型SaaSは、サーバーを調達せずに使い始められます。導入期間は2〜3ヶ月程度が目安で、法改正対応や機能追加が月額料金に含まれる場合もあります。

複数拠点の在庫をまとめたい場合や、まず標準機能で運用したい場合に候補になります。

パッケージ型・オンプレミス型

パッケージ・オンプレミス型は、自社サーバーや閉域網で運用する形態です。そのため、固有のセキュリティ基準や外部接続が難しい拠点にも対応しやすくなります。

一方で、サーバー管理や監視、バックアップの運用を自社で担う範囲が広くなります。さらに、更新や法改正対応も自社の役目になります。導入時の自由度だけでなく、維持体制と費用も見ておく必要があります。

ハイブリッド型(コア・サテライト構成)

ハイブリッド型では、入出庫や発注点管理をSaaSで扱い、独自の在庫評価や基幹連携を個別に開発する構成が考えられます。こうした構成は、業務ごとに標準化の度合いが違う企業に向きます。

導入前に、SaaSと個別開発のどちらを正とするかを決めておくと、データ管理の役割が明確になります。

製品比較で欠かせない評価軸

在庫管理システムリプレイスの評価軸を確認する担当者

候補ごとに質問や前提が異なると、回答を横並びで比べにくくなります。そこで、業務適合度、移行工数と費用、拡張性とサポートを、共通の評価軸として使います。

業務適合度とデータポータビリティ

入出庫、発注点管理、棚卸、拠点間移動のそれぞれについて、どこまでを標準機能で扱えるかを確かめます。ただし、例外業務がある場合は、追加開発が要るかどうかも分けて記録します。

CSV出力やAPI連携で、データを他システムへ渡せるかも比べます。特に、特定製品だけで使える形式に閉じないことは、将来の選択肢を保つうえで欠かせません。

移行工数・期間とTCO

在庫データやロケーション情報の移行工数と、新旧システムを並行して運用する期間を見積もります。並行運用は数週間〜数ヶ月に及ぶ場合があり、そのあいだは二重の維持費と人件費がかかります。

課金単位は、管理者数や品目数、拠点数など製品によって異なります。そのため、初期費用、月額費用、移行支援費を合わせた総保有コストで比べます。

拡張性・API連携とサポート体制

基幹システムやWMS、会計システムとのAPI・CSV連携について、導入後のサポート窓口も含めて確かめます。「連携可能」という説明を受けたら、対象データ、同期頻度、エラー時の扱いまで質問します。

製品候補は、在庫管理システムリプレイスのパッケージ・クラウド製品一覧で確認できます。

ポイント

業務適合度、移行工数と総保有コスト、連携とサポートを同じ条件で並べると、製品ごとの差が見えやすくなります。候補ごとに前提がそろっているかも、あわせて見ておきます。

SaaS・パッケージ・個別開発の選び分け

SaaS・パッケージ・個別開発の選び分けを検討する担当者

標準業務と継続的な法改正対応を重視するならSaaSが候補になります。一方、独自ロジックが競争力に直結する場合は個別開発を、両方の業務がある場合はハイブリッドを検討します。

標準化できる業務かどうかの判断

SaaSは共通業務や法改正対応をサービス側へ任せやすい一方、アカウント管理や問い合わせ対応などの社内工数は残ります。個別開発は独自業務に合わせられますが、要件定義、テスト、保守を自社で担います。

判断の基準は、機能を細かく作れるかよりも、その独自性が事業上の投資に値するかです。

ハイブリッド構成という選択肢

共通業務をSaaSで管理し、確定した在庫データをERPや基幹システムへ渡す連携部分だけを開発する方法があります。

この構成では、どのシステムを正とするかと、不整合をどちらで処理するかを先に決めておく必要があります。そのうえで、API連携については、入出力項目と例外処理を示して、個別に見積もりを取ります。

RFP作成とベンダー選定・Fit&Gap検証の進め方

在庫管理システムリプレイスのRFPとベンダー選定

候補を絞ったあとは、業務シナリオをRFPや比較表に示して、Fit&GapとPoCで実際の適合度を確かめます。また、RFP作成から契約までは1.5〜4ヶ月程度が目安です。

RFPに載せる現状フローと非機能要件

RFPには、拠点数や品目数、月間の入出庫件数といった規模を書きます。あわせて、現行フローと解決したい課題も載せます。

非機能要件として、権限管理や操作ログ、バックアップを書きます。障害対応、データ保管場所、出力形式も加えます。要件を「必須」「望ましい」「将来」に分けると、すべてを必須として候補を狭める事態を避けられます。

Fit&Gap検証での要件の3分類

業務要件は、「標準機能」「運用変更」「追加開発」の3つに分けます。検証期間は2〜8週間程度が目安です。また、追加開発の項目が増えるほど、費用が膨らむ可能性もあります。

ベンダーデモには現場の担当者も加わり、操作性を見るとともに、担当PMが専門用語に頼らず説明できるかを確かめます。

サンドボックスPoC・トライアル導入での実測

ベンダーのサンドボックスや無料トライアルを使い、実データで動作を確かめます。PoCは2〜4週間程度で、月末棚卸などの負荷や外部連携を検証します。

まずは影響の小さい部門や拠点で試し、旧システムと並行稼働させます。在庫数量と金額が一致するのを確かめてから、対象を広げます。

ポイント

要件を必須と望ましいに分けたうえで、標準機能で足りる業務と追加開発が要る業務を見極めることが、候補を絞る判断の目安になります。

在庫管理システムリプレイス選定前に確認しておきたいポイント

在庫管理システムリプレイス選定前の確認ポイント

最終候補は、規模や知名度だけで決めず、移行の実現性と費用の内訳で比べます。また、契約後の認識違いを避けるため、前提条件も候補間でそろえておく必要があります。

少人数・小規模の企業でも検討する価値

拠点や品目が少なくても、仕様が一人に集中していたり、改修費用を見通せなかったりする場合は、検討の余地があります。ただし、現行の仕組みで無理なく運用できているなら、急いで置き換える必要はありません。

データ移行にかかる期間の目安

期間は、データの状態によって変わります。複数システムのデータ統合に4ヶ月程度を要した事例もあるため、対象の洗い出しと名寄せを早めに始め、候補の見積もりに反映します。

ベンダーロックインを避けるための確認事項

Fit to Standardの考え方でカスタマイズ率を50%以下に抑えることに加え、CSV出力やAPI連携の可否も確かめます。SLAと変更管理ルールも、あわせて確認します。

SLAや変更管理ルールといった条件を契約前に明文化すれば、将来の移行や料金交渉で選択肢を保ちやすくなります。

まとめ

在庫管理システムリプレイスの選び方まとめ

選定は、保守やデータ移行の課題を明確にし、ビルド・バイの方針を定めるところから始まります。製品タイプを選んだあとは、業務適合度や移行工数、総保有コスト、連携とサポートを、同じ条件で比べます。

課題診断からのビルド・バイ判断

保守の負担、移行データ、業務の独自性を整理しておくと、スクラッチ維持と既製品への移行を比べて判断できます。

RFPから始めてトライアルまで順に確かめ、資料では見えない適合度を見極めます。

自社の業務要件の明確化

標準化できる業務はSaaSで、独自の在庫ロジックや深い基幹連携は個別開発やハイブリッド構成で検討できます。ただし、既製品に業務を無理に合わせると、二重入力が残るおそれがあります。

riplaは、選定前の要件整理、SaaSと基幹システムの連携、独自業務に合わせた個別開発を支援しています。

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株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。