レガシーシステムリニューアルの保守・運用費用・ランニングコストについて

レガシーシステムリニューアル後の保守・運用費用は、システム基盤、継続的なUI/UX改善、セキュリティ対策によって変わります。5年で見ると、数百万円から4,500万円までの幅があります。

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レガシーシステムリニューアル後の保守・運用費用の全体像(体験を”磨き続ける”コスト構造)

保守運用費用をシステム保守、デザイン運用、セキュリティ運用に分けた図解
3つの予算をそろえると、運用費の見落としを防げます。

売上を伸ばすには、リニューアルの後もA/Bテスト、CRM施策、コンテンツ追加を続けて、投資効果を高めていく必要があります。また、保守・運用費用には、一般的なシステム保守に加えて、体験を磨く運用費も含まれます。バグ修正やセキュリティ対応、インフラ運用だけでなく、この運用費まで見込む点が特徴です。

この構造を知らないまま初期費用だけで予算を決めると、改善の予算が不足します。その結果、リニューアルの効果が数ヶ月で頭打ちになるケースがあります。

関連する既存記事は、それぞれ扱う判断の観点が異なります。「レガシーシステムのモダナイゼーション」は技術手法の使い分けが中心で、対象となる手法はリホスト、リプラットフォーム、リファクタリングです。リビルドやリプレースも含めて、技術面から整理しています。

「レガシーシステム刷新」は、経営層の投資判断と稟議承認プロセスが中心です。一方で「レガシーシステム更改」は、保守契約満了やEOS/EOLが起点になります。

なお、本記事の「レガシーシステムリニューアル」は、顧客体験の維持と改善を扱います。見た目や使い勝手、ブランドイメージを継続的に磨く費用が対象です。

UI/UXが「作って終わり」にならない理由

UI/UXを続けて運用する必要性は、ユーザー環境と競合の変化から判断できます。見直しの要否は、利用者の変化と競合の水準、社内の運用体制を見て決めます。

  • ユーザーの変化:好みやデバイス環境は、時間とともに移り変わります。
  • 競合水準:サービスの水準が変わり、比較の基準も動きます。
  • 運用体制:データの見方と改善の周期を、事前に決めておく必要があります。

公開時点で最新のデザインでも、数年後には再び古くなります。そのため、UI/UXは運用資産として扱い、作った後も手を入れ続けます。

誰がどのデータを見て、どの周期で改善するかを、あらかじめ設計しておきます。この設計は、リニューアル計画と並行して進めておく必要があります。

運用体制を後回しにすると、デザインシステムの更新が止まり、放置されてしまいます。やがて、再び見た目の古いシステムに戻るおそれがあります。

保守運用費用の3つの構成要素(システム保守/デザイン運用/セキュリティ運用)

予算を3つに分けて考えると、リニューアル後に必要な費用の抜け漏れを防げます。

  • システム保守:基盤と機能を安定して使い続けるための費用です。
  • デザイン運用:画面を改善し続けるために必要な費用です。
  • セキュリティ運用:システムの安全を保つための費用です。

システム保守には、インフラやホスティングの費用、バグ修正、フレームワークのバージョンアップ対応が含まれます。

デザイン運用には、A/Bテストの実施と分析、デザインシステムとブランドガイドラインの維持更新が含まれます。さらに、継続的なUI改善にかかる工数も、デザイン運用費に組み込みます。

セキュリティ運用では、脆弱性情報の収集と対応を行います。加えて、バックアップの運用と定期的な脆弱性診断も含まれます。

多くの企業はシステム保守費用だけを予算化しがちですが、デザイン運用費用の見落としは、リニューアル後の体験劣化を招きます。

ポイント

初期費用だけで予算を決めると、デザイン運用費が抜けがちです。迷ったときは、システム保守、デザイン運用、セキュリティ運用の3つに分けて、それぞれの予算があるかを見てください。

システム基盤別のランニングコスト相場(5年TCOで比較)

ランニングコストは、選択するシステム基盤によって大きく異なります。初期費用だけでなく、5年単位のTCO(総所有コスト)で比べる必要があります。たとえば、初期費用が安い基盤でも、5年総コストでは割高になる場合があります。

ASP型・クラウド型(SaaS)の5年総コスト

ASP型・クラウド型は、初期投資と保守の負担を抑えたい企業が比べやすい基盤です。

  • 5年利用料:5年間の利用料は300万〜600万円程度です。
  • 保守負担:自動更新が多く、運用の手間を抑えやすいです。
  • デザイン自由度:テンプレート型のため、一定の制約があります。

ASP型の保守・バージョンアップ費用は、ほぼなし〜100万円程度です。クラウド型は自動更新されるケースが多く、追加費用はほぼ発生しません。

たとえばクラウド型ECの「メルカート」は、月額4万9,000円〜の料金体系で、サポート費用も含まれています。リニューアル後の運用負荷を最小限にしたい企業にとって、現実的な選択肢です。

パッケージ型・フルスクラッチ型の5年総コストとカスタマイズ量の影響

自社構築型は、カスタマイズの自由度と継続費用を合わせて判断することになります。

  • パッケージ型:5年総コストは1,500万〜4,500万円です。
  • カスタマイズ量:独自仕様が増えるほど、保守費用も膨らみます。
  • フルスクラッチ型:継続発注を含む体制の設計が必要です。
  • 決済機能:1取引あたり平均3〜4%の手数料がかかります。

パッケージ型(オンプレミス)の5年間の利用料は、500万〜1,500万円程度です。保守・バージョンアップ費用は、別に500万〜1,500万円程度が目安です。総額がこの内訳の合計を上回るのは、機能追加の開発費が加わるためです。

OSやブラウザの更新対応や機能追加のたびに、追加費用が発生します。追加開発費と保守費が続くため、5年総コストは高額になりやすいです。独自のブランド表現を追求してカスタマイズを重ねると、保守の対象もその分広がります。

フルスクラッチ型は、初期費用そのものが他基盤より高額です。また、保守は自社または開発パートナーへの継続発注が前提になるため、長期的な体制構築と合わせて運用コストを見積もります。

決済機能があるシステムでは、決済手数料が取引のたびに継続して発生します。

ポイント

初期費用だけで選ばず、保守の手間を抑えたいならASP型・クラウド型、独自仕様を多く入れるならカスタマイズ量に応じた保守費を見込むのが目安です。

継続的なUI/UX改善の運用体制とコスト

分析、仮説、改善、検証を循環させるUI/UX改善の図解
検証結果が次の改善の出発点になります。

体験を磨き続ける運用コストは、基盤の利用料とは別に予算化します。これを軽視すると、公開直後の評価は高くても、効果が長続きしなくなります。

A/Bテスト・データ分析に基づく改善サイクル(PDCA)の体制設計

改善の成果を確かめるには、分析から検証までを一つの運用としてまとめます。

  • 分析:アクセス解析やヒートマップで、利用者の行動を把握します。
  • 仮説と改善:離脱の要因を考え、施策を実施します。
  • 検証:A/Bテストとデータ分析で効果を確認します。

継続的なUI/UX改善は、「分析→仮説→改善→検証」のPDCAで進めます。担当者とツール、レビューの頻度まで決めて、運用の体制を整えます。

近年は、クリックやスクロールのパターンをAIで解析する方法もあります。さらに、自動分析で離脱ポイントを定量的に把握する導入も進んでいます。ツールの利用料も、継続的な運用コストに含めます。

単発の施策で終わらせず、改善サイクルとして仕組み化することが、投資対効果を高める鍵になります。

デザインシステム・ブランドガイドライン整備による改修コスト効率化

共通ルールを整えておくと、画面改修で一貫性を保ち、担当者の引き継ぎにも役立ちます。

  • 共通UI:部品をそろえ、改修時の確認作業を減らします。
  • ブランドルール:画面ごとの表現のばらつきを抑えます。
  • 引き継ぎ:担当者が変わっても意図を共有できます。

画面ごとにUIパターンが異なると、改修のたびに確認と修正が必要になります。ボタンの配置や色使い、フォントサイズがばらつくと、確認の手間がさらに増えます。

共通UIコンポーネントとブランドガイドラインを整えます。デザインシステム化すると、複数人で作業しても表現の一貫性を保てます。その結果、長期的な改修コストが下がります。

ただ、デザインシステムの整備自体には初期投資が必要です。その後は、担当者が異動や交代をしても引き継ぎコストを抑えられ、保守・運用費用全体の安定にもつながります。

ポイント

改善費は、担当者と見直しの頻度が決まってから組むのが目安です。決まる前に初期費用だけで判断すると、改善の予算が後から足りなくなりがちです。

セキュリティ・保守運用コストの内訳

自社構築システムの日常運用、定期診断、運用保守の費用目安を示す3枚のパネル
診断費を月額換算すると、日常の運用費と並べて見積もれます。

体験をリニューアルしても、システムである以上はセキュリティ対策が必要です。特に自社構築のパッケージ型やフルスクラッチ型は、その費用を先に予算へ組み込みます。

脆弱性対応・バックアップ等の最低ラインコスト

日常のセキュリティ運用では、月額の最低ラインと、費用が増える条件を見ます。

  • 脆弱性対応:情報を収集し、必要な対応を行います。
  • バックアップ:日常的な取得と運用を費用に含めます。
  • 最低ライン:運用の土台として必要になる月額の目安です。

自社構築システムの運用には、最低でも月額2万〜5万円程度かかります。これはあくまで最低ラインで、規模やデータの重要度によって金額は増えます。

見た目や使い勝手を磨いても、裏側の対策が疎かでは危険です。情報漏えいなどのインシデントが起きると、リニューアルで積み上げたブランドイメージが一瞬で失われかねません。

脆弱性診断等の変動コストと合計イメージ

定期診断や専門人材まで含めて、セキュリティ費用の総額を見積もります。

  • 定期診断:最低でも年額100万円以上を見込む必要があります。
  • 月額換算:診断費は月額約8万円〜に相当します。
  • 合計イメージ:運用保守だけで最低月額10万円程度です。
  • 追加費用:専門人材の人件費が上乗せされます。

診断費は年額で見込み、月額に換算したうえで日常の運用費と並べて確認します。さらに、デザイン運用費用と合算して、月次のランニングコストを把握します。基盤選定では、セキュリティ運用コストの水準差も判断材料にします。

ポイント

自社構築を選ぶ場合は、セキュリティ運用の最低ラインだけで予算を終えず、扱うデータの重要度で増える費用を別に見ておくのが目安です。

ランニングコストを最適化する視点

保守・運用費用は、体験の質を落とさずに無駄を省く視点で見直します。その視点が、長期的な費用対効果を高めます。

デザインシステム化による属人化防止と改修コスト圧縮

デザインシステムは、表現の統一だけでなく運用コストの削減にも使えます。

  • 部品の再利用:定義済みの部品で実装工数を減らします。
  • 属人化防止:担当者が変わっても意図を共有できます。
  • 初期投資:構築工数を先に予算へ組み込みます。

改修のたびにゼロからデザインを考えると、担当者の工数が膨らみます。定義済みのコンポーネントを組み合わせれば、デザイナーとエンジニアの双方で改修工数を抑えられます。

ガイドラインがあれば、担当者が交代しても意図を引き継げます。さらに、属人化による引き継ぎコストの発生も防げます。

初期予算にデザインシステム構築の工数を組み込んでおくことが、運用フェーズ全体のコストを引き下げる投資になります。

運用体制を計画段階から織り込む重要性

企画段階で運用の内容を決めておくと、費用対効果を高められます。

  • 担当者:公開後の改善を誰が担うかを決めます。
  • 頻度:どの周期で見直すかを計画します。
  • 予算:初期費用と運用費を、数年単位で分けて組みます。

公開後の改善担当者と見直しの頻度が決まっていないと、運用が止まります。整備したデザインシステムも活用されず、形骸化するおそれがあります。さらに、数年後に再びリニューアルが必要になる悪循環にもつながります。

初期構築費用と運用費用は切り離さず、数年単位のTCOで判断します。体験を継続的に磨ける体制まで含めて予算化することが、本質になります。

まとめ

リニューアル後は、体験を磨き続ける費用が必要になります。一般的なシステム保守に加えて、デザイン運用費用も発生します。この費用を見落とすと、リニューアルの効果は長続きしません。

基盤別に見ると、ASP型・クラウド型は5年で数百万円規模が目安です。一方で、パッケージ型は5年で1,500万〜4,500万円規模になり得ます。

自社構築では、セキュリティ運用の最低月額10万円も予算に含めます。そのうえで、初期費用だけでなく、数年単位のTCOで基盤を判断します。

体験を磨き続ける運用体制まで含めて、開発パートナーに相談しましょう。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。