マッチングサイトのリニューアルの開発期間・スケジュール・納期について

マッチングサイトのリニューアルの開発期間は、作り込む範囲で変わります。クラウド型のテンプレート活用なら約1〜3ヶ月、フルスクラッチなら半年〜1年以上が目安です。本記事は、会員体験の改善を起点とするスケジュールを扱います。

本テーマに関する全体ガイドは、以下の記事をご覧ください。

▼全体ガイドの記事
・マッチングサイトのリニューアルの完全ガイド

  • マッチングサイトのリニューアルの位置づけと、ほかの刷新の取り組みとの違い
  • 開発期間・スケジュールの全体像と、規模別の期間配分
  • マッチングサイト特有のUX/UI刷新が納期に与える影響

マッチングサイトのリニューアルの位置づけ(UX/UI・顧客体験起点という論点)

同じ「マッチングサイトを作り替える」でも、何をきっかけに動き出すかで、スケジュールに影響する要因はまったく変わります。そのため、開発期間を見積もる前に、本記事が扱う論点の位置づけを確認しておきます。

モダナイゼーション「HOW」・刷新「WHY/WHEN」・更改「期限管理」との違い

「マッチングサイトのモダナイゼーション」は、古いPHP/Railsのモノリスで構築された既存基盤を対象にした、エンジニアや情報システム部門向けの手法論です。7Rの技術的アプローチを、マッチングアルゴリズムの陳腐化に落とし込んで解説します。

「マッチングサイト刷新」は、マッチング成立率の低下という事業インパクトを示し、経営層への説明と稟議承認までの経営判断に重心を置きます。「マッチングサイト更改」は、保守契約の満了やEOS/EOLといった、自社の意思とは関係なく到来する期限への対応に特化しています。

これに対し本記事のリニューアルは、マーケティング部門や事業責任者、CS部門が主導し、「顧客からどう見えているか」を起点にします。会員登録フォームの見劣りや、スマホでの検索・閲覧のしにくさ、メッセージ画面の使いにくさを解消し、新規登録率・マッチング成立率・ブランドイメージを向上させることが目的です。技術的な刷新手法や経営判断、期限管理は、この目的を果たす手段として扱います。

登録導線・プロフィールUI・メッセージUIの陳腐化が引き金になる特徴

マッチングサイトのリニューアルのきっかけは、アルゴリズムの精度が悪いといった技術的な不全より、会員からの見え方への違和感であることが多いです。たとえば、登録フォームが長くて途中で離脱される、プロフィール一覧や検索結果が古く感じられる、といったものです。また、メッセージ画面が使いにくい、スマホでボタンが押しにくいといった点も挙がります。

この違和感は損益計算書には直接現れませんが、GA4などのアクセス解析を見ると、登録フォームの離脱率の高さやプロフィール閲覧後の検索継続率の低さとして、数値にじわじわ表れています。Webサービス全般のデザイン・UIの寿命は、一般に3〜5年程度が目安とされています。

この周期を過ぎると、トレンドから取り残されるだけでなく、モバイル対応の甘さやメッセージUIの古さが、新規会員登録の意欲を削ぐリスクが高まります。開発期間を見積もる出発点は、会員体験の課題をどこまで抜本的に作り替えるかという範囲設定にあります。

開発期間・スケジュールの全体像(規模別の期間配分)

クラウド型、パッケージやオープンソース、フルスクラッチの開発期間を並べた図
独自性を高めるほど、公開までの期間も長くなる構成です。

開発期間は、デザインとシステムをどこまで作り込むかという規模によって、数週間から1年以上まで大きく変わります。そのため、まずは自社のリニューアルがどの規模にあたるかを把握することが、現実的なスケジュールを描く第一歩になります。

クラウド型(SaaS)活用〜フルスクラッチまでの期間レンジ

マッチング機能を備えたクラウド型(SaaS)のテンプレートを使い、配色やロゴといった一部のカスタマイズにとどめる場合、期間の目安は約1〜3ヶ月です。デザインの枠組みと会員管理・検索の基本機能が整った状態から始められるため、制作工数を大きく抑え、短期間での公開が可能です。

パッケージやオープンソースをベースに、独自のプロフィール項目設計や検索UIの調整まで踏み込む場合は、約4〜8ヶ月を見込みます。検索・会員登録・メッセージ・決済を備えるマッチングサイトは、一般に中規模〜大規模のWebシステムです。ワイヤーフレームからデザインカンプの作成、レスポンシブ対応の検証まで一つずつ積み上げるため、テンプレート活用より工数が増えます。

既存のSaaSやパッケージでは実現できない、完全独自の登録体験・マッチングUIを追求するフルスクラッチの場合は、半年〜1年以上と最も長期化します。そのため、自社がどの規模を目指すかを早期に決めておくと、後工程の手戻りを防ぐうえで役立ちます。

目的設定〜公開までの標準的な工程別スケジュール

中規模のマッチングサイトのリニューアル(4〜8ヶ月程度)を例にすると、標準的な工程は次のように進みます。まず、目的設定と現状の課題抽出(登録フォームの離脱率、検索継続率、メッセージ送信率などの分析)に約2〜4週間をかけます。続いて、要件定義と制作・開発会社の選定に約3〜6週間を要します。

次に、会員登録画面・プロフィール一覧・検索結果・メッセージ画面といった主要ページのレイアウトを決めるワイヤーフレームとデザイン制作に、約1〜2ヶ月をかけます。この段階で、スマートフォンでの見え方(レスポンシブデザイン)や必須入力項目の絞り込みを丁寧に詰めます。

デザインが固まった後は、コーディングと会員データ移行の準備を並行して約1〜3ヶ月進め、最後に最終テストとサイトの切り替え・公開に約2〜3週間を充てるのが一般的です。この工程配分を把握しておくと、どの段階にどれだけの社内リソースを割く必要があるかを事前に見通せます。

ポイント

期間は規模で大きく変わるため、クラウド型かフルスクラッチかを早めに決めると、後工程の手戻りを防ぎやすくなります。

マッチングサイト特有のUX/UI刷新が納期に与える影響

需要側と供給側の画面設計、会員データ移行、再設定案内、リダイレクト設計を示す図
画面設計と移行準備は、並行して計画する論点です。

デザインを主軸にしたマッチングサイトのリニューアルには、コーポレートサイトやブログのリニューアルにはない固有の遅延要因があります。とくに、需要側と供給側という2つの異なるユーザー層を抱える点が、納期に響きます。

需要側・供給側それぞれの画面設計が求められる両面市場特有の検証工数

一般的なECサイトやコーポレートサイトのリニューアルは、単一のユーザー層(購入者・閲覧者)に向けた画面設計を検証すれば足ります。一方、マッチングサイトは、求人と求職者、発注企業と受注企業、スキル提供者と依頼者のように、性質の異なる2つのユーザー層それぞれに向けた画面設計と検証が必要です。

供給側のプロフィール登録画面と需要側の検索・閲覧画面は、求められる情報量や操作の優先順位がまったく異なります。そのため、片方だけを磨いてもう片方を後回しにすると、需給のバランスが崩れ、マッチングそのものが機能しなくなるおそれがあります。二画面を同時に磨き込む構造のため、デザインと検証の工数が、ページ数の見た目以上に押し上げられます。

スケジュールを組む際は、需要側・供給側それぞれのワイヤーフレームとデザインレビューを個別に計画し、両者の工数を見積もりに明示的に織り込んでおくことが重要です。

会員データ移行・パスワード再設定案内とカットオーバー設計

デザインを刷新すると、新旧サイトでプロフィール画像の規定サイズや入力項目の構成が異なることが多く、一括変換ツールで対応しきれない部分は手作業での整形が必要になります。

会員のパスワードや本人確認情報は、セキュリティの観点から原則としてそのまま新システムに移行できないケースが多く、リニューアル後に既存会員へパスワードの再設定を案内する必要が生じます。この案内を怠ると、久しぶりにログインしようとした会員がそのまま離脱するリスクが高まります。そのため、案内メールの準備もシステム開発と並行して組み込むことが欠かせません。

URL構造が変わる場合は、検索エンジンからの評価を引き継ぐための301リダイレクト設計も必要です。また、切り替え直後は想定外の離脱や操作の戸惑いが起きやすいため、年間を通じて登録・マッチングの動きが最も落ち着く時期にカットオーバーを設定し、そこから逆算してスケジュールを組み立てるのが基本方針です。

ポイント

需要側と供給側それぞれの画面設計・検証工数を見積もりに明示して織り込めているかが、納期の見通しを立てる目安になります。会員データ移行の準備も、同じスケジュールに入れておきます。

登録率・マッチング成立率を落とさないための段階的リリース設計

優先画面の作り込みからA/Bテスト、指標の確認、全面公開へ進む流れを示す図
公開前の検証結果を確認してから全体へ展開します。

リニューアルの目的は、会員体験・登録率・マッチング成立率の改善です。全画面を一度に作り替えて公開すると、本当に効果があったのかを検証しづらくなります。そのため、段階的なリリース設計を取り入れると、納期短縮と効果検証を両立できます。

MVPの優先度付けとA/Bテストを組み込んだ段階公開

マッチングサイトのリニューアルの成功確率を高める進め方として有効なのが、MVP(Minimum Viable Product)の考え方です。登録導線やプロフィール検索など、登録率・マッチング成立率への影響が大きい画面から先に作り込みます。

全画面を一斉に切り替える前に、旧UIと新UIを一部の会員セグメントに同時に提示するA/Bテストを行い、登録完了率や検索継続率、メッセージ送信率の改善をデータで示します。そのうえで全面公開に踏み切れば、「リニューアルしたのにマッチング成立率が下がった」という致命的な事態を未然に防げます。

この検証工程をスケジュールに組み込むと、一見納期が延びるように見えます。ただし、公開後の大規模な手戻りを防げるぶん、トータルではリスクの低い進め方になります。

閑散期・低アクティブ期カットオーバーの逆算スケジュール

求人系のマッチングサイトなら転職シーズン、スキルシェア系なら繁忙期のように、需要側と供給側の活動が最も活発になる時期があります。その時期に新UIを公開すると、新レイアウトに不慣れな会員が離脱しやすく、トラブル対応も通常業務の繁忙と重なって機会損失に直結します。

そこで、自社サービスの登録・マッチングの動きが最も落ち着く閑散期に公開日を決め、要件定義からテストまでの各工程を逆算します。この逆算は、マッチングサイトのリニューアルでも欠かせない鉄則です。あわせて、A/Bテストによる段階公開の期間もこの逆算に織り込んでおけば、公開直前に検証期間が取れない事態を避けられます。

ポイント

登録率・マッチング成立率を守るには、影響の大きい画面から段階的に公開する進め方が目安になります。A/Bテストで効果を確かめてから全面公開へ進むと、公開後の大きな手戻りを防げます。

納期を守るための発注前準備とパートナー選定

期間の目安や遅延要因を踏まえると、納期を守るには、発注前の準備と、UX/UI領域の実績を重視したパートナー選定の両方が欠かせません。

要件概要書に盛り込むべき項目

発注前に要件概要書をまとめておくと、複数の制作会社・開発会社から比較しやすい見積もりとスケジュール提案を得られます。まず、アクセス解析データとともに、現状のUI上の課題(登録フォームの離脱率が高い画面、検索継続率の低い導線など)を整理します。

次に、リニューアルで実現したいブランドイメージと、ターゲットとなる需要側・供給側のユーザー像を書き出します。移行対象の会員データとプロフィール画像の点数と現状の品質、ビジネスカレンダーから逆算した希望公開時期も、あわせて書き添えます。

この段階でテンプレート活用にとどめるか、オリジナルデザインを追求するかという方向性を大まかにでも決めておくと、見積もりの精度が大きく高まります。

UX/UIリニューアル実績を重視したベンダー選定

依頼先を選ぶ際は、マッチングサイトの開発実績だけでなく、デザイン刷新によって登録率やマッチング成立率を改善した具体的な実績があるかを確認しましょう。ただし、システム構築の技術力が高くても、需要側・供給側それぞれのユーザビリティテストやA/Bテストの設計・分析に不慣れなベンダーだと、見た目だけ新しくなって数値が改善しないおそれがあります。

プロジェクト開始後は、デザイン・コーディング・会員データ移行それぞれの担当者を交えた週次の定例会議で、進捗と課題を共有します。さらに、全体工程に10〜20%程度のリスクバッファを組み込んでおくと、想定外の事象が起きても公開時期を守りやすくなります。

ポイント

発注前に要件概要書をまとめ、UX/UIリニューアルの実績がある会社を選ぶことが、納期を守る目安になります。全体工程には10〜20%程度のリスクバッファも見込んでおきます。

まとめ

マッチングサイトのリニューアルの開発期間は、目指す独自性の度合いによって大きく変わります。クラウド型活用の約1〜3ヶ月から、フルスクラッチの半年〜1年以上までの幅があります。

需要側・供給側という両面市場特有の検証工数や、会員データ移行・パスワード再設定という遅延要因を織り込むことが大切です。そのうえで、A/Bテストを組み込んだ段階公開により、登録率・マッチング成立率の改善効果を確かめながら進めます。

モダナイゼーションは技術手法(HOW)、刷新は経営判断(WHY/WHEN)、更改は期限管理が中心であるのに対し、本記事は、顧客からの見え方を起点とするリニューアルの期間を扱います。デザイン刷新の実績を持つ信頼できるパートナーに、早めに相談することをお勧めします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。