MES改修の保守・運用費用・ランニングコストについて

MES改修の保守・運用費用は、月額数万円から100万円以上まで、大きく開きがあります。その差を生むのは、改修の規模、保守の対象となる範囲、そして契約の形態です。改修の範囲が小さいほど、保守費用も抑えられます。

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MES改修の保守・運用費用の位置づけ

全面刷新・更改はシステム全体、MES改修は改修した画面や設備連携が保守対象になる比較図。
対象を絞ると、契約範囲も小さくなります。

保守費用は、システム全体を対象にするか、改修した一部だけを対象にするかで、桁が大きく変わります。見積もりでは、全面刷新と比べて保守範囲がどこまで違うかを先に確認します。

MES(Manufacturing Execution System:製造実行システム)の改修は、特定工程の実績入力画面や設備・PLC連携の一部を対象にする、範囲の限られた改修です。

全面刷新では、投資対効果(ROI)や中長期戦略との整合性が問われます。一方、部分改修では、月々の保守費用を払い続けられる水準かどうかで判断できます。

稟議では、改修による月額の増加額を経営層に示せます。また、全面刷新と比べて意思決定が速くなる傾向もあります。

他の刷新・更改との違い(保守対象範囲の広さと費用構造)

刷新や更改などとの違いは、どの範囲を保守の対象にするかにあります。

  • モダナイゼーション・刷新・リアーキテクチャ・リプレイス:システム全体を新しい環境、アーキテクチャ、製品へ移す取り組み。
  • 更改:保守契約の満了やEOS/EOLを起点とした、システム全体の入れ替えです。
  • リニューアル:実績入力画面など現場のUIを刷新し、稼働後はUI/UX改善を回し続ける体制の費用もかかります。
  • MES改修:改修した画面1つ、または追加した設備連携1件が保守対象です。

刷新や更改は、システム全体が対象になるため、稼働後の保守・運用契約も全体に及びます。これに対し、部分改修は対象が限られ、契約範囲も小さくなります。

既存のMES全体をカバーする保守契約がある場合は、改修分を追加するか、別契約にするかを選びます。その場合、既存契約に統合できれば、契約手続きと費用を抑えられます。ただし、既存ベンダーが新しい設備連携などに対応できず、別のベンダーへ依頼することになる場合もあります。

契約が分かれる場合は、契約全体を図や表にまとめておくと、費用の二重取りや責任範囲の空白を防ぎやすくなります。

保守費用の一般的な算出方法(改修費の年間15〜20%)

見積もりの出発点は、改修費に対する保守費用の割合です。

  • 一般的な目安:初期開発費または改修費の年間15〜20%。
  • 改修費500万円の場合:年間75万〜100万円(月額にすると約6万〜8万円)。

この割合は、全面刷新でも改修でも同じ考え方で算出します。ただし、母数となる金額が違うため、支払う保守費用の額にも大きな差が生まれます。

軽微な画面修正や文言変更だけであれば、年間契約を結ばず、スポット対応にする方法もあります。改修費が数十万円規模なら、年間契約より、不具合のたびに見積もりと請求を行うほうが総額を抑えられるケースも少なくありません。

どちらが有利かは、改修後にシステムへ手を入れる頻度で変わります。そのため、契約前に予定する改修頻度をもとに、ベンダーへ相談するとよいでしょう。

ポイント

見積もりを比べるときは、保守の対象が改修部分に限られているかを確かめ、改修費の15〜20%という目安と照らして判断します。

保守費用の相場感と全面刷新との比較

小規模改修は月額数万円〜10万円前後、中規模改修は約19万〜33万円、全面刷新は60万〜100万円以上の費用帯を並べた図。
規模が大きくなるほど、月額の目安も上がります。

実際の数値で見ると、部分改修と全面刷新の保守・運用費用は桁違いです。規模ごとに、相場を具体的に確認しておきます。

小規模改修の保守費用(月額数万円〜10万円前後)

特定画面の修正や単一のPLC連携であれば、保守対象を絞り込めるため、月額の固定費を抑えつつ必要なサポートを受けられます。保守の中心は、改修した実績入力画面の不具合や、連携先PLCの通信エラーへの対応です。

  • 月額:数万円〜10万円前後です。
  • 年額:50万〜150万円程度です。

多くのケースがこの範囲に収まり、中小規模の製造業でも社内予算で継続しやすい水準です。また、担当するエンジニアは1〜2名程度で済むことが多く、全面刷新に比べて調整の手間も抑えられます。

全面刷新の保守費用(月額60万〜100万円以上)との桁違いの差

全面刷新は初期開発費が大きいため、保守費用も小規模改修より高額になります。

  • 全面刷新の初期開発費:数千万円〜数億円規模です。
  • 全面刷新の保守費:月額60万〜100万円以上、年額720万円〜数千万円以上です。

比較すると、中規模改修では、開発費が1,500万〜2,000万円程度なら、年額225万〜400万円、月額約19万〜33万円が目安です。

24時間365日の対応や厳格なSLA(サービス品質保証)が求められる工場では、待機体制だけで費用が高額になる場合があります。

一方、小規模改修であれば、月額は数万円〜10万円前後に抑えられます。全面刷新と比べると、毎月数十万円、年数百万円規模の削減も可能です。

限られた予算でシステムを維持したい企業にとっては、この差が改修を選ぶ理由になります。

自社の改修規模がどの費用帯に当たるかを把握しておくと、予算計画の精度を高められます。段階的に広げる計画であれば、各段階の保守費用を試算して、想定外の負担に備えておくとよいでしょう。

小規模・中規模・全面刷新の相場を踏まえれば、提示された見積額が改修範囲に見合うかどうかを、社内で一次判断できます。

ポイント

提示された月額が、自社の改修規模に対応する費用帯に収まっているかを見ると、相場から大きく外れた見積もりに気づけます。

小規模改修が低予算で抑えられる理由

改修費を母数にし、保守対象を限定し、従量課金型やチケット制・ポイント制を使う要因を並べた図。
母数と委託範囲、契約方法が費用に関わります。

なぜMES改修では保守費用を低く抑えられるのでしょうか。その背景には、保守費用の母数の小ささと、契約方法の選び方があります。どちらも、保守契約を交渉する材料になります。

母数(改修費)の小ささと保守対象の限定

保守費用の母数は改修費であり、委託する保守の範囲が小さいほど、費用も抑えられます。

  • 母数が小さい:開発費の15〜20%で算出します。
  • 対象を限定する:改修した画面やPLC連携だけを委託し、不要な工数を避けます。

部分改修は数百万〜数千万円で済むことがあり、数億円規模の刷新より母数が小さくなります。その分、保守費用も低く抑えられます。

契約時に保守範囲を明確に線引きしておくと、費用を安定させやすくなります。線引きの際は、改修部分と既存部分の境界も確認しておきましょう。

たとえば、画面から呼び出す既存の在庫連携ロジックは、改修の影響を受ける可能性があります。また、改修したPLC連携のデータを受け取る既存の集計処理も、境界にあたる箇所です。

発注側は、境界部分で起きた不具合をどちらの保守範囲に含めるかを、契約前にベンダーと決めておきます。そうすれば、後々のトラブルや追加費用の請求を防げます。

従量課金・チケット制の活用

トラブルの頻度や契約方法によっては、固定費を抑える選択肢もあります。

  • 従量課金型:作業に使った分だけ支払う方式。
  • チケット制・ポイント制:一定の作業時間を、あらかじめ購入する方式。

全面刷新直後は不安定になりやすいため、月額固定型の手厚い保守が必要になることがあります。一方、一部画面の修正やPLC連携の追加では、安定稼働している部分への変更が小さく、トラブルも比較的少ない場合があります。

従量課金型なら、トラブルがなかった月の固定費を避けられ、ランニングコストも小さくできます。改修規模とトラブル頻度の見通しを踏まえて、契約前に固定型と従量型を比べておくとよいでしょう。

チケット制では、1チケットで対応する作業の目安を、ベンダーと事前に決めておきます。たとえば、軽微な不具合修正1件やマスタ変更1件といった単位で、作業内容の認識を合わせます。

目安が曖昧だと、簡単な作業でも複数チケットを消費する場合があります。反対に、1チケットに想定以上の作業を詰め込むと、対応品質が下がる可能性もあります。

年間の消費数は四半期ごとに振り返り、翌年度の契約数を実態に合わせて見直します。

ポイント

改修の範囲を限って保守の母数を小さく保つことと、固定費を避けられる契約形態を選ぶことの両方で、保守費用の水準は変わります。

ランニングコストをさらに最適化する工夫

契約や改修の積み重ね方を工夫すると、MES改修のランニングコストをさらに抑えられます。改修の範囲を広げすぎないことと、軽微な作業を自社で行うことが、主な工夫です。

改修範囲の細分化と保守対象の肥大化

改修を重ねるごとに保守対象の画面や連携プログラムが増え、年に何度も改修すると、合計費用が全面刷新に近い水準まで膨らむこともあります。

  • 契約へ統合する:改修のたびに、今回の改修分を既存契約に加えられるかを確認します。
  • 範囲を棚卸しする:半年〜1年に一度、保守対象が今も必要な範囲かを見直します。
  • 履歴を台帳にする:改修の履歴を一覧にし、過去の改修を見返せるようにします。

契約を細切れに増やすと、どの改修がどの契約に含まれるのかが分かりにくくなります。

台帳に残すのは、いつ、どの画面や設備連携を、いくらで改修したかです。そうすれば、重複や統合の余地を判断できます。

台帳は複数の会社へ依頼した企業ほど役立ち、担当者が異動や退職をしても、改修全体を引き継ぐ資産になります。また、台帳があれば、半年〜1年に一度の範囲の棚卸しも、一覧を見ながら効率よく進められます。保守契約の満了日や更新条件も書き加えておくと、更新時の見直しを逃しにくくなります。

簡易なマスタメンテナンスの内製化

簡易なマスタメンテナンスを内製化するには、契約時に、作業の範囲と権限、追加費用の条件を取り決めておく必要があります。

  • 対象作業:画面項目名や選択肢マスタの変更を、自社で行えるかを確認します。
  • 操作権限:参照できる範囲と編集できる範囲を分けて付与します。
  • 追加費用:保守内の作業とスポット対応の範囲を、見積もりで線引きします。

軽微な変更でも外部ベンダーへ依頼するたびに費用が発生します。そのため、契約時に自社の操作権限で対応できる作業を交渉しておくと、委託費を継続的に抑えられます。

見積もりでは、ベンダーに工数と単価の内訳を示してもらい、保守内とスポット対応の境界を決めます。

権限を分けておくと、現場の担当者による誤操作がシステム全体に及ぶのを防げます。

マニュアルの整備や簡易な研修を提案できるベンダーかどうかも、あわせて確認しておくとよいでしょう。

内製化を広げるほど委託費は下がる一方で、社内教育や引き継ぎの費用は増えていきます。異動や退職に備えて手順を整えておくと、属人化による再委託を防ぎやすくなります。

ポイント

改修の履歴を一覧にして保守範囲を把握し、軽微な作業を自社で行える権限を契約で決めておくと、費用の膨らみを抑えられます。

まとめ

ここまで、他の刷新・更改との位置づけ、保守費用の相場と全面刷新との比較、低予算で抑えられる理由、ランニングコストを抑える工夫を見てきました。

保守費用は改修費の15〜20%を基準とし、改修費の小ささと保守対象の限定によって変わります。目安としては、小規模改修が月額数万円〜10万円前後、全面刷新が月額60万〜100万円以上です。

契約前には改修規模と保守範囲を確かめ、複数の開発会社から見積もりを取って契約形態を比べるとよいでしょう。

改修対象を増やしすぎないよう注意しつつ、簡易なメンテナンスの内製化や従量課金型の契約も検討できます。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。