レガシーシステム更改の発注先は、自社の課題と移行方式に合うかどうかで比べます。更改は数億円から数十億円規模になることもある大型投資なので、選定基準を定めてから提案内容を比べます。
6社に加え、SIerの分類、予算の伝え方、契約上の注意も扱います。全体像は下の記事で確認できます。
▼全体ガイドの記事
・レガシーシステム更改の完全ガイド
レガシーシステム刷新を依頼する会社の選び方やRFPの作り方については、無料ホワイトペーパー「レガシーシステム刷新の完全ガイドブック」で詳しく解説しています。
レガシーシステム更改を依頼できる会社の種類と選び方

SIerは成り立ちによって得意領域が異なります。そのため、自社の移行課題と各社の強み・制約を照らし合わせることが、候補を絞る出発点になります。
SIerの5つの分類とレガシー更改時の強み・弱み
5分類は、会社の優劣を決める序列ではなく、候補企業の出自と、自社に必要な業務知識・技術・中立性を見比べるための観点です。
- メーカー系:自社製品とインフラに強く一貫対応しやすい反面、独自技術への依存が懸念点になります。
- ユーザー系:親会社の業界知識が深く、同業の基幹更改に強い一方、他業界での経験は確認が必要です。
- 独立系:複数業界の知見と柔軟性があり、特定製品に偏らない提案が期待できます。
外資系とコンサル系は、グローバル対応や経営視点の要件整理が強みです。
- 外資系:グローバル手法と大規模刷新の経験が強みですが、費用や担当者の継続性を見ます。
- コンサル系:経営視点の要件整理に強い一方、実装を担う会社や現場の技術力を確認します。
たとえば独立系にはTISや大塚商会、外資系にはIBMやアクセンチュアがあります。ただ、分類だけで決めず、提案時に担当チームが実際に担う範囲を確かめてください。
自社の課題タイプ別|最適なパートナーの選び方
選定では、先に更改の目的を分けておくと候補の方向性が見えてきます。技術移行、業務改革、システム統合では、必要な経験が異なるからです。
- 技術移行:COBOLからJavaへの移行なら、変換ツールと移行実績が判断材料になります。
- 業務改革:業務プロセスも見直すなら、業務知識と技術力を併せ持つ会社が候補になります。
- システム統合:複数の旧システムをERPなどへ集約した経験を重く見ます。
技術移行では独立系やメーカー系、業務改革ではコンサル系や業界特化のユーザー系が候補になります。システム統合の場合は、外資系やパッケージに強い独立系も検討対象に入ります。
社内にIT人材が少ない場合は、PMO支援を含めて一貫して任せられる体制が必要になります。一方で、技術者がいる企業であれば、必要な工程だけを委託する部分発注で費用を調整する方法もあります。
株式会社ripla|コンサルから開発まで一気通貫で支援
riplaは、コンサルティングから開発まで一気通貫で支援する企業です。IT事業会社として社内DXを推進してきた経験を生かし、ビジネスの成果創出とシステムの定着支援に強みがあります。
営業・顧客・生産・販売管理など、幅広い基幹システムの構築・導入実績があります。企業の業務要件に合わせて柔軟に対応できる体制も整えています。
レガシーシステムの更改では、現行業務を洗い出すところから要件定義、新システムの設計・開発、導入後の定着支援まで、ワンストップで依頼できる点が大きな魅力です。
特徴と強み
riplaの特徴は、自社DXの現場経験を要件整理から開発・定着までつなげる点です。
- 現場起点:事業運営で得た知見を、利用者目線の提案に生かします。
- 一貫体制:同じチームが要件定義から開発まで担い、情報の引継ぎを保ちます。
riplaの強みは、「IT事業会社」としての自社DX経験を持っていることです。多くのSIerが「外から設計する」立場であるのに対し、riplaは自ら事業を運営しながらシステムを内製・改善してきた経験があります。
この経験が、「現場でどんな問題が起きるか」「どのタイミングでどんな機能が必要になるか」というユーザー視点での提案力に直結しています。レガシー更改で陥りがちな「技術的には正しいが現場に定着しないシステム」を避けるための知見が、riplaの最大の競争優位です。
コンサルティングフェーズから同じチームが開発まで担当するため、要件定義の内容が開発に正確に引き継がれます。上流コンサルと開発ベンダーが分かれる体制では、情報ロスや責任の押し付け合いが起きることもあります。riplaはプロジェクト全体を一貫して担当し、レガシー更改でも関与を続けます。
得意領域・実績
基幹業務の刷新を中心に、移行方式と企業規模の両面で支援領域を広げています。
- 対象業務:営業・顧客・生産・販売管理などの基幹系を扱います。
- 移行と体制:古い資産のWeb化やクラウド移行に対応し、規模に応じて範囲を調整します。
riplaは、基幹系システムの更改や新規構築で豊富な実績を持っています。スクラッチ開発の古い基幹システムを、モダンなWebアプリやクラウド基盤へ移す支援の経験もあります。
業務を洗い出す作業と新システムの設計を並行して進める独自の進め方も、評価されています。さらに、中堅・中小企業から上場企業まで幅広い規模の支援実績があり、予算規模に応じたスコープ調整にも柔軟に対応できます。
公式サイト:https://ripla.co.jp
株式会社NTTデータ|国内最大規模の実績と生成AIを活用した刷新力
NTTデータは、NTTグループの中核を担う大手SIerで、売上規模・従業員数ともに国内最大級の独立系SIerです。
金融・公共・製造・流通など、幅広い業界で大規模システムを開発・運用しています。金融機関の勘定系や官公庁の基幹系など、超大型レガシーシステムの更改実績も豊富です。
平均年収は923万円(有価証券報告書ベース)と業界でも上位水準にあり、高度な専門人材を多数抱えていることが、提案・実行品質の高さにつながっています。
特徴と強み
仕様の復元を含む独自手法に、COBOL資産の解析や海外案件への対応を組み合わせています。
- N字開発モデル:IT企画と仕様復元を加え、設計書が乏しい資産の更改を支えます。
- 解析と統合:生成AIによるCOBOL解析や、海外拠点を含む統合案件にも対応します。
NTTデータの最大の強みである「N字開発モデル」は、従来のV字モデルをもとに、レガシー更改に特化して設計された独自の開発手法です。
特に、長年改修が繰り返されてきたCOBOL資産の移行では、このアプローチが他社との大きな差別化要因になっています。
生成AIがCOBOLコードから不足する設計書を補うことで、ドキュメント整備コストを大幅に抑える効果が期待できます。
近年は、COBOLコードの仕様を自動で解析する生成AIのソリューションも提供しています。グローバルにも展開しており、海外拠点をもつ企業の統合案件も手掛けています。
得意領域・実績
金融や公共、製造の大規模刷新と、仕様把握が難しい資産の更改に実績があります。
- 対象領域:金融勘定系、官公庁・自治体、製造業の生産管理を扱います。
- 規模と難度:数百億円規模や、設計書・仕様が不足する案件にも対応します。
金融機関の勘定系システムから製造業の生産管理システムまで、業種・規模を問わず手掛けてきた実績があります。
国内でも指折りの大規模プロジェクト経験があり、超大型案件を支えられる組織力と体制を備えています。特に「設計書が存在しない」「仕様が口伝になっている」といった難度の高いレガシー更改では、業界内でも有数の成功実績があります。
公式サイト:https://www.nttdata.com/jp/ja/
富士通株式会社|「攻めのモダナイゼーション」と500名体制の専門組織
富士通はメーカー系SIerの代表格であり、半世紀以上にわたって日本の基幹系システムを支えてきた実績を持ちます。2024年時点で、メインフレームのユーザーは320社、UNIXサーバーのユーザーは640社です。こうした顧客基盤を生かし、自社製品を使う企業のレガシー更改を支援します。
同社のモダナイゼーション事業は前期比67%増と成長しており(2024年度見込み2,680億円)、全社を挙げた戦略領域として位置づけられています。平均年収は929万円(有価証券報告書ベース)と高水準で、優秀な人材の確保と提案品質の維持に貢献しています。
特徴と強み
既存基盤の移行に加え、刷新後の成長を見据えた専門人材の育成や自動化を進めています。
- 人材育成:「モダナイマイスター」制度を設け、2026年の500名体制を目指します。
- 移行支援:PROGRESSIONやクラウド各社との協業で移行を支援します。
富士通の特徴は、「攻めのモダナイゼーション」を掲げ、単なるシステム移行にとどまらず、移行後のビジネス成長を見据えた刷新戦略を提案できる点です。人材面では、「モダナイマイスター」制度が2024年4月に新設されています。
自動化サービス「Fujitsu PROGRESSION」は、世界で50社以上のメインフレーム移行に使われています。移行コストと工数を大幅に削減できる点が特徴です。さらに、AWSなどの主要クラウドとも協業しており、オンプレミスの基幹系をクラウドネイティブなアーキテクチャへ刷新する案件でも強みを発揮します。
富士通製品ユーザーであれば、現行システムの内部構造を熟知したエンジニアが担当するため、仕様の把握・移行計画の精度が他社に比べて高くなる傾向があります。
得意領域・実績
製造・金融・流通の大規模刷新を検討する企業、とりわけ富士通基盤を使う組織が候補にできます。
- 事例:製造業の36ヶ月・約20億円の移行、金融業の48ヶ月・60億円超の刷新があります。
- 対象業種:製造・金融・流通の基幹系更改に対応します。
製造業ではメインフレームの移行を、金融業では保守ビジネスの刷新を手掛けてきました。さらに、業種を横断するモダナイゼーションのノウハウが豊富で、その点が高く評価されています。
特に、富士通製メインフレームやUNIXサーバーからの移行を検討している企業にとっては、最有力候補のひとつです。
公式サイト:https://www.fujitsu.com/jp/
TIS株式会社|「Xenlon~神龍」の特許技術による高品質なリライト移行
TIS株式会社はTISインテックグループの中核を担う独立系SIerで、金融・製造・流通・公共など幅広い業界でのシステム開発・運用実績を持ちます。
レガシーシステムのモダナイゼーションで高い評価を受けており、独自サービス「Xenlon~神龍」は、複数の特許技術を持つリライトマイグレーションサービスです。
中期経営計画(2024〜2026年)でも、モダナイゼーション事業を成長領域に位置づけています。産業ITと金融ITの両分野で、事業を広げる方針です。
特徴と強み
Xenlon~神龍は、移行後の保守性とクラウド選択肢を重視する企業に向くサービスです。
- 変換技術:Java環境の性能・保守性・拡張性を高める6つの特許技術を備えます。
- 実行体制:500名超の経験者と、AWS・Azure・GCPを含む選択肢があります。
TISの最大の強みは、リライトマイグレーション専用サービス「Xenlon~神龍」の技術力の高さです。
単なるコード変換ではなく、移行後のJava環境で長く保守できる設計を重視しています。特許技術がその核になっています。
国内外のパートナーを含む開発リソースが、大規模かつ長期にわたる更改で計画を遂行する力を支えています。
独立系SIerならではの、特定ベンダー製品への依存のなさも大きなメリットです。特定のハードウェアやOSに縛られず、AWS・Azure・GCPへの移行を提案できます。マルチクラウドも視野に入れ、長期的なコストを考慮した選択肢を示します。
得意領域・実績
COBOL資産の再構築や、古い開発環境からの移行を検討する企業が対象になります。
- 業種と方式:金融、製造、流通の基幹システムを、リライトやオープン化で移行します。
- 対象資産:PowerCOBOLのWebアプリ移行にも対応します。
金融機関では勘定系・チャネル系のリライトを手掛けています。製造業のCOBOLからJavaへの移行や、流通業の基幹系オープン化にも実績があります。
「Xenlon~神龍」で経験を積んだ人材が多数在籍しており、プロジェクト品質の均一化と高水準維持に強みがあります。
古い開発ツールで構築された資産にも対応範囲を広げています。
公式サイト:https://www.tis.jp/
株式会社日立ソリューションズ|ITモダナイゼーションセンターを核とした段階的移行支援
株式会社日立ソリューションズは、日立製作所グループのITソリューション会社として、エンタープライズ領域での豊富な実績を持つメーカー系SIerです。
「ITモダナイゼーション支援ソリューション」を整え、保守費用の増加や製品サポート終了、技術者不足といった課題に、段階的な解決策を提供しています。
日立製作所グループ全体の技術基盤を活用できる点も、同社ならではの強みです。
特徴と強み
専任組織とAzureを軸にしたサービスで、現状診断から運用安定化まで扱います。
- 専任支援:ITモダナイゼーションセンターがWindows・Azure移行を体系化します。
- 対象範囲:アプリ、運用、DB、ジョブの移行やAzure運用を支援します。
マイクロソフト製品のサポート終了を契機に、移行支援の体系を整えてきました。着手範囲が定まらない企業も、現状診断から始められます。
「ビジネスソリューション on Microsoft Azure」は、ビジネスアプリケーション、開発支援、移行、マネージドサービスの4領域で構成されます。これらを通じて、移行後の運用安定化まで支援します。
日立製作所グループの平均年収は935万円(有価証券報告書ベース)と高水準で、優秀な人材の確保・維持を示す指標といえます。
得意領域・実績
Microsoft製品のサポート終了に備え、段階的にAzureへ移行したい企業に適します。
- 主な移行元:Windows ServerやSQL ServerからAzureへの移行が中心です。
- 進め方:調査・設計・パイロット・本格移行の4段階で進めます。
オンプレミス基幹系のクラウド移行実績が豊富で、マイクロソフト製品からの移行案件を中心に手掛けています。
製造・流通・サービス業を中心とした中堅〜大企業への対応実績が多く、サポート終了製品を使い続けるリスクを解消したい企業にとって信頼性の高い選択肢です。段階的な移行アプローチは、リスクを抑えながら確実に移行を進めたい組織に適しています。
公式サイトはこちら:日立ソリューションズ
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)|独自サービス「re:Modern」でレガシー資産を最適化
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、伊藤忠商事グループのITサービス会社です。ユーザー系SIerの強みを生かし、多業界のシステム開発やインフラ構築を手掛けています。
2025年10月、独自サービス「re:Modern」の提供を始めました。レガシー資産の活用方法の分析から、実際の移行・刷新まで支援します。
伊藤忠グループのネットワークを生かした、幅広い業界知見と豊富なパートナーシップが強みです。
特徴と強み
re:Modernは、資産の現状評価を起点に、方式選定から運用まで段階的に支援します。
- 移行計画:優先度と方式を整理し、リスクを抑えた計画づくりを助けます。
- 中立性:インフラ・クラウド・アプリを扱い、複数技術から提案します。
「re:Modern」では、既存のレガシー資産を洗い出して評価するアセスメントサービスを核に据えています。
特に、「どのシステムをいつまでに、どの方式で刷新すべきか」を丁寧に整理し、リスクを最小化した移行計画の策定を支えるところが特徴です。
インフラ・クラウド・アプリケーションに幅広く対応し、特定の技術に依存せず、複数の選択肢から提案できる点も強みです。
国内外の主要クラウドやソフトウェア各社と連携しています。最新技術について、早い段階から実証実験や提案を行えます。
同社は、ITインフラの構築・運用保守でも長年の実績があり、移行後の安定運用まで継続的にサポートする体制が整っています。
得意領域・実績
多業種の基盤移行に加え、アプリ再設計やコンタクトセンターのDXも対象です。
- 業種:製造・流通・金融・エネルギーなどの移行を手掛けます。
- 強み:大手商社や製造業グループの業務知識を提案に生かします。
多業種にわたるITインフラの構築・移行で、実績を積み重ねています。
オンプレミスからクラウドへの移行を支え、アプリケーションの再設計もあわせて扱います。コンタクトセンターのDX化など、ITシステム全般に対応します。
特に大手商社・製造業グループ会社での基幹系更改では、業界固有の業務知識と技術力を組み合わせた高い提案品質が評価されています。
公式サイト:https://www.ctc-g.co.jp/
失敗しないベンダー選定の実践テクニック

レガシー更改は大規模で期間も長くなりがちなため、ベンダー選定では、価格に加えて技術力・実績・財務健全性・管理体制を複数の軸で比べることが、納得できる選定につながります。
発注担当者が知っておきたい実践的な選定テクニックを3つ取り上げます。
RFPにおける予算提示の駆け引き術
見積もりの比較の基準を保つには、RFPで要件を示し、予算提示の順番を調整することが大切です。
- 先に要件を提示:要件を明確にし、まず複数社へ見積もりを依頼します。
- 後から予算を調整:中央値で相場を見た後、自社予算と交渉します。
RFP(提案依頼書)を作成する際、発注側が陥りやすいミスのひとつが「予算上限を明記してしまうこと」です。
予算を示すと、ベンダーはその金額を基準に見積もりを作りがちです。その結果、複数社の見積もりが上限額に近づき、適正価格を比べにくくなります。これでは、適正価格を判断する比較の基準が失われてしまいます。
有効なのは、「予算は非提示で複数社に提案させ、見積もりを出した後に予算感を調整する」という順序で進めることです。
RFPにはスコープ(機能要件・非機能要件)を記し、予算の記載は省いたうえで5社程度に提案を依頼します。
発注側は、適正価格の感覚を持ったうえで交渉に臨めるため、値引き交渉でも主導権を握りやすくなります。
予算感が全くない場合は、発注側が「参考予算帯」として「〇〇円〜〇〇円程度を想定」という形で幅を持たせて伝えることも有効です。
スコアリング評価+定性評価の併用法
数値による比較に、実際にプロジェクトを担う人材の確認を組み合わせることが欠かせません。
- 定量評価:技術・管理・価格・サポート・財務に配点し、独立採点します。
- 定性評価:提案メンバーの参画予定と、担当者の経験を確かめます。
配点は、技術力・実績30点、管理体制25点、価格20点、サポート15点、財務健全性10点などを、事前に決めておきます。各評価者の点数を集計し、その結果を比べます。
独立採点と集計によって、「なんとなく印象が良かった」という主観バイアスを排除し、客観的な根拠に基づく選定ができます。一方、定性評価として大事なのが「キーパーソンの質」の見極めです。
提案時に登壇したコンサルタントが実際にプロジェクトに関わるのか、提案専任の担当者で作業は別チームが行うのかを確かめておく必要があります。
提案メンバーが実際のプロジェクトにも参加するかどうかは、約束として確認しておきます。可能であれば、担当予定者の職歴や過去の案件経験も開示してもらうと、判断材料が増えます。
TDB評点の見方と与信チェックポイント
長期案件では、契約前にTDB評点や公開財務情報を確認し、取引を続けられるかを評価します。
- 評点の目安:60点以上、50点台、40点台以下をそれぞれの目安として見ます。
- 確認資料:非上場企業はTDB、上場企業は有報や決算短信を活用します。
レガシーシステム更改は3〜5年、場合によっては10年近くにわたる長期プロジェクトになることがあります。
プロジェクトの途中で、ベンダーが経営不振に陥ったり、M&Aで体制が一変したりするリスクもあるため、契約前の評価が求められます。その評価に役立つのが、帝国データバンク(TDB)の企業信用調査報告書に記載される「評点」です。
TDB評点は100点満点で、一般的に60点以上を優良企業、50点台を標準的な企業、40点台以下を注意が必要な企業の目安とします。
特に、非上場のベンダーや中堅規模のSIerに依頼する場合は、契約前にTDB調査報告書を取得し、財務状況・代表者の経歴・取引実績などを確かめることを勧めます。
上場企業であれば、発注側が有価証券報告書や決算短信から、自己資本比率・フリーキャッシュフロー・借入金依存度を確認することも有効です。
与信チェックは、相手を疑うためではなく、長期的なパートナーシップの健全性を担保する標準的なデューデリジェンスとして位置づけます。
ベンダーロックインを防ぐ契約時の注意点

レガシーシステム更改において、多くの企業が陥りやすい落とし穴のひとつが「ベンダーロックイン」です。
更改後も同じベンダーへの依存が続くと、保守費用の高止まり、機能追加の遅延、他社への乗り換えの難しさといった問題が繰り返されます。
更改プロジェクトの開始前、契約交渉の段階で、発注側はこれを防ぐための条項を盛り込んでおくことが欠かせません。
データ所有権・SLA・契約形態の取り決め
契約では、データの持ち出し条件とサービス水準、工程に合った契約形態を具体的に決めておきます。
- データとSLA:所有権・返却形式・稼働率の測定や例外条件を明記します。
- 契約形態:要件定義は準委任、開発は請負を基本に、仕様を固めます。
契約書に必ず盛り込むべき重要事項の第一は、「データ所有権の明確化」です。クラウドやSaaSを使う場合は、データの保管場所と所有者を定めておく必要があります。
さらに、契約終了時の返却・エクスポート形式も契約書に明記します。「契約終了後30日以内に指定のフォーマットでデータを返却する」という条項は必須と考えてください。
第二は「SLA(サービスレベル合意)」の具体化です。「稼働率99.9%以上」といった書き方では条件が曖昧なため、計測方法や対象時間、ペナルティの条件・金額、計画停止などの例外を具体的に定めます。
第三は「契約形態の選択」です。準委任契約は成果物ではなく、SEの稼働時間に対する報酬契約のため、品質基準が曖昧になりがちです。
レガシー更改の開発フェーズでは請負契約を基本とし、上流の要件定義フェーズのみ準委任にするという分け方が、発注側の権利を守るうえで有利です。ただし、仕様が不明確なまま請負にすると、多額の追加費用が発生するリスクもあります。したがって、要件定義を丁寧に行ったうえで移行することが前提です。
脱ベンダーロックインの具体的ステップ
技術、成果物の所有権、移行後の保守体制を整えておくと、将来の選択肢を保てます。
- 技術と文書:オープン標準を優先し、設計書やAPI仕様を自社で管理します。
- 保守計画:コード・設計書の帰属を定め、担当者と中長期計画を用意します。
レガシーシステム更改後のベンダーロックインを防ぐには、技術選定の段階からオープン標準・オープンソースを優先することが重要です。
独自言語や独自フレームワーク、独自データ形式に依存すると、他社へ保守を移す際の費用が膨らみます。その結果、ベンダーを変更しにくくなります。
技術選定の際は、「5年後に別ベンダーに保守委託できるか」という基準で評価することをお勧めします。
次に欠かせないのが、ドキュメントの充実です。設計書、API仕様書、データモデル、インフラ構成図を納品物として契約に記載し、納品後は自社で保管・管理できる状態にします。
発注者は、「ソースコードと設計書は全て発注者に帰属する」という知的財産権に関する条項も、忘れずに盛り込んでください。
本番移行後の1〜2年は、保守担当者を少なくとも2名確保します。そのうえで、内製化の可能性も含めた中長期の保守計画を立てることが、依存を減らす道筋になります。
まとめ
レガシーシステム更改を依頼できるおすすめの6社と、失敗しないベンダー選定の実践知識をまとめました。
メーカー系・ユーザー系・独立系・外資系・コンサル系の違いを把握し、各社の強みと自社の課題を照らし合わせることが、候補を絞る第一歩です。
紹介した6社は、それぞれ異なる特徴を持ちます。riplaはコンサルから開発まで一貫して柔軟に対応し、NTTデータは国内最大規模の実績と生成AI活用を強みとします。
富士通は「攻めのモダナイゼーション」を掲げ、500名体制を目指します。TISは6つの特許技術を持つリライトサービスが特徴です。
日立ソリューションズは段階的な移行を重視します。CTCは独自サービス「re:Modern」で、レガシー資産の最適化を支援します。
どの会社が適しているかは、案件の性質・規模・業種によって異なります。選定では、RFPで予算を示さない方法や、スコアリングと定性評価の併用が役立ちます。
TDB評点による与信確認と、ロックインを防ぐ契約条項の整備も有効です。4つの実践策を組み合わせると、選定精度と交渉力を高められます。
レガシーシステムの更改は、企業のIT基盤を根本から変える重要な投資です。この記事を参考に、信頼できるパートナーとともに移行を成功させてください。
更改の計画や移行方式を整理するときは、全体ガイドも参照できます。
▼全体ガイドの記事
・レガシーシステム更改の完全ガイド
▼RFP作成前に読みたい無料ホワイトペーパー
・レガシーシステム刷新の完全ガイドブック
・【2026年最新版】AI駆動開発の完全ガイドブック
会社紹介
株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。
