IT新規事業開発で使うクラウドツールは、事業アイデアの整理、協業先の探索、PoC・MVPの実装という工程ごとに目的が異なります。そのため、工程に合うツールを組み合わせ、自社の課題に沿って候補を絞ると、検証を進めやすくなります。
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IT新規事業開発を支えるクラウドツールの位置づけ

IT新規事業開発は、市場調査から投資判断までを一気通貫で支援する事業開発コンサルティングで、単体のパッケージ製品ではありません。ただし、実務の各工程ではクラウドツールが広く使われています。
ビジネスモデル設計、オープンイノベーション、PoC・MVP開発を支えるツールは、自社に合わせて組み合わせます。そのため、組み合わせ方が検証のスピードを左右します。
ビジネスモデル設計を支えるツールの役割
事業アイデアの初期段階では、ツールを使って、顧客への提供価値や収益の仕組みを図や共通のフレームワークで整理します。
関係者が同じキャンバス上で議論できるため、資料の行き来による伝達ロスを減らせます。
ツール上で仮説を素早く更新できる点も特徴です。
オープンイノベーションプラットフォームの役割
自社単独での検証にとどまらず、外部のスタートアップや協業パートナーと新規事業を進める場合は、双方をつなぐマッチングプラットフォームが使われます。
社内に人脈がなくても、登録企業から協業候補を探せる点が、導入の主な動機です。
ツールを比較するときの共通観点

製品紹介ページの機能一覧から、自社の検証プロセスに合うかを判断するのは難しいものです。そのため、候補を同じ条件で比べる必要があります。
比較では、対応フェーズ、共同編集のしやすさ、外部連携、料金体系、日本語対応を共通の質問として確認します。
対応する検証フェーズと共同編集のしやすさ
ビジネスモデル設計、パートナー探索、PoC・MVP実装のどのフェーズが主な対象かを確認します。共同編集と記録の面では、関係者が実際に使う場面を思い描いて候補を比べます。
- 共同編集:経営層、事業責任者、現場担当者が、同じ画面やボードで同時に編集やコメントできるか
- 仮説の更新速度:関係者の意見をその場で仮説に反映できれば、更新のスピードも上がる
- 修正の残り方:会議中の修正が記録に残るかどうかは、議事録の負担に関わる
外部連携・料金体系・日本語対応
会計、チャット、プロジェクト管理など、既存ツールとの連携の有無やエクスポート形式を確認します。
料金体系は製品ごとに異なるため、想定する利用人数と期間を伝え、同じ条件で見積もりをそろえます。
海外製ツールでは、日本語のインターフェースやサポート窓口の有無も、現場への定着に影響します。
IT新規事業開発を支える主要クラウド製品6選
取り上げるのは、2026年7月時点で現行の公式ページと対象業務を確認できた6製品です。
掲載順はランキングではありません。
ビジネスモデル設計、オープンイノベーション、PoC・MVP開発のうち、自社が重視する領域に照らして、各製品の対象業務を確認します。
Strategyzer
Strategyzerは、事業の仮説を整理したい企業向けの候補です。
- 事業仮説の整理:ビジネスモデルキャンバスやバリュープロポジションキャンバスを使えます。
- 複数アイデアの管理:ポートフォリオマップやチームアラインメントマップを提供しています。
公式サイトには、200,000以上の企業、178カ国以上での利用実績が掲載されています。料金面では、2026年7月時点の公式サイトにプレイブックライブラリが年間299ユーロ(1シートあたり)で掲載されています。ただし、法人向けプランは個別見積もりのため、対象人数と利用範囲を伝えて最新条件を確認してください。
Miro
Miroは、アイデア出しからリリースまでの製品開発を進めたい企業の候補です。
- 製品開発:アイデア出しからリリースまでを、ビジュアルなホワイトボードで進められます。
- テンプレートと共同編集:6,000以上の型が用意されていて、経営層から現場まで同じボードでリアルタイムに意見を出せます。
2026年7月時点の公式サイトには、無料プランのほか、年間契約時で月額8米ドル(ユーザーあたり)のStarterが掲載されています。Businessは月額20米ドル(ユーザーあたり)で、Enterpriseは30ユーザー以上が対象の個別見積もりです。ただし、料金は変わる可能性があるため、契約前に最新情報を確かめます。
AUBA(運営: 株式会社eiicon)
AUBAを検討する際は、活用場面、実績、料金の順に見ていきます。
- 活用場面:自社単独の検証だけでなく、外部のスタートアップや企業との協業を進めたい企業の候補です。
- 公式サイトの掲載実績:累計登録社数39,000社、マッチング数10万件以上、共創事例数1,700件以上です。
- 探索範囲:業界や領域を横断したパートナー探索に活用できます。
- 料金の区分:公式サイトでは無料プランとOIBASICプランなどの有料プランを確認できます。
具体的な月額金額は公開されていません。そのため、事業領域と利用目的を伝えて、見積もりを取得します。
Creww Growth(運営: 株式会社クルー)
Creww Growthは、アクセラレータプログラムでスタートアップと企業の協業を進めたい企業の候補です。プログラムを通じて、新規事業創出やDX推進につなげられます。
公式サイトには、2025年に実施されたプログラムの告知や協業事例が掲載されており、継続的な運営がうかがえます。そのため、現行で運営されているかを見る手がかりになります。
料金は公式サイトに明記されていないため、プログラムの規模や期間を伝えて、個別に確認します。
Bubble
Bubbleを検討する際は、作りたいプロトタイプとアプリの形式を照らし合わせます。
- MVP・プロトタイプ:事業アイデアをコードを書かずに構築したい企業の候補です。
- アプリ開発:Web・モバイル双方のアプリケーションをノーコードで開発できます。
公式サイトでは、Bubble自身も自社サービスでプロダクトを構築していると紹介しています。また、無料から始めて利用規模に応じ有料プランへ移行できる料金体系が案内されています。
ただし、具体的なプラン名や金額はページ構成上確認できませんでした。そのため、検討時は公式サイトの料金ページで最新条件を直接確認します。
STUDIO
STUDIOを検討する際は、用途と制作方法を押さえたうえで、実績と料金を見ていきます。
- 用途:新規事業のランディングページやサービスサイトを素早く公開し、市場の反応を確かめたい企業の候補です。
- 制作方法:コードを書かずデザインを自在に構築できるWeb制作プラットフォームです。
- 公式サイトの実績:90万人以上のユーザー、3万社以上の導入、22万件以上のサイト公開実績があります。
- 利用区分:無料プランのほか、有人サポートを利用できるMiniプラン以上の有料プランがあります。
- 料金:具体的な金額は公式サイトの料金ページで確認できます。
自社の課題別に候補を絞る方法

6製品を一斉に細部まで比べるより、最も大きな課題を一つ決めて、必須要件で候補を減らす方が効率的です。
事業アイデアの整理、協業パートナーの探索、MVP・PoCの実装では、それぞれ適したツールのタイプが異なります。
事業アイデアの整理・言語化を優先したい場合
顧客への提供価値や収益モデルがまだ言葉になっていない場合は、StrategyzerやMiroを優先します。
- 関係者が多い場合:Miroのような共同編集型のホワイトボード
- 体系的に整理する場合:Strategyzerのようなキャンバス特化型
協業パートナーの探索を優先したい場合
自社のリソースでは、スピードや専門性を補えない場合に、AUBAやCreww Growthを優先します。
候補となる協業先に心当たりがあるかどうかで、重視する支援が変わります。そのうえで、マッチング機能か、プログラム型の伴走支援かを見極めます。
MVP・PoCの実装スピードを優先したい場合
アプリの機能検証であれば、Bubbleのようなノーコードアプリビルダーが候補になります。一方、需要を確かめる段階では、STUDIOが候補になります。
「機能が使われるか」と「興味を持たれるか」のどちらを確かめたいかで、選ぶツールの種類が変わります。
料金・契約前に確認すべきこと
公開料金だけで安価なツールを選ぶと、利用人数や連携機能の追加で、想定外の費用が生じることがあります。そのため、月額費用に加えて、導入準備、教育、将来の乗り換えまで含めた総保有コストで判断します。
課金単位と契約条件
製品ごとに課金の単位が違うため、公開料金だけでは負担を比べられません。そこで、課金の単位、人数と契約条件、非公開料金、為替の影響を各社で同じ基準にそろえてから、見積もりを比べます。
- 課金単位:ユーザー数、案件数、テンプレート利用数、マッチング成立件数など
- 人数と契約条件:現在と検証後の人数、初期費用、最低利用期間、上位プランへの移行条件
- 非公開料金:要問い合わせの形で示される場合も珍しくないため、確認できない金額は推測で比較表に書き込まない
- 為替の影響:海外製ツールでは為替変動で円換算の負担額が変わる場合もあるため、複数月利用を前提に支払額の幅も確認する
データの持ち出しと契約終了時の扱い
ツールに蓄積したキャンバスや検証結果、協業候補とのやり取りは、事業の重要な資産になります。
そのため、エクスポート形式と、契約終了後に持ち出せるデータの範囲を、契約前に確認しておきます。こうしておけば、将来のツール移行で生じる手戻りを防げます。
トライアル・デモによる最終候補の絞り込み
資料比較で2〜3ツールに絞ったら、実際の事業アイデアを題材に、トライアルやデモを行います。担当者だけでなく、経営層や現場メンバーにも参加してもらうと、導入後の定着度合いを見極めやすくなります。
実際の事業アイデアによるトライアル
自社の事業アイデアの一部を題材に、ツールを試します。実際の題材で試すと、テンプレートの使いやすさや共同編集の実用性を具体的に判断できます。
オープンイノベーションプラットフォームでは、どのような協業候補が見つかるかを確認します。掲載企業数の多さよりも、この点が判断材料になります。
検証速度と定着度の実測
トライアルでは、速度と定着度を数値で把握します。
- 記録する指標:アイデア整理の時間、関係者のフィードバック件数、最後まで使ったメンバーの割合
- 効果が出る条件:導入するだけで検証が速くなるとは限らず、社内の運用ルールと組み合わせて初めて成果が出ます。
数値で残しておくと、本格導入を判断する材料になります。
IT新規事業開発の製品比較で押さえておきたいポイント
候補を選ぶ際は、無料プランの範囲やおすすめ順位だけで決めるのではなく、自社の検証フェーズと利用規模を同じ条件で比べます。
1つのツールで全工程をまかなう難しさ
ビジネスモデル設計、パートナー探索、PoC・MVP実装のすべてを、1つのツールでまかなえるとは限りません。たとえば、アイデア整理にはMiroやStrategyzer、実装検証にはBubbleやSTUDIOを使い分ける方法があります。
複数ツールを併用する場合は、担当者が情報の受け渡し方をあらかじめ決めておきます。
独自の検証プロセスを持つ場合の個別開発
既製のクラウドツールが自社の検証プロセスや承認フローに合わない場合は、内部向けの検証管理システムを個別開発する選択肢もあります。
既製ツールを組み合わせても解決しない要件があるなら、汎用ツールにこだわらず、自社専用の仕組みを検討します。
検証フェーズ別のおすすめツール
すべての企業に共通する1位のツールはありません。アイデア整理、協業先探索、MVP・PoC実装のどの段階かによって、適した製品が変わります。
発注側の担当者は、自社が最も時間をかけている工程を見極め、その工程に強いツールから比較を始めてください。
まとめ
IT新規事業開発では、工程ごとに目的の異なるクラウドツールを組み合わせて検証するのが一般的です。取り上げた6製品には、キャンバスでの整理、共同編集、協業先探索、ノーコード実装など、それぞれ異なる特徴があります。
検証フェーズの特定から2〜3ツールへの絞り込み
まず、アイデア整理、協業先探索、MVP・PoC実装のうち、最も支援が必要な工程を決めます。
次に、対応フェーズ、共同編集、外部連携、料金体系といった比較の観点を、候補すべてについて確認します。同じ質問で当てはめれば、知名度だけに左右されずに候補を絞れます。
検証の先にある独自システム構築
クラウドツールでの検証を終えたら、事業化に合わせて独自システムが必要かを見極めます。
- 事業化後の要件:独自の業務フローや基幹システムとの連携が必要になる場合があります。
- riplaの支援:フルスクラッチ開発で、検証要件の整理や自社業務に合うシステム構築まで手がけます。
支援先を選ぶときの評価軸はIT新規事業開発の選定ポイント・選び方・種類で解説しています。あわせてご確認ください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
