情シスコンサルのフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

情シスコンサルのフルスクラッチ・オーダーメイド開発は、体制・業務プロセス・管理ツールを、標準フレームワークやSaaSに合わせず自社独自に設計・構築することです。

検討は、競争力や自社要件に直結するコア業務に絞るのが基本です。業務ごとにコアとノンコアを分け、両者をどう組み合わせるかで判断します。標準で足りるノンコア領域まで作り込むと、属人化と過剰投資につながります。

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  • コア:競争力や自社要件に直結する業務。
  • ノンコア:標準フレームワークやSaaSの活用を検討する業務。
  • 組み合わせ:業務ごとの専用化と標準化の濃淡。

情シスコンサルにおけるフルスクラッチの意味(ITコンサル・DXコンサルとの違い)

情シスコンサルのフルスクラッチが対象とする体制、業務プロセス、管理ツールを示す図解。
独自に設計する対象は、組織の運営を支える3つの要素です。

情シスコンサルが扱うフルスクラッチは、情報システム部門という「組織」の体制・業務プロセス・管理ツールが対象です。サーバーやアプリケーションという「モノ」を独自開発するITコンサルのフルスクラッチとは、対象が根本的に異なります。

フルスクラッチの是非を見極めるには、まず「何を独自に作り込む対象とするのか」を明確にしておく必要があります。判断の基準は、技術的な実現可能性よりも、「その業務が自社の競争力に直結するコア業務か、それとも他社と差別化する必要のないノンコア業務か」という一点に尽きます。この基準を理解しておくことが、検討の出発点になります。

標準フレームワーク・SaaSとフルスクラッチの選択軸

標準フレームワーク・SaaS(ノンコア領域向け)は、あらかじめ必要な機能やベストプラクティスが備わっています。新たに開発する必要がないため、導入・運用コストを抑えられ、短期間で導入できるのが特徴です。しかし、独自のカスタマイズには限界があり、自社の業務をシステム(標準プロセス)に合わせる必要があります。

これに対して、フルスクラッチでの独自設計(コア領域向け)は、パッケージの枠に収まらない柔軟な体制・ツールを構築でき、システム・ツールを自社の情シスプロセスに合わせることができます。情シスの管理業務(社内ヘルプデスク、資産管理など)は、他社との差別化要素になりにくい「ノンコア領域(定型業務)」とみなされることが多く、SaaS等の導入が推奨されるケースも多いです。

一方、情シスのプロセス自体を自社の競争優位の源泉と位置づける場合は、フルスクラッチが正当化されます。たとえば、特殊な業界規制への対応や、独自の事業モデルに合わせた例外処理が頻発する企業では、標準プロセスに業務を合わせようとすること自体が非効率になります。そのため、独自設計が現実的な選択肢になります。

ITコンサル・DXコンサルの「フルスクラッチ」との違い

「フルスクラッチ」という言葉自体は、他のコンサルティング領域でも使われます。ただし、その対象は大きく異なります。ITコンサルにおけるフルスクラッチは、既存のパッケージシステムでは満たせない要件がある場合に、業務システムそのものを一から独自開発する技術的な開発プロジェクトを指します。

DXコンサルの文脈では、既存の業界慣習にとらわれない新しい事業モデルをゼロから構築する、事業視点での取り組みを指すことが多くなります。これらに対して、情シスコンサルのフルスクラッチは、情シスという「組織の体制・プロセス・運用の仕組み」を、既製の型に頼らず自社独自に設計することを意味します。

役割分担のルール、承認フロー、ベンダーとの契約の仕組みなど「組織のOS」にあたる部分を独自に作り込む点が、最大の違いです。また、ゼロから発明するより、既存の業務に眠る自社独自の工夫(暗黙の型)を言語化し、誰が担当しても再現できる明示的な仕組みへ置き換える性質が強い点も特徴です。この違いを押さえないと、「多額のシステム開発費用」というイメージが先行し、投資対効果を冷静に見極めにくくなります。

ポイント

フルスクラッチの対象は、業務が競争力に直結するコアかどうかで決めます。ノンコアまで作り込むと属人化と過剰投資を招くため、対象は絞ります。

フルスクラッチで情シスを構築するメリット・デメリット

情シスの体制・プロセス・ツールを自社独自に内製・フルスクラッチで構築する場合、標準的なアプローチにはない固有のメリットとデメリットがあります。

どちらも実務上のインパクトが大きいため、契約前に十分に理解しておく必要があります。

メリット(自社要件への適合・ノウハウ蓄積・ベンダーロックイン回避)

フルスクラッチによる情シス構築の最大のメリットは、自社要件への完全な適合と柔軟性です。仕様変更の事情を理解した社内メンバーが外注ベンダーを通さず直接対応できるため、現場の要望や社内の組織変更にも迅速かつ柔軟に軌道修正できます。

2つ目のメリットは、ノウハウの蓄積とブラックボックス化の防止です。なぜその運用プロセスや設計にしたのかという「現場の暗黙知」が文書として残り、社内の資産になっていきます。一方、標準パッケージでは設計思想がブラックボックスのまま運用されがちですが、自社で独自に設計すれば、その意図や背景を社内で説明できる状態を保てます。

3つ目のメリットは、ベンダーロックインの回避です。たとえば、SaaSの利用料が毎年値上がりし、解約時のデータ移行コストが障壁となって身動きが取れなくなる事態を避けられます。特定のツールやベンダーに依存せず、主導権を握り続けられる点は、長期的な利点です。

デメリット(属人化リスク・人材採用育成の壁・コスト不透明化)

一方でデメリットも軽視できません。1つ目は属人化と運用破綻のリスクで、独自の複雑なプロセス・体制を少数精鋭で構築すると、特定の担当者しか中身を理解できず、離職や休職の際に保守運用が完全に破綻するおそれがあります。皮肉なことに、フルスクラッチは本来属人化を解消するために行われることが多いのに、設計そのものが属人化する矛盾が生じやすい点に注意が必要です。

2つ目はIT人材の採用・育成の壁で、専門人材の確保・育成には多大な時間とコストがかかり、人材不足では品質を担保しにくくなります。3つ目はコストの不透明化で、パッケージと違い社内の工数を正確に把握しておかないと、開発・運用コストの算出が難しくなります。これらを軽減するには、設計書やマニュアルを整え、複数人でレビューする文化を根付かせることが欠かせません。

特に、独自設計の初期段階から「担当者が1人欠けても回らない体制」になっていないかを、定期的にチェックする仕組みを組み込むことが重要です。具体的には、四半期に一度、設計者以外のメンバーがマニュアルだけを頼りに業務を実行する「引き継ぎ訓練」を実施している企業もあります。こうした地道な取り組みが、属人化の芽を早期に摘み取ることにつながります。

ポイント

メリットがデメリットに見合うかは、属人化を防げる設計と人材確保の見通しが立つかで判断します。特定の担当者が欠けても回るかを、初期段階で確かめます。

コスト・期間感

情シス独自体制の初期フェーズから成果創出、体制定着までの期間目安を示すタイムライン。
立ち上げから自走できる体制の定着まで、段階的に進みます。

フルスクラッチでの体制構築・ツール開発は、SaaS導入と比べて初期のコストと期間が大きく膨らむのが特徴です。

SaaS導入との比較

SaaS導入であれば、契約から数ヶ月程度で情シスの新しい運用体制を稼働させることができます。一方、フルスクラッチでの独自構築は、そう簡単にはいきません。新たに人材を採用すると、オンボーディングだけでも1〜2ヶ月以上かかり、独自の体制設計・プロセス構築・ツール開発まで含めると、SaaS導入の数倍の期間を見込む必要があります。

コスト面でも、短期的には採用・育成費、人件費、独自ツールの開発・インフラ環境構築などがかさみ、SaaSや外注より高コストになりがちです。ただし、中長期(2〜3年以上)に見ると、SaaSのライセンス費の増加や、外注時の不透明な中間マージン・改修コストが排除されるため、トータルのTCO(総所有コスト)は有利になる傾向にあります。

この構造を理解したうえで、経営層と投資判断を共有しておくことが重要です。特に、単年度の予算だけで「SaaSの方が安い」と判断すると、数年後にライセンス費用の値上げや機能制限に直面して慌てて内製化を検討することになりかねません。そこで、少なくとも3〜5年のスパンでTCOを試算し、単年度と中長期の両方のコストを経営層に提示することが望ましいアプローチです。

期間感とコスト感の具体的な目安

外部の伴走支援を活用して情シスの独自体制を立ち上げる場合、初期フェーズに半年〜1年、成果が出始めるまでに1〜2年、完全に自走して継続改善できる体制が定着するまでに3〜5年を見込む必要があります。これが、実務における現実的なロードマップです。

コスト感としては、初年度は採用・育成費や独自ツールの初期開発費がかさみ、SaaS導入時の年間コストを上回ることが一般的です。一方、2〜3年目以降は独自プロセスが定着し、外部依存によるライセンス費・改修費の増加が抑えられるため、年間コストは徐々に平準化していく傾向が見られます。

これらの数値はあくまで目安です。対象とする業務範囲や既存の属人化の度合いによって大きく前後するため、フルスクラッチを検討する際は、自社の現状を踏まえた個別の試算をコンサルタントに依頼することをお勧めします。

ポイント

投資の判断は、単年度の費用ではなく3〜5年のTCOをもとに行います。初年度はSaaSより高くなるのが一般的なため、両方の数字を経営層に示します。

向いている企業の特徴

フルスクラッチが向いている企業に見られる、対応の速さ、中長期投資、人材育成、ドキュメント文化の4条件を示す図解。
4条件をそろえて、独自設計を支えられるかを見極めます。

情シスの体制・プロセス・ツールをフルスクラッチで内製するアプローチは、どの企業にも合うとは限りません。向いている企業と、標準フレームワーク・SaaSを優先すべき企業には、それぞれ特徴があります。

フルスクラッチが向いている企業

まず、IT・社内システム対応の速さが競争優位に直結する企業が向いています。情シスのプロセス自体を「コア領域(競争優位の源泉)」と位置づけ、他社と明確な差別化を図りたい企業も、これにあたります。週単位など短いサイクルで社内システムを変える企業は、標準パッケージの改修申請では追いつかないため、独自設計が適しています。

さらに、経営層が短期的なコスト削減より、デジタルケイパビリティ(組織能力)を高めることを中長期の経営戦略として捉えている企業です。エンジニアの採用・教育や体制整備に継続して投資できることも、欠かせない条件です。

加えて、属人化による破綻を防ぐため、設計書やマニュアルを作り、プロセスを標準化する仕組み(ドキュメント文化)が社内に定着している企業であれば、デメリットを最小限に抑えながらメリットを享受できます。

標準フレームワーク・SaaSを優先すべき企業

情シスの体制・業務が一般的な企業と大きく変わらず、独自性を追求する必要性が薄い企業は、標準フレームワークやSaaSを優先すべきです。特に、情シス要員が少なく、独自設計を維持・改修する人的リソースを確保できない企業がフルスクラッチに踏み切ると、属人化リスクが顕在化しがちです。担当者の異動・退職とともに、体制が形骸化する危険性も高まります。

短期間のコスト削減効果を優先したい企業や、経営環境の不確実性が高く長期投資の判断がしづらい企業もあります。こうした企業は、まず標準フレームワーク・SaaSで体制を整え、運用実績を積んでからフルスクラッチの是非を再検討するという段階的なアプローチが現実的です。

情シスコンサルは、こうした判断を事業特性や組織成熟度を踏まえて客観的に整理する役割も担っています。実務上は、全業務を一方に振り切らず、ヘルプデスクや資産管理といった定型業務はSaaSに任せます。ベンダーマネジメントや人材育成の仕組みなど、事業特性に強く依存する領域だけをフルスクラッチで設計する「ハイブリッド型」を選ぶ企業が近年増えています。

ポイント

向いているかは、IT対応の速さが競争優位に直結し、長期投資とドキュメント文化があるかで判断します。欠ける場合は、まず標準フレームワークやSaaSで始め、運用実績を見て再検討します。

まとめ

フルスクラッチの意味と判断の基準を確認しました。次に、標準型との比較、メリット・デメリット、コスト・期間感を見たうえで、向いている企業の特徴を整理しました。

判断の鍵は、情シスという「組織の体制・プロセス・運用の仕組み」を自社独自に作り込むかどうかにあります。既存IT基盤を独自開発するITコンサルや、新規事業モデルを構築するDXコンサルのフルスクラッチとは、対象が異なります。

メリットは、自社要件への適合、ノウハウの蓄積、ベンダーロックインの回避です。一方で、属人化リスク、人材採用育成の壁、コストの不透明化といったデメリットもあります。さらに、初期フェーズに半年〜1年、成果が出始めるまでに1〜2年、体制の定着まで3〜5年という長期的な投資判断が求められます。

IT対応の速さが競争優位に直結し、長期投資が可能で、ドキュメント文化が根付いている企業であれば、フルスクラッチが有力な選択肢になります。これに対して、そうでない企業は、標準フレームワーク・SaaSを優先し、運用実績を積んでから再検討するのが現実的です。

情シスコンサルの活用を検討する方は、まず自社の情シス業務がコア領域かノンコア領域かを整理し、複数のコンサルティングパートナーに相談することをお勧めします。

全面的なフルスクラッチか標準導入かで二者択一するより、業務ごとに最適な選択を組み合わせるハイブリッドな発想を持つことが、投資対効果を高める現実的な進め方です。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。