IT戦略コンサルの選定ポイント/選び方/種類

IT戦略コンサルは、知名度ではなく、自社が必要とする工程との適合度で選びます。現状アセスメント、グランドデザイン、投資計画、ガバナンス運営のどこに課題があるかを、まず切り分けます。

  • 支援工程:構想策定、投資計画、運営支援のうち、任せる範囲
  • 評価軸:実績・中立性・体制、成果物、費用、フォロー範囲の比較
  • 検証方法:必要に応じて、RFPや技術選定PoCによる提案の実効性の確認

この順番で比べれば、提案書の印象に流されず、自社に合う候補を2〜3社まで絞り込みやすくなります。

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IT戦略コンサル依頼前に整理すべき自社の課題

現状の把握、グランドデザイン、投資計画、運営の4工程を並べた図。
不足する工程が、依頼先選びの出発点になります。

依頼先の一覧を最初に集める必要はなく、まず自社の課題を整理しておきます。現状の把握、グランドデザイン、投資計画、運営のうち、どこに不足があるかを特定します。課題を一文で説明できれば、比べるべき会社のタイプと、依頼しなくてよい範囲が見えやすくなります。

グランドデザインと投資計画・ロードマップの切り分け

既存システムの全体像やデータ連携基盤の構想が描けていない場合は、グランドデザイン策定が課題です。一方で、あるべき姿は描けていても、投資の優先順位や年次の予算配分が決まらない場合は、投資計画が課題になります。

この二つを混同したまま依頼先を探すと、グランドデザイン策定を得意とする会社に予算配分の細部まで期待してしまうなど、認識がずれたまま進みかねません。切り分けには、社内の担当者に「いま説明できないことは何か」を挙げてもらう方法が有効です。

連携構想を図で説明できないなら、必要なのはグランドデザインです。来年度の投資先と予算の根拠を説明できないなら、投資計画が必要です。両方が同時に不足している場合は、後述する策定から運営までを一気通貫で担う会社を検討する余地があります。

経営層と情シス部門の温度差と、老朽化対応止まりのリスク

経営層がコスト抑制と早期のDX成果を求め、情シス部門が老朽化リスクの解消を優先するという温度差は、IT戦略策定プロジェクトでよく見られる構図です。この温度差が続くと、投資計画そのものより前に社内合意形成が停滞します。

そのため、依頼先には現状分析の技術力だけでなく、調整力も求めます。経営層と情シス部門に説明し、事業目標とのつながりを示せるかを確認します。

ポイント

依頼先を探す前に、課題がどの工程にあるかを一文で説明できるかが目安です。説明できない部分がグランドデザインと投資計画のどちらに当たるかで、比べる会社のタイプが変わります。

IT戦略コンサルの3つの種類

主な種類は、グランドデザイン策定特化型、IT投資計画・ロードマップ策定型、ITガバナンス・PMO常駐型の3つです。実際の会社は複数の特徴を併せ持つため、分類名よりも、自社が最優先する工程をその会社が主戦場としているかを確かめます。

グランドデザイン策定特化型

このタイプは、現状アセスメントとITアーキテクチャ全体像の策定を主戦場とします。策定後の投資計画の詳細やベンダー選定は、社内または別会社に引き継ぐ前提で契約するケースが多いため、比較的短期(1〜3ヶ月程度)で契約が完了する傾向があります。

全体構想がまだ描けていない企業や、複数事業部門のシステムをまたぐ全体最適化を客観的に整理したい企業が対象になります。

IT投資計画・ロードマップ策定型とITガバナンス・PMO常駐型

IT投資計画・ロードマップ策定型は、「守りのIT」と「攻めのIT」の予算配分の見直しや、3〜5年の中期IT計画の数値化に強みを持ちます。一方、ITガバナンス・PMO常駐型は策定後も継続して関わり、ITステアリングコミッティの事務局を担うこともあります。

すでにグランドデザインがある企業や、社内に計画を運用し続ける体制がない企業に向いています。ただし、対応範囲が広い分、契約期間も長期化しやすいため、稼働率の見積もり方法をあらかじめ確認しておく必要があります。

依頼先を比較する7つの評価軸

説明・調整、成果物、契約と費用、稼働後のフォローを並べた確認項目の図。
同じ観点を候補各社に当てると、提案の差を追いやすくなります。

候補は7つの軸で比べます。最初に確認するのは、業種・規模の実績、中立性、体制です。残りは、説明力、成果物、費用、フォロー範囲です。

各社に同じ質問を出し、回答の根拠をそろえておくと、提案書の見た目ではなく、実務の適合度で判断できます。

実績・中立性・体制の確認

第一に、自社と近い業種・規模・システム構成でのプロジェクト経験があるかを確認します。同じ「IT戦略コンサル」でも、グローバル企業のグループガバナンス構築に強い会社と、国内中堅企業のシステム全体最適化に強い会社では、評価できる範囲が異なります。

第二に、特定のクラウド基盤や特定ベンダーとの提携関係の有無を確かめ、完全独立系なのか、一部提携先があるのかを把握します。

第三に、実際にプロジェクトへ配置される担当者の経験年数や、複数案件を掛け持ちしていないかといった体制面も確認します。

成果物・費用・フォロー範囲の確認

提案を比べる際は、成果物、費用、フォロー範囲に加えて、経営層と情シス部門への説明・調整の範囲も、契約前に次の4項目で確かめます。

  • 説明・調整の範囲:経営層と情シス部門それぞれへの説明や調整を、どこまで担えるかを確かめます。
  • 成果物サンプル:現状分析レポート、グランドデザイン資料、投資計画・ロードマップのサンプルを見せてもらい、根拠が明記されているかを確認します。
  • 契約形態と費用:稼働率や工数の算定根拠を確認します。中堅企業の月額は300万〜500万円程度、大企業は500万〜1,500万円以上が目安です。
  • 稼働後のフォロー範囲:月次モニタリングから年次ローリングへの稼働率の推移が、どう設計されているかを見ます。

各社の説明は鵜呑みにせず、点数化の前に、実績の裏付けや担当者の実名を確かめます。成果物サンプルと費用の算定根拠も、同じ段階で見ておきます。証拠が示せない項目は保留にし、印象だけで評価を埋めないことが、契約後の認識違いを防ぐうえで重要です。

ポイント

候補は、実績・中立性・体制の必須要件を満たすかを先に見て、残った会社を費用とフォロー範囲で比べるのが目安です。各社に同じ質問を出し、回答の根拠をそろえて比べます。

独立系・SIer系・シンクタンク系ファームの選び分け

純粋な中立性を重視するなら独立系ファームが第一候補です。策定後の実装まで一体で任せたい場合はSIer・通信キャリア系グループが、内部統制や監査対応との整合性を重視する場合はシンクタンク・大手監査法人系が適しています。

どのタイプにも一長一短があるため、優劣ではなく、自社が何を最優先するかに応じて使い分けるのが実務的です。

独立系とSIer系の判断基準

独立系は特定ベンダーに属さないため、複数のクラウドやベンダーを中立な立場で比べたい企業に向いています。ただし、策定後の実装は別会社へ改めて発注することになり、グランドデザインの意図や評価根拠を実装担当へ正確に引き継ぐ工程が別途必要です。

SIer・通信キャリア系は、策定から開発・運用体制へ引き継ぎやすい点が強みです。一方で、自社グループに寄った提案になっていないかを見極めます。

シンクタンク・大手監査法人系の強み:統制・ガバナンスとの整合性

シンクタンク系や監査法人系は、ITガバナンス設計に強い傾向があり、内部統制やコンプライアンス対応も踏まえます。上場準備・内部統制対応と並行してIT中期計画を策定する企業では、システムの機能面だけでなく、統制・監査の観点からの助言を受けられる点が利点になります。

また、個別システムの移行や技術選定では、独立系やSIer系と役割分担する方法もあります。

ポイント

依頼先の種類は、任せたい範囲で絞り込みます。策定後の実装まで一体で任せたいか、内部統制との整合性を重視するかで、向くタイプが変わります。

RFP作成と技術選定PoCの進め方

依頼先を決めるコンペでは、実際の業務課題にどこまで踏み込んだ回答が返ってくるかを見ます。提案書の見栄えより、この点が判断材料になります。

策定したグランドデザインの一部を検証したい場合は、本格投資の前に小規模な技術選定PoCを挟むことで、机上の議論だけでは見えないリスクを洗い出せます。

RFPに記載する現状の課題と求める成果物

RFPには、対象範囲、現行システムの概要、業務課題を記載します。想定スケジュールや、経営層が重視する評価基準も明示します。

求める成果物も明示しておくと、各社の提案を同じ条件で比べられます。対象は、現状分析からグランドデザイン、投資計画、運営報告書までです。

要件を「必須」「望ましい」の2段階に分けておくと、対応可否が分かれた際にも判断しやすくなります。

技術選定PoCによる実証と本格投資の判断

クラウド基盤の切り替えなど技術的な不確実性が残る部分は、グランドデザインの合意だけで本格投資に進むと、後戻りのコストが大きくなります。

技術選定PoCでは、レスポンスタイムやデータ転送コストの上限を先に決めます。そのうえで、VPCなどの最小構成で環境を作り、負荷テストや障害シミュレーションを実施します。

期間は3週間〜2ヶ月程度で、スポット支援の費用は100万〜300万円程度です。インフラ利用料は、数万〜十数万円程度に収まることが多いです。

ポイント

RFPには課題と求める成果物を同じ条件で書いておくと、提案を比べやすくなります。技術的な不確実性が残る部分は、本格投資の前に小規模なPoCで確かめておくと、後戻りのコストを抑えられます。

IT戦略コンサル選定の失敗を避ける方法

依頼目的と社内の責任者を定めた後、初期フェーズの成果物を確認する流れ。
次のフェーズへ進む判断を、成果物の確認後に置きます。

よくある失敗は、提案書の内容と、実際に配置される担当者のスキルを確かめないまま契約し、プロジェクト開始後に力量不足が発覚することです。そこで、依頼目的と社内の責任者を明確にし、経営層・情シス部門・主要事業部門それぞれの視点を選定プロセスに反映します。

提案書の見栄えと知名度への偏り

大手でも、自社に合う実績を持つとは限りません。規模が小さくても、特定業界に強い会社なら課題の理解が早い場合があります。

実績・中立性・体制の必須要件を満たさない会社は除外します。残った候補を費用とフォロー体制で比べます。

候補を調べるときは、IT戦略コンサルのパッケージ・クラウド製品一覧も参照できます。

社内の役割分担と責任範囲

IT戦略コンサルは意思決定の材料を整理し、推進を支援します。ただし、最終判断や社内調整の責任までは担いません。

そのため、経営層への説明責任者、ヒアリング窓口、最終交渉者を社内で決めておきます。決めておかないと、提案後も意思決定が進みません。また、削減できる予算や工数の見込みは、コンサル側の一般値をそのまま信じず、自社の現状アセスメント結果に基づいて算出してもらうことが重要です。

契約範囲をグランドデザインからガバナンス運営まで最初から一括で決め切ろうとすることも、失敗の原因になります。そのため、まずは現状アセスメントとグランドデザインまでを契約し、成果物を確認してから次のフェーズを続けるか判断します。フェーズを分けて契約すれば、途中でコンサル会社の力量に疑問を感じた場合にも、大きな損失を出さずに軌道修正しやすくなります。

ポイント

依頼目的と社内の責任者を先に決め、契約は一括ではなくフェーズごとに分けておくと、途中で力量に疑問が出ても軌道修正しやすくなります。

IT戦略コンサル導入前に確認しておきたいポイント

候補を絞った後も、契約範囲や費用の考え方、成果物の質まで確認することで、契約後に「思っていた支援と違った」という事態を避けられます。

中堅・中小企業の依頼価値

企業規模の大小よりも、社内にシステム全体を俯瞰できる経験者がいるかどうかが、判断の分かれ目になります。経験者が少ない場合、投資の優先順位を誤ると数年単位の予算が無駄になりかねません。

そのため、規模が小さくても、スポットでのグランドデザイン策定を依頼する価値があります。投資計画やガバナンス方針がすでに固まっている場合は、個別システムに強いベンダーやSIerへ相談する方法もあります。

SIer系の中立性の確認

SIer・通信キャリア系でも、必ず自社基盤へ誘導するとは限りません。ただし、提案の背景に利害関係がないかを確認します。提案の根拠となったデータや比較基準を開示してもらい、他の独立系ファームの評価と突き合わせると、偏りの有無を判断しやすくなります。

契約形態と稼働率の推移

契約は、専門的な助言と推進管理を業務目的とする準委任契約が中心になります。策定フェーズはフルタイムに近い稼働で、月次モニタリングのフェーズでは稼働率が0.2〜0.5人月程度まで下がるのが一般的です。

見積もりを依頼する際は、フェーズごとの想定稼働率と、稼働率が変わるタイミングの判断基準まで確かめておくと、後から想定外の費用が発生しにくくなります。

まとめ

IT戦略コンサルを選ぶときは、まず課題の工程を特定し、構想、投資計画、ガバナンス運営のどこが必要かを整理します。そのうえで、適したタイプを選びます。

次に、7つの評価軸で候補を比較します。必要に応じてPoCも行い、実務との相性を確かめます。

独立系・SIer系・シンクタンク系の選択は、知名度ではなく、中立性をどこまで重視するか、実装まで一体で任せたいか、内部統制との整合性が課題かによって判断します。

既存の依頼先では、自社独自の業務要件や、策定後の既存システムとの深い連携に対応しきれない場合があります。その場合は、個別の要件整理や開発を組み合わせる方法も選択肢になります。

riplaはフルスクラッチ開発の立場から、IT戦略コンサル選定前の要件整理や、策定後の既存システムをつなぐ連携、独自業務に合わせた個別開発まで支援しています。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。