MESのモダナイゼーションの選定ポイント/選び方/種類

MESのモダナイゼーションは、老朽化の範囲と設備連携のリスクを把握してから、手法(5R)と開発会社を比べるのが基本です。

知名度や見積金額だけで決めると、PLC連携や生産実績データの移行で想定外の問題が起きるおそれがあります。そのため、刷新計画の検討材料として、自社に合う進め方を整理できます。

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MESのモダナイゼーション着手前に整理すべき自社の課題

MES刷新前に確認する保守担当者、設備接続、データ、生産管理システムの時期を示す図。
4つの現状をそろえると、比較する手法を絞り込みやすくなります。

手法を選ぶ前に、MESの老朽化と連携上の懸念を分けて整理します。さらに、隣接する生産管理システムの刷新が進んでいる場合は、時期や接続範囲も合わせて確かめます。

現状を把握するときは、次の観点で見ていくと、比べるべき手法やベンダーの経験を絞り込みやすくなります。

  • 保守できる人:内部構造を把握する技術者の有無
  • 設備との接続:PLCや独自通信規格の洗い出しの進み具合
  • データの状態:生産実績データの品質と移行上の懸念

ブラックボックス化と技術者不在の兆候

長年のカスタマイズで内部構造が分からず、担当技術者もいない状態では、保守と変更の難しさが課題になります。あわせて、OSやAPIの更新にかかる費用と、停止時に出荷や請求へ及ぶ影響も見ておく必要があります。

サーバーの老朽化と、工程進捗や実績収集ロジックのブラックボックス化とでは、適した刷新方法が異なります。まず課題の種類を明確にし、そのうえで候補を比較します。

設備連携の不確実性の確認

古いPLCや独自通信規格が多いと、MESとの直接接続が難しい場合があります。そこで、設備台帳や通信仕様書の有無と、生産実績データの状態を確かめ、洗い出しに必要な作業も見積もっておきます。

ポイント

技術者の有無や設備との接続、データの状態が分からないうちは、手法を絞り込まず、現状の整理を先に進めます。課題の種類を明確にしたうえで、候補を比べるのが順序です。

5R(リホスト/リプラットフォーム/リファクタリング/リビルド/リプレース)という選択肢の種類

MESの5Rを機能維持、内部やシステムの再構築、パッケージやSaaSへの移行に分けた図。
選択肢ごとに、手を入れる範囲が異なります。

5Rは、基盤を移すだけの手法からシステムを作り直す手法まで、変更の範囲に幅があります。そのため、分類名で決めるより、老朽化の程度や現場の制約に合うかを見ていく必要があります。

リホスト・リプラットフォームという軽量な手法

リホストは、既存のBOPや実績収集ロジックを保ったままインフラを移す方法です。ハードウェアの老朽化やEOSへの対応を急ぐ場合に、検討の候補になります。

リプラットフォームは、データベースやバッチの構造に手を入れながら機能を維持する方法です。ただし、複雑なロジックは残るため、ブラックボックス化の解消には追加の見直しが必要になります。

リファクタリング・リビルド・リプレースという抜本的な手法

リファクタリングは、外部機能を保ったまま内部ロジックを整理する方法です。そのうえで、新旧の実績や進捗が一致するかを回帰テストで確かめます。

リビルドはフルスクラッチで再構築し、データモデルも見直せます。一方で、初期投資と期間は大きくなります。リプレースはパッケージやSaaSへ移行し、標準機能に業務を合わせることで、保守性を高めやすくなります。

保守運用コストから考える5Rの比較軸

5Rを比べるときは、初期費用に加えて刷新後の保守運用費も見ておく必要があります。あわせて、老朽化を続けた場合に発生する負担も並べると、投資判断の前提を整理できます。

刷新後の保守費用相場という基準

保守契約にバグ修正や監視、問い合わせ対応を含める場合、年間費用は初期開発費の5〜15%程度が相場とされます。加えて、クラウドや自社インフラの維持費、OS・API変更に伴う更新費用も見込んでおきます。

手法ごとに費用の出方も異なります。リホストやリプラットフォームは初期費用を抑えやすい一方、リビルドは初期投資が大きく、そのぶん保守を単純化しやすい傾向があります。

SaaSへのリプレースは低コストで進めやすいです。ただし、過度なカスタマイズは新たなレガシー化につながるおそれがあります。

Fit to Standardという評価軸

刷新後の保守性を高めるには、標準機能に業務を合わせるFit to Standardも検討の候補に入れます。ベンダーの提案が標準機能を軸にしているか、個別カスタマイズを前提としているかを見ます。

ポイント

初期費用だけで比べると、刷新後の保守運用費や、標準機能に業務を合わせられるかを見落としがちです。保守契約の範囲と提案の軸を並べると、手法ごとの差がつかみやすくなります。

開発会社・ベンダーを比較する評価軸

開発会社を比較するPLC連携の実績、リハーサル移行、役割分担の3項目を示す図。
実績に加えて、作業の担い手と根拠を確認できます。

開発会社は、実績の有無だけでなく、どの作業をどのように担ったかまで確かめる必要があります。そのうえで、同じ質問を候補各社に投げかけ、回答と裏付けをそろえて比べます。

PLC・レガシー制御連携の実績

要件定義の初期に設備インターフェースを洗い出した経験を尋ねます。あわせて、独自通信規格に対してプロトコル変換やレトロフィットIoTを検討した実例も確かめます。

変換の必要性が開発後期に分かると、コスト超過につながるおそれがあります。そのため、初期調査の進め方と判断根拠を具体的に聞きます。

データ移行・リハーサル体制の実績

本番前のリハーサル移行を最低2回以上行うか、データクレンジングの範囲をどう定めるかを確かめます。さらに、切り戻し手順も演習に含めるかを尋ねます。

「移行できる」という説明に加えて、過去のエラーと対処内容を聞くと、実務上の対応力を比べやすくなります。

開発会社への丸投げを避ける体制

自社側にBOPや現場運用を判断できる担当者を置けるかを確かめます。開発会社に任せきりにすると、現場の暗黙知が仕様に反映されないおそれがあります。

コア機能から稼働させる段階的リリースの提案も、役割分担を確かめる材料になります。また、見積もりの内訳からは、要件定義から現場立ち会いまで、どの工程をどちらが担うかが読み取れます。

ポイント

候補ごとに、どの作業をどこまで担ったかと、自社と開発会社の役割分担の境目を同じ質問で比べます。PLC連携やデータ移行の経験も、その質問に含めて裏付けを求めます。

PoCとパラレルラン(機能等価性検証)の進め方

資料やデモだけでは、刷新後に現場で同じ結果が得られるかを判断しきれません。そこで、PoCで実環境の制約を確かめ、パラレルランで新旧の処理結果を比べます。

現場の物理的制約まで含めた検証

PoCでは、作業速度や作業員の導線、手袋・保護具を着けた状態での操作性も確かめます。移行後に従来と同じ結果を再現できるかどうかが、判断の中心になります。

リホストやリプラットフォームでは、既存の構造を保ったまま移行できるかを検証します。一方で、リファクタリングやリビルドでは、新旧の処理結果が一致するかを確かめます。

新旧システムを並行稼働させる検証方法

パラレルランでは新旧MESを同時に動かし、入力・更新・削除、実績収集、工程進捗の結果を比べます。データの整合性を確かめられてから、旧システムを止めます。

安全性を高められます。ただし、二重入力と同時運用の費用が発生するため、現場の負担も含めて実施期間を決める必要があります。

段階的カットオーバー計画の立て方

PoCとパラレルランで結果を確かめた後は、実際の生産ラインを新システムへ切り替える計画を立てます。切替は一斉に行わず段階的に進める前提で、生産計画やシフト表に照らして、自社でも実行可能かを確かめます。

段階移行方式と並行移行方式の選び方

段階移行は対象を絞れる一方で、切替の途中は新旧の運用が混在します。並行移行は安全性を高めやすい反面、二重運用の費用が続きます。

ライン数やシフト、繁忙期を踏まえて方式を選びます。複数ラインがある場合は、まず一つのラインで確かめてから展開する方法もあります。

ロールバック手順と緊急連絡体制の明文化

MESの細かな時間単位のデータと、ERPなどのバッチデータを無理にリアルタイムで連携すると、性能に影響するおそれがあります。そのため、連携の対象は必要なマスタに絞り、疎結合にしておきます。

リハーサルで測った停止時間をもとに、切り戻し手順と緊急連絡先を文書にまとめます。関係者が同じ手順を参照できる状態にしておきます。

ポイント

段階移行と並行移行のどちらにするかは、ライン数やシフト、繁忙期を踏まえて判断します。切り戻し手順は、リハーサルで測った停止時間をもとに文書にしておきます。

MESのモダナイゼーション選定で見落としやすいポイント

手法やベンダーを絞ったあとは、見積もりの前提や工場規模だけで判断していないかを見直します。加えて、検証期間の設定も、品質に関わる確認事項になります。

手法を決める前の対象範囲の確定

MES本体に加えて、PLC連携や生産管理システムとの受け渡しまで刷新の対象に含めるかを決めます。対象範囲を社内で整理してから相談すれば、見積もりの前提をそろえられます。

小規模な工場のモダナイゼーション

ラインが少ない工場でも、担当技術者が限られていたり独自通信規格の設備があったりする場合は、注意が必要です。優先度は、工場の規模より老朽化と連携の複雑さから決めます。

品質検証を優先したPoC・パラレルランの期間

パラレルランを急いで終えると、実績収集や工程進捗の小さな差を見逃すおそれがあります。また、生産量が変動する時期を含めて検証できるかも、期間を決める材料になります。

まとめ

MES刷新は、自社の老朽化と設備連携の課題を整理し、5Rを比べるところから始まります。そのうえで、保守費用とベンダーの実績・体制を確かめ、PoCや並行稼働で検証してから、切替計画を立てます。

保守運用コストまで含めた手法選定

刷新後の保守やバージョンアップまで含めて比べ、初期費用だけで判断しないようにします。また、標準機能を活用する提案かどうかは、長期的な保守性に関わります。

候補を絞ったあとの実案件でのPoC

最終候補は、PLC連携やデータ移行、段階的な切替の実務経験を確かめて決めます。標準機能で自社固有の設備連携や生産管理ロジックに対応できない場合は、フルスクラッチも選択肢になります。

riplaは、MES刷新の要件整理から構築まで支援しています。各社の製品候補はパッケージ・クラウド製品一覧で比べられます。

テーマ全体の概要は、MESのモダナイゼーションの完全ガイドで確認できます。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。