受発注管理システムのリアーキテクチャの発注/外注/依頼/委託方法について

進め方は、発注前の準備とRFP作成から始め、準委任契約から請負契約へ段階的に切り替えながら、費用と発注先を選ぶ流れが基本です。

全体像を把握するためのガイドはこちらです。

受発注管理システムのリアーキテクチャの概要

外側の機能を維持しながら内部のアーキテクチャをマイクロサービスとクラウドネイティブへ再設計するレイヤー図
外側を保ち、内部の構造を組み替える

リアーキテクチャは、システムの外側の機能をできるだけ維持しながら、内部の構造を再設計する手法です。受発注管理システムでは、モノリシックな構造をマイクロサービスに分割し、クラウドネイティブな基盤へ載せ替えることで、変更への俊敏性や拡張性、可用性を高めることを目指します。単なるサーバ移行(リホスト)や別製品への置き換え(リプレイス)とは違い、将来の事業変化に耐える土台づくりが主眼です。

受発注管理システムにリアーキテクチャが必要な理由

受発注管理システムは、EDIや在庫管理、会計などと密接に連携する基幹的な存在です。古い構造のまま機能を追加し続けると、一部の改修が全体に波及し、変更のたびに大規模なテストと長いリードタイムが必要になります。この硬直化が商習慣の変化やBtoB取引のWeb化・EDI化への対応を遅らせ、保守コストの肥大化とあわせて「2025年の崖」のリスクも高めます。

情報処理推進機構(IPA)が約4,000社を対象に実施し、799社から回答を得た調査では、自社のレガシーシステムの放置が、サプライチェーン上の調達元や提供先にも負の波及を及ぼすと示されています。受発注管理システムは取引先と直接つながる接点のため、自社の老朽化が取引先の業務効率を損なうリスクもあります。

リアーキテクチャでAPI連携を前提とした疎結合な構造に移行できれば、こうした波及リスクを抑えられます。

効果を測るKPIと外部委託が増える背景

リアーキテクチャの効果は、数値で評価できるようにしておくことが大切です。たとえば、受注処理時間の短縮、入力エラー率の低減、EDI自動化率の向上といったKPIが代表的な指標となります。これらの現状値を発注前に把握し、再設計後の目標値を定めておけば、投資対効果を経営層へ説明しやすくなります。

マイクロサービスやコンテナ、クラウドネイティブな設計には専門的な知見が求められ、社内のIT人材だけで完遂するのは容易ではありません。さらに、IPAは2030年に最大79万人のIT人材が不足すると指摘しており、人海戦術による内製には限界があります。こうした背景から、設計力を持つ外部の開発会社へ発注・委託する企業が増えています。

ポイント

外側の機能を残して内部の構造を組み替えたいのか、サーバ移行や別製品への置き換えで足りるのかによって、発注の範囲が大きく変わります。

発注前の準備

発注前に確認する現状の可視化、業務要件の棚卸し、RFP、KPIを並べたチェックリスト図
準備の精度がプロジェクトの安定性を左右する

外部委託の成否は、発注前の準備でほぼ決まります。依頼内容があいまいなまま発注すると、認識の食い違いから手戻りが増え、費用も期間も膨らみます。受発注管理システムのリアーキテクチャでは、発注前にどこまで現状を洗い出し、要求を整理できるかが、プロジェクト全体の安定性を大きく左右します。

現状の可視化と業務要件の棚卸し

まず取り組むのは、現行の受発注業務とシステムを洗い出すことです。受注の経路が電話やFAX、メールなどに分散しているか、どの処理が人手に依存しているかを把握します。あわせて、EDIや在庫、会計など周辺システムとの連携インターフェースを整理し、どのデータがどのタイミングでやり取りされているかを明確にします。

特に注意したいのは、得意先別の単価マスタや特別条件など、長年積み重なった業務ルールです。これらが暗黙知のまま残っていると、後工程で要件が次々に出てきて、開発が肥大化します。発注前に、どの業務ルールを残し、どれを廃止するかの方針まで話し合っておくことが望ましいといえます。

RFP(提案依頼書)の作成と目的の言語化

洗い出した内容は、RFP(提案依頼書)にまとめ、複数の開発会社へ共通の条件で提示します。RFPには、リアーキテクチャの目的と対象範囲、連携が必要な周辺システムを書き、さらに、想定する非機能要件や移行の制約、達成したいKPIも盛り込みます。これにより、各社の提案を同じ基準で比べられます。

大切なのは、手段を目的にしないことです。マイクロサービス化やクラウドネイティブ化はあくまで手段で、目的は受注処理時間の短縮やEDI自動化率の向上といった業務価値にあります。RFPの冒頭で目的を言葉にしておけば、提案の段階から発注先と認識をそろえられ、過剰な技術投資を防げます。

ポイント

現状の受注経路や業務ルールを洗い出し、残す業務と廃止する業務まで発注前に議論できているかが、後の手戻りを減らす目安になります。

外部委託の進め方と契約形態の使い分け

準委任契約と請負契約をアセスメントや要件定義、設計・開発の工程で比較する2列図
工程の不確実性に合わせて契約を区切る

受発注管理システムのリアーキテクチャは、一括で発注するよりも、フェーズごとに進め方と契約形態を使い分けたほうがリスクを抑えられます。不確実性の高い上流工程と、仕様が固まった開発工程では、適した契約の性質が異なるためです。

準委任から請負への段階的な契約設計

初期段階のアセスメントや要件定義は、ゴールが流動的で完成の形を決めにくいため、準委任契約が向いています。準委任では作業の遂行に対して対価を支払うため、現状分析を進めながら方向性を柔軟に調整できます。この段階で現行システムのブラックボックスを解析し、移行方針を固めることが目的です。

仕様が固まった設計・開発フェーズに移ったら、完成まで責任を負う請負契約へ切り替えるのが有効です。準委任で要件を十分に詰めてから請負へ移ることで、発注側は完成責任を相手に委ねつつ、不確実性に起因する追加費用のリスクを抑えられます。フェーズごとに契約を区切る進め方は、受発注管理システムのように連携が複雑なシステムで、特に効果を発揮します。

SLA・責任分界点とベンダーロックインの回避

受発注管理システムは取引先との取引を支えるため、稼働品質の取り決めが欠かせません。契約にはSLA(サービス品質保証)と責任分界点を明記し、障害時の対応範囲、復旧目標、連携先との責任の切り分けを決めておきます。そうしておけば、運用開始後のトラブル時に責任の所在をめぐる混乱を防げます。

あわせて意識したいのが、ベンダーロックインを避けることです。ソースコードの著作権の帰属、設計ドキュメントの納品、運用権限の扱いを契約に盛り込んでおくと、将来別の会社へ引き継げる状態を確保できます。また、マイクロサービス化を進める際も、特定ベンダー固有の仕組みに過度に依存しない設計を求めることで、長期的な保守の自由度を保てます。

ポイント

上流工程は準委任契約で方向を固め、仕様が定まった開発工程で請負に切り替えられるかどうかが、不確実性による追加費用を抑える目安になります。

費用相場とコストの内訳

リアーキテクチャの費用は、対象範囲や連携の複雑さによって大きく変わります。一般的なモダナイゼーションの費用相場は500万円から2億円程度と幅広く、マイクロサービス化を伴う本格的なアーキテクチャ再設計では、中規模以上の投資になりやすい傾向があります。そのため、発注前に内訳を理解しておくことが、適正な予算取りの第一歩になります。

費用の内訳と人件費・工数の考え方

費用の中心は、要件定義や設計・開発、データ移行といった各フェーズの人件費で、テストや新旧並行稼働、運用も含まれます。特にリアーキテクチャは設計の難度が高く、クラウドネイティブやマイクロサービスの知見を持つ技術者の工数が費用を左右します。発注時には、どの役割の技術者が何人月投入されるのかを確認し、工数の妥当性を見極めることが大切です。

受発注管理システム特有のコスト要因は、連携部分の開発です。EDIや在庫管理、会計などとの連携は、連携先が多いほどインターフェースの設計と試験に手間がかかり、工数が積み上がります。見積もりでは、連携ごとの工数が具体的に積算されているかを確認しておくと、後の追加費用を避けられます。

見落としがちな隠れコストとランニングコスト

初期費用の見積もりだけでは、総費用を見誤るおそれがあります。代表的な隠れコストは、得意先別の単価マスタや特別条件のデータクレンジングです。長年蓄積された取引データには重複や不整合が多く、移行前の整理に想定以上の工数がかかり、これを軽視すると移行後にデータ起因のトラブルが噴出します。

このほか、新旧システムの並行稼働による二重の運用コストや、コンテナ・マイクロサービスの運用に必要な新規ライセンス費、現場担当者の教育費も見込んでおく必要があります。意思決定では初期コストの比較だけでなく、移行後の運用コストを減らすシミュレーションまで示すと、経営層の納得を得やすくなります。また、不要な機能を思い切って廃止し、その分の予算をコア機能の刷新へ回す考え方も有効です。

ポイント

見積もりに連携ごとの工数が具体的に積算され、データクレンジングや並行稼働の費用が含まれているかが、後の追加費用を避ける判断の目安になります。

発注先の選定基準と失敗しないためのポイント

発注先は、技術力だけでなく、業務理解や契約姿勢まで含めて総合的に判断します。受発注管理システムは事業の根幹を支えるため、開発が頓挫すれば取引そのものに影響が及びます。

技術力と業務理解・体制の見極め方

まず確認したいのは、マイクロサービスやクラウドネイティブな設計、データ移行に関する実績です。受発注管理システムやEDI連携を伴う案件の経験があるかどうかは、業務理解の深さを測る目安になります。商習慣やBtoB取引の特性を理解している会社であれば、要件の抜け漏れを補う提案が期待できます。

IPAの調査では、CDOやCIOなどのCxOを設置している企業ほど、社内の情報共有が円滑で、現状の把握や内製化が進み、モダナイゼーションも順調だという相関が示されています。これは発注側の体制づくりの重要性を示すと同時に、発注先にも経営と現場をつなぐコミュニケーション力やプロジェクト管理体制を求める必要があることを意味します。

そのため、プロジェクト管理の進め方や報告体制まで確認しておくとよいでしょう。

Fit to Standardと全カスタマイズの落とし穴

リアーキテクチャで最も陥りやすい失敗は、Fit to Standardを無視して、既存の例外ルールをすべてカスタマイズで再現しようとすることです。得意先ごとの特別な処理を一つ残らず作り込むと、開発が際限なく肥大化し、コストと期間が膨らんで、プロジェクトが頓挫しかねません。

これを避けるには、標準機能に業務を合わせるFit to Standardの発想を持ち、本当に必要な例外だけをカスタマイズに残すことが欠かせません。発注先には、要望をそのまま受けるより、標準化の観点から業務の見直しを提案してくれる姿勢を求めたいところです。

あわせて意識したいのは、内部のコードだけでなくデータモデルも見直さないと、変更速度や拡張性は改善しないことです。「前のシステムではできた」という現場の反発には、チェンジマネジメントとして丁寧な説明と合意形成を重ねることが、定着の鍵となります。

ポイント

技術力に加えて、業務理解と体制、標準機能に業務を合わせる姿勢をもつ発注先かどうかが、選定で迷ったときの判断材料になります。

まとめ

EDIや在庫、得意先別単価マスタの移行といった受発注管理特有の論点は、発注前にどこまで整理できるかで、結果が大きく変わります。

Fit to Standardの発想で例外のカスタマイズを避け、データモデルの見直しまで踏み込み、受注処理時間や入力エラー率、EDI自動化率といったKPIで効果を測ることが、頓挫を防ぐ実務上の要点です。IPAの一次データが示す人材不足やCxO設置の効果も踏まえ、信頼できるパートナーとともに、運用コスト低減まで見据えたアーキテクチャ再設計を進めていきましょう。

関連知識を補う全体ガイドはこちらです。

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。