IT新規事業開発とは?|考え方/特徴/仕組み/目的を解説

IT新規事業開発とは、ITを活用した新しい事業の立ち上げを、市場調査から投資判断まで一気通貫で支援する事業開発コンサルティングのことです。

新しい収益の柱を探していても、既存事業の延長線上でしかアイデアが出ず、IT活用を掲げても具体的な事業案に落とせずに足踏みする企業は少なくありません。

▼全体ガイドの記事
・IT新規事業開発の完全ガイド

IT新規事業開発の定義と全体像

IT新規事業開発の全体像を確認する事業責任者

既存事業の改善や機能追加とは異なり、IT新規事業開発は、市場に存在しない、あるいは自社が参入していない領域で、ITを軸にした新しい事業を一からつくり出す取り組みです。

単発のアイデア出しで終わらせず、市場調査から投資判断までの一連の工程を経て、経営として投資に値するかを判断できる状態まで仕上げる点に特徴があります。

市場調査から投資判断までの流れのなかで、IT新規事業開発が中心に扱う作業は次の3つです。

  • 市場・顧客課題の分析
  • 事業仮説と提供価値の設計
  • PoC・事業化ロードマップ

既存事業の改善との違い

既存事業の改善は、すでに顧客と収益モデルが存在する事業の効率化や機能拡張を指します。一方、IT新規事業開発が扱うのは、顧客が誰で何に対価を払うのかがまだ定まっていない領域です。

売上や利益率といった既存事業の評価指標をそのまま当てはめると、立ち上げ初期の小さな数字を理由に打ち切ってしまい、育つはずの事業の芽を摘むことがあります。そのため、IT新規事業開発では、初期段階は市場ニーズの有無や顧客の反応といった定性的な手応えを重視し、事業が一定の形になった段階で売上や収益性の指標へ切り替えます。

この評価軸の切り替えを事前に社内で合意しておくと、継続的な投資判断を進めやすくなります。

ITを前提にした事業アイデアの検証と形づくり

IT新規事業開発という言葉は、アプリやシステムを作ることに加えて、データ活用、外部サービスとの連携、ノーコード・ローコードによる迅速な検証など、ITを前提とした手段で事業アイデアを確かめることも指します。

アイデアの段階では仮説の確度が低いため、最初から多額の開発投資をするのではなく、小さな検証を繰り返して仮説の解像度を上げていく進め方が中心になります。この進め方は、要件定義から一括で受託するシステム開発プロジェクトとは性質が異なります。

新規事業の立ち上げでは、要件そのものがまだ定まっていない前提で、市場調査や事業計画の検討と並行して、技術面の実現性や開発規模の見立てを進めます。

ポイント

既存事業の延長で考えられるか、市場に存在しない事業をゼロからつくる必要があるかで判断します。後者なら既存事業の評価軸は当てはめず、初期は顧客の手応えを重視します。

IT新規事業開発の考え方と特徴

IT新規事業開発の考え方を検討するミーティング

IT新規事業開発には、通常の事業運営とは異なる特徴があります。たとえば、確度の低い仮説を数多く検証しながら解像度を上げていく進め方や、既存事業とは異なる評価基準を用いる点が挙げられます。これらの特徴を理解しておくと、社内で期待値がずれたり、途中でプロジェクトが停滞したりするのを防ぎやすくなります。

確度の低い仮説を数多く検証して解像度を上げる進め方

新規事業のアイデアは、立ち上げの初期段階では市場の反応も競合の動きも見通せず、確度が低い状態です。そのため、IT新規事業開発の実務では、ターゲットとニーズを仮に定めます。そのうえで、ターゲットがいる場所やタイミング、アプローチできるチャネルを特定し、一つのチャネルを一定期間やり切って反応を確かめます。

一つのチャネルは、中途半端に試して次に移らず、やり切ってから評価を見直すことが大切です。その姿勢が、事業アイデアの解像度を上げる鍵になります。

このプロセスは一度きりで完結せず、ターゲットの絞り込みとチャネルの検証を繰り返しながら進む循環的なものです。市場規模が小さすぎるテーマは、この検証をどれだけ丁寧に行っても頭打ちになりやすいため、検証と並行して市場規模の見立てを継続的に更新する必要があります。

既存事業の評価軸をそのまま当てはめられない点

既存事業であれば、売上、利益率、既存顧客からの評価といった指標で意思決定できます。しかしIT新規事業開発の初期段階では、そもそも売上が発生していないか、あってもごく小さい段階で判断しなければなりません。

この段階で重視すべきは、想定顧客が本当にその課題を抱えているか、提示した解決策に興味や支払意思を示すかといった、市場ニーズの有無を示す定性的・定量的な手応えです。評価軸を段階に応じて切り替えないと、初期の小さな数字だけで将来性のある事業を打ち切ったり、手応えの乏しい事業に投資を続けたりする判断ミスにつながります。

フェーズごとにどの指標で意思決定するかを、着手前に経営層と現場で合意しておくことが重要です。

ポイント

初期段階の評価は売上ではなく顧客の手応えで行い、事業が形になった段階で売上や収益性の指標へ切り替える前提を、着手前に社内で合意しておきます。

IT新規事業開発の仕組みと標準的なプロセス

市場調査から投資判断までのプロセスを整理する図

IT新規事業開発は、市場調査から投資判断まで、一連のフェーズを順に経て進みます。ビジネスモデル設計や事業性評価、PoCといった工程が、その間に入ります。

各フェーズにかかる期間は、企業規模や意思決定の速さによって幅があります。それでも全体の流れをつかんでおくと、途中の遅れや、飛ばしてはいけない工程に気づきやすくなります。

市場調査から投資判断までの5つのフェーズ

一般的な新規事業開発コンサルティングの実務では、まず市場調査・アイデア検証に1〜2ヶ月程度を充てます。マクロ環境分析や競合調査、想定顧客像の設定が含まれます。

次に、提供価値の言語化や収益の仕組みを設計するビジネスモデル設計・事業計画策定に、1.5〜3ヶ月程度を見込みます。事業性評価は、技術的な実現性や法規制、概算コストを確認する工程で、1〜2ヶ月程度を見込むのが実務上の目安とされています。

その後、プロトタイプの作成やテストユーザーによる検証を行うPoCに2〜6ヶ月程度、最終的な投資可否を決める投資判断に0.5〜1ヶ月程度を見込みます。全体としては、短い場合で3〜4ヶ月、長い場合は1年から1年半程度に及ぶことがあり、専任リソースの有無や決裁ルートの長さ、対象領域の規制の強さによって期間が変わります。

ターゲットとチャネルを絞って回す循環プロセス

IT新規事業開発では、フェーズを順に一直線に進める方法に加えて、循環的に進める考え方も重要です。まず、ターゲットとニーズを特定し、そのターゲットが存在する場所やタイミング、アプローチできるチャネルを押さえます。そのうえで、一つのチャネルをやり切って反応を確かめ、標準化してから次の市場や施策へ展開していきます。

この循環を回す速さと丁寧さのバランスが、事業アイデアの解像度を左右します。企業規模によって、この循環の回し方にも違いが表れます。スタートアップや中小企業では、経営陣が直接関与して意思決定が速いため、厳密な計画よりもPoCを回しながら計画を修正する、アジャイル型の進め方になりやすいです。

その結果、全体で3〜6ヶ月程度に収まることもあります。一方、大企業では、稟議プロセスや既存事業とのカニバリゼーションへの配慮、コンプライアンスチェックが各フェーズの間に入ります。そのため、全体で6ヶ月から1年以上を見込む必要があります。

ポイント

各フェーズの期間は企業規模や意思決定の速さで変わるため、全体の期間は専任の人手や決裁ルートを踏まえて見積もるのが目安です。

IT新規事業開発で提供される主要な支援内容

IT新規事業開発の主要な支援内容

IT新規事業開発の支援内容は、提供事業者によって幅があります。大きく分けると、市場調査とビジネスモデル設計から、事業性評価やPoC・MVP開発を経て、投資判断支援までの領域に分かれます。

自社でどの工程が不足しているかを起点に考えると、必要な支援範囲を整理しやすくなります。

市場調査とビジネスモデル設計による事業の骨格づくり

市場調査では、マクロ環境分析や競合調査に加えて、想定顧客のペルソナを設定します。ビジネスモデル設計・事業計画策定では、顧客に提供する価値を言語化するバリュープロポジションの整理、収益を生み出す仕組みであるマネタイズ設計、収益計画の策定までを扱います。

この段階で事業の骨格を具体的な言葉と数字に落とし込んでおくことが、後続のPoCや投資判断をスムーズに進める土台になります。事業計画は一度作って終わりにせず、PoCで得られた顧客の反応をもとに継続的に更新していく前提でつくることが、実務上のポイントです。

企業が最初から精緻な計画をつくり込みすぎると、検証結果に反映しづらくなり、かえって計画と実態の乖離を広げてしまいます。

PoCとMVP開発による技術実現性と市場受容性の確認

事業アイデアを形にする段階では、目的の異なる複数の手法を使い分けます。見た目を検証するモックアップや操作感を確かめるプロトタイプに加えて、技術的な実現性を確かめるPoCと、市場に価値を提供できる最小限の機能で売れるかを検証するMVP開発があります。特に新規事業では、MVP開発が最も重要なフェーズとされています。

顧客が実際に対価を支払うかを確かめ、市場受容性を見る工程になります。進め方は、まず課題定義と仮説構築から始めます。次に、MoSCoW法などでMust機能に絞り、検証の範囲を極力小さくします。

そのうえで、成功・撤退の基準を事前に設定し、プロトタイピングと実装、フィードバック収集、学習と改善へ進めます。評価指標は、市場ニーズの有無を示す価値レイヤー、利用の定着度を示す運用レイヤー、事業としての成立性を示す経済レイヤーの3つで捉えます。こうすると、感覚的な手応えだけに頼らず判断しやすくなります。

ポイント

自社に不足している工程を先に洗い出し、市場調査からPoC・MVP開発、投資判断まで、どの工程を外部に任せるかを工程ごとに決めると判断しやすくなります。

IT新規事業開発に取り組む目的と得られる効果

IT新規事業開発に取り組む目的を整理する会議

IT新規事業開発に取り組む目的は、既存事業に依存しない収益の柱を計画的に育てることにあります。単に新しいサービスを一つ増やすことにとどまらず、限られた投資を無駄にしないための判断材料を早い段階で得ることにも狙いがあります。

第二の収益の柱を計画的に育てること

既存事業が成熟し成長が鈍化してきた企業にとって、新規事業は将来の収益を支える柱になり得ます。ただし、思いつきのアイデアをそのまま形にするのではなく、市場調査や事業性評価という工程を経ることで、限られた経営資源をどの事業に投じるべきかを比較検討できるようになります。

さらに、IT新規事業開発を体系立てて進めることは、複数の事業アイデアを同じ基準で評価し、優先順位をつけるための共通言語を社内に持つことにもつながります。

撤退基準を早期に持つことによる損失の抑制

新規事業には一定の失敗確率が伴います。そのため、PoCやMVP開発の段階で、成功・撤退の基準をあらかじめ経営層と合意しておくことが重要です。

基準を決めずに検証を続けると、いわゆる終わらないPoCに陥り、投資だけが膨らんでいく事態になりかねません。逆に、撤退基準を早期に持っておけば、見込みの薄い事業を早い段階で見切り、その分のリソースを見込みのある別の事業アイデアに振り向けることができます。

IT新規事業開発における事業性評価やPoCは、成功のためだけでなく、損失を抑えるための仕組みとしても機能します。

他の支援サービス・関連取り組みとの違い

IT新規事業開発と他の支援サービスとの違い

IT新規事業開発は、一般的な経営コンサルティングや既存システムのDX推進、システム開発の受託と重なる部分があります。ただし、それぞれ中心となる目的や検証の深さが異なります。

違いを押さえておくと、自社に必要な支援がどれかを見極めやすくなります。

一般的な経営コンサルティングとの検証の深さの違い

一般的な経営コンサルティングは、経営戦略の立案や組織課題の分析、業務改善の提言までを扱うことが多く、資料としての戦略立案が中心になる場合があります。一方、IT新規事業開発は、戦略の立案にとどまらず、PoCやMVP開発を通じて実際に顧客に触れてもらい、支払意思や継続利用の有無を確かめるところまで踏み込みます。

大きな違いは、戦略資料をつくることよりも、事業として成立するかを実証することにあります。

既存システムのDX推進や保守開発との目的の違い

既存システムのDX推進は、社内の業務プロセスや既存事業のオペレーションをデジタル技術で効率化・高度化することを目的とします。保守開発は、既に稼働しているシステムの機能維持やアップデート対応が中心です。

これらはいずれも、既にある事業や業務を対象にします。一方、IT新規事業開発は、市場に存在しない事業をゼロからつくる取り組みで、前提が異なります。

事業性評価やPoCを経て事業として立ち上がった後は、それを支えるシステムを継続的に成長させていく開発フェーズに移行します。この段階では、既製のパッケージやノーコードツールでは対応しきれない独自の業務要件やデータ連携が必要になることも多く、フルスクラッチ開発による柔軟なシステム構築が選択肢に入ってきます。

IT新規事業開発導入前に確認しておきたいポイント

IT新規事業開発導入前に確認するポイント

IT新規事業開発への着手を検討するときは、支援を依頼する範囲や体制、評価基準をあらかじめ整理しておくと、着手後の手戻りや認識のずれを防ぎやすくなります。

自社に合う伴走支援か内製かの整理

外部の事業開発支援には、いくつかの関わり方があります。月数回のミーティングで戦略助言を行うアドバイザリー型と、資料作成や営業代行など実務まで踏み込むプロジェクト伴走型があります。

プロジェクト伴走型には、KPIダッシュボード構築や顧客ヒアリングへの同席も含まれます。初期費用に加えて、成果に応じた報酬を設定する成果報酬型もあります。

自社にすでに事業開発の経験を持つ人材がいるか、実務まで任せたいかによって、選ぶべき体制は変わります。

PoCの評価指標と撤退基準の事前合意

PoCやMVP開発を始める前に、何が確認できれば次のフェーズに進むのか、どのような結果なら撤退するのかという基準を、経営層と現場の間で事前に合意しておく必要があります。基準が曖昧なまま検証を始めると、担当者の主観で継続・中止を判断することになり、社内の合意形成に時間がかかります。

フルスクラッチ開発に切り替える境目

事業アイデアの検証段階では、ノーコード・ローコードツールや既製のSaaSを組み合わせた小さな実装で十分な場合が多くあります。一方、事業として立ち上がり、独自の業務フローや既存の基幹システムとの連携が必要になった段階では、既製の仕組みだけでは対応しきれない要件が出てきます。

どの段階からフルスクラッチ開発への切り替えを検討すべきかを、あらかじめ支援事業者とすり合わせておくと、成長段階での手戻りを抑えられます。

ポイント

支援を依頼する範囲と体制、評価基準を決めてから、伴走支援か内製かを選ぶのが順序です。PoCの撤退基準は、着手前に経営層と合意しておくのが望ましいです。

まとめ

IT新規事業開発の要点をまとめる担当者

IT新規事業開発は、市場調査から投資判断まで一連のプロセスを踏み、ITを活用した新しい事業を仮説検証を重ねながら形にしていく取り組みです。既存事業の改善とは評価軸が異なり、確度の低い仮説を数多く検証しながら解像度を上げていく進め方が中心になります。

仮説検証を積み重ねる継続的な取り組み

事業計画やビジネスモデルは、一度の市場調査や事業計画策定で完成させるのではなく、PoCやMVP開発で得られた顧客の反応をもとに継続的に更新していく前提です。撤退基準を含めた評価の物差しを事前に持っておくことが、投資判断を適切に行ううえで欠かせません。

自社の強みを生かした事業設計からの着手

まずは、自社が持つ顧客基盤や独自の技術、データといった強みを洗い出します。そのうえで、その強みを生かせる市場領域から事業アイデアを検討することが、着手の第一歩になります。

市場調査や事業性評価をどこまで自社で行い、どこから外部の支援を受けるかを整理すると、必要な支援範囲を具体化できます。事業が立ち上がった後は、既製のツールでは吸収しきれない独自の業務要件が見えてきます。その段階で、フルスクラッチ開発による柔軟な対応を検討する価値があります。

riplaは、フルスクラッチ開発の立場から、新規事業の要件整理や既存システムとの連携を含むシステム構築を支援しています。具体的な支援事業者を比較する際の評価軸は、IT新規事業開発の選定ポイント・選び方・種類で解説していますので、あわせてご参照ください。

▼全体ガイドの記事
・IT新規事業開発の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。