受発注管理システムのモダナイゼーションの開発期間・スケジュール・納期について

開発期間の目安は、中規模(パッケージ+カスタマイズ)で3〜6ヶ月、基幹統合やフルスクラッチを伴う大規模で6ヶ月〜1年以上です。

期間を左右するのは、EDI接続の移行、過去データの移行、並行稼働の3点です。扱うのは工程別の期間配分と5つのアプローチの使い分けで、経営説明や予算承認は対象外です。

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受発注管理システムのモダナイゼーションの位置づけ(Brownfield特有)

モダナイゼーションを検討する企業の多くは、電話・FAX・紙の受注票を前提に構築された古い受発注管理システムを使い続けてきました。取引先とのEDI接続も、電話回線経由のJCA手順など旧規格に頼ったまま、長年運用されてきました。

さらに、NTTのINSネット(ISDN)のデジタル通信モードのサービス終了に伴い、電話回線ベースのレガシーEDIがいずれ使えなくなるという、業界共通の課題認識があります(いわゆるEDIの2024年問題)。このため、流通BMSやインターネットEDIへの移行を含むシステム刷新の必要性が、中小企業を含めて広く高まっています。

新規に立ち上げるグリーンフィールド開発であれば、要件定義から自由に設計できます。一方で、モダナイゼーションでは既存の取引先・データ・運用ルールという制約を抱えたまま刷新を進めるため、開発期間の見積もり方も自然と異なります。

期間を見積もるときは、既存環境の制約を次の3点に分けて確認します。こうして確認しておくと、後工程での手戻りを抑えやすくなります。

  • 取引先接続:既存EDIの切り替え時期の調整
  • 過去データ:移行範囲とデータ品質の事前の決定
  • 並行運用:新旧システムを併用する期間の確保

新規導入(グリーンフィールド)との違い

グリーンフィールドの受発注管理システム開発は、要件定義、システム選定、開発を経て、比較的シンプルな工程で進みます。その流れのなかで、データ移行はほぼ新規データのみが対象となり、研修を経て本稼働を迎えます。

これに対しモダナイゼーションでは、既存システムに紐づく取引先マスタ・商品マスタ・単価マスタが長年の運用で分散し、表記も揺れています。そのため、まずこれらの現状把握と整理から着手しなければなりません。

さらに、稼働中のEDI接続を止めずに新方式へ切り替える必要があるため、取引先への影響を最小化する移行計画の策定という、グリーンフィールドにはない工程が加わります。この現状把握と移行計画の工程を軽視すると、後工程で大きな手戻りが生じ、結果的に納期を圧迫します。

5つのアプローチ(5R)の受発注領域への当てはめ

モダナイゼーション全般で使われる代表的な5つのアプローチ(5R)は、受発注管理システムにもそのまま当てはめられます。

たとえば、EDI接続の安定稼働を最優先して最短でクラウドへ移すなら、リホストを選びます。単価・掛率計算などのロジックはそのままに、データベースだけをマネージド化するなら、リプラットフォームやリファクタリングを選びます。

自社独自の商慣行に完全に合わせたいならリビルド(フルスクラッチ)を、標準機能で足りる業務範囲ならリプレース(パッケージ・SaaS)を選びます。このように、業務領域ごとに異なるアプローチを組み合わせるハイブリッド型の計画が、実務では多く見られます。

ポイント

迷ったときは、既存の取引先・データ・運用ルールがどこまで残るかを基準に見積もりを組み直すとよいです。取引先接続、過去データ、並行運用の3点で制約の大きさを測ると、見積もりのずれを減らせます。

開発期間・スケジュールの全体像(工程別の期間配分)

受発注管理システム刷新の上流工程から並行稼働まで、工程ごとの期間を順に示した図。
移行と並行稼働にも、工程として期間を割り当てます。

全体スケジュールは、規模によって大きく異なります。中規模(パッケージ+カスタマイズ)なら総期間3〜6ヶ月、基幹統合やフルスクラッチを伴う大規模なら6ヶ月〜1年以上が目安です。大規模のうち、基幹全体の刷新を伴うケースでは1〜3年が目安になります。

グリーンフィールド開発と比べると、期間配分の内訳が変わります。現状アセスメントとデータクレンジングに充てる期間が長くなり、移行後には並行稼働という独自の工程も加わるためです。

現状アセスメント〜移行計画策定までの上流工程

上流工程では、まず現状アセスメントで、現行システムの構造、データモデル、EDI接続先の一覧を明らかにします。ここでは、どの取引先とどの通信プロトコルで接続しているか、どのマスタがどの程度分散・重複しているかを洗い出します。そのうえで、対象範囲ごとに5つのアプローチのどれを当てはめるかを決めます。

この工程は通常1〜3ヶ月です。ただし、取引先数が多い卸売業や、長年カスタマイズが積み重なった基幹連携がある場合は、3ヶ月を超えることも珍しくありません。

上流工程を丁寧に行うほど、後続の開発・データ移行・並行稼働での手戻りを防げます。

段階的移行〜並行稼働・本稼働までの期間

計画が固まった後は、開発と取引先・基幹連携の実装に2〜3ヶ月、データ移行とテストに2週間〜1ヶ月程度を要するのが一般的です。

その後の並行稼働・本稼働は、受発注管理システムのモダナイゼーションに特有の重い工程です。後述のとおり、最低でも1〜3ヶ月程度を確保する必要があります。

並行稼働期間を短くすると、月次締めなどの業務サイクルを検証しきれないまま本稼働を迎え、トラブルを招くリスクが高まります。そのため、スケジュールを引く段階から、十分な期間を織り込んでおくことが大切です。

ポイント

期間を見積もるときは、現状アセスメントの範囲と取引先数から、長くなりそうな工程を先に洗い出すとよいです。並行稼働は、月次締めを一巡できる長さを最低限の目安にすると迷いにくいです。

EDI接続移行が期間に与える影響(受発注モダナイゼーション特有の難所)

EDI接続移行の論点として、取引先ごとの仕様、通信プロトコル、切替スケジュール、データの空白を並べた図。
自社の稼働日だけでは、接続切替の予定を組みきれません。

EDI(電子データ交換)の切り替えは、他の業務システムのモダナイゼーションではほとんど起きない、受発注管理システムに特有の難所です。取引先ごとに異なるEDI仕様や通信プロトコルに合わせて、個別に設定を変える必要があります。

さらに、移行のタイミングは自社側の都合だけでは決められません。このため、開発期間の見積もりも難しくなります。

取引先ごとの通信プロトコル切替とスケジュール調整

EDI接続の移行では、取引先への事前通知、テスト接続の日程調整、接続確認という3つの作業を、すべての取引先と並行して進める必要があります。取引先数が多い卸売業などでは、テストを含むこの切り替え作業だけで2〜3ヶ月のリードタイムが必要になるケースも珍しくありません。

特に注意したいのは、取引先側の接続切り替えと自社の新システム稼働がずれたときです。そのとき、「旧システムには発注データが届くが新システムには届かない」というデータの空白が生じるリスクがあります。

そのため、取引先ごとの切替スケジュールを一覧にし、余裕のあるバッファ期間を設けたうえで計画を進める必要があります。

レガシーEDIから流通BMS・インターネットEDIへの移行という業界動向

長年普及してきたJCA手順や全銀協標準通信プロトコル(全銀TCP/IP手順)といった、電話回線・ISDN経由のレガシーEDIは、通信基盤そのものの世代交代が進んでいます。そのため、経済産業省主導で策定された流通BMSやインターネットEDIへの置き換えが、業界全体の流れになっています。

この移行を怠り、老朽化した通信方式を使い続けると、通信基盤の提供終了とともに受発注業務そのものが止まりかねません。

また、取引先ごとに異なるWebブラウザの発注画面へのログインや手入力を強いられる「Web-EDI問題」のように、個別対応が乱立すること自体が新たな非効率を生むケースもあります。そのため、モダナイゼーションを機にAPI連携基盤へ統合できるかどうかが、開発期間とその後の運用負荷を左右する論点になります。

ポイント

EDI接続は取引先ごとに切り替えを進めるため、自社の稼働日だけで計画を組むと受注データの空白が生じやすくなります。取引先ごとの切替日を一覧にし、余裕を見てから稼働日を決めるとよいです。

マスタ・トランザクションデータ移行が期間に与える影響

EDI接続の移行と並んで、過去に蓄積されたマスタデータとトランザクションデータの移行も、開発期間を左右する大きな要因です。必要な工数は、長年の運用で積み重なったデータの状態によって大きく変わります。

取引先・商品・単価マスタのクレンジング

長年運用されてきた受発注管理システムでは、取引先マスタや商品マスタがERPや倉庫管理システムなど複数のシステムに分かれています。その結果、「株式会社〇〇」と「(株)〇〇」のような表記揺れや、同一商品のコード不一致が積み重なっているケースがほとんどです。

これらをそのまま新システムへ移すと、データが正しく紐づかず、本稼働後に手作業での突合が多発します。そのため、事前のデータクレンジングが必須の工程になります。

特に単価マスタは、取引先ごとの特別単価、期間限定価格、数量ランク別単価など、バリエーションが複雑です。移行工数が最も過小評価されやすい項目でもあるため、スケジュールを引くときは、他のマスタより余裕のある期間を確保しておく必要があります。

過去受発注データの移行方針(限定移行・分割インポート・非移行)

過去数年分の受発注履歴をすべて物理的に新システムへ移そうとすると、莫大な工数とコストがかかります。それだけでなく、新システムのパフォーマンス低下を招く恐れもあります。

そこで実務では、次のいずれかを選ぶのが現実的です。限定移行では、対象ステータスを過去1年以内の「処理済」データなどに絞り込みます。分割・段階的インポートでは、注文ヘッダーと明細を分けてCSVで段階的に取り込みます。

非移行では、過去データは移さず、旧システム用の別データベースを構築して新システムからAPIで参照するだけに留めます。どの方針を取るかで開発期間は数週間から数ヶ月単位で変わるため、要件定義の早い段階で経営層と現場の双方と合意しておくことが、後工程での手戻りを防ぐ鍵になります。

ポイント

移行範囲は、要件定義の早い段階で経営層と現場が合意しておくと、後工程の手戻りを減らせます。単価マスタは、他のマスタより多めに時間を見込む判断が必要です。

並行稼働期間の設計と納期を守るポイント

並行稼働中に確認する二重入力、運用ルール、自動連携、月次締め処理を並べた図。
現場の運用準備と業務サイクルの検証を一緒に計画します。

受発注業務は止められないため、新旧システムを同時に稼働させる並行稼働(パラレルラン)が、モダナイゼーションにおけるリスク低減の標準的な進め方となります。ただし、並行稼働そのものも、期間の設計を誤ると新たな遅延要因になり得ます。

二重入力の負担と形骸化リスクへの対策

並行稼働中は、現場の担当者が新旧両方のシステムに受注データを二重に入力する必要があります。そのため、工数と運用コストが一時的に増えます。

この負担と目的について、事前に現場へ十分説明して合意を得ておかないと、「面倒だから新システムには入力しない」という運用逃避が起きかねません。その結果、並行稼働による検証そのものが形だけになってしまいます。

納期を守るには、並行稼働の目的(新システムの本番耐性を実データで確かめること)を現場に明確に伝えることが欠かせません。あわせて、一方のシステムからもう一方へ自動で連携する仕組みなど、二重入力の負荷を抑える運用ルールを前もって用意しておくと役立ちます。

月次締め処理の検証漏れを防ぐ並行稼働期間の目安

コストや二重入力の手間を惜しんで並行稼働期間を1週間程度に縮めると、月末締めや四半期処理といった重要な業務サイクルを一度も検証しないまま本稼働を迎えることになります。実際に、この期間短縮が原因でマスタ不整合や出力エラーが本稼働後に多発し、やむを得ず旧システムへ強制的に戻す(ロールバック)ことになった失敗事例も報告されています。

こうした事態を避けるには、本番データを使って複数回の月次締めを検証することが欠かせません。そのため、最低でも1〜3ヶ月の並行稼働期間を、スケジュール全体のなかにあらかじめ織り込んでおきましょう。

ポイント

並行稼働は、月次締めを検証できる期間を最低1〜3ヶ月とるのが判断の目安です。現場の二重入力は、目的を伝えたうえで自動連携の準備をしておくと負担を抑えられます。

まとめ

ここまで、受発注管理システムのモダナイゼーションの開発期間・スケジュール・納期について、工程別の期間配分、EDI接続移行の影響、マスタ・トランザクションデータ移行の論点、並行稼働期間の設計方法を見てきました。

グリーンフィールドの新規導入とは違い、モダナイゼーションは既存の取引先・データ・運用ルールという制約を抱えたまま進めるのが本質です。なかでも、EDI接続の移行、過去データの移行、並行稼働期間中の二重運用リスクの3点が、開発期間を大きく左右します。

取引先数が多いほど、EDI切り替えのリードタイムは長くなります。単価マスタの移行工数も過小評価されがちです。さらに、並行稼働期間を安易に短縮すると、本稼働後に重大な不整合を招きかねません。

老朽化した受発注管理システムの刷新を検討されている方は、これらの固有リスクを踏まえたうえで、実績のあるパートナーへ早めに相談することをお勧めします。

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会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

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執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。