勘定奉行導入のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

勘定奉行とフルスクラッチ開発のどちらを選ぶかは、標準機能で足りる範囲と、独自開発に伴って自社が負う責任を比べて決めます。

株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)の勘定奉行は、1993年のリリース以来、累計導入社数80万社を超えるとされる、会計・税務に特化した会計ソフトです。

▼全体ガイドの記事
・勘定奉行導入の完全ガイド

方式を選ぶときは、適合度・運用負担・投資の3点で比べると判断しやすくなります。

  • 適合度:会計・税務の標準機能で要件を満たせるかを見る
  • 負担:法改正・保守・更新を誰が担うかを決める
  • 投資:費用だけでなく導入期間と継続コストで比べる

フルスクラッチ・オーダーメイド開発とパッケージ導入の違い

ゼロから作る方式と標準機能を土台にする方式を、開発の土台と法改正対応の担い手で整理した図解。
保守の担い手にも方式ごとの違いが表れます。

フルスクラッチ開発は、既存のパッケージソフトを使わず、自社の業務要件に合わせて会計システムをゼロから設計・構築する開発方式です。自社の勘定科目体系や配賦ロジック、独自の承認フローに完全に合わせられる反面、要件定義から設計・開発・テストまでの工程をすべて一から積み上げる必要があり、費用・期間ともに大きな投資が必要になります。

一方、勘定奉行のようなパッケージ導入は、あらかじめ用意された会計・税務に特化した標準機能を土台にすることで、開発期間と費用を抑えながらシステムを構築できます。この2つの根本的な違いは、「ゼロから作る」か「標準機能に業務を合わせる」かという点にあります。

勘定奉行の場合、会計・税務という比較的標準化されたバックオフィス業務に機能を集中させています。累計導入社数80万社を超えるとされる実績の中で磨き込まれた標準機能を使えるため、フルスクラッチに頼らなくても、多くの企業の会計処理をカバーできる完成度を備えています。

フルスクラッチ開発とは

フルスクラッチ開発(オーダーメイド開発)は、既製の会計パッケージやクラウド会計ソフトを使わない開発方式です。要件定義から画面設計、データベース設計、会計処理ロジックの実装まで、すべてを自社の要件に合わせて独自に作ります。カスタマイズ性は極めて高く、標準機能では対応できない特殊な配賦ロジックや既存システムとの複雑な連携も、理論上はすべて実現できます。

一方で、この自由度の高さは、要件定義の精度がそのままシステムの品質を左右するという難しさも意味します。パッケージ導入では標準機能というたたき台がありますが、フルスクラッチにはその土台がありません。そのため、要件定義で見落としがあると、そのままシステムの欠陥として決算処理の場面で表面化します。

また、開発を担うベンダーやエンジニアが自社の会計処理や税務実務を深く理解しているとは限らないため、要件定義と設計のすり合わせに多くの工数がかかります。特に会計・税務は、法改正への継続的な対応が求められ、インボイス制度や電子帳簿保存法の改正のたびに、自社独自の仕組みを自社の責任で改修し続ける必要があります。見落とされがちですが、これもフルスクラッチ特有の負担です。

勘定奉行のようなパッケージ導入との本質的な違い

パッケージ導入とフルスクラッチ開発の本質的な違いは、「標準機能という土台の有無」と「保守・バージョンアップの責任分担」の2点に集約されます。フルスクラッチで開発した会計システムは、保守・機能追加・セキュリティ対応・法改正対応のすべてを、自社(または委託先ベンダー)が継続的に担います。消費税率の変更やインボイス制度への対応も、その都度、追加開発として費用がかかります。

一方、勘定奉行のようなパッケージは、コア機能の保守・セキュリティパッチ・法改正対応をOBC側が継続的に提供します。そのため、自社が負う保守責任は、標準機能ではなく個別の設定変更や運用ルールの部分に限られます。

しかも、この設定変更の部分も、全国約3,000社のパートナー企業のいずれかに相談できるため、フルスクラッチの独自プログラムに比べて、保守・バージョンアップ時の負担を抑えやすい傾向があります。つまり、会計・税務に特化し標準機能フィット率の高いパッケージは、多くの企業にとってフルスクラッチを検討する必要性を薄める、現実的な代替手段になります。

ポイント

判断の目安は、標準機能だけで業務が回るかどうかです。回るなら、保守と法改正の対応を製品側に任せられるパッケージが現実的です。

費用・期間・カスタマイズ性の比較

会計システムの構築方式は、大きくクラウド会計ソフト(勘定奉行クラウドを含む)、パッケージ導入(オンプレミス型・奉行V ERPクラウドを含む)、フルスクラッチ開発の3つに分かれます。それぞれ費用・期間・カスタマイズ性・ランニングコストの構造が大きく異なるため、この3つを比べて自社に合う方式を選ぶことが、投資対効果を高める第一歩になります。

3つの選択肢(クラウド型・パッケージ・フルスクラッチ)の比較

勘定奉行は2018年からクラウドに重点を移しており、クラウド型の勘定奉行クラウドは、初期費用が無料〜数万円程度と低く抑えられ、導入期間も約1ヶ月程度で立ち上がります。ただし、カスタマイズ性は標準機能の範囲に限られる傾向があり、年間10万〜数十万円程度のランニングコストが継続的に発生します。

オンプレミス型や奉行V ERPクラウドを含むパッケージ導入は、規模に応じて初期費用が50万〜1,000万円以上、導入期間は1ヶ月〜半年程度です。カスタマイズ性はクラウド型よりやや高く、ランニングコストは年間保守費用(導入費用の15〜20%程度)に収まる傾向があります。勘定奉行は、この3つの選択肢の中で「パッケージ導入・クラウド型」に分類されます。

フルスクラッチ開発は、初期費用が数百万円〜数億円規模、導入期間は半年〜数年で、カスタマイズ性は極めて高い反面、保守・改修費が継続的に膨らみます。勘定奉行は、会計・税務という比較的標準化された業務に機能を集中させ、累計導入社数80万社を超えるとされる実績で磨き込まれた標準機能を持ちます。そのため、フルスクラッチを検討する前提条件を満たしにくい特性があります。

中長期のランニングコストで見た場合の違い

初期費用・導入期間だけでなく、中長期のランニングコストで比べると、3つの選択肢の違いはより明確になります。フルスクラッチ開発は、初期投資こそ大きいものの、その後の保守・機能追加・法改正対応も追加開発として費用がかかり続けるため、5年・10年という長期で見ると累積コストが際限なく膨らむリスクがあります。

特に会計・税務領域は、消費税率の改定やインボイス制度、電子帳簿保存法といった制度改正が継続的に発生します。このため、フルスクラッチで作り込んだシステムには、その都度の改修費用が継続的にかかります。一般的な知見では、会計・経理業務は処理ルールが業界内で標準化された非競争領域で、フルスクラッチを選ぶ経済合理性は相対的に低いとされます。

勘定奉行は、標準機能フィット率の高さで運用調整の膨張を抑えつつ、法改正対応をOBC側が継続的に提供する体制をあらかじめ備えています。その結果、フルスクラッチのように制度改正のたびに保守・改修費が際限なく膨らむリスクを抑えられ、中長期のコスト比較で強みになります。

ポイント

判断の目安は、初期費用だけでなく、5年・10年で見た保守・改修費まで含めて費用を見ることです。フルスクラッチは累積コストが膨らみやすいため、この視点が判断の分かれ目になります。

勘定奉行が選ばれる理由

勘定奉行を中心に、標準機能、業種特有の会計処理、設定変更、全国約3,000社のパートナー企業を結んだ図解。
標準機能の蓄積と相談先の広さが支えになります。

フルスクラッチを検討していた企業が勘定奉行に切り替える場合も、最初から勘定奉行を選ぶ場合も、理由にはいくつかの共通点があります。とりわけ、「会計・税務領域における標準機能フィット率の高さ」と「全国約3,000社のパートナー企業による導入・サポート網の厚み」の2点が、選定の決め手になるケースが多く見られます。

会計・税務領域における標準機能フィット率の高さ

「自社独自の会計処理に完全に適合させたい」という要求は、フルスクラッチ開発を正当化する最大の根拠です。勘定奉行が選ばれる最大の理由は、その要求の多くを、パッケージの枠組みの中で満たそうとする仕組みを持つ点です。勘定奉行は1993年のリリース以来、様々な業種・規模の企業の会計処理を反映しながら機能を磨き込んできた製品です。

累計導入社数80万社を超えるとされる導入実績の中には、業種特有の会計処理や複雑な部門別集計の要件が数多く反映されています。この蓄積があるため、「自社独自」と思っていた会計処理が、実は勘定奉行の標準機能や設定変更で対応できるケースも出てきます。

会計・財務業務は法律・会計基準に縛られた定型業務で、システム自体が企業の競争優位性に直結しにくい領域です。そのため、フルスクラッチでゼロから作り込むより、短い期間・低いリスクで自社の業務要件に近いシステムを実現できます。これが、勘定奉行が選ばれる本質的な理由です。

全国約3,000社のパートナー企業による導入・サポート網の厚み

もう一つの理由は、OBCが事務機器系企業・SIer・会計事務所など全国約3,000社のパートナー企業と契約を結び、日本全国の企業へアプローチする販売体制を敷いている点です。フルスクラッチ開発では、ベンダーやエンジニアのチームが自社の会計処理を理解するところから始める必要があります。

一方、勘定奉行であれば、日頃から税務顧問を担ってもらっている会計事務所や、既存のIT機器を導入してもらっているSIerなどに相談できる可能性が高くなります。こうしたパートナー企業は、既に自社の業務実態をある程度把握しています。

社内に情報システムの専任者が少ない中小企業にとって、全国のパートナー企業の存在が、フルスクラッチの「自社だけで抱え込むリスク」を避ける安心材料になります。また、パートナー企業が全国に多数あるため、自社の業種・規模に近い導入実績を持つ相手を選びやすい点も、フルスクラッチにはないパッケージならではの利点です。

ポイント

勘定奉行を候補に入れるかは、標準機能で自社の会計処理をどこまで満たせるかと、相談できるパートナー企業が身近にいるかで判断できます。

フルスクラッチが正当化される条件とミスマッチ事例

フルスクラッチ開発を中心に、正当化条件の特殊な金融処理と事業規模の巨大さ、ミスマッチ事例の車輪の再発明と法改正アップデート地獄を注釈した図解。
正当化される条件は限られ、選定の思い込みが負担につながります。

勘定奉行のようなパッケージは多くの企業にとって現実的な選択肢ですが、フルスクラッチ開発が正当化されるケースも確かにあります。

フルスクラッチが正当化される条件

会計・財務基幹システム全般の一般的な知見では、会計業務は法律や会計基準に縛られた定型業務で、システム自体が企業の競争優位性に直結しにくい領域です。そのため、現代においてフルスクラッチで会計システムを作ることは極めて稀とされています。

それでも正当化されるのは、次のような企業です。

  • 特殊な金融処理:暗号資産の取引所や超高頻度取引の証券会社のように、ミリ秒単位の処理と独自の資金決済ロジックが事業の中核にあるケースです。
  • 事業規模の巨大さ:従業員数十万人規模の世界的企業などで、パッケージのライセンス費用が開発費を上回るケースです。

事業規模が巨大な企業では、SaaSの従量課金だとランニングコストが天文学的な数字になるため、自社所有が長期的に安価になります。逆に言えば、これらに当てはまらない大多数の企業にとっては、フルスクラッチは費用対効果の面で正当化しにくいといえます。勘定奉行のように会計・税務に特化し、標準機能フィット率の高いパッケージが、より現実的な選択肢になります。

典型的なミスマッチ事例

開発方式の選定を誤った場合のミスマッチも、いくつか報告されています。典型的なものは、判断の前提、保守の負担、業務の広がりの3つの場面に表れます。

  1. 車輪の再発明:「自社の会計処理は特殊」と思い込み、標準機能と設定変更で足りるのに独自に作り込むと、初期費用数百万円〜数億円が実は不要な過剰投資になります。
  2. 法改正アップデート地獄:数年後にインボイス制度などの法改正が起きるたびに、外部ベンダーへ数百万〜数千万円の改修費を払い続け、保守費用が経営を圧迫します。
  3. 業務範囲の拡大:会計単体向けに作ったシステムを、グループ会社や海外拠点の管理へ広げると、既存システムとの連携を一から設計し直すことになり、二重投資になります。

1つ目の場面では、経理部門が「長年使ってきたExcelのマクロと同じ動きにしてほしい」「この特殊な社内稟議の承認ルートを変えたくない」と強く主張する形で表れます。

3つ目の業務範囲の拡大を避けるには、フルスクラッチかパッケージかを決める前に、自社の会計処理を洗い出し、標準機能でどこまでカバーできるかをパートナー企業に相談する順序を守ることが、投資判断の精度を高める基本です。

ポイント

フルスクラッチを選ぶのは、既存パッケージでは吸収しきれない条件に当てはまる場合に限られます。思い込みだけで選ぶと、過剰投資になりやすい点にも注意が必要です。

まとめ

フルスクラッチ開発は、初期費用数百万円〜数億円、期間半年〜数年以上を要し、カスタマイズ性は極めて高い反面、保守・改修費が継続的に膨らむという特徴があります。

これに対し勘定奉行は、会計・税務領域における標準機能フィット率の高さと、全国約3,000社のパートナー企業による導入・サポート網の厚みを両立させています。そのため、多くの企業にとって、フルスクラッチという選択肢自体を検討する必要性を薄める、現実的な代替手段となっています。

フルスクラッチが正当化されるのは、既存パッケージでは吸収しきれない極めて特殊な金融トランザクション要件や、事業規模が巨大すぎてライセンス費用が開発費を上回るような、限定的な条件を満たす場合に限られます。それ以外の大多数の企業にとっては、パッケージ導入がより現実的です。

開発方式を検討するときは、自社の会計処理が本当にフルスクラッチでなければ実現できないかを見極めることが出発点です。そのうえで、全国に広がるパートナー企業のなかから、自社の業種・規模に近い実績を持つ相手に相談することをお勧めします。

▼全体ガイドの記事
・勘定奉行導入の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。