SalesForce導入支援・改修のフルスクラッチ・オーダーメイド開発について

Salesforceの導入・改修とフルスクラッチ開発は、費用と期間、業務の独自性、保守体制の面で比べると違いがはっきりします。そのうえで、標準機能と部分改修を軸に選ぶと、自社に合った進め方を判断できます。

全体像は、下の案内にある完全ガイドでも確認できます。

▼全体ガイドの記事
・SalesForce導入支援・改修の完全ガイド

SalesForce(SaaS+Apex・LWCカスタマイズ)とフルスクラッチ開発の比較

Salesforceは、Salesforce.com社が提供するクラウド型のCRM(顧客関係管理)・SFA(営業支援)プラットフォームです。製品群にはSales Cloud、Service Cloudがあり、Marketing Cloud Account Engagement(旧称Pardot)なども含まれます。

Salesforceでは、Salesforce.com社が長年磨いた標準機能とベストプラクティスを土台に、Apex・LWCで部分的に拡張します。一方、フルスクラッチは既存パッケージやSaaSを使わず、業務要件に合わせてゼロから設計・開発します。

Salesforceとフルスクラッチは、どちらも顧客管理・営業支援を構築する手段ですが、その性質は大きく異なります。この違いは費用と期間、自由度と保守に影響します。そのため、費用・期間と、自由度・保守の2つの観点から両者を比べます。

初期費用・開発期間の比較

方式ごとの費用と期間を並べると、導入方法を選ぶ材料になります。特に初期費用と開発期間では、Salesforceが明確に有利です。

  • Salesforceの費用:標準機能が中心なら50万〜300万円程度、Apex・LWCの開発を含めると300万円台からが目安です。
  • Salesforceの期間:標準機能が中心の場合は最短2週間〜1〜3ヶ月、本格導入では3〜6ヶ月程度が一般的です。
  • フルスクラッチの費用:人件費や設備費がかさむため、規模によっては数千万円から数億円単位になることもあります。
  • フルスクラッチの期間:半年から1年以上かかるケースが多く、市場や要件が急に変わった場合の対応が課題になりやすいとされます。
  • 段階的な導入:Salesforceは標準機能から始めて運用を見ながら必要な部分を拡張でき、初期投資を抑えて早く効果を確かめられます。

カスタマイズ自由度と運用保守の比較

自由度と保守の責任範囲を並べると、方式ごとの運用の負担がどこに生じるかも見えてきます。

  • 設計の自由度:フルスクラッチは業務フローや商習慣に合わせて組めるうえ、社内システムや外部サービスとの連携も前提にできます。
  • Salesforceの拡張:Apex・LWCで柔軟性を持たせられますが、前提は「標準機能に業務を合わせる(Fit to Standard)」ことです。
  • カスタマイズの保守:自由度を追求しすぎると標準保守の対象外になり、自社の負担が増えるおそれがあります。
  • 保守責任:フルスクラッチは基盤からアプリまで自社か委託先が担い、Salesforce社は基盤保守、セキュリティ対応、年3回程度の更新を受け持ちます。
  • 標準機能の活用:基盤保守を任せることで自社の負担を抑え、業務ロジックの最小限の改修に集中できる点が大きな利点です。

ポイント

Salesforceは初期費用と期間で優位に立ち、フルスクラッチは自由度の高さが強みです。どちらを選ぶかは、費用や期間に加えて、保守をどこまで自社と委託先で受け持つかを合わせて比べて決めます。

フルスクラッチが正当化されるケースとSalesForceで十分なケース

Salesforceの標準機能と一部カスタマイズで扱う営業管理、顧客サービス、マーケティング連携を並べた図。
共通業務の領域を3つに分けて確認できます。

フルスクラッチとSalesforceのどちらを選ぶかは、金額だけで決めず、自社の業務要件に合う方式を見極めることが大切です。

フルスクラッチが向くケース

フルスクラッチを検討する際の判断材料は、独自業務の重要性と利用者の規模です。Salesforceはユーザー数に応じた課金のため、利用者の規模は長期のコストを左右します。

  • 独自業務が競争力の源泉:競争優位(コア・コンピタンス)の源泉となるコア業務に限り、候補になります。標準機能に合わせると強みを失います。
  • 複雑な料金計算:業界特有の複雑なロジックは、標準的なCRM/SFAでは表現しきれない場合があります。
  • 非常に多数のユーザー:消費者向けの会員基盤のように利用者が非常に多い場合は、長期のコストでフルスクラッチが有利になることもあります。

他社に真似できない独自の顧客対応フローが差別化要因になる場合も、CRM/SFAでは表現しきれないことがあります。ただし、こうしたケースは限定的です。特殊に見える業務も、フィット&ギャップ分析で標準機能と一部のApex・LWCで対応できることがあります。

SalesForce(標準機能+部分カスタマイズ)で十分なケース

多くの企業に共通する業務は、Salesforceの標準機能と一部のカスタマイズで対応できるケースが大半です。

  • 営業管理:案件管理や商談の進捗管理。
  • 顧客サービス:問い合わせ管理での活用。
  • マーケティング連携:マーケティング活動との接続。

標準機能を使うと、複雑になりがちな業務フローを整理でき、属人化した営業プロセスを標準化するきっかけにもなります。加えて、自社でサーバーを保有せずに済むため、初期費用を抑えて迅速に導入できる点も利点です。

判断に迷う場合は、PoC(概念実証)やプロトタイプ検証で、標準機能の範囲と追加開発の必要性を確かめられます。こうして範囲を見極めておくと、不安だけでフルスクラッチを選ばず、根拠を持って判断できます。

ポイント

フルスクラッチを候補にするのは、競争力の源泉となるコア業務に限ります。残りの業務は、標準機能と一部のApex・LWCの改修で対応できないかを確かめるとよいでしょう。

既存SalesForce環境が複雑化した場合の改修・再構築というオーダーメイド対応

Salesforce環境の改修レベルとして、リブート、リビルド、リデザインを並べた図。
整理から設計の見直しまで、改修の段階を見渡せます。

過度なカスタマイズで複雑化したSalesforce環境は、立て直しも導入支援・改修の論点になります。全面移行とは異なる選択肢として、Salesforce上のオーダーメイド対応で検討できます。

スパゲッティ化・属人化した環境の兆候

複雑化の兆候を把握しておくと、全面移行の前に、Salesforce上で立て直せるかを検討できます。

  • 独自ロジックへの偏重:標準機能を使わず、独自ロジックだけで業務フローを組んでいる状態です。
  • データベース化:Salesforceを単なるデータベースとして使い、標準機能を生かせていない状況です。
  • 設定の増築:担当が代わるたびに意図の分からない項目や自動化フローが増え、既存設定を恐れて上乗せが続くことがあります。
  • 暗黙知の集中:専任管理者が1名の体制では、知識が本人だけに偏り、属人化のリスクが高まります。

兆候が見られる場合は、全面移行の前にSalesforce上でどこまで立て直せるかを見極めるのが、費用とリスクの両面で現実的です。

全面移行では、顧客データや商談履歴、現場の操作習熟もリセットされます。そのため、最短の解決策とは限りません。

リブート・リビルド・リデザインという改修レベルの選択

環境の複雑さに応じて改修レベルを選ぶことと、着手前に現状診断を行うことが、手戻りを抑える要点です。

  • リブート:軽微な問題が中心の場合で、不要な設定や項目の整理と、命名規則・文書の整備。
  • リビルド:中程度の複雑化では、商談管理など特定領域の設定を見直し、大部分を作り直す方法。
  • リデザイン:業務と設計思想がずれている場合に、オブジェクト構造や権限設計から見直すこと。

リデザインは新規導入に近いか、それ以上の工数がかかることもあります。軽い整理のつもりで始めた案件でも、着手後にリビルド相当だと分かると、手戻りが生じます。

発注側が個別にアセスメントを依頼し、複雑さを客観的に把握したうえで改修レベルを決めます。また、どのレベルでも基盤は維持したまま業務ロジックを立て直せるため、既存データや利用者の習熟を活かせます。

ポイント

複雑化した環境は、全面移行を急がず、Salesforce上で立て直せる範囲を兆候から見極めます。改修レベルは、アセスメントで複雑さを把握してから決めると手戻りを抑えられます。

内製化 vs 外部パートナー活用という発注判断

外部パートナーを中心に、コンサルティング、ISV、クラウドリセラーを結んだ図。
外部パートナーの種類が3つに分かれて並びます。

フルスクラッチでもSalesforce改修でも、内製にするか外部に委託するかが、プロジェクトの成否を左右します。

内製化のメリット・課題

内製化を選ぶなら、改善の速さと、人材・運用体制の両面を見ておくことが大切です。

  • 業務変化への対応:現場を理解する社員が担当し、Apex・LWCの人材がいれば、外部との依頼や調整を挟まず改善できます。
  • 内製化の支援:社内の開発を支えるため、パートナー企業がリリース効率化やテスト環境整備のツールを使う例もあります。
  • 人材確保と属人化:開発人材は需要が高く、採用や育成に時間と費用がかかります。専任者1名に偏るリスクにも注意が必要です。

外部パートナー活用の判断基準

社内に専門人材がいなくても、外部委託は進められます。ただし、内製よりコストが高くなりやすい傾向があります。

まずは発注側がプロジェクトの位置づけを整理し、依頼内容に合うパートナーの種類を選びます。

  • コンサルティング:導入計画から設定、改修、保守までの幅広い範囲。
  • ISV:AppExchange向けの独自アプリの開発。
  • クラウドリセラー:主にライセンスの販売と、その後のサポート。

初回導入や大規模改修では、認定資格を持つコンサルティングパートナーへの委託が選択肢になります。また、その後の軽微な保守を内製にする方法や、日常対応を内製にして大規模改修だけ外注する方法もあります。

特に、難易度の高い既存環境の改修では、アセスメント段階でリブート・リビルド・リデザインに詳しい専門家へ相談すると、その後の判断精度を高められます。さらに、製品選定も自社だけで抱え込まず、実績のあるパートナーの知見を早い段階で取り入れると、発注判断に役立ちます。

ポイント

内製は改善の速さが強みで、人材の確保と属人化の両方を見ておく必要があります。委託するなら、依頼内容に合うパートナーの種類を選び、初回と日常対応で分けて考えると判断しやすくなります。

まとめ

この記事で扱うのは、CRM/SFA機能一般ではなく、Salesforce基盤の導入・カスタマイズ・改修です。費用と期間、自由度と保守の負担を比べて、進め方を考えます。

初期費用と期間はSalesforceが有利で、自由度はフルスクラッチが優位です。ただし、競争力の源泉となる一部のコア業務は別で、それ以外の範囲は標準機能とApex・LWCの部分改修で対応できる場合があります。

既存環境が複雑化した場合は、全面移行を急がず、リブート・リビルド・リデザインのどれが必要かを見極めます。

業務要件のうち独自性が必要な範囲を整理し、実績のあるパートナーに相談することが、発注判断に役立ちます。

▼全体ガイドの記事
・SalesForce導入支援・改修の完全ガイド

会社紹介

株式会社riplaでは、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを、構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルによる高い要件定義力・システム設計力を活かし、事業成果の最大化に伴走します。

また、当社独自の開発テンプレート「Boxシリーズ」による標準機能の高速開発と、AI駆動開発の独自フレームワーク「GoDD」による独自機能のAI実装を組み合わせることで、低コスト・短期間で開発を実現いたします。

もし、システム開発やプロダクト開発に関するご要望がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

・サービス概要資料のURLはこちら >>>
・お問合せページのURLはこちら >>>
・お役立ち資料のURLはこちら >>>

執筆者プロフィール
張田谷凌央
張田谷凌央

株式会社ripla 代表取締役CEOとして、システムパッケージ活用、システム開発、データ分析、生成AI活用、SaaS開発、アプリ開発、EC構築など、幅広い領域で企業のDX推進と事業成長を支援している。事業会社でIT・DXを経験したプロフェッショナルが集う株式会社riplaにおいて、お客様の事業・ユーザー・業務に最適化したオーダーメイド型システムを構想策定・要件定義から開発・改善まで一気通貫で支援し、単なるシステム納品にとどまらず、クライアントと同じ目線で事業成果の最大化に向けた伴走支援を行う。早稲田大学卒業後、ラクスル株式会社、LINEヤフー株式会社にて事業開発やDX推進などに従事した後、株式会社riplaを創業。