在庫管理システム改修のPoC・プロトタイプ・モックアップ開発について

在庫管理システム改修のPoC・プロトタイプ・モックアップ開発は、稼働中の在庫管理システムの局所に、新しい機能が馴染むかを確かめる進め方です。まず、モックアップ、プロトタイプ、実証評価の順に論点を確認します。

  • モックアップ:候補製品の画面と機能の比較
  • プロトタイプ:実装前の業務適合性の確認
  • 実証評価:検証結果の導入判断への反映

在庫管理システム改修は、稼働中のシステムを作り替える点では刷新などと同じ文脈ですが、PoCの目的は全面刷新と異なり、対象範囲を最小限に絞ることが鍵になります。

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在庫管理システム改修におけるPoC・プロトタイプ・モックアップの位置づけ

全面刷新のPoCと在庫管理システム改修のPoCを、作れるかと馴染むかの視点で対比した図。
既存の仕組みに加える改修では、現場やデータへのなじみ方が焦点になります。

在庫管理システム改修のPoCが何を検証するものかは、まず全面刷新のPoCとの目的の違いから見ると分かりやすくなります。その本質は、「作れるか」を確かめることから、「馴染むか」を確かめることへ視点を移す点にあります。

全面刷新のPoCとの目的の違い(「作れるか」ではなく「馴染むか」)

全面刷新のPoCは、新しい在庫管理システムがゼロから業務要件を満たせるか、新しいアーキテクチャが技術的に実現可能かという「作れるか」を検証するものです。

一方、在庫管理システム改修のPoCは、稼働中の在庫管理システムに特定拠点分の在庫連携や棚卸機能の追加項目を差し込んだ場合に、「馴染むか」を検証するものです。具体的には、既存の在庫データ・在庫計算ロジック・現場の業務フローに、どこまで安全に馴染むかを見ます。

対象業務は1つに絞るのが鉄則で、検証対象を広げすぎると、どの変数が結果に影響しているかを判別できなくなります。また、既存システムという土台がすでにあるため、新規開発のPoCと比べて、検証すべき論点を絞り込みやすいという特徴もあります。

「モダナイゼーション」「刷新」「更改」「リニューアル」「リアーキテクチャ」「リプレイス」との違いと本記事の焦点

姉妹記事では、「在庫管理システムのモダナイゼーション」のPoCは5R別の技術検証や機能等価性検証を、「在庫管理システム刷新」のPoCは経営層への投資稟議のエビデンスづくりを扱っています。「在庫管理システム更改」のPoCは、ベンダー選定プロセスに組み込まれた期限制約下の短期集中型検証です。

「在庫管理システムのリニューアル」のPoCは、在庫照会・棚卸画面の使い勝手を試作段階で確かめるUX/UI検証です。「在庫管理システムのリアーキテクチャ」のPoCは、分散システムというアーキテクチャそのものの実現可能性検証です。

これらに対して、在庫管理システム改修のPoCは、特定拠点・特定機能だけを対象にした最小限の検証に焦点を絞ります。全面刷新や技術深掘りのPoCを詳しく知りたい場合は、姉妹記事の完全ガイドをあわせてご覧ください。

ポイント

PoCで何を確かめるかを決めるときは、既存の在庫データや現場の業務フローに新しい機能が馴染むかを基準にすると判断しやすくなります。検証対象は、1つの業務に絞ります。

棚卸画面の影響範囲を確認する最小限のモックアップの作り方

棚卸入力画面に項目を追加する改修や、一覧画面のレイアウトを見やすく改善する改修では、プログラミングを伴わないモックアップを作成してUI/UXを確認することが、最も低コストで確実な検証手法です。

既存画面のワイヤーフレーム・スクリーンショットに手を加える方法

棚卸機能の改修における最小限のモックアップは、シンプルな方法で作成できます。既存の棚卸入力画面のワイヤーフレームやスクリーンショットの上に、新しく追加したい備考欄や入力項目をデザインツール等で配置してみます。

モックアップは、内部の機能(動作)を持たない静的なビジュアルデザインのサンプルです。そのため、本番実装の前に、「追加した項目で既存の画面レイアウトが崩れないか」「文字が読みづらくないか」「一覧性が損なわれないか」といった視覚的な影響を確認できます。

開発工数をかけず数日〜数週間で作成できるため、既存の在庫管理システムに手を加える前段階の検証として、最初に着手すべき手法です。

現場担当者を交えた早期レビューの効果

モックアップができた段階で、実際に棚卸業務を担当する現場スタッフにレビューしてもらうと、後工程での手戻りを大きく減らせます。反対に、システム部門だけで「使いやすくなるはずだ」と判断して開発を進めると、稼働後に「この並び順だと入力しづらい」「この項目はもっと目立たせてほしい」といった声が上がります。その結果、追加の改修が必要になるケースが少なくありません。

モックアップの段階であれば、修正はデザインツール上の変更で済むため、開発着手後に発覚する場合と比べて、コストも時間もほとんどかかりません。そのため、現場を巻き込んだ早期レビューは、低予算・短納期が求められる改修案件だからこそ、省かずに行うべき工程です。

ポイント

棚卸画面の変更では、本開発の前に、プログラミングを伴わないモックアップで現場スタッフに見てもらいます。レイアウトの崩れや文字の読みにくさは、修正が手軽な段階で見つけておくことが大切です。

特定拠点との在庫連携を切り出したプロトタイピングの進め方

検証対象となる1拠点を選ぶ3条件を示すチェックリスト。
データ・効果測定・現場協力の条件をそろえると、検証を進めやすくなります。

特定拠点だけの在庫連携追加のように、外部システムや他拠点との通信を伴う改修は、モックアップだけでは検証しきれません。そのため、プロトタイピングで技術的な実現可能性を確かめる必要があります。

検証対象1拠点の選定基準(実データの有無・効果測定・現場協力)

PoCは、条件を満たす1拠点だけを対象に実施するのが鉄則です。全拠点で一斉に行うより、低予算・短期間で結論を出しやすくなります。

具体的には、(1)検証に使える実データが50件以上ある、(2)現状の在庫連携にかかる工数やコストが数値で把握できている、(3)現場担当者が検証に前向きであるという3条件を満たす拠点を選びます。こうすると、検証結果の信頼性を確保しつつ、余計な調整コストを避けられます。

期間の目安は、機能単位の部分改修なら6〜8週間、より局所的な技術検証なら2〜8週間程度で完了させるのが適切とされています。8週間を超えると社内の関心が薄れるリスクがあるため、期間内に結論を出せるスコープに絞ることが大切です。

Mock(モック)を用いた外部連携・API検証

新しい拠点との通信やAPI連携をテストする際、本番環境のデータベースを直接使うと、既存の在庫データに悪影響を及ぼす危険があります。そのため、本物の代わりに疑似的な通信応答を返す「Mock(偽物の代役コンポーネント)」を用意します。既存の在庫データベースに影響を与えない隔離されたテスト環境で、技術的実現性(本当に連携できるか)だけを切り出して検証します。

この手法なら、本番の在庫データを危険にさらすことなく、連携先拠点のシステムとのデータ形式の相違や通信タイミングの課題を洗い出せます。そうして課題を先に見つけておけば、本開発フェーズでの手戻りを未然に防げます。

予算の目安として、PoCの予算は本開発の10〜20%とされています。また、中小企業における業務システムの機能検証であれば、50万〜300万円程度が相場です。

ポイント

特定拠点との在庫連携を試すときは、1拠点・1つの検証目的に絞り、既存の在庫データに影響しない隔離環境で、技術的な実現性だけを確かめます。期間は、機能単位の部分改修なら6〜8週間が目安です。

低予算・短期間でできる部分的な検証手法

在庫連携PoCのGo/No-Go判断に使う技術面と業務面の3つの数値基準を並べた図。
技術面と業務面の基準を先に決めると、次の判断をそろえやすくなります。

在庫管理システム改修のPoCを実りあるものにするには、検証目的を1つに絞り、判断基準をあらかじめ数値で定めておくことが欠かせません。

目的を1つに絞ることで検証コストを抑えるコツ

低予算・短期間でPoCを終えるための最大のコツは、1回の検証で確かめる目的を1つに絞ることです。

「特定拠点との連携が技術的に成立するか」と「連携後も在庫数量が正しく引き当てられるか」を同時に検証すると、どちらかで問題が起きたとき原因の切り分けが難しくなります。結果として、検証期間が延びてしまいます。

まずは技術的な接続性だけを確認するMock検証を行い、そこで合格したら、次のステップとして業務ロジックの整合性を確認します。こうして段階を分けることで、各段階の検証範囲を小さく保てます。低予算・短期間という制約の中でも、着実に結論を積み上げられます。

Go/No-Go判断基準の数値化

検証が「やりっぱなし」で終わるのを防ぐため、事前に合格基準を数値で設定しておくことも重要です。

たとえば、技術面では「Mock環境での在庫データ連携成功率100%」「データ処理時間の削減率70%以上」を設定します。業務面では「モックアップに対する現場スタッフの評価で改善を実感できたとする回答が8割以上」を基準にします。全項目をクリアすれば本開発へGo、未達であればアプローチを再検討(Pivot)または見送り(No-Go)とするルールを、関係者間で事前に合意しておきます。

この基準を曖昧にしたまま本開発に進むと、低予算で済むはずだった改修が、想定外の追加改修を招き、当初の予算・期間を超過しかねません。

ポイント

低予算・短期間のPoCでは、検証目的を1つに絞り、Go/No-Goの基準を数値で事前に合意しておきます。基準が曖昧なまま本開発に進むと、想定外の追加改修で予算や期間を超えかねません。

検証結果を本開発・他拠点展開に活かす方法

1拠点分に絞ったPoCで得た知見は、その場限りで終わらせず、本開発や将来の他拠点展開へどう引き継ぐかを最初から意識しておきます。そうすれば、投じた検証コストの価値を最大化できます。

検証で得た知見のドキュメント化と次の拠点展開での再利用

1拠点目のPoCで判明した「連携先システムのデータ形式のクセ」「タイムアウトが発生しやすい時間帯」「現場が特に評価したモックアップの改善点」のような知見があります。これらは、口頭やその場限りのメモで終わらせず、簡潔なドキュメントとして残しておくことが重要です。

特定拠点だけの在庫連携追加は、多くの場合1拠点では終わらず、将来的に他の拠点へも同様の改修を横展開していくことになります。そこで、1拠点目のPoCで得た知見をドキュメント化しておけば、2拠点目以降のPoCでは同じ論点を一から検証し直す必要がなくなり、検証期間そのものを短縮できます。

低予算・短納期が求められる改修だからこそ、「検証の再利用性」を最初から設計に組み込んでおくことが、中長期的なコスト削減につながります。

PoCで発覚した課題の本開発要件への反映

PoCの段階で「想定より処理に時間がかかる」「一部のデータ形式が既存の在庫マスタと合わない」といった課題が見つかることがあります。そのとき、課題を黙って本開発に持ち越さず、対応方針を明文化して本開発の要件定義に反映させることが欠かせません。

低予算・短納期の改修案件では、PoCで見つかった課題を「後で何とかする」と先送りしがちです。これが本番移行の直前に表面化すると、追加の改修と納期遅延を同時に招くことになります。

PoCの結果報告書には、うまくいった点だけでなく、残課題とその対応方針、対応にかかる追加の工数見込みまでをセットで記載します。本開発の発注内容にそのまま落とし込めるようにしておけば、PoCを名目だけの通過儀礼で終わらせずに済みます。

ポイント

1拠点目のPoCで得た知見は、ドキュメントに残して次の拠点展開に再利用します。PoCで見つかった課題は先送りせず、本開発の要件に反映させます。

まとめ

ここまで、全面刷新のPoCとの目的の違い、棚卸画面の影響範囲を確認する最小限のモックアップ、特定拠点との在庫連携を切り出したプロトタイピングを見てきました。さらに、低予算・短期間でできる部分的な検証手法も扱いました。

在庫管理システム改修のPoCは、システム全体が「作れるか」を確かめるより、新しい機能が既存の在庫データや現場の業務フローに「馴染むか」を検証することに主眼があります。

ワイヤーフレームレベルのモックアップによる早期レビュー、検証対象を1拠点に絞ったMock検証、目的を1つに絞った段階的な検証の3つが、低予算・短期間でも確かな判断材料を得る鍵になります。まずは対象を最小限に絞った検証から着手し、確かな判断材料を得てから本開発に進むことをお勧めします。

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また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。